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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】 第83回【収益性分析】自己資本当期純利益率

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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自己資本当期純利益


今回も収益性分析について勉強していきます。今回のテーマは自己資本当期純利益率です。

前回に紹介した営業資本営業利益率もそうだったのですが、自己資本当期純利益率についても名前がそのまま計算式になったような指標となっています。計算式としては、当期純利益自己資本で割って計算します。
この指標は株式投資などでもよく使われていて、ROEと呼ばれたりもします。
まず当期純利益ですが、その会社がその年に行ったすべての要素を含めて考えた利益となります。

つまり、会社の日常的に発生する損益を計算した経常利益に、災害や減損といった突発的な要素含めて最終的に出される会社の利益ということです。
これを会社の自己資本で割って出します。 自己資本で割るということは、ここで出てくる数字はレバレッジがかかった数字ということになります。
つまり、自己資金が少なく借金が多い状態で多額の利益を出せれば、ROEは高い数字として出ます。

先程、このROEは株式投資などでも使われるという話をしましたが、一時的な株主でしかない投機家にとっては、自分が投資したお金がその年にどれだけの利益を稼ぎ出したのかというのが重要となってくるため、この様な数値を出すのでしょう。
この指標は前回に紹介した営業資本営業利益率とは違い、営業外利益や突発的に発生するような損益まで含んでいるため、それぞれの年の特殊要因によって大きく変動します。
例えば、その会社が持っていた事業を他社に売却して大きく利益を出したといった感じの収益もこの指標には反映されるため、指標としての連続性は若干薄いと思われます。

ですが先程も言いましたが、売買目的の株主というのは基本的にはそれほど長期間株を持つことはありませんので、連続性が若干薄かったとしても問題はないのでしょう。

指標としてのROE


では株式投資をする場合、この指標を使って利回りが高い株を探せば良いのかというと、そうとも言い切れません。
というのも株式市場というのは現在の企業の動向によって株価が動くわけではなく、未来の動向を見て動くからです。

株式市場は経済の先行指標と呼ばれたりもしますが、一般的には半年先を考慮に入れながら動いていると言われています。
しかしこのROEは既に出ている決算の数字を使っているため、過去の数字となります。
その為、単純に現在この数値が高いからといってその銘柄に飛びつくといった行為は、あまり意味がないことになります。

何故なら、その株価というのは高いROEを踏まえた上で、そこまでしか買われていない銘柄だと判断されるからです。
その様に判断される理由はたくさんありますが、簡単に思いつく理由としては2つほどあります。
1つは、計算の元になっている当期純利益は突破的事情による一過性のもので長続きはしないというのと、来期以降に減益になってしまう可能性を織り込んだ価格になっているという理由です。

これらの理由はROEという指標だけ見ていても意味は無いため、これらの理由を深く探ろうと思うのであれば、決算書のさらなる読み込みや経済を見通す目が必要になってきたりします。

ROEとレバレッジ


この決算書のさらなる読み込みですが、投資家だけが行えば良いのかというとそうではなく、会社の経営者も行わなければなりません。
何故なら先程も言いましたが、ROEという指標はレバレッジがかかって出てくる数字だからです。

会社が積極的に事業拡大を行い、それと共に借入金を増やしてそれを投資して利益を得るという循環を作っていくと、会社のバランスシートはどんどん拡大していきます。
バランスシートが拡大するとは、借金で資産を購入するために、バランスシートの総資産額がどんどん大きくなっていくということです。
その一方で企業の自己資本は毎年黒字が出た分しか増加しませんから、黒字幅よりも借金額の増加ペースが大きい場合、どんどん総資産に対する自己資本の割合は低くなっていきます。

自己資本の割合が低くなればどうなるのかというと、レバレッジが大きくなります。
前にレバレッジという用語を取り上げた回でも説明しましたが、レバレッジが大きくなればそれだけ、ハイリスク・ハイリターンとなります。
つまり利益が出せる場合は、僅かな自己資本でもレバレッジの倍数分だけ利益が拡大するということになります。

これは、仮に借入金利が2%で事業を通して得られる利益が7%の場合、差額の5%が利益となるわけですが、これがそのまま会社の利益率になるわけではなく、これにレバレッジの倍率をかけたものが会社の利益になるとういうことです。
借入金利よりも高い利回りが得られている限りは、借金が増えてレバレッジの倍率が増えれば、それだけ会社の利益の伸びは大きくなることになります。
先程の例のように5%の利益を得られるとした場合、仮にレバレッジ倍率が4倍だった場合は20%となり、レバレッジを10倍に増やせば自己資本に対しては50%の利益が出ることになります。

