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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】 第82回【収益性分析】経営資本営業利益率

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目次

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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経営資本営業利益率


前々回に総資本利益率を紹介し、前回はそこから派生してレバレッジの話をしてきましたが、今回からは再び収益性分析に話を戻して話していきます。
今回紹介する分析方法は、経営資本営業利益率です。
この計算式としては、営業利益を経営資本で割ります。 名前のままともいえますね。

この営業資本営業利益率ですが、総資本利益率とはどう違うのかというと、一言で言うなら営業資本営業利益率は本業の利益率と考えることが出来ます。
これまでにも度々いってきましたが、会社というのは会社が持つ資産を投資することで利益を得る組織のことを指します。
貸借対照表でいえば、右側の負債の部にあるお金全額を使って、左側にある資産の部に記載されている資産を購入し、その資産から運用益を得るというのが主な活動です。

この会社が保有している資産ですが、全てが本業に関係があるものかといえば、そんな事はありません。
本業以外に株を購入していたり、海外資産を多く持っていたりということもあるでしょう。 上場企業のような資金力のある企業であれば特にそうです。
こうした資産による運用益や簿価と時価の差額である評価損益というのは、正直に言うと本業の儲けには関係がありません。

それを除外して、本業に関係のある資産のみでリターンを計算しようというのが、営業資本営業利益率です。
こういった考えで作られた指標なので、リターンである利益には本業の儲けをしめす営業利益が使われます。
営業利益というのは、売上から売上原価と販売管理費を差し引いたものなので、本業以外の損益である営業外損益は含まれてはいません。

経営資本とは


この利益を経営資本で割ることで計算していきます。
では経営資本とは何なのかというと、会社が購入した資産の内、本業で使用している資産だけを取り出して合計したものです。
一般的には、総資本から『投資その他の資産』と『建設仮勘定』と『繰延資産』を差し引いたものと言われています。

初めて聞く用語も多いと思うので、一つ一つ見ていきましょう。
まず『投資その他の資産』というのは、分かりやすくいえば短期売買目的ではない株式や債権などの金融資産のことです。
会社というのは、余っている金で株式を購入したり、関連会社に貸付を行ったりしています。 それらの資産は配当金や受け取り金利といった形で収益を生み出しますが、それは本業とは直接関係がないので、除外して考えます。

次に『建設仮勘定』ですが、これはまだ完成していない建物に対する費用と考えれば分かりやすいです。
建物や設備というものを発注して作って貰う場合、発注した次の日に納品されるなんてことはありません。 大規模な建設であればなおさらで、発注してから完成までに数ヶ月、長ければ年単位でかかるなんてこともあります。
この様な建築物を発注する場合、完成後に一括でお金を払えば良いのかといえば、そういうケースもあるでしょうけれども、実際には完成前にお金を支払うという場合が結構あります。

というのも、建設というのはサービス業ではなく製造業なので、業者側としては、発注された場合はまず資材を買い揃える必要が出てきます。
これは建設会社が建設を引き受けた場合、最初に多額の資材購入費が発生するということです。
しかし建築物というのは土地に据えられたものなので、発注者が完成後に料金支払いを行わなかったとしても、建築した家部分だけを他の人に売却するなんてことも出来ません。

こうして考えると建築会社からしてみれば、建設を引き受けるというのは相当なリスクとなります。そのため、建設前に金を支払ってもらうか、全額でなかったとしてもその1部だけでも前金として貰わなければ、怖くて注文を引き受けることが出来ません。
この様な事情から、建物などの場合は完成前にお金を支払うというのは結構一般的だったりします。 これは、建設会社が自分たちの営業所を作る場合でも同じです。 まず建設関連費用が発生し、後から建物が完成します。
では、こういった建物が完成する前に支払うお金というのは、会計的にはどの様に処理すればよいのでしょうか。

建設仮勘定


前に減価償却のことを説明した回でも話しましたが、建物というのは一括で経費計上することは出来ません。 その建物を30年間使う目的で建てるのであれば、建設費は30分割して毎年計上していきます。
これは当然ですが、建設費にも適応されます。 その為、建設費の1部を前払いしたからと行って、その前払いした金額を経費計上することは出来ません。
もし、建物が完成してからお金を支払えるのであれば、現金という資産を建物という固定資産に置き換えればよいだけです。 しかし今回のケースの場合は、まだ建物が完成していないため、当然、建物という固定資産を資産に加えることが出来ません。

何故なら、建物はまだ完成しておらず、この世に誕生していないからです。 にも関わらず、お金だけは支払っているというのが今回の状況です。
この様な場合に登場するのが、建設仮勘定という勘定科目です。 この建設仮勘定は、建物購入費としてお金を支払っているにも関わらず、実際には建物がない状態の場合に使える勘定科目で、固定資産に属します。
仮に建物代金を3回に分けて支払う場合、お金を支払う度に現金を建設仮勘定に振り替えていくと最後のお金を支払った際に、この勘定科目の金額が建物の購入費と同じになります。

