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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第52回【経営】ブランド(3)

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目次

注意

この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

kimniy8.hatenablog.com

2つのブランド

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今回も、ブランドについて勉強していきたいと思います。
前々回は、ブランドには大きく分けて2つあるという話をしました。
1つはプライベートブランドで、これはメーカー以外の流通業や卸売業が企画をし、メーカーに製造を依頼することで作ってもらって販売するものです。

例えば大型スーパーを経営しているイオングループでは、プライベートブランドとしてビールを出していたりしますが、ではイオングループがビール工場を持っているのかといえば、持ってはいないでしょう。
商品パッケージやビールの味などは企画として考えるかもしれませんが、ビールの製造そのものはビール会社に依頼して作ってもらいます。
もう1つのブランドはナショナルブランドで、これはメーカー側のブランドのことです。

4つのブランド

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これらの2つのブランドですが、更に細分化されていきます。
大きく分けると『標的市場が似ているのか』と、『商品ラインナップが似ているのか』の2つ。
この2つがそれぞれ。似ていると似ていない。言い換えれば同質と異質の2つに分かれるため、最終的に4つに分かれます。

標的市場の類似性

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標的市場の類似性や商品ラインナップについては前回に説明していますので、まだ聞かれていない方で詳しく知りたい方は、そちらをお聞き下さい。
前回のおさらいついでに簡単に振り返ると、標的市場が似ているか似ていないかというのは、簡単に言い直せば、ターゲットにしている市場が同じかそうでないかの違いです。
ターゲット層というのは、どういう顧客層に向けて販売するのかということで、大雑把に言えば男性向け商品なのか女性向け商品なのか。

仮に女性向け商品だとして、女性の中でもどの年齢層をターゲットにしているのか。仮に30代女性をターゲットにする場合、どういう趣味やライフスタイルを送っている人なのかといった感じで絞り込んでいく事をターゲットといいます。
何故ターゲットが必要なのかというのは、ターゲットの重要性のみを語った回を過去に配信したので、詳しくはそちらを聞いてもらいたいのですが、これも簡単に説明すると、極端な話、誰向けか明確でない商品を買う人はいないからです。
人は、自分様にカスタマイズされたような製品は興味を持ちますが、誰に向けて開発されたのかが分からないような商品を進んで買う人はいません。

つまり、理想としては全ての商品をそれぞれの個人向けにオーダーメイドで作るのが良いのでしょうが、そんな事をしていてはコストがバカ高くなってしまいますし、利益も出づらくなってしまいます。
利益が出ないというのは事業運営としてはありえないので、もっと効率を良くするために、似たような性質を持つ顧客層に向けて販売していくことで生産性を上げていくのが基本的な戦略となります。

話をマトリクス図の方に戻すと、製品ライン間のイメージと標的市場が共に同質である場合はファミリーブランド。
製品ライン間のイメージが同じで標的市場のみが異質である場合は、ブランドプラスグレード。標的市場の類似性が同じで製品ライン間のイメージが違う場合は、ダブルブランド。
標的市場も製品ライン間のイメージも両方違う場合は、個別ブランドと、4つのブランドに分かれます。

ファミリーブランド

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ではまず、ファミリーブランドから話していきます。
このブランドの前提となっているのは先程も話したとおり、製品ライン間のイメージとターゲットとしている顧客層が同じ状態の時です。
つまり、同じようなカテゴリーの製品を従来の顧客に販売するもので、これまでと同じブランド名をつけて同じ手法で販売していきます。

何故、プランド名を変えずに同じ名前で同じ方法で販売していくのかといえば、顧客の中でブランドイメージを固めてもらうためです。
似たような商品ラインナップにも関わらず、無闇矢鱈と新たなブランドを作って行ってしまうと、顧客からはブランド名を覚えてもらえません。
これは他のことに当てはめてみると分かりやすいと思います。例えば英単語を覚える場合、1つ英単語を覚えるのと似たようなアルファベットで構成されている英単語を10個覚えるのと、どちらが覚えやすいでしょうか。

これは当然、1つの単語を覚えるほうが覚えやすいですし、思い出す場合も思い出しやすいと思います。
前にも話したと思いますが、人が何かを買おうと思った際に、多くの人は一番最初の方に思い浮かんだブランドで買い物をします。
顧客に優先的に自社ブランドを思い出してもらうためには顧客が覚えやすいように、同じようなイメージの商品は同一ブランドで出すようにすることで、覚えてもらいやすくします。

できるだけ同じようなイメージの商品を1つのブランドで出し続けて顧客の中でイメージとブランドが強く結びつけば、それだけ覚えてもらいやすくなります。

ダブルブランド

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次に、標的市場は同じだけれども、製品ライン間のイメージや競争地位が異なっている場合ですが、この時はダブルブランドを採用します。
ダブルブランドとは、簡単に言えば2つのブランド名を併記する形で商品を売り出すことです。
2つのブランドを併記している商品なんて見たことがないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は多くの製品がダブルブランドを採用していたりします。

