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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第73回【損益計算書】売上総利益

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目次

注意

この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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損益計算書


今回からは、企業の収益について見ていきます。 今回のテーマは、会社の利益の一つである売上総利益です。
会社の利益と聞くと、これまでは『売上からコストを引いたもの』と説明してきましたが、実はこの収益には複数の種類があります。
前回紹介したインタレスト・カバレッジ・レシオで出てきた営業利益というのもそうですし、今回紹介する売上総利益も実はその一つだったりします。

これらの利益の理解を深めるために、各利益をまとめた損益計算書の説明からしていきます。

これまでで、貸借対照表で会社の資産や負債などを細かく属性ごとに分けているのは、会社の状態をより分かりやすくするためであったり財務分析をするためだと説明してきましたが、それは収益を表す損益計算書についても当てはまります。
会社のコストや収益をそれぞれの属性ごとに勘定科目として分類し、それを更にグループ分けすることで、収益やコストの種類を分類します。
そして、売上にそれぞれのコストを差し引いたり収益を足すことで、複数の利益を計算していきます。

この様な説明をしても正直なところ分かりにくいと思うので、もう少し具体的に見ていきましょう。

会社の収益とは


例えば収益ですが、会社の収益は何も事業の売上だけではありません。 例えば、会社が今使っていない現金を定期預金として預けていれば、銀行からは利息がもらえます。
今はゼロ金利政策中なので金利は少ないということで、その代わりとして株を買えば、配当金がもらえたりもします。

使っていない土地を誰かに貸し出せば家賃が入ってきますし、その土地を売却してもお金が入ってきます。
この様に、会社は事業を行って得られる売上以外にも、様々なお金を得る機会というのがあります。 もし仮に、この様なお金を全て売上として計上してしまえば、事業の正しい利益というものが出せなくなってしまいます。
例えば、商品を1000万で仕入れて2000万円で売ったけれども人件費が1500万かかっている事業というのは、500万円の赤字となります。

しかし、随分前にタダ同然で買ったまま使っていない土地を売却して3000万円手に入れたとして、それを売上に入れてしまえば、事業としては2500万円の黒字となってしまいます。
ですが土地というのは1回売ってしまえば、それをもう一度売ることは出来ません。 こんな臨時収入を事業の売上としてしまえば、事業の利益を正しく把握する事なんてできなくなってしまいます。

その為、収益はそれぞれの属性ごとに分けて計上することになっています。

これは、コストに関しても同じことがいえます。 資産運用の為に株や土地を購入したのを仕入れで計上してしまえばおかしな事になってしまいます。
この様な事を避ける為に利益やコストをそれぞれのカテゴリーごとに分け、それらを見やすく整理したものが損益計算書だったりします。

原価とは


では具体的に見ていきましょう。 会社というのは事業を行って利益を稼ぎ出していくものなので、基本となるのは事業の売上です。
当然ですが、この売上には銀行の預け入れ金利保有株式の配当金、固定資産の売却で得た金などは含みません。 事業を行うことで得た純粋な売上の合計金額です。
事業外で得たお金を計算から省くことで、純粋な事業で得られる利益が計算できるようになります。

このようにして計算された売上から、原価を引いたものが事業を営む上で得られた利益ということになるのですが、この原価というのは3つに分かれます。
1つ目が製造にかかわる原価で、2つ目が販売に関するコストで、3つ目が管理に関わるコストです。これらを全て足し合わせたものが総原価と呼ばれるものになります。

売上総利益


損益計算書ではまず最初に、製造にかかわる原価である売上原価を差し引いて、今回のテーマである売上総利益を出します。
この売上総利益は、粗利と呼ばれる場合もあります。

この売上原価は、事業で販売している商品を用意するためのコストです。 これは、小売店や卸売業で考えると分かりやすいと思います。
売店や卸売業などは自分たちで商品を作るわけではなく、既に出来上がっている商品を購入してきて販売していくケースが多いです。
そのため物を仕入れて販売する業種の場合は、仕入れ値がそのまま原価になるケースが多いです。 この為、売上から仕入れの値段を引いたものが粗利と考えると分かりやすいと思います。

ただ、これが製造業などになってくると変わってきます。 何故なら、原材料を仕入れるだけで『商品が勝手に作られる』なんてことにはならないからです。
具体的に考えてみると分かりやすいと思いますが、例えばケーキ屋を営む場合、小麦粉や卵や牛乳を購入しただけで、ゲームのようにそれらが勝手に合成されてケーキが生まれるなんてことにはなりませんよね。
品質の高いケーキを生み出すためには、それなりの技術を持った職人が原材料を使ってケーキを制作する必要があります。

そして当然ですが、そのケーキ職人を雇うためには人件費を支払う必要があります。このケーキ職人を雇うための人件費に関しては、商品の製造にかかわる人件費であるため、当然、原価に含められなければなりません。
以前ネットで『綿菓子の原価は3%で、原価10円で300円の商品が作れてボロ儲け!』なんてのが話題になりましたが、これは綿菓子とそれを巻きつけるための割り箸の料金しか含んでいないため、厳密には原価ではありません。
実際の原価には、それをつくる人の人件費も含みます。