お金を支払った後に完成後の建物を納品してもらった場合、ここではじめて建物という固定資産が手に入りますので、建設仮勘定として計上した金額を建物に全額振り替えます。
その後は、建物代金を普通に減価償却していくだけとなります。 つまり建設仮勘定というのは、建物建設費のためにお金を支払ったけれども建物自体はまだ納品されていない状態を表す勘定科目となります。
話を経営資本営業利益率に戻すと、この建設仮勘定と言うのは本業の儲けには何も寄与していません。 何故なら、まだ完成していない建物なわけですから。

建設しているのが本業にかかわる工場だとしても、その工場が利益に寄与するのは工場が完成して稼働してからとなるので、建設が完了していない工場は本業の利益には何の関係もありません。
その為、この資産は営業資本には組み入れません。

繰延資産とは


最後に『繰延資産』ですが、これは簡単に言えば、会社設立をする際などに出費した経費などの事です。
何故、会社設立にかかわる経費が資産として計上されているのかというと、国による一種の救済処置のようなものだと考えると分かりやすいかもしれません。
多くの場合、会社というのは設立と同時に大幅に売上が立って利益が出るなんてことはありません。 徐々に売上と利益が伸びていくことが多いです。

となると、会社の初年度というのは売上が少ないことが予測されます。 にも関わらず、初年度というのは売上に直接関わらない経費が結構発生します。
会社設立に関する経費もそれにあたります。 そういったものを一括で経費扱いしてしまうと、売上がない中で経費だけが増えてしまうことになります。
仮にこの設立に関する費用を加えて計算すると初年度の決算が赤字になってしまう場合、会社にとっては損失となってしまいます。

というのも、税金というのは利益に税率をかけて計算するわけですから、利益がゼロになった時点で税金は最低レベルに下がります。 ゼロで最低レベルに下がるため、マイナスになった所で意味はありません。
そして翌年以降になると、その設立費がかからなくなるわけですから、黒字が出てしまう可能性があります。 黒字が出れば当然、それに対する税金が発生してしまいます。
しかし、その会社設立費が繰延資産という形で資産扱いされていればどうでしょうか。 設立費が初年度に資産扱いされなければ、この設立費によって会社の利益がマイナスになっている場合は、マイナスが回避できる可能性があります。

『マイナスが回避できてしまうと、税金が発生するのでは?』と思われると思いますが、この設立費は繰延資産に入り、数年かけて毎年減価償却していきます。
つまりこの例の場合、初年度の赤字が回避できてしまうために税金が増えてしまうわけですが、その代わり経費として数年に渡って計上できるため、その数年トータルで見ると税金が安くなることになります。
分かりやすい具体例で見ていくと、会社社設立費が100万円だとして、それを除いて考えると、毎年20万円の利益が5年続くとしましょう。

もし、会社社設立費を初年度に一括で経費にしてしまうと、初年度は-80万円となり、よく年以降は毎年20万円の利益が出ることになります。
しかし会社社設立費をいったん繰延資産として計上し、5年かけて減価償却する場合、減価償却費は20万円となりそれを毎年経費計上していくため、この例でいえば5年間の利益をゼロにすることが出来ます。
トータルで考えてどちらの方が支払い税額が低いのかといえば、後者の方が税金は低くなりますよね。 これが繰延資産の考え方です。

この繰延資産ですが、既に支払ってしまった経費であるため、実際には資産の体をなしていません。 その為、経営資本からは差し引くことになります。

経営資本利益率


結果として経営資本は、総資産から『投資その他の資産』と『建設仮勘定』と『繰延資産』を差し引いたものとなります。
もし自社について経営分析するといった場合であれば、ここからさらに経営には直接関係のない資産を差し引いていくことで、精度の高い指標を出すことが出来るようになります。

この経営資本利益率ですが、これを出すことによって本業でどれぐらい儲けているのかが明らかになります。
例えば会社によっては、本業で儲けた利益を全額株式投資で運用しているなんて会社があったりします。
そういった会社の場合、本業は赤字なのに好景気で株のほうが全体的に値上がりすることで、持ち株の評価益によって黒字になっているケースなどがあったりします。

この場合、この会社は本業では儲かっていないわけですから、景気悪化によって株価が値下がりを始めれば、一気に赤字が拡大してしまう可能性も多々あります。
しかしこの黒字赤字というのは、本業に関係がなく株式市場の動向に左右されてしまっているため、あまりあてにはなりません。
前々回に紹介した総資本利益率では、そのあてにならない数字も含めて計算することになってしまうため、それを除いた数字だけで計算していこうというのが、この経営資本営業利益率です。

この指標は本業以外の要素を除外しているため、自社と同業他社を比べたり、自社の本業の成長の推移を確かめる際にも役立ちます。
ということで経営資本営業利益率に付いての話はここまでにして、次は、自己資本当期純利益率について勉強していきます。