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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第75回【損益計算書】営業利益

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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売上総利益


今回も引き続き損益計算書について見ていきます。 前回までは売上総利益に付いて話してきました。
売上総利益についてのエピソードを聞かれていない方は、まずそちらを先に聞いてほしいのですが、簡単に復習すると、売上総利益とは売上から商品の原価を差し引いたものです。
売上というのはモノやサービスを販売することで得た対価となりますが、売上からその元となっているモノやサービスを調達するためのコストである売上原価を差し引いたものが、売上総利益です。

他社が作った製品を仕入れて販売するような小売店や卸売は仕入れ額が売上原価にあたりますが、製造業の場合は物を生産する際にかかったコストがこれにあたります。
ここで注意点ですが、仕入れコストや生産にかかわるコストが全て売上原価となるわけではありません。 原価となるのは今年に販売された商品に限定されます。
つまり、仕入れたり製造したけれども余ってしまった商品や、材料を仕入れたけれども完成に至らなかったものは、この原価には含みません。 原価に含むのは売れた分だけです。

この様になっている理由としては、簿記の説明をした際に最初に言ったと思いますが、会社の現状を1年という期間で区切って正確に出すためです。
商品在庫や製造コストというのは、それが現金化されるのに一定の期間がかかったりします。 例えば、注文から納入までが3ヶ月かかるような商品を取り扱っている場合、その3ヶ月分の在庫は自分たちで持つ必要が出てきます。
すると当然、その在庫は期をまたいで持つことになります。 仮に3月末が期末の場合に3月に商品が届いたとすれば、支払いは今期ですが売上になるのは翌期以降となります。

この場合、来期の売上の元となる仕入れを今期にしていることになるため、このコストを今期のコストに含めてしまっては正しい利益を出すことが出来ません。来期のコストは来期の計算に含めるべきです。
その為、会社が持っている在庫はコストに含めず、今期に売れた分だけを売上原価としてコストに算入します。 この考えは、減価償却費の考え方にも通じるものがありますよね。
10年使用する目的で購入した大規模な製造設備を、購入したその年に全額コストとして落としてしまうと、会社の利益がわかりにくくなります。10年使うなら、10年で分割してコストを計上した方が分かりやすいです。

期末の在庫状況


この様な感じで会社の収支は、基本的にはその年の分だけを取り出して計算していきます。
計算方法としては、前期から引き継いだ在庫に今年の原価を足して、そこから今年に売れ残った在庫を差し引くことで計算します。
会社が期末に仕入れを抑えて在庫を減らそうとするのは、これが理由です。 最後に今年分の在庫を差し引くということは、在庫が大きくなればなるほど差し引かれる金額が大きくなってしまうため、売上原価は小さくなってしまいます。

売上原価が小さくなるということは、売上から売上原価を差し引いた利益のベースとなる売上総利益が増加してしまうことになるため、結果、税金が増えてしまうことになります。
具体的な数字を上げると、売上が1000で前期からの在庫が50あり、今期の製造コストが500あって今年の在庫が100になったとすると、売上原価は50+500-100になるので450。
その450を売上の1000から差し引くと売上総利益は550となりますが、今年の在庫が300に増加してしまうと、売上原価は50+500-300で250になってしまい、売上総利益は750まで増えてしまいます。

この様になってしまうため、企業は期末に在庫を減らすように動きます。
その他の理由としては、もし仕入れ値を全て原価に含めることが出来るのであれば、利益が出そうな時に仕入れを増やすことで税金を減らすことが出来てしまうので、それを防ぐ目的もあると思われます。
この様にして売上総利益は計算されるのですが、この売上総利益に含まれているコストは販売しているモノやサービスにかかわるコストだけです。

販売管理費


しかし実際には、この他にもコストがかかっています。 それを含めて計算するのが営業利益です。この営業利益が、会社が行う事業としての実質的な利益として考えても良いでしょう。
この営業利益で新たに組み入れられるコストは、主に販売管理費と言われているコストです。この販売管理費はその名の通り、販売や管理にかかわるコスト全般のことです。

想像しやすいように例えを出すと、小売店の場合は商品を仕入れただけでは売上にはなりません。 それを販売するための仕組みが必要となります。
分かりやすいのが店舗を構えて販売するという仕組みですが、この店舗を構えるというのは無料で出来るものではありません。 土地を持っていなければテナントを借りる必要がありますし、販売員を雇う必要も出て来るかもしれません。
売上に直接関わらない経理事務といった作業にも人件費がかかってきますし、店舗を運営するためには水道光熱費もかかってきます。

人手不足の業界であれば福利厚生を充実させて社員が逃げていかないようにする必要もありますが、これもタダではありませんので費用がかかります。
また小売店は、店を開店するだけで勝手に客が来るわけでもないでしょうから、店を宣伝するための宣伝広告費もかかるかもしれませんし、接待をしなければならない場合もあるでしょう。
通販対応をするのであれば通信費や送料なども当然かかってきますし、自社サイトの制作費や維持管理費もかかってきます。 このようなものが販売管理費と呼ばれるものです。

