【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第56回【経営】ブランド(7)
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目次
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- ブランド戦略
- ブランド戦略の目的
- ライン拡張
- ブランド拡張
- ブランド拡張戦略の具体例
- ブランド拡張戦略のデメリット
- ブランド拡張戦略のメリット
- ブランド拡張戦略に必要なこと
注意
この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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kimniy8.hatenablog.comブランド戦略
ここ数回にわたって、ブランドの分類や機能について話して来ましたが、それらを踏まえた上で今回はブランド戦略について話していきます。
このブランド戦略も、前に紹介したブランドの分類と同じ様にマトリクス図となっています。
製品カテゴリーが既存製品か新製品か。 ブランド名が既存ブランドか新ブランドかで、それぞれ4つのカテゴリーに別れます。
実際に分類を見ていくと、商品カテゴリーが既存製品で、且つ、ブランド名も既存ブランドの場合はライン拡張
商品カテゴリーが同じく既存製品で、ブランド名の方が新ブランドの場合はマルチブランド。
商品カテゴリーが新製品で、ブランド名が既存ブランドの場合はブランド拡張。商品カテゴリーが同じく新製品で、ブランド名の方も新ブランドの場合は新ブランドとなります。
この分類の仕方というのは、結構前に紹介した事業展開の方法についてのマトリクスである、アンゾフの成長ベクトルや成長マトリクスと呼ばれるものと結構似ています。
事業展開の方法についてまだ聞かれていない方は、第31回ぐらいから話しているアンゾフの成長ベクトルの回から聞いてみて下さい。
ブランド戦略の目的
話をブランド戦略に戻すと、このブランド戦略の基本的な考え方というのは、ブランドをどの様に育てていくのか。また、これまで育ててきたブランドをどの様に利用していくのかというのがベースにあります。
ブランドには様々な機能がありますがその中でも重要なのが、名前がつけられた製品群に特定のイメージを付け、消費行動を取ろうとしている顧客に真っ先に思い出してもらいやすくすることです。
つまり、言葉にして説明すると長くなってしまう商品軍のことを、特定のイメージとして印象づけてしまうということです。
別の例えをするなら、ネット検索で引っかかりやすくするようなものです。
例えばネットの検索窓に、女性・高級ブランド・バッグなどを入れると、エルメスやルイヴィトンといったブランド名が上位に出てきますが、これは消費者の頭の中でも同じようなことが起こっています。
顧客が高級バッグが欲しいと思った際に、頭の中には具体的な商品名や商品の形が思い浮かぶことは少ないかもしれませんが、2~3個のブランド名が思い浮かぶことは多いと思います。
ネット検索の場合で記事が閲覧されるのが検索上位の数個の記事であるのと同じ様に、顧客の消費行動も、物を買おうと思った際に思い浮かぶ数個のブランドの中から選ぶ場合が多いです。
ちなみにこのブランドというのは、商品ブランドだけに限りません。 例えば百貨店の名前なども、ブランドとなりますので、具体的な商品名が思い浮かばなかった場合でも、『あの百貨店を見に行こう』と行動する場合は多いと思います。
こういう現状がある以上、各企業は自身が持つブランドを思い出してもらいやすいように、何かしらのイメージと結びつけようと行動します。 その行動を効率的にしようと考えられたのが、ブランド戦略です。
ここで注意としていっておきますと、今回紹介するブランド戦略に限った話ではありませんが、ここで紹介しているのは物事を理解しやすいように単純化されたモデルとなります。
そのため、ここで紹介したことを忠実に守って行動したからと言って、現実世界で確実に成功するわけではありません。
あくまでも戦略を考えるベースとして知っておくと便利なツールでしかありませんので、予めご了承下さい。
ライン拡張
話題をブランド戦略に戻して、先程紹介した戦略を1つ1つ紹介していきましょう。
まず、既存製品を既存のブランドで出すライン拡張ですが、これは、同じ様な雰囲気の商品を同じブランドで出していく戦略となります。
服でいうのなら、全体としての雰囲気は同じ様に保ったまま、色合いや形などを若干変えて同じブランドで出していくような感じです。
同じ様なイメージの商品を同じブランド名で出すことによって、そのブランドのイメージはより強く固まっていくことになります。イメージを尖らせていくといえば良いのでしょうか。
1つの製品ではブランドの持つ世界観を表現できなかったとしても、複数の商品でブランドイメージをより具体化していくことで、顧客の中でブランドイメージが固まっていきます。
イメージがより具体化していくことでターゲット層は狭まっていきますが、顧客の頭の中での検索順位は上がるので、結果としてファンを獲得しやすくなります。
ブランド拡張
次に紹介するのがブランド拡張です。これは、新商品や新規事業を既存ブランドで出す際の戦略となります。
先程のライン拡張とは違い、こちらの戦略は既存のブランドイメージを武器にして新製品を売りやすくしたり、新分野に進出しやすくする戦略です。
この戦略は先程のライン拡張と真逆の戦略の様に思えるかもしれません。何故なら、新規事業やこれまでとテイストの違う新商品を同じブランドで出してしまうと、イメージが分散してしまうからです。
