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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第57回【経営】ブランド8

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

kimniy8.hatenablog.com

ライン拡張戦略


今回も前回の続きで、ブランド戦略について話していきます。
前回に紹介した戦略は、ライン拡張戦略とブランド拡張戦略でした。

まず、ライン拡張戦略から振り返ると、これは既存ブランドで既存製品を出していく戦略です。既存製品とは既に売っている商品と全く同じ商品というわけではなく、同じ様なカテゴリーの商品という意味です。
具体例をだすと、アパレルの場合で言えば、同じターゲット層に対してブランドの雰囲気を崩さないような同系統の服であったり、これまでの商品の色違いやサイズ違いを出すといった感じです。
サイズ違いといっても、アパレルの場合はあまりに大きなサイズを出してしまうとデザインのシルエットも崩れてしまうでしょうし、ターゲット層そのものも変わってしまいそうですが、そういった場合はこれには当てはまらないと考えて良いです。

ブランドというのはイメージであるため、きっちりとした線引が出来るようなものでもありませんので、ケースバイケースで考えてもらいたいのですが…
これまでに販売してきた製品と同じイメージの商品を引き続き同じブランド名で出していくのが、このライン拡張戦略です。
この戦略によって得られる効果は、同じイメージの商品郡を出し続けることによって、そのブランドのイメージを固定化させることが出来るようになることです。

自社商品を思い出してもらう


顧客の頭の中で、ブランドイメージを特定の製品群に関連付ける事によって、顧客がその製品を買いたいと思った際に、真っ先に思い出してもらえるようになります。
何故、顧客に真っ先にブランド名を思い出してもらわないといけないのかというのは過去にも説明してきましたが、簡単に言えば、思い出してもらえないような商品は売れないからです。
人は、頭の中で思いついた行動しか起こせませんので、見込み客が消費したいと思った時に、自社の製品のブランド名や販売先の店名などの場所のブランド名を思い出してもらえることは、そのまま売上に直結することになります。

人間は物を覚える際に段階があり、最初は普段はブランド名を忘れているけれども、実際に商品を見たり人から名前を聞いたら思い出せる様なレベルから始まり、最終的には商品カテゴリーを聞いただけで真っ先に思い出すようなレベルに到達します。
心理学的には4段階ぐらいに分かれるそうですが、この中のどの段階にも入らないような無名ブランドの場合、顧客の購買リストにはそもそも入りません。
この状態というのは、検索に引っかからないホームページのようなもので、仮に存在していたとしても誰もその存在を知らないので手に入れようとも思いません。

この状態を避けるために、自社のブランド力を育てる。もしくは育った自社や他社のブランド力を利用する方法として考え出されたのが、ブランド戦略といえます。

ブランド拡張戦略


話が反れたので元に戻して、次のブランド拡張戦略ですが、これは先程とはある意味真逆の戦略で、既存のブランドを使って別の分野に進出していくという戦略となります。
先程のライン拡張戦略が、どちらかといえばブランドに特定のイメージを与えることでブランド力を育てていくことに重心を置いているのに対し、こちらは既存のブランド力を利用することに重心を置いています。
既存のブランド力を利用する戦略であるため、当然ですが、既存ブランドにそれなりのブランド・エクイティ、つまりブランドとしての知名度が高くなければ意味はありません。

意味はないというのは、知名度がないブランドがこの戦略をとったからといって、売上は増えないということです。
そのため、そもそものブランド力がない場合は、先ほど紹介したライン拡張戦略でブランドイメージやブランドとしての信用力を高めた方が良いということになります。
一方で、既に強力なブランドを持っている企業の場合は、既存ブランドで培ったブランド力を武器にして、新分野に進出することも可能となります。それがこの、ブランド拡張戦略です。

イメージの抽象化


このブランド拡張戦略に必要なブランドイメージとしては、個別商品に紐付けされる様な具体的なイメージではなく、『信用できそう』とか『質が高そう』といった曖昧なブランドイメージの方が良いです。
何故なら、具体的な商品イメージに紐付けされたブランドイメージというのは、新規市場で活かすことが出来ないからです。
例えば、精密な電気機器をつくっている会社が外食産業に進出した場合に、電気機器と料理との間には大きな乖離がありますので、この乖離によって、新規市場でのブランドの関連付けが難しくなってしまいます。

また、新規市場の方で頑張れば頑張るほど、元々あった精密機器メーカーとしてのブランドイメージが崩れていき、外食企業としてのイメージが濃くなっていってしまうため、会社全体として売上が上がるかどうかもわかりません。
大抵の場合は、ブランドイメージが崩壊して何をしたいブランドなのかがわからなくなってしまうことで、顧客に忘れ去られてしまう可能性が高いです。
何故なら、人はシンプルな関係性の方が覚えやすく、一方で要素が多くなんだか良く分からないものについては理解しようとは思わず、忘れる方を選ぶからです。

