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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第29回【経営】アンゾフの成長ベクトル(1)

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目次

注意

この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

kimniy8.hatenablog.com

新規事業展開

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前回は、VRIO分析を使って企業の経営資源の分析や、それを元にした企業が取るべき行動の話をしていきましたが、今回からは、新規事業展開について考えていきます。
企業というのは、基本的には一つの事業だけを行うのではなく、経営資源に余裕が生まれれば、新規事業展開を考えるほうが良いです。
何故なら、1つの事業だけを行っていると、環境の変化に対応しづらくなってリスクが高止まりしてしまうからです。

例えば、2020年~今この音源をアップロードしている2021年は、感染病のコロナによってそれ以前とは市場環境が大きく変化しました。

これによって、同じ様に経営に打撃を受ける環境にある企業であっても、立ち直れないダメージを受けた企業と、なんとか耐え忍んでいる企業に分かれました。

リスク分散

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何故別れたのかというのは様々な要因が絡み合っているために、原因を一つに絞り込んで断言することはできませんが、事業が一つだけか、そうではないのかというのが大きいと思います。
例えば、私は京都に住んでいますが、京都には、観光客をメインターゲットにした仕事というのが沢山あります。

特にこの数年は、外国人旅行客が多かったため、その外国人をターゲットにした仕事というのもかなりありました。例えば、海外旅行者向けのゲストハウスの運営であったり、その場で買って直ぐに食べれる様な商品がそれにあたります。
例えば、元々観光地として人気のあった錦市場も、市場という形態ではなく、旅行客に食べ歩きをしてもらうための『買い食い』の形態に変えて営業を行ったりしていました。
地元客ではなく、お金を消費しやすい外国人観光客をメインターに絞って経営すれば、売上も利益率も上がる為、利益は跳ね上がるとは思いますが、その代わりとして顧客層は狭まりリスクが高まりました。

具体的には、早い段階で地元客を切り捨てていたことで、そのお客さんは他で商品を調達するようになったため、売上が外国人観光客の動向のみに左右されるようになってしまいました。
私の携わっている業界もそうで、紙の箱というのは主に和菓子の土産物に使われる事が多いのですが、今回の騒動で国内旅行客も減ってしまったため、大きな打撃を受けることになりました。
何故、大きな打撃を受けてしまったのかというと、一つの事業しか行っていなかったからです。

顧客層を広げる

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前に、マーケティングのことについて話した回で、商品やサービスを開発する際には、ターゲットを明確にするべきだという話をしました。
1つの製品や1つの事業について、細かいターゲット設定をすることは間違いではありませんが、そのサービス1点のみで会社経営を行った場合、そのメインターゲット層が何らかの理由で無くなってしまった場合は、会社は潰れるしかありません。
これを回避するためには、顧客層を広げてリスクを分散する必要があります。

『顧客層を広げる』と聞いて、前にマーケティングの事を話した際に話した『ターゲットを絞り込む』という話と矛盾するのでは?と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、これは矛盾しません。
誤解を招かないようにもう少し詳しく話すと、前にマーケティングでターゲットを絞るという話をしたのは、1つの事業であったり、1つのサービス、1つの製品を提供する際にターゲットを絞るという話です。
例えば何かしらの商品を作って販売するメーカーの場合、商品Aについては、20~30代の女性をターゲットに絞り込むけれども、商品Bについては、30~40代の男性に絞り込んだ商品を作るということです。

1つ1つの製品を開発する際には、ターゲットを絞り込み、時にはペルソナなどを設定してニッチな商品を作ることは有効な方法ですが、仮にその商品が大成功したとしても、その1つの製品だけで事業運営を行うと、リスクは高まります。
何故なら先程も言ったように、そのターゲット層が存在している市場が何らかのアクシデントに見舞われた場合、企業運営に深刻なダメージを受けてしまうからです。
ではどうすれば良いのかといえば、仮に、最初に開発した1つの製品が大成功したとしても、そこで商品開発をやめるのではなく、そこで得た利益を使って別のターゲットに向けた商品を開発していく方が良いです。

以前に、1つの大きな得意先だけを相手に商売をせずに、取引相手は分散させたほうが良いと言った感じのことを言いましたが、これは商品や事業でも同じで、ある程度分散させておいたほうが安定性が増すことになります。
では、どのようにして新事業や新商品開発を行っていけば良いのでしょうか。

