【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第48回【経営】価格戦略(2)
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- スイッチングコスト
- 最初にシェアを取った方ば有利
- 低価格販売で市場拡大を狙う
- 市場が拡大すれば販売機会も増える
- 低価格戦略のデメリット
- 初期コストをかけない
- 戦略のつながり
- 戦略でリスクを抑える
注意
この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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kimniy8.hatenablog.comスイッチングコスト
前回は、スイッチングコストをメインに、価格戦略のことを話していきました。
スイッチンクコストとは、簡単に言えば、顧客が浮気せずに同じ系統の商品を買い続ける理由がたくさんあれば、スイッチンクコストが高い。そうでなく、簡単に浮気できるのであればスイッチングコストは安いと表現されるものです。
具体的な例を出して説明すると、スマートフォンをAndroidからiPhoneに買い換える。又はその逆をしようと思うと、結構な労力が必要となります。
何故なら、今のスマートフォンはデータやアプリがアカウントに紐付いていて、iPhoneで購入したアプリをAndroidで使うなんてことが出来ないからです。
無料アプリばかりを買っている人は、この辺りのことは関係がないかもしれませんが、それ以外にも、特定のデータをクラウドに保存するなんてサービスをグーグルもAppleも行っていますが、乗り換えることでその辺りもややこしくなります。
この様に、携帯電話というのは乗り換えが非常に面倒くさいため、消費者は基本的には乗り換えを行いません。 この様な状態を、スイッチングコストが高いと言います。
携帯電話つながりで言えば、携帯キャリアを乗り換えるというのも、そこそこスイッチングコストの高い行為です。例えば、auからソフトバンクに切り替えるなどですね。
この乗り換えを促進させてライバルから顧客を奪い取るために、キャリア各社は『乗り換えるとキャッシュバックがもらえる!』とか『スマフォを無料で差し上げます!』なんてキャンペーンを行っていたこともありました。
今では法改正によって、これらの事ができにくい環境になりましたが、何故、あそこまで各社が大盤振る舞いをしていたのかといえば、スイッチングコストという顧客にとってのマイナス要素ををキャッシュバックで埋めているわけです。
最初にシェアを取った方ば有利
携帯各社の争いのように、すでにある程度のシェアが確定してから相手の顧客を奪わなければならない状態になれば、キャッシュバックといった現金の暴力で顧客の奪い合いをしなければなりませんが…
全く新しい分野の製品やサービスで、市場が未成熟でシェア自体も確定していない状態であれば、価格を大幅に下げて販売することで、最初にシェアを奪い取ってしまうという戦略もあります。
例えばVR機器でいえばfacebookのOculus Questなどが、採算度外視でハードを発売してシェア拡大を狙っています。
何故、facebookがこの様な戦略を取るのかといえば、VR機器もスイッチングコストがそれなりにあるからでしょう。
Oculusは普通のVR機器としても使えますが、アプリをfacebookが経営しているストアで購入してプレイすることも出来ます。
もし、このストアでそれなりの金額のアプリを購入してしまえば、他のVR機器を購入するさいのハードルはかなり上がってしまいます。何故なら、他のメーカーではそのアプリを動かせない。もしくは動かすのに苦労するからです。
この状況は、先ほど紹介したスイッチングコストが高い状態にありますので、早い段階でシェアを握ることでロイヤリティの高い顧客を相手に商売をすることが出来ます。
低価格販売で市場拡大を狙う
このOculusの例で言えば、この価格戦略には他の狙いもあると思われます。
それは、未成熟な市場を拡大させて魅力的な市場に引き上げようとする思惑です。
VR機器というのは、少し性能の良いものを買おうとするとVR機器だけで10万円ほどの料金がかかります。また、それを動かすためのパソコンの方もそれなりの能力が求められるため、こちらも20万円ほどかかってしまいます
つまり、導入するのに30万円ほどかかってしまうということです。とはいっても、20万円のパソコンは他の用途でも活用できるため、VRだけで30万円かかるわけではないのですが…
それでも、何もない状態からVR環境を揃えようと思えば、それぐらいの金額はかかってきます。
VRというのはまだまだ一般的ではなく、一部のマニアだけが楽しんでいる状態となっていますが、その理由の一つには、このイニシャルコストが関係していると思われます。
しかしこれが3万円台で楽しめるとなれば、話は変わってきます。 3万円もそれなりに高価な出費ではありますが、30万円と比べると10分の1ですので、ハードルはかなり下がります。
ハードルが下がるということは、興味本位でVRを購入する人たちも増えるでしょうし、この体験でVRに興味を持った人が環境を整えるということもあるでしょう。これは言い換えるのなら、市場が拡大するということです。
市場が拡大すれば販売機会も増える
市場が拡大すれば販売機会も増えるわけですから、研究開発に投じた資金も回収しやすい環境となります。
