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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第79回【損益計算書】まとめ回

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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損益計算書とは


第73回から前回までで損益計算書の項目についてそれぞれ説明してきたのですが、結構長くなってきたので、今回はそれらをまとめて説明する回をやっていきます。
まず損益計算書というのは何かというと、会社の収益面での現状を正しく知るためのものと考えてもらえれば良いです。
会社というのは利益を得るために作られて活動するものですが、その活動によって利益が出れば、その利益に応じて税金を支払う必要があります。

その利益を正しく把握するために必要なのが、損益計算書となります。
会社を設立して税金の申告をする場合は、会社は貸借対照表損益計算書を作って提出しなければならないので、殆どの会社がこれを制作していることになります。

この損益計算書ですが、毎年その年の損益計算書を制作するため、出てくる利益は1年間に限定されたものとなります。
翌年度になったタイミングで全ての数字はリセットされ、またゼロから作っていくことになります。
『単年度だけの収支では、会社の全体の状態はわからないのでは?』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、会社がこれまでに行こなってきた過去の行動というのは貸借対照表の方に反映されるので、問題はありません。

流れとしては、損益計算書で今年の利益を算出して、その利益を貸借対照表の純資産の項目に加えるといった感じです。
一部のマスコミなどでは、この純資産に加える利益を内部留保として、『企業は内部留保を毎年のように積み上げていてけしからん!』なんてよくわからないことを言ったりしますが、企業は利益を生み出すために設立されているので、利益を出すのは当然です。
利益を全く出さない会社に投資する人間なんていないので、そういった会社は成長することが出来ずに消えていきます。

内部留保


このコンテンツをここまでお聞きになっている方は理解しておられる方が多いと思いますが…
仮に1000万円の機械を10年使う目的で購入して、その機械を使って商品を製造販売して500万円の売上を得たとして、機械の償却費を除いた原価が200万円で販売管理費が100万円の場合で考えてみると…
500万円の売上から原価と販売管理費の合計である300万円を支払うと残りが200万円、ここから機械の償却費100万を差し引くと、利益は100万円となります。

100万円の利益が出ているため、この会社は内部留保として100万円計上されることになりますが、では、この会社が現金を溜め込んでいるのかというと、お金は当然ありません。
何故なら、1000万円の機械を購入しているからです。この会社の利益が出ているようにみえるのは、1000万円の機械購入費の内900万円は資産として扱われているからです。
その為、会社のお金とすれば実質マイナスであるにも関わらず、会社の利益で見れば100万円出ていることになり、この会社は内部留保を溜め込んでいることになってしまいます。

これを否定されるのであれば、会社経営なんて出来なくなってしまいます。 こういった誤解をしてしまわないようにするためにも、会計の知識は必要になってきます。

収益を分ける


話がそれてしまったので損益計算書の話をしていくと、先程出した例にも出てくるとおり、会社のコストには様々なものが存在します。
これは収益にも当てはまり、会社には本業以外にも様々な収益を上げる方法があります。

これらを全て一緒くたにし、収益の合計からコストの合計を差し引いても会社の利益は出るのですが、そのようにして計算してしまうと、利益の構造がよく分からなくなってしまいます。
そうすると、社内でのコスト管理もできなくなりますし、社外の人が見ても利益構造がわからなくなります。
ここで『社外の人が見るのか?』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、上場企業などは財務諸表を公表する義務がありますし、個人事業主でも銀行から借り入れを行う場合は、これらを銀行に提出する必要が出てきます。

この際、先程行ったように全ての収益とコストが一緒くたにされて計算されていれば、その会社は本業で儲けが出ているのかどうかも分かりませんから、銀行側からすれば融資できるのかどうかの判断ができなくなります。
そういった事を避けるためにも、会社の粗利がどれぐらいなのか、本業の儲けはどれぐらいなのか、そこから借入金利などを差し引くとどれぐらいの利益が残っているのかというのを分けて出す必要があります。
この作業を行っていくのが、損益計算書となります。

売上総利益


簡単にどの様な構造になっているのかを見ていくと、まず、本業の売上を足し合わせた数字を売上高として書き出します。
そこから売上原価を差し引いて、売上総利益を出します。 この売上総利益は粗利と呼ばれることもあります。

売上原価というのは、その企業が販売している物やサービスを用意するためにかかるコストです。
売店の場合は商品の仕入れコストになりますし、製造業の場合は製造コストがこれにあたります。 この製造コストですが、ネットでは原材料のみを取り上げて原価率としているケースがありますが、そんな事はありません。
原材料を用意しただけで物が作れるわけはないため、製造する職人の人件費や機械の減価償却費、それを動かすための水道光熱費など全てを含めた金額となります。

営業利益


この売上総利益から、販売や管理に関するコストを差し引いたものが、営業利益となります。 この営業利益が、その会社の本業の利益となります。
会社に複数の事業や製品がある場合は、その事業や製品ごとに売上総利益や営業利益を出すことによって、更に詳しい企業分析が可能となります。
例えばソニーなどは、家電事業やゲーム事業、保険といった様々な事業を行っていますが、これらの事業を全てひっくるめて営業利益を出しても良いのですが、それではどの事業が会社の利益に貢献しているのかが分かりにくいです。

