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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第35回【経営】シナジー効果(1)

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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無関連多角化

前回は、関連多角化について話していきました。 関連多角化とは、その前に取り扱った無関連多角化と対になるような概念です。
関連多角化と無関連多角化について簡単に振り返ると、まず戦略として多角化戦略というのがあります。
多角化戦略とは、前に紹介したアンゾフの成長ベクトルでいうところの、市場も製品も変える戦略です。つまり、今まで相手にしてこなかった市場に対して、今まで取り扱ってこなかった製品を売り出していく戦略のことです。

この多角化戦略ですが、大きく分けると2つに分けることが出来ます。1つが、今までの事業と全く関連のない事業に参入する無関連多角化です。
例えば、スポーツ用品店を営んでいた企業が居酒屋経営に乗り出すといった具合に、これまでにやってきた事業と全く関連性のない市場と製品で勝負を仕掛けるのが無関連多角化です。
この他にも、M&Aなどの企業買収を通して、全く関連のない企業を傘下に収めたり、事業を買収したりするのも含まれます。

関連多角化

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もう1つの関連多角化ですが、これについては前回に詳しく話しているので時間が有る方はそちらを聞いてもらいたいのですが、先程とは逆に、自分たちがこれまで携わってきた市場や製品と関連の有る事業を展開していくことです。
前回の話の流用になりますが、例えば、居酒屋経営をしていた人が多店舗展開していき、一定レベルの店舗数になったところでフランチャイズ展開をした場合、フランチャイズ事業は事業多角化になります。
何故なら、居酒屋経営が飲食を求める消費者という市場に対して料理や食事の場を提供しているのに対して、フランチャイズ展開は、加盟店に入りたいと思っているオーナー候補に対して、ノウハウを提供する事業だからです。

この業者が順調に加盟店を増やして大規模になってくると、加盟店全体として取り扱う食材の量も多くなるため、場合によっては自社で農場経営をして一次産品を生産するという選択肢も見えてきます。
仮に新規事業で農場を経営することになった場合、取り扱う製品は一次産品となり、それを飲食店に販売するわけですから、この場合も市場と製品が変わり、事業の多角化となります。

取り扱う食材の量が大きくなると、大量仕入れによるコスト削減も出来るようになりますし、卸売を通さずに一次産品を作っている企業からの直接仕入れも出来るようになるかも知れません。
この環境を利用し、新たに食料品卸を展開できるかも知れません。 つまり、大量仕入れをした食材を、自社のフランチャイズ加盟店だけでなく、他の飲食店に向けても販売していくということです。

この様に、自社のために作った設備や新規事業を、自社以外の外側に向けて開放するという観点で言えば、他にも事業が展開できそうです。
例えば、フランチャイズ加盟店で使う食材をいちいち店舗内で調理せずに、セントラルキッチン方式で1箇所で製造し、それを加盟店に配送するという状態にします。
このような設備を整えた上で、そこで作った調理済みの料理をスーパーなどに卸し、家庭に販売するという事業展開も出来ます。

新規事業は川上・川下へ

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この関連事業ですが、先程紹介した無関連多角化に比べると、圧倒的にリスクが低くなります。何故なら、事業の入口と出口がすでに確定しているからです。
仕事とは基本的に、素材を仕入れて製造し、それを販売する行為となりますが、一番大変なのは信用できる仕入先と、作った商品を販売する先の確保です。
生産する技術も大切だと思われる方も多いでしょうが、高い品質のものが確実に売れる保証はありません。その一方で生産技術は、仕事を回せてさえいればついてきます。つまり販売さえ上手くいって売上が建てば、技術も品質もなんとかなったりします。

関連多角化の場合、この仕入先と販売先がすでに確保できていることが多いために、リスクが低くなります。
先程出した例でいうなら、フランチャイズ展開が進んだ後で農場経営に進出した場合、その農場で作ったものはフランチャイズの加盟店で消費するわけですから、新規事業である農場経営は初年度から売上が確保できます。
その売上も、自社のチェーン店の業績が手元にあるわけですから、かなり正確にわかります。 つまり、作ったけれども売れないということがなく、作ったもの無駄なく販売することが出来ます。