借金とリスク


この様に、事業を通して借入金利以上の利益を得られるのであれば、借金を増やして投資をすればするほどROEは高くなってしまうので、ROEだけに注視するとリスクが高くなりがちです。
というのも、日本のように低金利で安定している環境で、うまく事業運営が出来ている間は問題が有りませんが、金利が上昇する状況になると、事態が一気に悪化してしまう可能性があるからです。
何故なら、高いROEが得られるのは事業を通して得た利益率と借入金利との差が開いている時だけだからです。

この差が縮小していくと、実際に得られる利益がどんどん減っていきます。具体的に見て見ると、事業を通して得られる利益率が10%の場合、借入金利が2%であれば、その差である8%の利益がでます。
この事業にレバレッジ5倍で投資していれば、自己資本に対する利益率は40%となりますが、利益率がそのままなのに金利の方だけが5%まで上昇してしまったら、ROEは25%にまで落ち込みます。
この場合はまだ利益が出ているから良いですが、金利が上昇すると更に利益率が悪化する場合が出てきます。 何故かというと、金利が高くなると景気が悪化するリスクが高まってしまうからです。

金利の上昇が何故、景気に影響を与えるのかというのは、これまでのコンテンツを聞かれていた方は既にお分かりだと思いますが、多くの企業が事業に投資をする際に借り入れを行っているからです。
事業の立ち上げや運営に借金を利用していて、この借金には金利がついているわけですが、金利の上昇によってその支払利息が増えてしまいます。
これは、先程説明した流れと同じになりますが、支払い金利の増加は利益圧迫につながるため、企業業績に対して下押し圧力がかかります。

金利化の経済


企業はその状況を打破するために、資金の使い道として借金の返済を優先するようになるため、新規事業の立ち上げや投資が減ってしまいます。
つまり社会全体で見て消費活動が停滞してしまうわけです。
消費が落ち込むというのは言い方を変えれば需要が減少するわけですから、企業の売上にも下押し圧力がかかります。

企業の売上は収益の一番重要な部分ですので、ここが落ち込むと利益にダイレクトに悪影響が出てしまいます。これにより、企業は更なるコストカットを行うことで消費を減らす事になります。
この様な動きは企業だけにとどまりません。 労働者が家を購入する場合は多くの場合、借金をして家を購入します。
その借金の金利も、金利上昇の影響によって上がります。 住宅ローン金利が上昇すれば、新たに家を買おうとする人が減少しますから、当然需要は落ち込んでしまいます

また、既にローンを組んでいる人は支払い金利の増加で可処分所得が減る場合もあるでしょうから、そうなれば、節約モードに入ってしまいます。
こうした一連の流れが起こると経済全体で不景気に陥ってしまうため、企業業績が落ち込みやすくなります。
企業業績が落ち込むということは、事業を通して得られる利益が減ってしまうということなので、これは事業の収益率の低下を意味します。

今回取り扱っているテーマでいえば、利益が減少するために自己資本当期純利益率が減少してしまうわけです。
この減少スピードですが、レバレッジがかかっていればその倍率分だけ減少スピードも上昇してしまいます。
これが、借金を増やしすぎてはいけない理由です。

繰り返しになりますが、借金の利率よりも事業収益のほうが上回っているのであれば問題は有りませんが、仮に下回ってしまえば、レバレッジがかかった分だけ赤字幅が増えてしまいます。
具体例を出すと、借り入れ利率が5%で事業収益が2%にまで下がってしまった場合、この事業は投資金額に対して3%の赤字となってしまいます。
これにレバレッジが5倍かかっていたとすれば、自己資本に対する赤字額は15%にまで拡大してしまいます。

複数の指標を見る


この様に、ROEを追求し続けて借金を増やしすぎると、経済環境が変わった際に大きなリスクを抱えることになってしまうことになります。
これを防ぐためにはどうすれば良いのかというのは、過去に別の指標を取り扱った際にも繰り返し言ってきたことですが、別の指標で借金の状況と自己資本の状況を監視しておくことでしょう。
今回の自己資本当期純利益に限らず、1つの指標だけを見ていても正確な判断は出来ません。

見る指標は増やせば増やすほど良いといった単純なものでは有りませんが、1つだけ見ていて良いといったものでも有りません。
大抵は複数の異なる視点から企業を分析できるように、タイプの違った指標を組み合わせて使用します。
例えば、今回問題として取り上げている借金の額と自己資本との関係性を見るのであれば、負債比率や自己資本比率といったものを合わせて見ることで、借金がどの様なレベルにあるのかをチェックすることが出来ます。

また、今回例として上げたように、会社の内部要因だけを見ていても駄目で、地域や国、世界といった外部環境も含めて見ていく必要もあります。
ということで今回の自己資本当期純利益率の話は終わります。 次回は、今回も少し話に出てきた金利に焦点を当てて話していきたいと思います