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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第53回【経営】ブランド(4)

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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ファミリーブランド


今回も、ブランドについて話していきます。
前回はファミリーブランドとダブルブランドについて触れていきました。

簡単に振り返ると、ファミリーブランドは同じ様な性質の顧客層に向けて同じ様な商品ラインナップの商品を出し続ける際に取るもので、基本的には同じブランド名で商品を出し続けるものです。
例えばアパレルメーカーは、一つのメーカーが複数のブランドを展開していたりもしますが、同じ様な雰囲気で同じ様な顧客層に向けて作っている商品については、同じブランド名で出しています。
何故、同じブランド名で出し続けるのかというと、顧客の頭の中での自社のブランドイメージを固定化させるためです。

具体例を出すと、ファーストリテイリングというアパレルの会社は、ユニクロの他にGUというブランドを持っています。これらブランドは有名ですのでご存じの方も多いと思いますが、皆さんはこれらのブランドにどの様なイメージを持っているでしょうか。
ユニクロよりもGUの方が安いというイメージを持ってはいないでしょうか。多くの方がGUの方が安い服が多いというイメージをお持ちだと思いますが、それは会社側がブランドイメージをその様に印象づけるために戦略的に動いていたからです。
GUが出来る前のユニクロは、他のメーカーに比べて低価格の服を売っているというイメージでしたが、GUという低価格を全面に出したブランドを新たに出したことによって、こちらが低価格ブランドという役割を担うようになりました。

その結果として、ユニクロはその上位ブランドという位置づけになり、顧客層が若干ズレる事になりました。
顧客層が分かれるということは、そのそれぞれの顧客に対してターゲットを設定して商品開発を行うことになるので、GUは低価格を求める顧客向けの商品開発を行うことになりますし、ユニクロはそれよりも高い商品開発を集中して行うことになります。
この例の場合は、価格帯で顧客層を分類して考えていますが、この他にも、デザインであったり年齢層といった感じで市場を分けることも可能で、それぞれの市場に向けた商品を同じブランド名で出すのが、ファミリーブランドです。

ダブルブランド


次に紹介したのがダブルブランドで、こちらは一つの商品に2つのブランド名を併記する方法となります。2つのブランドで勝負をするのでダブルブランドです。この方法は基本的に、顧客層が同じで製品の質が違う場合に使われます。
これは具体的な例を上げたほうが分かりやすいと思うので例を上げると、アサヒビールというブランド名と『一番搾り』というブランド名を併記して商品を売るという事です。
何故この様な事をするのかというと、商品個別のブランド名よりもメーカーとしてのナショナルブランドの方が有名で信頼されている場合、そちらの名前を併記した方が売りやすくなるからです。

今でこそ一番搾りは有名になり、この名前だけでも十分に知名度があるため、ダブルブランドの意味は薄れていますが、仮にキリンビールが全く新しいブランド名の商品を開発し、キリンビールという名前を併記せずに売り出す場合を考えてみてください。
消費者は、見たこともない商品名のビールが並んでいたとしても手に取りづらいでしょうし、実際に売れるかといえば売れないでしょう。
というのもビールを買う消費者は、常に目新しいビールを探し、新商品が出ればすかさず買うといった冒険的な行動は取らず、いつも呑んでいる商品を買いがちだからです。

そのため、どこのメーカーが作っているかわからない、全く聞いたことがないような商品をあえて購入したりすることは少ないです。
しかしこの新商品に、いつも自分が購入して呑んでいるビールを作っている、信頼できるメーカー名が併記されていたらどうでしょうか。
自分が贔屓にしているメーカーが新商品を出したとすぐに分かるため、品質については信頼できますから、興味本位で購入しやすいです。

また、ブランド名を商品ラインナップ毎に変えることによって、メーカーは製品間の違いを簡単に表現することも可能になります。

ダブルチョップ


ここまでが前回に話したことです。ちなみに、このダブルブランドに結構似ている考え方があるので、ついでに紹介しておきます。それは、ダブルチョップというものです。
先程のダブルブランドとの違いを説明するために、もう一度ダブルブランドの前提を話しておくと、この方法はメーカーが自社製品を出す際に、商品ラインのブランド名に加えてナショナルブランドである自社ブランドも併記するという方法です。
それに対してダブルチョップというのは、他社の名前を併記して販売する事です。

