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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第72回【財務・経済】インタレスト・カバレッジ・レシオ

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目次

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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純資産とは


今回も、長期の財務分析について考えていきます。今回紹介するのは、インタレスト・カバレッジ・レシオで、これは利益と支払い金利の関係性を表す指標です。
これを紹介する前にまず前回の復習からしていくと、前回に紹介したのは、負債比率と自己資本比率でした。 これらの指標を簡単に説明すると、負債の中で返済不要の自己資本がどれぐらいの割合を占めているのかというのを見ていく指標でした。
負債というのは大きく分けると2つに分かれます。1つが返済が必要な銀行借入や社債などです。 そしてもう一つが、返済が不要な純資産です。

この純資産は、株主の持ち分とされる部分で、会社が利益を出せばこの純資産が増え、赤字が出れば純資産が減っていくという性質のものです。
株式というのは、この部分の所有権を分割して売り出したものだと考えればよいです。 ある会社の株式を100%所有するということは、その会社の所有者になるということを意味します。
その会社の所有者になるということは、資産も負債もひっくるめて、株を所有している人のものということです。

純資産というのは、資産から借り入金を差し引いた差額なので、会社全てが株主のものということは、純資産が株主の持ち分と言い変えることが出来ます。
例えば、会社が持つ資産を全て売却して現金にして、その金で全ての借入金を返済したとした場合、理論的には純資産と同じ金額の現金が残ることになります。
実際には、会社が持つ固定資産が簿価で売れるかどうかは分かりませんので、固定資産の簿価と実売価格との間に大きな差がある場合は、この純資産の額は変わることになってしまいますが、理論的には純資産額に近い数字となるはずです。

簿価


ここで簿価という言葉が出てきましたが、簿価とは帳面上に記載されている資産の価値と考えてもらえれば良いです。
例えばトラックを200万円で購入して10年で定額法で償却する場合、10年後には下取りされないとすると、1年あたりの減価償却額は20万となります。
この車を2年保有している場合、40万円の償却が終わっていることになるため、固定資産として帳面に記載されているトラックの価格は160万円となります。 これが簿価です。

このトラックを2年使用した後に160万円で実際に売れるのであれば、簿価と実売価格に差額がない事になりますが、もし、これよりも低い価格でしか販売できないのであれば、帳面上の純資産額と実際の純資産額は変わってくることになります。
トラックのようなどんな業種でも使いこなせるもので、尚且つ、そこまで単価が高くないものであれば、差額は大して出ません。
しかし、製造業でその会社でしか使っていないような高額な機械であったり、土地や建物といった唯一のものである場合、差額が大きく出がちです。

他の業種で使えないような機械は、いくら高額であったとしても欲しがる人はいないでしょう。
同じ様に土地や建物も、『その立地』に立っているのは1つしか無いため、立地によっては簿価よりも高く売れるかもしれませんし、そもそも買い手がつかない場合もあります。
その為、帳面に書かれている純資産額と、実際に現金化した際の金額というのは違う場合があります。

話が少し脱線してしまいましたが、会社は株主のものと言うことは、その会社の資産を自由にすることが出来るという一方で、負債の返済義務を負うことになります。
ということは、会社の資産を全て現金化し、それで返済義務のある負債を全て完済すれば、残ったお金は全て株主のものということになります。
これはつまり、会社の資産から借入金を差し引いて計算される純資産は、株主のものと言いかえることが出来ます。

自己資本比率


純資産は株主の持ち分なので、借入金ではないため返済は不要となります。 この返済不要のお金がどれぐらいの割合を締めているのかというのを測る指標が、前回紹介した自己資本比率と負債比率でした。
これは当然ですが、長期的な安全性という面から見れば純資産の割合が高ければ高いほど安全性は高いことになります。
では、借入金ゼロで完全な形での無借金経営をすれば良いのかというと、安全性という面から見ればそれは確かにそうなのですが、経営の効率性という面から見れば良くない事になります。

というのも、借金をして、新規事業に投資をすることでそれを上回るリターンを得れるのであれば、借金はすればするほど利益が上がっていくからです。
借金を増やせば増やすほど儲かるというのは理解が難しいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、銀行が行っている事業をみてみれば分かりやすいと思います。

銀行というのは、私達一般人からお金を借りて、それを他人に又貸しすることで成り立っている事業です。 つまり、私達が銀行口座にためているお金というのは、銀行に対する貸付だということです。
銀行に貸し付けているからこそ、私たちは僅かではありますが金利が貰えるわけです。 そしてそのお金を、銀行側は企業や個人に貸し出すことで利益を得ています。
私達個人のケースで言うのであれば、住宅ローンなどがこれにあたります。 住宅ローンの返済金利は、私達が銀行にお金を預けることでもらえる預金金利よりも高いですよね? この差額が、銀行の利益になるわけです。