しかし『信頼できる』とか『質が高そう』といった曖昧すぎるイメージは、曖昧すぎるが故に、あらゆる分野で通用しますし、この様なイメージが製品に負荷されると、大抵はイメージがプラスになります。
この様なブランドイメージを持つ企業が行える戦略がブランド拡張です。

マルチブランド戦略


次に紹介するのはマルチブランド戦略で、これは、既存製品をブランド名を変えて販売していく戦略です。
同じ様な商品をブランド名を変えて売る利点としては、売り場の販売スペースを増やす効果があります。

売り場の販売スペースを増やすとは、例えば私の得意先にお菓子メーカーがあります。そのメーカーは自社で販売を行うのではなく、小売店に販売を委託する形で商売をしています。
この様に、メーカーが自社で販売を行わずに小売店に任せるという方法は多くの企業がとっている販売方式だと思いますが、この方式の場合は当然ながら、小売店側がある程度の影響力を持つことになります。
売店側が巨大な店舗網を持っている場合は当然ですが、自分が作っている商品カテゴリーで競合他社が多く、なおかつ商品の差別化も出来ていない場合は、多数あるメーカーの中から自社の商品を小売店に採用してもらわないといけません。

この様な状態だと、小売店側の立場が強くなってしまいます。 これはかなり前に紹介した、『5フォース分析』の買い手の交渉力に当てはまります。
この小売店側が、『取扱商品を増やしたいので、従来の商品の陳列スペースを半分にして、空いた棚に新製品を置きたいので、新商品を持ってきて』と言ってきたとすれば、なんとかして小売店側の期待に答えなければなりません。
何故なら、もしその期待に答えられなければ、その空いた棚には他社の製品が並ぶことになるからです。ライバルが増えれば当然、自社製品に余程のブランド力がない限りは売上が減ることになります。

こういった要求に答えるために新商品を作る場合、現在つくっているのと似たような商品を別のブランド名で出すのが一番手っ取り早いです。
全くの新商品を考え出そうと思うと、研究開発費や期間が必要となりますが、これまでに作ってきた商品と同じカテゴリーのものであれば、既に製造ノウハウもその分野に詳しい人材もいるため、コストが掛かりません。
これまでの商品を少しマイナーチェンジして、パッケージを変えてブランド名を変えれば、顧客にはそれが新商品に映ります。

メーカー側の理由


この他の理由としては、ブランド=イメージというのは前々から繰り返し言っていますが、これは逆に言えばブランド名を変えることでイメージを刷新できることにも繋がります。
そのため、これまでの商品展開とイメージを少し変えた商品ラインナップも作っていきたいと思う場合は、敢えてブランド名を変えることでイメージの方も変えることが出来るようになります。
例えばアパレルなどは、女性用の服飾メーカーとして同じターゲット層に対して服を作り続けているのに、複数のブランドを持っているメーカーがあったりします。

洋服というのはイメージの部分が大きいですから、微妙な世界観の差でブランド名の方も変えていくというのは行われやすいです。
電機メーカーなどがブランド名として自社の会社名をつけるのに対し、アパレルメーカーは製品ブランドの方を全面に出していることも多いです。
例えば、ユニクロファーストリテイリングとでは、どちらが知名度が高いかで考えてみると分かりやすいかもしれません。

新ブランド戦略


そして最後が、新ブランドです。これは、新しい製品を新しいブランドで販売していくもので、言い換えるのなら、これまでに自社で育ててきたブランド資産を使わない戦略となります。
既存ブランドを使わないのは、大きく分けて2つぐらいの理由が考えられます。
一つは、シナジー効果を切るためです。

既存ブランドの商品と毛色が違いすぎる市場に打って出る場合は、既存製品のブランドイメージが新市場に合わないことがあります。
この様な場合は、無理に既存ブランドを利用するよりも、新たにブランドを立ち上げてイメージをイチから作り上げていく方が良かったりします。
何故なら、仮に既存ブランドと同じ名前をつけたとした場合、新規事業立ち上げ直後は既存ブランドのイメージに新商品が引っ張られてしまって商品のイメージ付が難しくなってしまうからです。

仮に新規事業が上手くいった場合は、次は既存ブランドのイメージが新規ブランドの方に引っ張られてしまいます。このイメージが引っ張られるというのは、事業が成功した状態だけでなく、失敗してしまった場合も同じです。
これは失敗の仕方もあるのですが、製品品質や信用問題に関連するような失敗をしてしまった場合は、悪影響はその製品にとどまらず、ブランド全体に波及してしまいます。
この場合、新ブランドを立ち上げてブランドそのものを分けていれば、既存ブランドの方は名前が違うために同一視されず、失敗は新ブランド内だけで収まる可能性があります。

もう一つの理由は、企業買収などで他社ブランドを傘下に収めた場合です。買収するということは良いブランドだから買ったんでしょうし、その様なブランドは既に市場で高い信頼を得ている場合が多いです。
この様な場合は、敢えて自社ブランドに変えて販売するよりも、そのままのブランド名を使った方が一貫性が保てて顧客も混乱しないために、良いと考えられます。
以上がブランド戦略の説明です。