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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第37回 【経営】PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)(1)

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目次

注意

この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

kimniy8.hatenablog.com

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

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前回までで、多角化についての話をしてきたので、今回も、その流れで多角化戦略についての考え方を紹介します。
今回紹介するのはPPMと略されるプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントです。

このプロダクトポートフォリオマネジメント、以下PPMと言いますが、これはそれぞれの事業が置かれている状態を整理し、どの様に資源配分をしていくのかというのを整理するためのツールです。
それぞれの事業の位置づけを行って資源配分を行うツールであるため、これを使うのはすでに複数の事業を抱えている場合です。
最初に注意としていっておきますと、このPPMでは前回に紹介したシナジー効果については考慮されていません。

そういったものを排除して、事業間の関係性を単純化して整理するのが目的のツールなので、その事業の声質であったり、事業同士の関係性などは考慮されていません。
その為、これだけを使って経営資源の再分配を行うのは避けたほうが良いと思います。
一つの目安として参考にする程度で、実際に判断を下すのは、その事業の特性であったりシナジー効果などの他の事業との関連性を見極めた上で行う必要があります。

PPM

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早速、PPMについて説明していくと、これは、縦軸に市場の成長性を取り、横軸に市場シェアをとったマトリクス図です。
縦軸の下の方は市場の成長性が低い状態で、上の方が市場成長率が高い状態。
横軸は、左側が市場シェアが高い状態で、右に行くほど自社の市場シェアは低くなると考えてください。

そしてこれを、漢字でいうところの田んぼの田の字のように4つの領域に分けて、それぞれに名前をつけていきます。
市場成長率が高く、市場シェアが低い状態は『問題児』 同じく市場成長率は高いが、市場シェアも高い場合は『花形』
市場成長率は低いが、市場シェアが高いのは『金のなる木』 そして、市場成長率も市場シェアも低い状態が『負け犬』です。

問題児

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まず、基本的に新規事業というのは、問題児から始まると考えて良いです。
何故なら、新規参入した直後というのはその市場での実績も信用力もないですし、参入直後なわけですから、当然のように市場でのシェアは低い状態です。
しかし、新規で事業参入するわけですから、市場成長率は高いはずです。 何故、市場成長率は高いのかというのは、前回までに説明してきた多角化戦略の回でも話しましたが、そもそも成長率の高い市場にしか進出しては駄目だからです。

全く設備投資も広告宣伝も必要がない状態なら話は変わってきますが、新規事業を立ち上げる場合には、それなりに費用がかかります。
費用をかけるからには、最低でもその費用を回収しなければならないわけですが、その参入先の市場が縮小し続けている真っ最中であるのなら、投資資金の回収見込みはなくなります。
何故なら、そんなシュリンクしている市場でいくらシェアを広げたところで売上の伸びは期待できないからです。 その為、新規参入をする場合、例えシェアが思うように取れなかったとしても売上が上がりやすい成長市場を狙うのが定石です。

その為、新規事業で立ち上げた場合は基本的には、市場成長率が高いがシェアが低い『問題児』から始まると考えてもらって良いです。

問題児の動き

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この問題児ですが、上手くいくと『花形』に昇進しますが、思ったように市場が成長しないままに衰退していくと、『負け犬』に落ちてしまいます。
負け犬に落ちたから、その事業は確実に赤字になるのかといえば、そういうわけではありませんが、事業としての旨味はない場合が多いです。

もし、そのまま事業を続けたところでシェアも握れず、市場の縮小も止まりそうにないのであれば、出来るだけ早期に撤退することを考えるべきです。

花形

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では、うまい具合に市場が成長し続けて、自社の市場シェアも伸びてきて『花形』になった場合は、それで万々歳なのかというと、そうでもありません。
というのも、『花形』という言葉のイメージからこのポジションの事業は儲かってそうなイメージがありますが、実際には儲けが出ていないことが多いからです。
事業というのは、成長期にものすごい出費が必要になるケースが多いです。 例えば、ある市場で製品を売って市場シェアを高めようと思うと、名前を売るために多額の宣伝広告費が必要になる場合も出てくるでしょう。

宣伝のかいがあって販売量が増えてば、生産設備を増強しなければならない場合もあるでしょう。
取引先企業が増えれば、機会損失を防ぐために在庫を積み上げなけれればならないことも出てくるでしょう。 ここで新たに出てきた機会損失を簡単に説明すると、注文があるのに商品がないから売れないという状態のことです。
商品を切らすと売上が立たないだけでなく信用も失うため、それを避けるためには在庫を貯めておく必要があります。