例えば、キリンビール一番搾りというブランドで商品を出すのがダブルブランドです。
商品ラインとしてのブランドは一番搾りですが、これにナショナルブランドであるキリンビールというのをつけることで、顧客は安心感を得ることが出来ます。
なぜ安心感を得られるのかといえば、多くの顧客はキリンビールというブランド名の方を、『どのような価格帯でどのような品質の製品を提供している企業か』というのを知っているからです。

一番搾り』というブランドだけで十分だろと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、今でこそ、一番搾りというのは既にブランドとして幅広く認知されていますが、最初からそうだったわけではありません。
商品が出始めて間もない頃は、まだ名前も浸透してはいないでしょう。その頃から『一番搾り』という名前だけで販売していたとすれば、同じ様にヒットしていたかどうかはわかりません。
例えば今、キリンビールが全く新しいブランドののビールを発売したとして、そこにキリンビールの名前を併記しなかった場合、顧客は全く馴染みのないブランドの商品を買うかどうかはわかりません。

これは他の分野でも同じです。 ソニーはテレビを製造して販売する際にブラビアというブランド名をつけていたりしますが、ソニーというブランド名を隠してブラビア単体で宣伝するということは行っていません。
何故かといえば、長年経営して信用を蓄積することで、市場で一定の人気を得ているからです。
そのソニーというブランド名を使わず、ソニーよりも知名度が低いブラビアというブランド名だけで販売するよりも、ソニーというブランドを併記することで知名度を利用したほうが得策なので、このような方法を取ります。

同じ顧客層

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このダブルブランドですが、先程のキリンビールの例でもソニーの例でも、それぞれ市場での顧客層は基本的には同じです。
キリンビールの顧客層で言えば、一番搾りは呑むけれども淡麗グリーンラベルは絶対に呑まないと決めている人は少ないと思います。
同じビールであるため、気分や懐事情によって他の商品を飲んでみるという人も多いと思いますし、ビールの場合は絶対的な価格が安いので、キリンビールから新ブランドが出たということで試しに呑んで見る人も多いと思います。

つまり顧客層そのものは全く違うということはなく、限りなく同じ層となっています。
では、ブランドイメージはどうかといえば、これは微妙に違います。 のどごしを重視していたり高級感を演出していたりとコンセプトそのものが違ったりもしますし、料理中に呑むのか、単独で呑むのかと行った感じで、消費する状況が違ったりもします。
この様に消費するタイミングや価格帯などを分けて、それぞれに違ったブランド名がつけられているため、顧客側としてはシーンに合わせた商品を購入することが可能となります。

2つのブランドの矛盾?

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ここで、『先程のファミリーブランドの説明では、同じ顧客層向けに多数のブランドを展開するのは止めた方が良いと説明していたのに、その話とは矛盾しないのか?』と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
先程の説明では、同じ顧客層向けに向けた商品に複数のブランド名をつけると、顧客に自社ブランドを思い出してもらえないため、止めたほうが良いと説明しました。
今回のダブルブランドでも先程のファミリーブランドと同じ様に、販売する顧客層は同じなので、先程の理屈であれば、ブランドは一つで統一したほうが良いことになってしまいます。

では本当に矛盾するのかというと、実は矛盾はしていなかったりします。

2つのブランド

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何故か。先程、ファミリーブランドでブランドを乱発しないほうが良いと説明したのは、顧客にブランド名を覚えてもらいやすくし、購入機会が訪れた際には真っ先に自社製品を思い出してもらうためでした。
このダブルブランドでは、その役割はナショナルブランドのほうが引き受けてくれています。

個別の商品ラインに付いているブランドは、ヒット作になって長く販売されれば知名度も高くなり、顧客のイメージとも結びつきやすくなりますが、それまではナショナルブランドのイチ商品に過ぎません。
また、アパレルの場合はデザインや生地で違いを出せるため、同一ブランドとして多数の商品を出しても成り立ちますが、ビールのように容器の形が同じものである場合、商品名を買えなければ差別化が出来ないという問題も出てきます。
そのため、知名度の高いナショナルブランドで商品の基本的な品質を担保しつつ、それぞれの商品ラインに個別のブランドを付けて商品の個性を打ち出していくというのが顧客にとっては逆にわかりやすかったりします。

パソコンのデータ管理で言えば、まずデータを大まかなジャンルで分けてそれぞれのフォルダーに分けてた上で、それぞれのジャンルホルダーの中で更に細分化を行ってデータを整理するようなものです。
お酒の販売で言えば、まず、酒やビールメーカーのナショナルブランドというフォルダーを作り、その中に淡麗や濃醇(のうじゅん)というフォルダーを作り、更にその中に辛口や甘口といったフォルダーを作って行くようなものです。
個別商品のブランド名に味を想像しやすい名前をつければ、顧客は2つのブランドによってその商品がどのようなものかが簡単に理解できるようになるため、購入の際に思い出しやすくなります。

思い出しやすくなるというのは、販売を続けていく上で有利になるため、この様な方法が取られます。
今回紹介したダブルブランドについては、更にそこから派生した考えなどもあるのですが、その話はまた次回にしていきます。