これは、他社のブランド名の信用力を利用して自社製品を販売するという方法なので、自社ブランドがあまり認知されていなかったとしても、併記する他社のブランド名が有名であれば、そのブランドの信用に乗っかることが出来ます。
ちなみに当然ですが、勝手に他社ブランドを名乗って良いなんてことは法律的にも道徳的にもありえないので、この方法は1社で行うものではなく、他社と合同で行うものとなります。
これはどの様な時によく使われるのかというと、プライベートブランドを開発する際などによく使われたりします。

プライベートブランドというのは以前にも説明しましたが、簡単に言えば、スーパーなどの小売店や卸売業者など、商品の製造設備を持たない会社が商品企画し、実際の商品自体はメーカーに作ってもらうことで成立するブランドのことです。
大手スーパーは、自社のプライベートブランドとしてビールや調味料などを作って販売していますが、その際に実際に作っているメーカーの名前を併記することで、商品に安心感を与えようとするのがダブルチョップです。
大手スーパーは販売実績などはありますし、普段から使っている店であれば、顧客側は『変なものは仕入れていないだろう』という安心感は持っているでしょうが、それでも、メーカーが有名なところであれば更に安心します。

日用品の場合は顧客は安心感を求めることが多いでしょうから、メーカー名を併記するだけで売上が伸びる可能性があるのであれば、併記するほうが良いというのが基本的な考えです。

過剰な価値をつけない


少し話はずれますが、この様な考え方は食料品や飲食店などでもよく見られます。
原材料にドコドコ産の野菜を使っているとか、ブランド牛を材料に使っているといった売り文句はよく観ると思いますが、あれも、食材が持っているブランドの力を借りて自社製品の価値を上げているという点では同じです。
提供している店や料理人のことを全く知らなかったとしても、食材の方がが一流であれば、出来上がった製品もそれなりのクオリティを保っているだろうと考える人は多いので、それを利用したものと言えます。

ただ、この際に気をつけなければならないのは、仮に提供した商品が顧客の期待するレベルを下回っていた場合、普通に販売していたときよりも顧客に悪い印象を与えてしまう可能性があるということです。
顧客は使用されている食材ブランドによって、商品に対して過度の期待をしている状態で購入します。 にも関わらず、大した商品を提供できなかった場合、顧客は精神的にかなりガッカリしてしまいます。
この様に気持ちが落ち込んでしまった場合、顧客はなんとかして気持ちを落ち着かせようとするのですが、多くの場合、『買い物に失敗したのは自分のせいではなく、相手が過剰な宣伝をしたからだ。自分は騙されたんだ』として納得しようとします。

顧客がこのようにして自分を納得させた場合、顧客の中では当然、商品の販売者は大したことのない商品を過剰な宣伝で騙して買わせた悪者で、自分は騙された被害者だということになりますから、販売者の印象は相当悪くなります。
この様な心理の動きを認知的不協和といったりもするそうですが、この様な状態に陥った顧客は二度と商品を買わないだけでなく、積極的に販売者の悪口を言って回る可能性すら出てきます。
特に現在では、誰でも自由にSNSで自分の発言を発信できるわけですから、場合によっては大きな問題になる場合もあります。

口コミ効果


前に、口コミの重要性について話したと思います。口コミは信頼できる知り合いが勧めて来るため、普通の広告と比べて信用されやすく、人の行動にも反映されやすいです。
その口コミが会社にとってマイナスの方向に働いてしまうといえば分かりやすいかもしれません。
つまり、知り合いから会社や製品の悪口を聞かされることで、今後、その人がその製品を購入しないようになってしまう可能性があるということです。

ワイドショーなどを観ても分かる通り、人はネガティブな話を好む傾向にあるので、人から会社や製品の悪口を聞いて購入をやめてしまう人は、自分が購入してもいない商品の悪口を更に別の知人にする可能性もあります。
この様な連鎖が進んでいくと、そのブランドの価値がマイナスになってしまい、企業名や店名、ブランド名をつけることで逆に売上が落ちてしまうという自体にも陥ってしまう可能性があります。
つまり、過度な行き過ぎた宣伝は逆効果になってしまうということです。

ただこれは、企業努力によって製品のクオリティーの方を上げてしまって、宣伝内容と製品品質の釣り合を取ってしまえば、問題が無くなったりもします。
単に他人のブランドを借りるだけで自らの努力をしなければ、結果として痛いしっぺ返しを食ら可能性があるということでしょう。
まぁ、何事もあまり楽をしようとせず、誠実な商売をするというのが、結果としてブランドを守ることにつながるということでしょうか。

ということで今回は、ダブルブランドの派生の話をしていきましたが、次回は残りのブランド展開について話していきます。