極端な話で言えば、世界で1万人しかVR愛好家がいない状態と、1億人の愛好家がいる状態では、資金の回収のしやすさが変わりますし、市場が拡大することで取れる戦略も増えていきます。
このVRの様にまだまだ市場が未成熟な段階では、低価格戦略には、消費者が購入に踏み切るハードルを引下げることで市場を拡大させるという意味合いもあったりします。
この様に価格を引下げることには様々な利点があるわけですが、では価格を下げて市場拡大を目指すというのが最善の道かというと、そういうわけではありません。
価格引き下げにはそれなりのデメリットもあります。
低価格戦略のデメリット
価格を引き下げて販売するということは、粗利が減るわけですから損益分岐点売上高は上昇してしまいます
前に、最初にシェアを取ってある程度の生産量を確保してしまえば、生産原価を抑えられて低コストで作れるようになると言ったことを言いましたが、そもそもの販売額が低ければ、粗利率は低くなってしまいます。
というのも、粗利と販売額と原価の関係性というのは、販売額から原価を引いたものが粗利であるからです。
売上がそのままで原価が下がれば粗利は増えますが、原価が下がっても同じ様に販売額が下がってしまえば粗利は増えません。販売額の引き下げが原価の削減額を上回ってしまえば、粗利は減少してしまいます。
粗利が減少すれば、固定費を回収するために必要な販売数量が増えるわけですから、損益分岐点売上高のラインは上昇します。
ということは、固定費を回収した上で事業開始時に払った投資資金を回収しようと思えば、一定のシェアを必ず取らなければならないということです。 これが出来なければ、事業としては失敗ということになります。
つまり、初期に市場シェアを取るために価格を下げ、価格を引き下げたことによって増えた需要に答えるために大量生産体制をつくったとしても、その分の設備投資分が回収しきれない場合は事業からの撤退を考えなければならないということです。
既存の設備を使いまわして作れるものならまだしも、全く新規で設備を揃えるところから始める場合、相当な額の投資資金が必要になります。
前にも言ったことがありますが、事業の成功は運の要素が強く、一生懸命考えてアイデアを出し、市場リサーチを入念に行ったからといって、確実に成功するものでもありません。
事業が当たらなかった際に迅速に撤退が出来なければ、儲からない事業をダラダラと続けることになり、余計に傷口が広がることになります。
初期コストをかけない
しかしこれは逆に捉えるなら、既に生産するための設備や人材がおり、販売チャネルなども構築されている場合は、相当有利だということを意味します。
例えば、今まで製造業として製品を作っていた会社が、そのノウハウや生産設備を活かす形で別の製品を作って市場展開する場合は、新規投資が必要ないわけですから会社側の初期コストはほぼ掛かりません。
新製品を作る際のコストが掛からないということは回収すべき初期コストが無いというわけですから、生産コストそのものを低く抑えることが出来ます。
生産コストを低く抑えることが出来るということは、安い値段で売ったとしても利益が出やすくなったりしますし、利益度外視で値付けをする場合は、他社を圧倒する安い値段で商品を打ち出せます。
それほどの安い価格で販売すれば、市場の独占や市場そのものの拡大も目指しやすくなるでしょう。
ブランド戦略などで価格を高めで販売する場合は、生産コストが安くなっているわけですから、更に多くの利益を得られるようになります。
生産コストと販売価格に大きな開きがある場合は、材料費を引き上げて高価な材料を使って製品品質を上げることも可能になるわけですから、ブランド戦略などでも有利になります。
戦略のつながり
前に多角化戦略を解説した際に、『自社の経営資源を使える分野に進出する方が良い』と言いましたが、それにはこの事が大きく関係しています。
人材・生産設備・ノウハウ・販売チャネルなどは、一から構築するためにはかなりの投資資金が必要になりますが、多額の投資資金をかけてしまえば当然、そのお金は販売価格に跳ね返ってきます。
つまり、投資費用を回収するために商品価格にそのコストを含めなければならず、結果として価格戦略の幅を狭めてしまうということです。
逆に言えば、既に持っている経営資源を利用して新市場に打って出れば低コストでの開発ができるわけですから、価格戦略の幅を広げる事が出来ます。
価格戦略の幅を広げることが出来るということは、それだけ市場の中で有利に立ち回ることが可能となります。
なぜなら、市場の動きに合わせて値付けを大胆に変えることが可能なうえ、どの値段帯であれ、利益が得やすい状態が作れるからです。
戦略でリスクを抑える
仮に価格を低価格に抑えて市場シェアを取らなければならない場合でも、どこよりも安いコストで生産できる体制があるのであれば、販売価格は一番低く抑えることが可能です。
開発した商品が画期的なもので高価格でも販売できる場合は、それを高価格で売ればどの会社よりも高い利益率を出すことが可能となります。
何故なら、利益というは販売価格から製造コストを差し引いたものだからです。 当然、コストが低くなればなるほど、利益は増えていきます。
この様な価格戦略と多角化戦略のように、戦略というのは密接につながっていたりもするので、経営には幅広い知識が求められたりもします。
ということで前回と今回で、主に低価格戦略について話してきましたが、次回は高価格戦略について話していきたいと思います。