【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第36回【経営】シナジー効果(2)
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- シナジー効果
- シナジー効果のマイナス面
- マイナス効果は関連事業に波及する
- マイナス同士の事業でもプラスにならない
- 相補効果
- 無関連事業のメリット
- 無関連分野への進出のデメリット
- 企業買収も考え方は同じ
注意
この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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kimniy8.hatenablog.comシナジー効果
前回は、関連多角化のシナジー効果に焦点を当てて話してきましたが、今回は、その続きとなります。
前回をまだ聞かれていない方は、そちらから聞いていただけると、より話が分かりやすくなると思います。
本題に入る前に前回の話を簡単に振り返ると、シナジー効果とは日本語でいうと相乗効果で、複数の事業が互いに刺激しあって、業績が掛け算で上昇していく効果のことです。
つまり、会社の中に事業Aと事業Bがあり、この2つの事業にシナジー効果が働いている場合、Aの事業の業績が2倍になるとBの業績が変わらなかったとしても、会社の業績は2倍になるということです。
仮に、事業Bの方も業績が2倍になったとしたら、会社全体としての業績は4倍になります。 事業の業績を掛け合わせるため、互いの事業が成長していれば、その恩恵は凄いものとなります。
もし、互いの事業にシナジーが働いていない場合は、互いの業績は単純な足し算になるので、仮に事業Aと事業Bの売上や利益が同じ規模として、事業Aの売上だけが2倍になった場合は、会社全体としての業績は1.5倍にしかなりません。
違いとしては掛け算と足し算の関係なので、業績の伸びが大きくなればなる程、シナジー効果が働いているか働いていないかで大きな差が生まれてしまいます。
一応、誤解のないように注意としていっておきますが、シナジー効果は互いの業績をかけ合わせたような勢いで業績が伸びていくという例えであって、本当に互いの業績の伸び率をかけ合わせたものが会社としての最終利益になるわけではありません。
あくまでも、掛け算をしたような効果で業績が変化するということです。
シナジー効果のマイナス面
この掛け算というのが曲者で、仮に、事業Aか事業Bのどちらかの業績がマイナスになった場合は、会社としての業績がマイナスになったりもします。
何故なら、掛け算で片方がプラスでもう片方がマイナスの場合、答えはマイナスになるからです。
例えば、事業Aで不祥事を起こし、会社としてのブランドを著しく傷つけてしまったとしましょう。
事業Aと事業Bに密接な関わりがあり、両者にシナジー効果が働いている場合、不祥事を起こした事業Aによるブランドイメージの低下により、事業Bで作っている製品イメージも低下してしまい、業績がマイナスになる可能性が高まります。
たとえ、事業Aの事業規模が小さくて、事業Bの規模が比べ物にならないほど大きかったとしても、シナジー効果は掛け算として考えるため、最終的な業績としてはマイナスの効果が出てしまいます。
マイナス効果は関連事業に波及する
具体例を出すと、品質の高さを売りにした事業Aを営む会社が、信用を積み重ねることで消費者から信頼を獲得し、その信頼を元に事業Bを展開して大成功を収めたとしましょう。
事業規模としては事業Bの方が圧倒的に大きくなり、これらの事業を営んでいる会社もそれに応じて大きな会社へと成長したとします。
しかしそこで、事業Aの製品で品質の偽装問題が発覚したとします。
もともとこの会社の事業は、事業Aの品質の高さをベースにして展開していたわけですから、この品質偽装によって、この会社は消費者からの信頼を失ってしまうでしょう。
しかしここで信頼を失うのは、事業Aの製品品質やブランドだけではありません。 事業Aの信用を元にして展開した事業Bの方も疑われます。
『同じ会社なんだから、こちらの事業でも不正行為をしているんだろう?』といった具合にです。
つまり、シナジーが働く事業の1つが何らかの理由で業績が下振れしてしまえば、もう一つの事業にも多大な影響を与えてしまうということです。
マイナス同士の事業でもプラスにならない
では、シナジー効果が掛け算であるのなら、事業Aも事業Bもマイナスになった場合は、マイナスとマイナスをかけ合わせてプラスになるのかというと、そうはなりません。
これは先程も注意として言いましたが、シナジー効果というのは、各事業間の実際の業績の伸び率をかけ合わせた数字が、そのまま会社の業績になるわけではありません。掛け算で考えた方が理解しやすいという概念です。
その為、仮に事業AとBの両方で業績が下振れしてしまえば、業績は加速度的に落ちていく可能性があります。
相補効果
一方で、シナジー効果が働きにくい無関連多角化を行った場合は、各事業の業績は掛け算にはならず、単純な足し算となる為、1つの事業の業績が下振れしたとしても、マイナス分はその事業のマイナスだけでとどまります。