アンゾフの成長ベクトル

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ここで登場するのが、アンゾフの成長ベクトルです。

このアンゾフの成長ベクトルは、市場と商品を基準にしたマトリクス図になっています。市場と商品をそれぞれ既存と新規に分類することで、4つの領域に分けます。
別れた4つの領域に、それぞれの戦略が割り当てられているので、このアンゾフの成長ベクトルに自分の意思を当てはめることで、どの様に行動すればよいのかが分かるようになります。。
音声だけで聞いているとわかりにくいと思うので、もう少し丁寧に説明すると、漢字の田んぼの田の字を上下に分けて、上を既存市場、下を新規市場に分けます。次に、田んぼの田の字を左右に分けて、左を既存製品、右を新規製品に分けます。

そのうえで、それぞれの4つの領域に戦略を当てはめていきます。
左上の既存市場に既存製品で攻め込む戦略は、市場浸透化戦略。 右上の既存市場に新商品で攻め込む戦略は、新商品開発戦略。
左下の新市場に既存製品で攻め込む戦略は、市場開拓戦略。 右下の新市場に新商品で攻め込む市場は、多角化戦略となります。

このマトリクス図ですが、戦略と方法が紐付けされているため、方法を選べば戦略が、戦略を選べば方法の大枠が分かるようになっています。
では、どの様に戦略を選んでいけば良いのかというと、これは内部要因と外部要因によって変わってきます。
内部と外部の要因でどちらの方が比重が大きいかというと、個人的には外部要因の方が大きいと思います。

市場が成長している分野に参入する

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理解しやすいようにもう少し具体的に観ていくと、例えば、自分が携わっている市場が成長しているのか衰退しているのかを考えてみると、考えやすくなると思います。
例えば、既存市場が衰退している場合。その市場で戦い続けるというのは苦しい戦いになることは、容易に想像ができると思います。
何故なら、いくら既存市場で頑張ってシェアを伸ばしたとしても、市場全体が縮小しているわけですから、売上増加には繋がりにくくなります。

数字で例えるなら、元々の市場の大きさが100で、自社のシェアが30%だった場合、自分は100X30%で30の顧客を相手に仕事をすることになります。
仮に頑張ってシェアを50%まで伸ばしたとしても、市場のほうが衰退して大きさが50にまで下がってしまえば、50X50%で自分たちの顧客は25となり、シェアは伸びているのに売り上げは減ることになってしまいます。
市場のほうが衰退していくのであれば、既存の市場を捨ててでも、新市場に打って出たほうが良いでしょう。

逆に、市場が成長中の場合は、敢えて情報の少ない新市場に打って出るよりも、自分たちが熟知している既存市場で勝負した方が良いという選択になります。
理由はさっきと逆で、シェアが伸びなかったとしても市場が成長して大きくなることで、自社の売上が伸びる可能性が高いからです。

製品軸で考える

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次に、新商品を開発するのか、既存商品をそのまま売り続けるのかの選択です。
既存商品を別の市場で売るとはどういうことかというと、売り方を変えるということです。
例えば海外展開するとか、別の都道府県に店を出してみるとか、ネット販売に進出するとか、今まで卸売だけに対応していたけれども、直販も行うと言った感じで、同じ商品を別の市場で販売することを目指すということです。

売り方を変えるだけで市場が変わるのかと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、販売形態を変えることで客層そのものが変わるため、市場も変わるんです。
例えば、テレビの通信販売とネット通販とでは、購入する層そのものが違うため、ネット通販で売れなかったものでもテレビの通販で販売することで新たな顧客を開拓できたりします。
実店舗で売る場合と通販で売る場合も同様、売り場によって年齢層や男女比などの顧客層が異なるため、売り場を変えることで相手にする市場そのものが変わります。

この様に、売り場を変えると商品を目にする層が変わるため、別の市場を開拓できたりします。
市場と製品を既存と新規に分けて、4つの戦略の中から1つを選べるようにするのが、このアンゾフの成長ベクトルです。
今回は簡単な説明になりましたが、次回はもう少し詳しく話していきます。