一見すると先ほどと真逆のように思えてしまう戦略ですが、この戦略はライン拡張と使うステージが違います。ある程度ブランド力が強化された状態でしか行えない戦略と考えたほうが良いです。
つまり、ライン拡張が起業後すぐに取れるブランド戦略なのに対し、ブランド拡張はブランド・エクイティ。つまりブランドとしての資産価値が相当高くなければ取れない戦略だということです。
またブランドイメージも、製品がまとっている雰囲気や特定のジャンルといったイメージだけでなく、ブランドそのものに信用力が伴っていなければなりません。
ブランド拡張戦略の具体例
例を挙げた方が分かりやすいと思うので具体的な企業名を上げると、有名所で言えばソニーなどがブランド拡張を積極的に行っている企業と言えます。
ソニーは、元々はウォークマンの様な電化製品を作っていましたが、その際に獲得した『品質の確かさ』というブランドイメージを使ってゲーム機分野に進出しました。
今では事業の牽引役となっているゲーム部門ですが、初代プレイステーションを出した当時のソニーは、ゲームメーカーとしての信用も実績も何もありません。
もしこの様な企業が、既存ブランドを利用せずに全く別の新ブランドを立ち上げてゲーム機やソフトを販売していたとしても、その知名度の無さから成功していた可能性は低かったでしょう。
しかしソニーは、家電を販売していたときの実績。つまりブランド力を武器にして全く新しい分野に進出することで、当時同時期に次世代ゲーム機を発売していたセガに最終的には勝ちます。
そしてソニーは、このゲーム機事業を足がかりにしてエンターテイメント事業に乗り出し、映画事業などにもソニーブランドを使って展開していきます。
ソニーはこの他にも、保険会社や銀行といった事業にもソニーブランドで進出していますが、その基礎となるのは、家電時代に培ってきた信用力となります。
しかしここまで様々な分野に進出してしまうと、先程も言いましたが当然、ブランドイメージは具体性を欠いていきます。
仮に電化製品一本で製品展開をしていれば、ブランド名と家電メーカーというのが顧客の頭の中のイメージとして結びつくようになるので、イメージは具体化しやすいです。
ブランド拡張戦略のデメリット
電化製品の中でも、携帯音楽プレーヤーに特化してそれのみを生産販売していれば、携帯音楽プレーヤーといえばソニーといった感じで、特定の商品とブランド名が強力に結びつきやすくなるでしょう。
この様な製品の幅を狭める戦略をとっているメーカーは意外と多く、ヘッドフォンなどの音響やスピーカーに特化したメーカー、別の分野でも、キャンプ容認に特化していたり、アウトドア用の鍋に特化しているブランドなどもあったりします。
この様な特定の物に特化する戦略は、それが欲しいと思った際に真っ先に思い出してもらいやすくなる。つまり、顧客の頭の中での検索順位が上がることに繋がります。
しかしソニーのようにブランド展開を積極的に行って、取扱商品の幅を広げていくと、個別の製品群や作品とブランド名とのつながりは薄くなっていってしまいます。
ですがその一方で、多方面の分野で成功を収めている大企業だという安心感や信用力といった抽象的なイメージは増していくことになります。
これはつまり取扱商品の幅が増えることで、ブランドイメージが具体的なものから抽象的なものへと変わっていくということです。
ブランド拡張戦略のメリット
では、ブランドイメージが抽象的なものへと変化していく事による利点は何でしょうか。
真っ先に思い浮かぶのが、売上規模の上限の引き上げです。
製品市場というのは、それがどんな製品であれサービスであれ、市場規模は大体決まっていると考えられます。
例えばテレビで考えると、日本の景気がいくら良くなったからと言って、4人家族の家庭が100台のテレビを買うなんてことはありません。
4人家族の場合、それぞれが1台ずつ持っていて、皆が集まる共有スペースに1台置くと考えると、多く見積もっても5台も有れば十分事足りるでしょう。
1家族が必要とするテレビの台数にある程度の上限があり、日本の世帯数もある程度決まっているわけですから、テレビという製品の必要数も、当然決まってきます。
その必要数にテレビ1台あたりの平均価格をかければ、市場規模の上限はある程度計算できます。 今なら、こんな面倒くさいことをしなくても、ネットで年間の販売台数や市場規模を調べることも出来ます。
つまり1つの製品を作り続けるだけでは、売上に上限が出来てしまうということです。
ブランド拡張戦略に必要なこと
しかし、様々な分野に新たに進出することができれば、新規参入した市場の規模の大きさだけ、その上限は増加していくことになります。
ソニーのような上場している大企業の場合は、株主から売上や成長力を伸ばすことを絶えず求め続けられるわけですから、それに答えるためには、今まで進出していなかった市場に進出せざるを得ません。
この際にブランドイメージとして求められるのは、具体的な製品イメージと結びついたブランド力ではありません。 企業に対する漠然とした信用力といった曖昧なイメージです。
生命保険業界で求められるブランドイメージと、テレビの生産で求められるブランドイメージは、全く別のものと言えます。 これは具体的に観ていけば観ていくほど、両者のイメージはかけ離れていってしまいます。
しかし、『大企業だから信用できる』と言った曖昧すぎるイメージであれば、その曖昧さ故に、生命保険とテレビの製造という全く違うカテゴリーであったとしても、両方で通用するイメージとなります。
つまり、イメージを抽象化させることで、どんなものにでも当てはめることが出来る様にするということです。
では次にマルチブランドの説明ですが、この話はまた次回にしていきます。