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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第40回【経営】製品ライフサイクル(2)

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目次

注意

この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

kimniy8.hatenablog.com

市場の最初期

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前回からは、製品や市場のライフサイクルについての話をしていて、今回はその続きとなっています。
前回の話をまだ聞かれていない方は、まず、そちらから聞いてください。

前回の話を簡単に振り返ると、全く市場がないところに勝機を見つけ出した企業が、その市場に向けて商品を出したとすると、その商品は知名度がないために売れません。
しかし、その製品が今の生活を改善してくれるような良い製品である場合は、情報感度の非常に高いイノベーターによって製品は発掘されて、イノベーターによって購入されることになります。
世の中に初めて出る商品であるため、買う側にとってはリスキーではありますが、このイノベーター層はリスクよりも好奇心の方が勝っているため、彼らの好奇心を満たすことができる製品であれば、彼らは買ってくれます。

口コミ効果

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商品が彼らに好意的に受け入れられると、イノベーターは積極的に情報発信を行ってくれるため、イノベーターのフォロワーの方たちが購入してくれます。この人たちのことを、アーリーアダプターと呼びます。
先ほど紹介したイノベーターは、情報が無いところから自分で探していかないといけないため、ハードルが非常に高いです。一方でアーリーアダプターは、イノベーター層をフォローしていれば良いので、ハードルは下がります。
例えば、イノベーターの方がTwitterやブログをやっているのであれば、それらをフォローするだけで彼らの製品レビューが手に入るわけですから、自分で手探りで情報を探すことに比べれば楽ですよね。

ですが、一般層はイノベーター層のフォローなんてことはしませんから、このアーリーアダプターと呼ばれるそうも、一般層から比べればアンテナは高いことになります。
アンテナは高いですが、イノベーター層よりも情報を集める難易度は下がるため、人数は多くなります。 その為、イノベーター層に受け入れられ、アーリーアダプター層へと顧客が広がっていけば、顧客数は右肩上がりで増えていきます。
ここまでの市場の拡大で、想定されている市場規模の20%ぐらいの人が市場に参入してくることになるようです。

これはもちろん、市場や製品・サービスの特性によって変わってきますが、だいたいの目安として、20%前後の消費者が参入してきているとのことです。
このイノベーターとアーリーアダプターについては、イノベーターが技術に惚れ込んで製品が未完成であったとしても取り入れる、アーリーアダプターは製品を使って生活に変化を与えたいという違う動機を持っているという解説もあります。
この場合も、イノベーターは開発現場に近い人が多く、アーリーアダプターはイノベーターよりかは製品との距離が遠いと考えられるので、解釈としては似たようなものとなります。

イノベーターからアーリーアダプター

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この次がアーリーマジョリティ層になるのですが、このアーリーマジョリティとアーリーアダプターとの間には、キャズムと呼ばれる壁のようなものがあります。なぜ、この様な壁があるのかといえば、製品に対する考え方が違うからです。
イノベーターは新しい物好きで、新技術や製品を一番に試せるのであれば、その体験にこそ価値があると考えている層です。
一方でアーリーアダプターは、その製品が実際に使えて、今までの生活に変化をもたらしてくれるのであれば買っても良いと考える人達です。

つまり、イノベーターとアーリーアダプターは、その製品を購入したことで得られる体験を重視しているため、製品そのものが多少割高であったとしても、購入に踏み切ります。
何故なら、求めているものはコスパではないからです。多少コスパが悪かったとしても、その製品を通して新たな体験が得られるのであれば、彼らは買います。
しかしこれ以降の、俗に言う一般層であるアーリーマジョリティからは、購入動機が変わってきます。

キャズム

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アーリーマジョリティは、既存の製品で代用できるのであれば、わざわざ新しいものを購入して生活に変化を与えようなんて思いません。
人間にとって変化を受け入れるというのは結構なストレスであるため、人は僅かな差しか無いのであれば、よく知っている安心感のあるものを使い続けます。
その変化に対するストレスを受け入れて、それでもなお、新商品を取り入れようとする場合は、それ相応の理由が必要となります。

その製品を手に入れることで、今までやっていた煩わしい作業が無くなるとか、その製品を代替え品として購入することで、大幅にコストを削減できるといった実用的なものはもちろん、
それを持つことで他人に自慢ができるとか、人目を引くことができるといった具合に、何か『その製品を買うべき理由』がなければ、敢えて今の環境を捨てて乗り換えようなんて思いません。
導入することで少し作業が楽になるけれども、既存製品の倍のコストがかかるなんて商品は、一般層には受け入れられないことが多いです。

