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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第34回【経営】関連多角化(2)

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目次

注意

この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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無関連多角化と関連多角化

前回は、無関連多角化と関連多角化の違いについて話していきました。
簡単に振り返ると、無関連多角化は自分たちの知らない市場に新商品を開発して参入するため、リスクが非常に高くなります。
また、全く無関係の事業に参入するため、既存事業とのシナジー効果も追求しにくい戦略と言って良いでしょう。自社が関わる既存の市場が衰退しているなど、余程、切羽詰まった状況でもない限り、積極的に選ぶような戦略ではありません。

逆に関連多角化は、既存事業と関連のある事業に進出していくため、新規事業のリスクを下げることが可能となります。
何故なら、市場も製品も違うとはいっても、既存事業と関連のある事業であるため、その分野の知識や経験や、その分野に強い人材を、すでに持っていることが多いからです。
その為、多角化戦略といっても、既存事業と完全に無関係な無関連多角化とは違い、リスクをかなり下げた状態で事業を始めることが出来ます。

関連多角化(新市場開拓)

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関連多角化について、具体例を上げて説明していきましょう。
前半部分は前回と少しカブる部分もあり、前回を聞かれている方は重複しますが、予めご了承ください。
前回と同じく、和風居酒屋を経営している会社を例に上げて説明していきます。

和風居酒屋だけを経営しているときは事業としては1つですが、この事業がうまく行って軌道に乗ってくると、次の事業を始めることが視野に入ってきます。
今まで行ってきた和風居酒屋を、別の地域にも出店していくというのも一つの手ですし、同じ地域に別の種類の店、例えば、イタリアンや中華を出すという選択肢もあります。
これらの選択肢は、どちらも関連多角化と考えることが出来ます。

まず、同じ和風居酒屋を別の地域に出す場合で考えてみると、これまで行ってきた事業を分析することで、自分たちの事業がどの層に受け入れられているのかが、ある程度わかります。
その市場に向けて同じ様な店舗を出すわけですから、たとえ別の地域で店舗展開したとしても、過去の経験を活かすことが出来るため、リスクは下げられます。
同じ地域で、イタリアンや中華などの別の形態の店舗を出す場合は、展開する地域が同じですから土地勘があるため、これもリスクが下げられることになります。

関連多角化

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同じ様な和風居酒屋を複数展開していく場合、新店舗をどの地域に出せばよいのかや、店をどの様に回していけば良いのかのノウハウが溜まっていくため、それをマニュアル化すれば、それ自体を商品にすることが出来たりします。
フランチャイズ展開などがこれにあたりますが、これにより、資金を持つ人を店舗オーナーとして募集し、その人の資金で自社ブランドの店舗数を増やしていく事が可能となります。
フランチャイズ展開が進み加盟店が増えてくると、当然のように、扱う食材も増えてくることになります。

新たな産業への進出

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扱う食材が増えてくれば、取引量が増えるわけですから、食材調達の選択肢も変わってきます。
小さな居酒屋1店舗しか経営していなかったときは、扱う食材の量が少ないために小売店で買うことしか出来なかったとしても、数十店、数百店と店舗数が増えていけば、生産者と直接取引できるようにもなるでしょう。
場合によっては、自分たちで農場などを経営するという選択肢も出てきます。

居酒屋経営と農場経営は全く別で無関連多角化のようにも思えますが、その農場で作った食材は自社の店舗で使うため、これも関連多角化となります。
何故なら、店舗から上がってくる情報を分析することで、どの様な食材が求められているのかが分かるからです。
商品の生産者としての大きな問題は、何が市場で求められているのかがわからないことや、販売先を見つけることですが、消費者が求めているものがわかり、すでに販売先が決まっている事業は、当然ですがリスクは低いです。

食料の生産事業に参入したり、卸売を通さずに生産者から直接購入する事が増えてくると、自社が生産したものや仕入れたものを、同業他社である飲食店に販売する、食料品卸事業を新たに始めるという事もできるでしょう。
この事業の場合、実際に事業展開して、新たな顧客が生まれなかったとしても、自分たちの店舗やチェーン展開した店では取扱商品を使うため、一定の販売量は確保されてるという状況です。
その為、事業展開して早々に売上が立たなくなって事業が失敗するという心配はありません。 その為この事業も、飲食に関係のない人が全くの新規から食料品卸業を始めるよりかは、リスクは低くなります。