この様な利益構造の場合、銀行側は『借りたい!』と言っている人がいる限り、口座開設キャンペーンを行うなり何なりして銀行預金を集めれば利益を伸ばすことが出来ます。
これと同じことが、銀行以外の事業全般にも言えることになります。
銀行からお金を借り入れて事業を起こした際に、銀行借入金利を超える利益率を出すことが出来るのであれば、企業は銀行からお金を借りれば借りるほど利益を伸ばすことが出来ることになります。

例えば、商品を仕入れて販売するという小売店を開業して、その小売店で10%の利益をコンスタントに出すことが出来るとします。
この状況下で銀行からの借入金利が3%である場合、3%でお金を調達して10%稼げる小売店事業に投資しまくれば、銀行に金利を支払っても差額の7%が利益として出ることになります。
もしこの状況を作り出せるのであれば、借金はすればするほど会社の利益を出すことが出来るようになります。

借金による効率化の具体例


具体的に見ていきましょう。
仮に自己資金1000万円で借入金無しで、先程の小売店を始めたとしましょう。 利益率は10%だったので、毎年100万円の利益が出ることになります。
その一方で、銀行から更に2000万円を借り入れて全額投資をしたとしましょう。 投資額は総額で3000万なので利益は300万となり、それに対して支払い金利が3%の場合は60万円になるのでそれを差し引くと利益は240万円となります。

仮に借金を5000万円に増やせば、事業への総投資額は6000万円となるため、利益は600万となり、それに対する支払い金利は150万円なので、金利を差し引いた利益は450万円となります。
これに加え、事業を大きくすればするほど、事業を効率化することが出来るようにもなりますし、大量仕入れによって仕入れコストを減らすことも可能になったりします。
このようなことも踏まえて考えると、借金の金利を上回る投資先がある場合は、お金は借りれば借りるほど儲かることになります。

ただ先程からも言っていますが、この様な環境を作り出せるのは、借入金利よりも利益を生み出せる状態にある場合のみです。
事業には寿命があるなんて言われていますし、経済環境も刻々と変化しています。 1つの業態が永遠に同じ利益率を稼ぎ出せるわけがありません。
上手く行っていた事業が、経済環境の変化やライバルの出現などで上手くいかなくなるケースというのも当然出てきます。

もし仮に、借入金利よりも事業で得られる利益の方が下回ってしまったとしたら、それは長期的にみて危険な状態といえます。
この事を知らせてくれる指標が、今回紹介するインタレスト・カバレッジ・レシオです。

インタレスト・カバレッジ・レシオ


このインタレスト・カバレッジ・レシオの計算式ですが、事業利益を支払利息で割ったものとなります。
事業利益というのは、営業利益に受け取り金利や配当金、社債国債のクーポンを加えたものとなります。簡単にいえば、事業で稼ぎ出した利益に、資産運用でえた金利などを加えた数字です。
これを支払利息で割るということは、事業利益が支払利息の何倍あるのかを示すということになります。

この数字は、事業利益が増えれば増えるほど大きくなりますし、支払利息が減ることでも増加するため、高ければ高いほど安全性が高いということになります。
当然ですが、事業を普通に行っていく上では1を超えていることが絶対条件となります。
何故1を上回ってないとだめなのか。 これは、1を下回っている状態を考えてみれば分かりやすいです。

インタレスト・カバレッジ・レシオが1を下回るということは、事業利益よりも支払い金利の方が多いことを意味します。
具体的に言えば、会社の営業利益と銀行金利、株式の配当や国債のクーポンなどを全てひっくるめて300万円しかない会社の支払い利息が400万円あるようなものです。
普通に考えればわかりますが、この様な状況が続けば会社の赤字は増えていくため、一刻も早く解消する必要が出てきます。

インタレスト・カバレッジ・レシオの改善方法


解消方法としては、経営改善をして事業利益を増やしていくか、借金を返済して支払利息を減らすか、事業を撤退するしかありません。
撤退とは、不採算事業から撤退し、それに関する固定資産などを売却して借金を返済するなどのことです。
『事業を辞めてしまえば借金が返せない!』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそもこの数値が1を割り込んでいるということは、先程も言いましたが事業で利息分すら稼げていないことを意味します。

その為、その事業を続けていたとしても借金は返済できないどころか、利息を支払うために純資産を切り崩すか新たな借金をしなければならないため、事業を続ければ続けていくほどドツボにはまっていきます。
この様な状況でもし経営改善が出来ないのであれば、できるだけ早めに撤退した方が傷が浅く済む分マシということになります。

まとめると、会社の資産を効率的に使うためには借金は必要だけれども、その利率を上回る利益率が確保できないのであれば、事業を見直す必要があるということになります。
それを数字で表してくれているのが、インタレスト・カバレッジ・レシオとなります。
ということで長期の財務分析の紹介については一旦ここで終わり、次は収益性分析と行きたいところですが、その前に前提知識となる収益について学んでいきたいと思います。