綿菓子を作る機械をリースしている場合、当然そのリース費用も含まれますし、それを動かすための電気代も経費に含まれます。
キャラクターものの袋は著作権なども絡んできますから、ビニール袋代と印刷代だけで仕入れることなんて出来ませんので、それらも含める必要があります。

原価の内訳


これらの経費を大きくカテゴリー分けをすると、『材料費』『労務費』『経費』に分かれ、それぞれが直接と間接に分かれるので、合計で6個に分かれます。 

こうして考えると、先程の『綿菓子の原価は3%』というのは、『材料費』の中のごく一部だけを原価として見ていることがわかります。
これは冷静に考えればわかりますが、本当に利益率97%の商売が有って、その商品が飛ぶように売れるのであれば、みんなが綿菓子屋を始めています。
しかし実際に綿菓子屋を始める人がそれほどいないということは、そこまで利益率は高くないということです。

話を戻すと、製造原価は『直接材料費』『間接材料費』『直接労務費』『間接労務費』『直接経費』『間接経費』に分かれます。
直接と間接の違いとしては、それぞれの経費がどの製品に使われているのかが明確にわかっている場合は直接的なものとなり、明確にわからないものは間接的なものとなります。
例えば工場に事務作業も出来る部屋が併設されていて、電気メーターが一つの場合、どれぐらいの電気を工場部分に使って、どれぐらいの電気を事務作業で使っているのかはハッキリとは分かりにくいので、こういったものは間接的なものとなります。

この様に項目分けをして、それぞれの経費について計算して合算して製造原価を出していくのですが、その方法を細かく言葉で説明していくのは難しいですし理解するのも難しいと思うので、製造に関わる経費が製造原価だと理解してもらえば良いと思います。
余程大きな会社で大量生産していない限りは、この理解で大丈夫だと思います。
理解しやすいように具体例を出すと、製造にかかわる仕入れ代金と職人の人件費、製造機械の年間の減価償却費や修繕費、一部作業を外注していればその外注費、製造にかかわる電気代・ガス代などの経費の合計金額が製造原価となります。

製品製造までの流れ


これらの製造原価ですが、最終的には商品へと変換されます。
もう少し詳しく言うと、仕入れや減価償却費などの個別の勘定科目が仕掛品という半製品、つまりは作りかけの状態の勘定科目に変換され、その仕掛け品が完成すると製品や商品という勘定科目に変換されます。
1日で材料が製品になるような商売であれば仕掛け品は必要ありませんが、作るのにそれなりの期間がかかるような製品の場合は一旦コストを仕掛品という勘定科目に変えて、完成した分だけを製品や商品という勘定科目に置き換えます。

簿記的には、前期の仕掛品の残と、今期に購入した材料や人件費、水道光熱費減価償却費などを足し合わせて、そこから今期の仕掛品残、つまりは未完成品を差し引いた金額が完成した商品の金額となります
つまり、製造に関するコストというのは、仕掛品という勘定科目を経過して、商品という勘定科目に移行するわけです。 因みにこの商品という勘定科目は棚卸資産というカテゴリーに入り、貸借対照表流動資産に記載されることになります。

話を戻してますと、この商品という勘定科目を使って今期の売上原価を出していきます。計算方法としては、前期から持ち越した商品を今期に製造した商品に足して、そこから今期の売れ残りである商品残を差し引きます。
何故、こんな事をするのかというと、1年間の売上原価を正確に出すためです。 実際に事業をしている方はわかると思いますが、作った商品が1年できれいに売り切れるなんてことはありえません。

作るのに数日や数ヶ月かかるようなものであれば、その製造期間分の在庫を持っておかないと、販売機会を逃してしまうことにもつながってしまいます。
その為、ほとんどの会社では在庫を持ちます。そして販売する際にはその在庫から販売していくため、売上の順番としては前年の在庫から売れて売上になり、その後、今期に製造したものが売れ始め、今期製造分の1部が来期以降の在庫として残る事になります。
この様な考え方を先入先出法というのですが、この考えを採用した場合、今期の売上原価は去年製造分の在庫と今期製造分の製品の合計金額から、今期製造分の売れ残りである在庫を差し引いたものとなります。

話を整理すると、企業が商品を製造するために使った出費は全て、一旦仕掛品という勘定科目に入ります。
そのコストの合計に前年度の仕掛品残を足し合わせた合計金額から、今期の仕掛品残、つまりは未完成品を差し引いたものが、今期に製造された商品の金額となります。
その商品の金額に前期の商品残を足し合わせ、そこから今期の売れ残りを差し引いたものが、今期に販売した売上原価となります。

その売上原価を売上から差し引いたものが、売上総利益となります。 言葉での説明では少し分かりにくいと思いますが、youtube版では表もつけて説明していますので、わかりにくかった方はそちらも見てみてください。
次回は、営業利益について考えていきます。