これらの販売管理費ですが、事業を行う上では絶対に必要な経費となりますが、前回に紹介した売上総利益には経費からは除外されています。
その様な状態では事業の正確な利益が出ないため、ここでその経費を差し引くことで営業利益を出していきます。

なぜ売上原価と販売管理費を分けるのか


では何故、売上原価と販売管理費をわざわざ分けて計算するのかというと、そうすることで会社の課題が見えやすくなるからです。というのも、これらのコストですが、まず、コストの性質が根本的に違います。
売上原価の構造としては基本的に原材料価格といった仕入れ値が関係してくるため、簡単に削ることは出来ませんし、削るとなるとクオリティに関しても妥協する必要が出てきたりします。
大量買い付けによってコスト削減をした場合、製品クオリティーには問題がないかもしれませんが、業態を薄利多売に変えるといった大幅な変更が必要となります。

一方で販売管理費は、製品品質とは関係のないコストとなるため、ここを削ったところで販売している商品のクオリティーが下がるわけではありません。
例えば、手書きで行っていた経理作業を会計ソフトを使うことで省人化し、結果としてコスト削減をしたところで、顧客が購入する製品には変化がありません。
今まで出張させていたのをリモートに置き換えても事業に悪影響がない場合は置き換えることでコストを削減できますが、これも顧客が最終的に手に入れる商品やサービスのクオリティが根本的に変わるわけではありません。

この様に性質が違うコストを一緒くたにして経費としてしまうと、後から見た際に分かりにくい為、商品原価と販売管理費という2つに分けることで、損益計算書を見るだけで簡単な分析ができるようにします。

利益増減の理由を分析


例えば、管理費は低く抑えられているけれども売上総利益が低くて利益が出ていない場合は、取り扱っている商品の市場が縮小していたりレッドオーシャンになっている可能性が出てきます。
平たくいえば、取扱商品が安売りしないと見向きもされない商品になっているということです。

一方で販売管理費が高くなっている場合ですが、これは社内に問題があるケースが多いです。 社内の業務が効率化出来ておらず、結果として高コスト体質になっている場合は、この部分の改革を進める必要が出てきます。
こういった場合は、販売管理費の中のコストをより詳しく見ていくことで問題を浮き彫りにしていきます。

例えば小売店の場合は実際に店舗を構えると言った方法ではなく、ネットで販売をするといった方法もあります。
ネットの場合は販売員などの人件費を削ることが出来ますし、店舗の開店時間なんてものも存在しませんので、維持管理という点ではコストが低くなります。
一方でネットでは数え切れないほどあるサイトから自社サイトを見つけて貰わないといけないので、宣伝広告費がかかる可能性もあります。

どの様な販売戦略を取るのかで、それぞれのコストがどの様に変化するのかをシュミレーションして販売管理費を縮小させていけば、結果として営業利益の上昇に繋がります。
この分析を更に分かりやすくしようと思うのであれば、自社が行っている事業ごとにコストを分けて記載するという方法もあります。
先程の例でいえば、実店舗の事業とネット事業を別事業として分けて、それぞれの事業ごとに売上やコストを出せば、2つの事業がより比べやすくなります。これはセグメント利益なんて言ったりもします。

分類すればするほど分析しやすい


それぞれの事業の営業利益を比べた結果、実店舗は販売管理費がかかりすぎていて利益が出ておらず、会社の利益の大半をネット事業が稼いでいたなんてことになれば、実店舗の事業の効率化や撤退を考えたほうが良いという決断も出しやすくなります。
これは、前回に説明した売上総利益に関しても同じことがいえます。 会社として作っている商品をカテゴリーごとに分けることが出来るのであれば、それぞれを分けて出す事で、商品ごとの粗利率や売上に対する貢献度がわかったりします。
取扱商品の粗利率や売上や利益に対しての貢献度がわかれば、どの商品に力を入れるべきなのかがわかりやすくなります。

それらが明確になれば、今後の戦略を立てる際にも役立つため、売上やコストは分けて計上するようにします。
少し本題からずれてしまいましたが、もう一度テーマである営業利益に話を戻すと、営業利益は売上総利益から販売管理費を差し引いたものなので、これが本業の利益を表したものとなります。
何故、売上原価と販売管理費を分けるのかというと、事業の状況を分かりやすくするためです。 そしてコストや売上は分ければ分けるほど、会社の状態が詳細にわかるようになっていきます。

分かりやすくなっては行くのですが、細かく分け過ぎると見るのが大変になってくるので、大まかに分けて計算された利益が、売上総利益と営業利益となります。
これで一旦営業利益の話は終わり、次回は今回登場した新たなワードであるセグメント利益について説明していきます。