市場の成長期

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様々なハードルを超えることで一般層に受け入れられると、キャズムを乗り越えて、市場は成長段階に入って成長率は加速していきます。
何故、成長率が伸びて市場が加速度的に拡大していくのかというと、各層の人数が違うからです。前回にも話しましたが、マーケティングにおいて口コミというのは絶大な威力があります。
その口コミの拡散スピードは、人数が増えれば増えるほどに加速度的に増加していくため、キャズムを超えて一般層にまで市場が広がると、成長スピードが一気に上がります。

しかし、その成長スピードも永遠に続くわけではなく、ある程度の市場規模になることで市場成長率は逓減していきます。逓減とは、徐々に伸び率が減少していくということです。
成長スピードが頭打ちした頃に、レイトマジョリティと呼ばれる層が市場人参入してきます。
新たにレイトマジョリティという層が市場に入ってはきますが、イノベーターやアーリーアダプター・アーリーマジョリティといった層はすでに商品を購入し終えていますので、再び購入してくれることはありません。

計画的陳腐化戦略

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『買い替え需要があるじゃないか』と思われるかも知れませんが、先に紹介した3つの層は情報に敏感な層です。特にイノベーターとアーリーアダプターコスパよりも全く新しい体験を求める層なので、既存製品を買うことはありません。
新たな体験を求めて、次に購入する商品は新たな新技術を導入した新製品を購入しようとします。ちなみに、この様な層を継続的に取り入れる戦略として、計画的陳腐化戦略というものがあります。
この戦略を分かりやすく説明すれば、アップルのiPhoneの様な感じです。 定期的に新技術を盛り込んだ新製品を作って発表し、1つの製品の寿命を意図的に短くすることで、シリーズ全体としての寿命を伸ばす戦略です。

定期的に最新技術を詰め込んだハイエンドモデルを出し続けることで、イノベーターは最新のiPhoneを買い続けます。
一方で、例えばアイフォン6という特定の機種の寿命は短くなってしまいます。何故なら、顧客側はメーカーが定期的に新製品を出すということが分かっているので、iPhone6を買うタイミングを逃した客は6を買わずに7まで待ちます。
その為、iPhone6という製品そのものの寿命は長くても数年と短くなってしまいますが、iPhoneというシリーズ通してみると、イノベーターからレイトマジョリティまでの幅広い層を取り込み続けることが出来ます。

計画的陳腐化戦略のデメリット

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良いこと尽くめのようにも思える戦略ですが、勘の良い方やコスト意識が高い方はお気づきかも知れませんが、この計画的陳腐化戦略は多額の研究開発費が常に発生し続けます。
何故かといえば、イノベーターの興味を引き続けるような製品を作り続けなければならないからです。
イノベーターやアーリーアダプターというのは、繰り返しになりますが新たな体験を得ることができるのであれば、多少高い金を払ってでもサービスや製品を購入してくれる顧客層です。

ですがこの様な顧客層は、逆を言えば新たな体験が得られないのであれば、製品を買ってはくれません。
イノベーター層を惹きつけて囲い込むためには、常に最新技術を導入して顧客に新たな体験を与え続けなければなりません。
また、意図的に既存製品の製品寿命を縮める行為であるため、限られた期間で開発コストの回収と次世代製品の開発費を稼ぎ出さなければならないため、事業の難易度は上がると思われます。

ラガード

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話をライフサイクルに戻すと、この様にイノベーターやアーリーアダプターは既存製品を買い続けるそうではありませんし、アーリーマジョリティも一般層にしては新たしい物好きであるため、徐々に既存製品からは離れていきます。
その為、市場の大半は、『皆が持っているから自分も買う』といった感じで新規で参入してくるレイトマジョリティとなる為、市場規模は天井を打って徐々に下がり続けます。
そして最後に市場に入ってくるのが、ラガードと呼ばれる一番遅れてくる層です。

この層は最も保守的と言われているそうで、商品やサービスが当然のものとして受け入れられるまでは手を出さないような層です。具体例でいえば、これを配信している2021年の時点でも頑なにガラケーを使い続けるそうです。
この客層は基本的には新たな商品に乗り換えるということはしないため、市場参入は非常に遅いですが乗り換えもしないため、持続的な顧客になりやすいともいえます。
前に紹介したプロダクトポートフォリオマネジメントでいうところの『金のなる木』の主な顧客層が、このラガードと呼ばれる人たちだと思われます。

ラガード向けに対しては同じ商品を出し続けていればいいので、新規投資も必要なく追加の開発費もかからないため、ある程度の生産規模が維持できていれば利益は出続けることになります。
ですが、そのうち代替品が主流に取って代わるでしょうから、市場からはいずれラガードすらもいなくなって消滅します。
これをグラフにすると、S字カーブになります。 このS字カーブは主に売上の変動を表したものですが、会社が事業を行うことで手にする現金は、違った動きをしたりします。

次回は、そのことについて話していきます。