セントラルキッチンの導入も同じです。 セントラルキッチンで作られた食材の殆どは、加盟店で消費されるわけですから、作ったけれども売れないなんてことはありません。
加盟店向けに作っているものを、パッケージのみ消費者向けに改良して業務用スーパーなどで販売すれば、大失敗するなんてことはないでしょう。
この様に関連多角化は、販売先が確保できているケースが多いため、多角化戦略でありながら、リスクを下げることが出来ます。

シナジー効果

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この関連多角化ですが、リスクを下げられて事業の見通しが良いだけでなく、シナジー効果によって事業間同士が刺激し合い、各事業の売上や効率がさらに上昇したりします。
シナジー効果とは、それぞれの事業の拡大が、その他の事業にも好影響を与えることで、日本語では相乗効果ともいわれている効果のことです。
つまり、事業間同士の売上の伸びが単純な足し算になるのではなく、掛け算になるということです。

先程の例え話でみていくと、フランチャイズ加盟店の増加によって大量仕入れや一次産品の生産が可能になり、食料品卸事業や農場事業に展開できたとして、フランチャイズ加盟店の量が増えてば、食料品卸や農場事業の売上も上昇します。
何故なら、卸売や一次産品の生産事業の販売先の大半は、自社が抱えている加盟店だからです。 加盟店の増加はそのまま食料品需要の増加となり、食品卸や食料品生産事業の業績にプラスとなります。
これは、一方的な効果ではありません。 扱う食品の量が増えるということは、さらなる大量購入が可能になるわけですから、卸売事業の方ではさらなる仕入れコストの低減を狙えます。
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食料品生産事業の方は、販売量が増えれば自動機械の導入などにより、生産性を上げることが可能となります。
生産性とは簡単に言えば、従業員1人がどれだけの売上や利益を上げることが出来るのかを測る指数として考えてもらっても良いと思います。
つまり、今までは機械が高くて手が出ないので手作業でコツコツやっていた作業が、大量に注文が来るようになったことで機械による自動化が出来るようになれば、人がかける手間が減るわけですから生産性は上がります。

機械は購入費こそ高いですが、一度購入すればメンテナンスと燃料費のみで動いてくれるため、長期で見れば安くなります。
一方で人件費は、年々安くなるどころか高くなっていきますし、日本では簡単に解雇することも出来ないため、コストとしては非常に高くなります。
これを機会に置き換えることが出来るようになれば、生産コストが安くなります。 生産コストが安くなれば、仮に同じ値段で商品を販売したとしても利益は上がるため、販売数が増えて利益率が上昇するため、利益は拡大します。

もし、利益率を一定に保つために製品の値下げをすれば、その製品を買っている大口客である自社が抱えるフランチャイズ加盟店の仕入れコストが下がるため、これまた利益ががります。
居酒屋の利益率を一定にするために、メニューの値段を下げたり値下げキャンペーンを売ったり、加盟店そのものの宣伝を経費を使って行えば、居酒屋の知名度上昇からの客足の増加も狙えるでしょう。
居酒屋の客足が増えると、当然のように仕入れも増えるわけですから、食料品生産事業と食品卸事業の売上は更に伸びることになります。

シナジー効果は掛け算

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まさに、1つの事業の業績の伸びが、互いの事業の業績に好影響を与えているため、売上や利益は掛け算で伸びていきます。
ここで注意して欲しいのが、売上は足し算ではなく掛け算で伸びるということです。
つまり、互いの業績が正の数字でプラスになっていれば、業績の伸びは凄まじいことになるのですが、仮に、片方の売上がゼロになった場合、業績はゼロとなります。

ゼロに何を掛けてもゼロになるので、これは当然ですよね。
逆に、片方の業績がマイナスになれば、グループ全体の業績は加速度的に減っていきます。

例えば、大きな事業を複数行っている大きな会社があったとして、この会社の1つの事業が不祥事を起こしたとした場合、そのマイナスの影響はその事業だけにとどまりません。
不祥事を起こしたという悪い噂や、グループ全体に波及して、すべての事業に悪影響を与えるため、グループ全体で見た業績の悪化は凄まじいこととなります。
これが、シナジー効果の怖いところです。 シナジー効果は、プラスに働けば業績の急激な伸びを可能にしますが、悪い方向に転んでしまえばマイナスの相乗効果が発揮されてしまうため、大ダメージを受けてしまいます。

ということで今回は、前回のたとえ話をもう一度話したため、シナジー効果に関しては少ししか話せなかったので、次回にもう少し詳しく話していこうと思います。