その状態では適切な経営判断も出来ないでしょうし、ソニーのような上場企業の場合は一般人でも投資をすることが可能ですが、その会社が投資に適しているかどうかも判断しづらくなります。
そういった状態を解消するためにも、事業ごとや製品ごとの営業利益を出すことが求められたりもします。 こういったものをセグメント利益と呼んだりもします。

経常利益


ここまでが会社の本業の利益を示すものなのですが、会社には営業外の損益が日常的に発生する場合があります。
お金を借りている場合は金利を支払う必要がありますし、逆に預け入れている場合は金利がもらえたりもしますし、株を購入しても配当金がもらえたりもします。
株でいえば、株そのものが日々価格が上下していたりもしますので、短期で売買する予定の株式に関しては、株の購入費用を時価評価に変えた際に差額が発生したりもします。

こういった、常に発生する自社の営業外の損益を加えて経常利益を計算します。 この経常利益は音声媒体ではケイツネ利益と呼ばれたりもします。
この営業外収益については先程もいったように様々なものがあるのですが、大半の企業にとっては支払い金利のことだと捉えてもらっても良いと思います。
企業の本文というのは、会社が持つ貸借対照表上の負債を使って利益を上げて資産を増やしていくことなので、今のように低金利の状態では借り入れをして事業に投資をするところが大半です。

その為、多くの会社では営業外損益の大半は借入金利で占められることになります。
特にこのコンテンツが対象としている中小企業の場合では、持分法適応の会社を持っているなんてことにも少ないでしょうから、支払い金利のことだと思ってもらっても良いと思います。
その為、営業利益がそれなりに出ているのに経常利益が少ない場合は、金利負担が大きすぎるため、借金の返済を急いだほうが良いです。

というのも、金利支払いが多い状態で金利が上がってしまえば、会社の利益が吹っ飛ぶだけでなく、赤字になってしまう可能性が出てくるからです。
日本では低金利が定着していますが、本来金利というのは経済状態によって上下します。 その金利支払いによって利益の相当部分が圧迫されているのであれば、身の丈に合わない借金をしている可能性が高いため、早期の返済が求められます。

金利の影響


少し話はずれますが、本来、中央銀行は、この様な企業の動きを期待して金利を上げたり下げたりします。
例えば、今の日本のように中央銀行ゼロ金利政策を取っているため2%台の金利で借り入れができるとした場合、会社はその金を借りて5%稼げる事業を行ったとすると、借りた金に対して3%の利益が出ます。
その為、低金利政策家では借金を前提とした投資などが積極的に行われやすくなります。 しかし借入金利が5%にまで上がってしまえば、その会社の利益はなくなってしまうため、事業をしている意味がなくなります。

そうなれば、会社は利益率を上げるために付加価値をつけたりコストカットをせざるをえない状況に追い込まれますが、それでも利益率が上がらなければ、その事業からは早期で撤退すべきだと判断する必要が出てきます。
金利の引き上げは加熱しすぎた経済を冷やすために行われることが殆どですが、このようにして各会社が投資を控えて返済にお金を回しだすと、経済に冷水をかけることにつながるため、結果として加熱しすぎていた景気は落ち着きます。
このようなことを期待して中央銀行金利を上げ下げするわけですが、日本では景気が冷え切ったままの状態が続いているため、金利政策としてはゼロ金利を維持するというのが続いていたりします

ただ、永遠に続くわけでもないでしょうから、金利が上がり始めたタイミングでは、経常利益の推移に注意する必要が出てきます。
こういった際に判断を早く正確に行おうとする場合、先程も言ったようにセグメントごとに分けて計算して利益を出していると便利です。
事業のための借り入れも分類することが出来るのであれば、その事業に関する支払い金利も出るため、より見やすくなります。

税金等調整前収益


こうして出された経常利益から、特別損失や特別利益を加えたものが、税金等調整前収益となります。
特別損失や特別利益というのは、めったに起こらないようなことが起きた際に発生する損益のことです。
分かりやすいのが災害等によって被害が出た場合の損失などです。 災害は毎年定期的に起こるものではありませんから、そういったものを経常利益以前の利益などに含めてしまうと、現状把握が正しく出来ません。

この他には例えば、製品のブームが10年間は続くと思って機械を購入したけれども2年で終了し、その後全く売れなくなった場合、その機械を減損処理して一括で経費計上するとか、長年売れ残った在庫を処分して損失を出すといった際にも使います。
因みに、この特別損失を使えば企業のV字回復を簡単に演出することが出来ます。
前任の社長時代に不良在庫や機械の減損処理などを大量に行って大幅赤字を出してしまえば、翌年以降は経費や在庫が大幅に圧縮された状態で始まりますので、その反動で大幅に利益が出ます。

このV字回復については社長の手腕などではなく会計処理によって実現しているだけなので、そういった事を見破ろうとする際には、この特別損失などの内訳を確認すると良かったりします。
そうして出されたのが税金等調整前収益となり、そこから税金を差し引くと税引後利益が出ます。
これが、損益計算書の全体的な流れとなります。 次からは、収益性分析について話していきます。