事業拡大によるシナジー効果

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次の段階として、チェーン展開が進み、店舗数がそれなりに多くなってくると、料理を各店舗で作らずに、食品加工工場で作って全国の店舗に配送するという方法も考えられます。
セントラルキッチン方式と呼ばれる方式ですが、この方式を導入することにより、各店舗に料理人を雇い入れるという必要がなくなり、店舗を料理技術がないバイトのみで回すことが出来るようになったりします。
これにより、加入店オーナーにとっては開業するハードルが下がり、フランチャイズ本部としては事業を拡大しやすくなるわけですが、このセントラルキッチンの設備をそのまま流用すると、調理済みの食品販売事業に乗り出すことが出来ます。

セントラルキッチン方式で作られた料理は、食品加工工場からチェーン店に運ばれて、電子レンジで温められて客に出されるわけですが、その配送先をチェーン店から家庭に変えるだけで、新たな市場開拓が可能となります。
スーパーなどに営業をかけて新たな販売チャネルを獲得できれば、販売業務も代行してもらえるようになる為、更に生産量を拡大することが可能となります。
このようにして生産数がどんどんと増えていくと、規模の経済によって食品加工工場の効率も上昇しますし、より大量購入が可能となる為、材料コストの低減も狙うことが出来ます。

材料を大量に使うということは、当然、食料品卸業の方の仕入れコストも下げることが可能になるわけですから、食料品卸事業の方の業績にもプラスの影響を与えるようになります。

これまでの流れの整理

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これまでの流れを一旦整理してみると… 一番最初は居酒屋経営を通して、消費者に料理を提供するという事業を行っていた会社が、そのノウハウを生かして違う地域に同じ店舗を作っていく多店舗展開に乗り出します。
ここまでは、同じ製品を違う市場に対して売り込んでいるため、アンゾフの成長ベクトルで言うところの新市場開拓戦略となりますが、ここから先は話が変わってきます。

このたとえ話では、居酒屋経営をしていた会社はノウハウをマニュアル化し、そのマニュアルを実行するだけで誰でも店舗経営を出来るようにして、お金を持つオーナー候補に対してそのマニュアルを販売するチェーン展開を始めます。
これまでの事業展開としては、料理や宴会をする場所を求める消費者に対して、料理や場所を提供するという居酒屋経営をしていたわけですが、ここで顧客の対象が居酒屋を経営してみたいというオーナー候補に変わります。
そして販売するものは料理や場所ではなく、居酒屋経営を通して生み出されたノウハウが凝縮された経営マニュアルに変わります。

つまり、市場が食事や場所を求める顧客から、居酒屋経営をしたいという資金を持ったオーナー候補に変わり、販売する製品が料理から経営マニュアルに変わっているわけです。
アンゾフの成長ベクトルによると、市場が新たなものに変わり、製品も新たに開発したものに変わっているため、多角化戦略となります。
そしてここから先は、ずっと多角化戦略となっていきます。

これまでの流れの整理(2)

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この業者が次に展開する事業は、料理の原材料である食料の生産や、食料品卸の事業です。
この両者の事業は、販売先は飲食店で、販売しているものは食材なので、これまた、今までやってきた事業とは市場も製品も変わります。

次のセントラルキッチン導入からの食品加工や、加工食品販売は、家で食事する家庭向けの商品となっています。
料理を食べられる状況で提供するのではなく、スーパーなどで買ってきて、家でレンジで温めたり油で揚げたりするだけで食べられる製品を売るため、これも市場と製品が変わっています。
つまりこの事業者は、最初こそ、新市場開拓戦略で事業規模を広げていますが、その後はずっと、市場も製品も違う多角化戦略で事業を行っているわけです。

リスクの少ない関連多角化

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しかし、展開していく新事業は全て、今まで自社が行ってきた事業と何かしら関係の有る事業であるため、全く関係のない事業を行う無関連多角化とは違い、関連多角化となっています。
例えば、この市場には仕事がありそうだという理由だけで、自社の事業と全く関係のない介護事業に進出すると考えた場合と、今回紹介した関連多角化を比べた場合、どちらの方がリスクが少ないかは、比べるまでもないと思います。
以上が、関連多角化と無関連多角化との違いです。

このリスクに加えて、今回出した例ではシナジー効果も働いているため、各事業の業績の伸びが、他の事業にも波及して共に上昇していくのですが…
シナジー効果については、次回に少し掘り下げて話していきます。