この積み上がった在庫はいずれ販売されるわけですが、現金化はされていないため、名目上は会社の資産扱いですが、実際には経営を圧迫する存在となります。
会計的にいえば、キャッシュが減って棚卸し商品が増える。つまり現金という使い勝手の良い資産が、すぐには現金化出来ない商品という資産に固定化されてしまいます。
そのカネを現金で用意できればよいですが、出来ていなければキャッシュを借り入れる必要があるため、会社の財務内容にも影響を及ぼします。

キャッシュのタイムラグ

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会社の資金繰りというのは、このキャッシュに依存するので、これが著しく減少するということは、会社的には厳しい局面に追い込まれるということです。
つまり、成長市場でシェアを伸ばし、得意先も増えて売上も順調に増えているのに、現金が足りないという状態に追い込まれる可能性が出てくるということです。
その為、事業が『花形』に移行した場合は、会社の資金配分に慎重にならなければならない場合も出てきます。

他の事業で余りある程の金があるのなら問題はないですが、そうではなく経営資源がカツカツの場合は、どんどんと投資をするのではなく、少し保守的になったほうが良いということもあるでしょう。
金融機関に本当に事業の将来性を見る目があるのなら、こんな心配はしなくてもよいのかも知れませんが、銀行などは事業の将来性ではなく財務面しかみていないため、負債が多くなって財務が悪くなれば、貸し剥がしをしてくる可能性も出てきます。
事業に将来性があり、このまま投資をすれば回収見込みがあるにも関わらず、金融機関から貸し剥がしを受けたがために撤退しなければならないという事態を避けるためにも、投資は慎重にすべきでしょう。

貸借対照表

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ここで、少しPPMとは話がずれますが、先程、話題に出てきた事業におけるキャッシュの動きについて、簡単に説明しておきます。まず、キャッシュというのは何なのかというと、簡単に言えばすぐに現金化出来る様な資産のことです。
財務について勉強したことがない方は、会社が持っている資産に違いなんてあるのかと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、会社の持つ資産というのは、その特性ごとに違いがあるんです。
資産というのは、貸借対照表の左側に書かれているもののことですが、例えば、現金や銀行預金など直ぐに返済などに当てられる資産などを、基本的にはキャッシュと呼びます。

定期預金や受取手形など、数ヶ月待てば現金化されるものも、計算方法によってはキャッシュに入れる場合もあります。
しかし、会社で生産したけれども未だに売れていない在庫商品であったり、製品を作るための機械などの設備は、資産ではありますがキャッシュではありません。
何故なら、すぐに現金化出来ないからです。 在庫商品などは、大幅な値引きをすれば現金化出来るかも知れませんが、それをすると会社が帳面につけている簿価での販売はできないでしょう。

機械などの設備については、資産という名目で計上されてはいますが、減価償却によって毎年簿価の金額は下がっていきますし、それを売却した際の価格は、簿価の金額で売れるかどうかはわかりません。
それに、製造機械を売ってしまえば今後の経営ができなくなるため、廃業や事業を辞める決断をしない限り、そもそも売るという選択肢はありえません。
その為、会社が持つ資産の中でもキャッシュと呼ばれるものは、その中のほんの一部にしか過ぎません。 これを金額として分かりやすく示すものにキャッシュフロー計算書というものがありますが、それについては別の機会に話したいと思います。

キャッシュと売上の関係

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このキャッシュですが、事業を始めたばかりの頃は確実にマイナスとなります。 例えば製造業を例に出して考えると、工場建設や機械の購入は現金での出費になりますし、設備を購入すればキャッシュが固定資産に置き換わってしまいます。
置き換わるとは、キャッシュが減って固定資産が増えるということです。材料の仕入れも現金で行うため、開業の時点で、キャッシュは元あった額からかなり減少してしまいます。
では、事業が順調に進んでいけばキャッシュは増えるのかというと、増えません。 何故なら、作った製品には知名度がないため、最初は多額の宣伝広告費が必要だからです。

当然この経費もキャッシュの減少となります。 在庫が増えれば、キャシュは商品に置き換わってしまいますし、事業を発展させれば発展するほどキャッシュは減少していきます。
しかしこのキャッシュは下がり続けるわけではなく、売上が一定レベルを超えると途中で増え始め、最終的には失った分を取り返し、それ以上に増えていきます。 この増えるタイミングは、成長期の半ばといわれています。
これをグラフで表すとS字カーブとなります。 事業のライフサイクルもS字カーブとなるのですが、キャッシュフローのグラフの推移はそれとは若干ずれてしまうため、事業は絶好調だけれども現金不足という事態が起こりえます。

この時に舵取りをミスってしまうともったいないので、成長期ほど、慎重になるべきだと思います。
話をPPMに戻すと、花形事業の成長期はいずれ終わり、その事業の市場成長率は下がっていきますが、そうすると事業は、PPM的には『金のなる木』へと変わっていきます。
この金のなる木の説明ですが、これは次回に行っていきます。