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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第67回【財務分析】当座比率

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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勘定科目


前回は、なぜ負債と資産を流動資産や固定資産・流動負債や固定負債といったものに分けるのかという話をしました。
その理由としては、財務分析を出来るようにするためです。仮に、経理作業を税金のためだけにしようと思うのであれば、売上から経費を差し引いただけのモノがあれば良いことになります。
つまり売上の合計金額と経費の合計金額さえあればそれで良いということになってしまいます。これはこれで、楽だと思う人もいらっしゃるかもしれませんが、これでは経営の問題点を分析できないので、改善点もわかりません。

その為、会社の持っている資産や負債の内訳を細かく分けていき、分析をしやすくします。 これは、貸借対照表だけでなく、会社の利益を出す損益計算書についても同じです。
会社の本業で稼いだ売上とその他の収益は分けますし、経費に関しても、その属性ごとに分けます。

例えば製造業の場合、材料を仕入れて加工して商品にし、それを販売することで売上とします。
仮に、営業も宣伝もしなくても商品が勝手に売れていく場合は、売上から費用を差し引くだけで良いですが、もし、営業活動や宣伝活動をしなければならない場合は、製造に関する費用と販売管理に関する費用とに分けて計上します。
こうすることでコストの属性が分かりやすくなり、分析がしやすくなるということです。

指標は業種ごとに捉え方が違う


前回は、その具体的な分析方法の1つとして、短期的な安全性を見る為の流動比率を紹介しました。
この流動比率は、貸借対照表流動資産を流動負債で割って出すもので、一般的には200%以上あれば安全だとされています。
ただこれは前にも言いましたが、業種によって違います。 人が持つ知識や技術を売る職業と商品を売る職業とでは、同じ様に考えられないのは当然ですよね。

例えば、会社が持つ商品というのは、流動資産に含まれます。 しかし、この商品が全て売れて現金化されるのかというと、そんな事はありません。
例えば食料品の製造メーカーでは、売れずに廃棄される商品が一定数あります。 廃棄されると当然売上にはなりませんし、何なら廃棄費用が別途かかることになります。
その一方で、美容師や講師業といった技術や知識を売るタイプの職業には在庫というものがありません。 技術や知識はいくら販売したところで減るものではありませんし、それを金額で表して帳面に記載することも出来ません。

その為、流動資産に商品そのものがないため、流動資産の構成そのものも変わってきます。 この製造業とサービス業とを、1つの指標で比べることなんて出来ませんよね。
なので、仮に比べる場合は同業他社の平均値などを調べて比べる必要が出てきます。
またこの他にも、別の財務分析でアプローチするという方法もあります。 ということで今回は、前回紹介した流動比率以外の分析方法をみていきます。

賞味運転資本


前回紹介した流動比率は短期的な安全性を見るための手法だと説明しましたが、この短期的な安全性を測る指標というのは他にもあります。
具体的に挙げると、『当座比率』『手元流動性比率』『正味運転資本』『ネットキャッシュ』『インスタレスト・カバレッジ・レシオ』などがあります。

まず『正味運転資本』からみていきますと、これは単純な引き算で、流動資産から流動負債を引いたものです。
先程の流動比率の場合は割り算だったため、企業規模に関わらず比べることが出来るという利点がありますが、具体的な数字としてはわかりにくかったりします。
企業規模に関わらす比べられるというのはどういうことかというと、例えば資産規模が10兆円ある企業と300万しかない企業を、同じ指標で比べることが出来るということです。

何故なら、流動比率は割り算で計算されるからです。 流動比率流動資産が流動負債に比べで何倍あるのかという割合を出して比べるものなので、資産規模が10兆円であろうが300万円であろうが、出てくる数字は比率であるため、そのまま比べられます
これは一つの利点なのですが、その一方で具体的な数字がわかりにくいという欠点があります。 その欠点を補うのが『正味現在資本』です。
これは先程も言いましたが単純な引き算で計算されるので、具体的な額がわかります。しかしその一方として、売上や資産額が違いすぎる会社同士を比べるということは出来ません。

例えば先程の例のように、資産規模が10兆円の会社と300万円の会社とでは、比べることが出来ないということです。 当然ですよね。何故なら、資産規模が10兆円の会社の方が確実に正味運転資本の額は大きくなるからです。
しかし、これは具体的な金額であるがゆえに、自社の短期的な余裕資金を確認することが出来ますので、先ほどの流動比率よりも具体的にイメージがしやすいです。
例えば大掛かりな仕入れや設備投資をする際に、直近の正味運転資本を確認すれば、その支払が出来るのか出来ないのかを具体的な数字として比べることが出来ます。

ただ、流動比率の説明の際にも言いましたが、この正味運転資本の計算で使う流動資産には、短期的に現金化されるかどうかわからない資産も含んでいます。
主に会社が販売している商品などがそれにあたります。 商品の中には、いつ売れるかどうかも分からないものや、売れずに廃棄されてしまうようなものも含んでいます。
その為、現金や銀行預金は少ないにも関わらず、大量の在庫があるために流動資産の額が膨らんでいて、正味運転資本を計算すると金額的には多いということもあり得るからです。