シナジー効果が発揮されていないため、互いの事業は切り離されているので、相乗効果によるプラスの効果が得られない代わりに、抱えている事業の1つの業績が大幅に悪化したとしても、その悪影響はは他の事業には波及しません。
前にアンゾフの成長ベクトルを紹介した際に、携わっている市場そのものが縮小している場合は多角化、それも無関連多角化を選んだ方が良いと説明しましたが、それにはこのことが関連してきます。
例えば、自分たちが長らく携わっていた市場が縮小し、将来、事業を打ち切らなければならない可能性が高くなったとしましょう。
この際に、事業展開した際の成功確率が高いからという理由で、既存のビジネスと関連性が高くシナジーが発揮できる事業を展開してしまった場合、その市場が崩壊すれば、その影響はせっかく新たに作った事業にまで波及してしまいます。
既存の事業がうまくイカないからと、せっかく新たな事業を展開したのに、既存事業が倒れた影響で全ての事業が連鎖的に倒れてしまえば、意味はなくなります。
そこで、既存事業が斜陽産業になってしまった場合は、それほどシナジーの働かない事業を敢えて展開することで、新事業に悪影響が及ばないようにするという選択肢があります。
つまり、敢えてシナジーが働かないようにすることで事業間の関係性を断ち切り、リスクの分散はかるという考え方も出来るわけです。
無関連事業のメリット
例えば、写真を取るカメラと言えば、昔はフィルムが絶対に必要なものでしたが、デジタル化が進んでいく中で、フィルム市場はどんどんと縮小していきました。
この市場でシェアを握っていた富士フィルムという会社は、将来的にフィルム事業は衰退すると思い、新たに化粧品事業に進出します。
カメラのフィルムと化粧品は全く関連性がなく、カメラフィルムの品質が高いからと言って、化粧品の品質が高いと思われることはないでしょう。
当然のことながら、この2つの市場は重なっていないため、対象とする顧客も変わってきます。
2つの事業は製品も市場もかけ離れ過ぎているため、シナジー効果は得られませんが、富士フィルムのメイン事業であるフィルム事業の業績が下がったとしても、化粧品市場にはほとんど影響は与えないでしょう。
これがもし、フィルム事業と関連性があり、シナジー効果が得られる様なカメラやフィルム関係の新事業を行っていれば、最初の事業展開はしやすいかもしれませんが、フィルム市場の縮小に引きずられて新規事業の業績も悪くなっていたかもしれません。
しかし、全くの無関連市場に飛び込むのは、かなりリスクが高く、成功する可能性も低いです。 では何故、この様な現象が起こるのでしょうか。
無関連分野への進出のデメリット
両者の違いを簡単に言ってしまえば、経営資源の流用ができているのか出来ていないのかにつきます。
経営資源とは、会社が持つヒト・モノ・カネ・情報のことです。
既存事業で得た経営資源を、新規事業でも流用できるのであれば、その新規事業は成功しやすく、シナジー効果も得られやすくなります。
逆に、自社が持つ経営資源を流用できない市場に挑戦するのであれば、その新規事業の成功率は低くなります。 何故なら、その市場に向けた経営資源を1から集める必要があるからです。
本業である程度の利益を稼げている状態で新規事業に参入するのであればカネは問題ないでしょうが、その市場で売るためのモノや、それを仕入れたり作るためのヒト、その市場の情報などを1から集めてくる必要があります。
これは、言ってみれば何もない状態で1から起業するのと等しいため、成功させるためには相当な準備や努力が必要となるでしょう。
一方で、自社で持っている情報を新市場でも流用できたり、すでに抱えている社員が新市場にも対応できる場合、今ある経営資源を流用することが出来るわけですから、初期投資を相当減らすことが出来ます。
そのうえで、すでに既存ビジネスで構築した得意先や仕入先、サプライチェーンなどを流用できたり、既存ビジネスのブランドを利用できたりすれば、事業の成功率は跳ね上がるでしょう。
このようにして新規事業が成功すると、そこで得た情報や人間関係、企業間の関係を既存ビジネスにも流用できたりするわけですから、相乗効果が働きやすくなります。
企業買収も考え方は同じ
このシナジー効果ですが、何も新規事業に限った話ではありません。 事業買収や起業の統合、提携などでもシナジー効果は発揮されます。
企業買収や事業の統合・提携などは、基本的にはシナジー効果が働く相手を選ぶ必要があります。
この様な自社以外の勢力が加わる形でのシナジー効果は、両者が持つ経営資源間で相乗効果が得られやすいような相手を選ぶ必要があります。
単純な例えをするのなら、開発力のある企業と販売力のある企業が組めば、互いの強みを活かすことが可能となります。
長々と話してきましたが、基本的には新規事業を行う場合にはシナジー効果を狙うべきです。何故なら、その方が事業の成功確率が高く、新規市場の影響で既存事業の売上も伸びる可能性があるからです。
ただ、既存事業で関わっている市場が縮小していき、将来無くなってしまう可能性が高いのであれば、敢えてシナジー効果が薄い無関連多角化戦略を選ぶというのも、1つの手ではあります。
ということで、シナジー効果の話は今回で終わり、次回は多くの事業を抱えた際の戦略の考え方について話していきます。