その為、流動比率であっても正味運転資本であっても、流動資産としての商品の金額には注意する必要があります。
ここが多すぎるのであれば、これらの数字はあまり当てにならないことになってしまいます。

当座比率


ここで、『それなら、商品を抜いた数字を使えばよいのでは?』と考える方もいらっしゃると思います。
このようなことは皆が考えるようなので、当然、商品のような直ぐに現金化されなかったり、そもそも支払いに使えない金額を抜いて計算する指標もあります。
それが、当座比率です。

この当座比率ですが、当座資産を流動負債で割ることで計算される比率です。
では当座資産とは何かというと、簡単にいえば、何らかの請求があった際に、直ぐに支払いに回せるようなお金のことです。
具体的には、現金や銀行預金、会社の場合は当座に入っているお金や売掛金などのことです。

売掛金


これらの資産は、何らかの請求があった際に直ぐに支払いに充てることが出来るお金です。 現実問題としては、売掛金では支払うことが出来ないということもあるでしょうが、売掛金は大抵は2月程度何らかの形で別の資産に変わります。
ここで売掛金の仕組みを簡単に説明しておくと、例えば、B to B の取引の場合、月末締めの翌月末支払いなんてことがよくあります。この支払い方法の場合、仮に4月に納品した場合は、実際の入金は5月末となります。
支払いが行われるのは5月ですが、会計としては、4月に売り上げたものは4月中の売上にしなければなりません。 そうしなければ、その期間中の売上がハッキリと出ないからです。

例えばですが、得意先の内2件が先ほどのように月末締めの翌月末払いで、この他が商品を納入した際に代金をもらうという取引が混在している場合があったとします。
この際、入金時に売上として計上するとしてしまうと、同じ月に売り上げているにも関わらず、売上が2ヶ月にわたって計上されてしまい、実際にその1月でどれほどの取引があったのかがわからなくなります。
期間中の売上が明確にわからないということは、前にも言いましたが財務分析が正確に出来ません。

財務分析が正確に出来ないということは、企業の現状を正しく見れないことになりますし、現状を正しく把握できないということは先の経営戦略なども考えづらくなるため、簿記では、取引があった月に売上として計上します。
また売上というのは、経営分析として特に重要な数字となっているため、この数字は適当であってはならないという理由もあります。
例えば、売上というのはその数字を前月比や前年同月比で比べるだけで、企業の成長度合いを見比べることが出来たりする数字です。 この数字が適当であると、そういった単純比較すらもしづらくなるため、売上は売り上げた月に計上します。

売上を売り上げた月に計上することの重要性は分かってもらえたと思いますが、ここで問題が出てきます。
というのも、先程の月末締めの翌月末支払いの場合、売上は取引をした月に計上しなければならないのですが、実際にはお金を受け取っていません。この場合は、どの様に帳面に書けばよいのでしょうか。
複式簿記の振替伝票で言えば、売上は収益なので右の貸方に書くのですが、では相手方科目、つまり左に何の勘定科目を書けばよいのでしょうか。 現金をもらったわけでもないし振込も行われていないため、現金や預金は書くことが出来ません。

ここで登場するのが、売掛金です。 この売掛金は、取引実態があるので売上はあるけれども、今現在支払いを受けていない、つまりはツケ払いの金額となります。
この売掛金は、実質は得意先に対する貸付金のようなものなのですが、先程も言いましたが、B to B 取引の場合は2か月以内には何らかの方法で支払いが行われるお金です。
その為、この売掛金で直接支払いが出来なかったとしても、少し待てば支払いは行われるため、当座資産として含みます。

当座資金に含まれない流動資産


話を当座比率に戻すと、当座資産とは流動資産の中でも、直ぐに支払いに当てることが出来るような資産のことを指します。現金や銀行預金や、今回説明した売掛金などが含まれます。
では、流動資産の中でも当座資産に含まれないような資産とは何かというと、まずは、前回から問題になっている商品です。 この商品は別名『棚卸資産』と呼ばれたりもします。
この他には、繰延資産やその他流動資産が含まれます。

この内、繰延資産に関してですが、この説明は難しい上に、このコンテンツでターゲットとしている中小企業の場合はあまり関係のない項目だと思わるので、今回は説明を省きます。
その他流動資産ですが、これは前渡金とか前払金、立替金や短期貸付金などが含まれます。 立替金や短期貸付金は従業員や他人に対する貸付ですが、最長で1年間は現金化出来ないため、直ぐに現金化出来るようなものではないため省きます。
前渡し金や前払金は、将来発生する費用に対して前もって支払いを済ませている類のお金なので、実際に費用が発生するタイミングで消えてしまうものです。

その為、これらは他の支払いに回せるようなお金ではないため、当座資産には含みません。 このようなものを省いた『当座資産』を流動負債で割ることで出した数字が、当座比率です。
この当座比率は、前に説明した流動比率や正味運転資本とは違い、商品在庫などは省いて出された数字となるため、結構厳し目の数字となります。
その為、流動比率で安全性を示すためには200%必要だとされていましたが、この当座比率は100%で安全性が示せることになります。 以上が当座比率の説明となります。次回も、短期の財務分析についてみていきます。