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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第30回【経営】アンゾフの成長ベクトル(2)

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目次

注意

この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

kimniy8.hatenablog.com

ターゲット層を分散する

前回は、多角化等によるリスク分散について簡単に説明していきました。 特定の狭い市場だけで仕事をしていると、その市場環境が大きく変化した際に、その動きに対応することができなくなってしまいます。
そうすることを避けてリスク分散するためにも、ターゲット層を複数にしていく必要があります。

しかしこの考えは、過去にマーケティングの回で取り扱った『ターゲットを絞り込む』という戦略に矛盾しそうですが… 実際には矛盾はしません。

過去にマーケティングについて話た回では、ターゲットを絞り込むという事が重要だという話をしてきました。
理由としては、万人受けする誰に対しても受け入れられるような商品やサービスを目指して作ったとしても、出来上がるのは、何の特徴もない誰からも受け入れられないような商品になってしまう可能性が高いからです。
その為、商品やサービスを開発する際には、万人受けするようなものではなく、ターゲットを絞り込んで、そのターゲットに向けた特徴のある製品を作っていく必要があります。

しかし、ターゲット絞り込んで狭い市場で戦っていると、その市場が何らかの理由で閉じてしまった際に、売上が立たずに大きなダメージを受けてしまいます。
そこで、ターゲットが違う別の商品を作ったり、顧客層が違う新市場に乗り込むことで顧客層の分散を狙っていきます。
新市場開拓とは簡単に言えば、地域を変えたり、店舗販売からネット販売に変えると言ったものや、広告の打ち出し方で別の層にも訴求していくということです。

アンゾフの成長ベクトル

つまり、商品やサービスを開発する際に、特定のターゲットを想定して商品開発をするというのは変わりませんが、その商品を別のターゲット層にも売り方を変えて販売していくということです。。
また新商品開発によって複数の商品を開発していけば、商品1つだけを取り上げてみればターゲット層は絞られているが、会社の商品ラインナップ全体をみれば顧客層は分散している状態が作れることとなります。
ではどの様に商品開発や多角化を行っていけば良いのか、それを整理して分かりやすく示してくれるのが、前回から扱っている『アンゾフの成長ベクトル』です。

この『アンゾフの成長ベクトル』ですが、簡単に言えば『市場』と『製品・サービス』の2つの軸を『新規』と『既存』で分けて、4つの領域を作り、その領域に戦略を当てはめたマトリクス図です。
紙などを用意して書いてもらうと分かりやすいですが、まず真ん中に横線を引いて、上を既存市場、下を新規市場とし、次は縦に二分するように線を引き、左を既存製品、右を新規製品とした場合、4つの領域ができますよね。

その4つの領域に戦略を当てはめていきます。左上の既存市場・既存製品の領域には『市場浸透化戦略』 右上の既存市場、新規製品は『新商品開発戦略』
左下の既存製品、新市場は『新市場開拓戦略』 右下の新規市場、新規商品は『多角化』です。

戦略の選び方

では、それぞれの戦略はどの様に決めていけばよいのかというと、まず、気にしなければならないのが外部環境である既存市場の状態です。
もし既存市場が伸び悩んでいたり、市場自体が縮小しているのであれば、その市場にこだわってしがみつくことはせず、新たな市場に打って出る必要が出てきます。
つまり、新規市場を選ばなければならないということです。一方で既存市場が成長段階で拡大していっているのであれば、情報の少ない新市場に打って出る必要は低くなります。

ここが決まってしまえば、もう一つの製品戦略も決めやすくなります。既存製品が新市場でも通用しそうであれば、既存商品を持って新たな市場を訪れてみるというのも良いでしょう。
この場合は、新製品を開発する必要がないために新たに商品開発をする必要がなく、コストは安く済ます。
また、既に商品のことをよく知っていますし、その商品のが既存の市場でどのように受け入れられてきたのかという情報もあるため、それを活用することも出来るでしょう。

戦略ごとのリスク

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ここまで『アンゾフの成長ベクトル』について説明してきたのですが、ここまでの説明で勘の良い方は気づいておられるかも知れませんが、商品であれ市場であれ、新規と既存では既存を選択する方がコストもリスクも少なくなります。
何故リスクが低くなるなるのかというと、既に実績や製品や市場に対する情報や人脈があるからです。メーカーの場合は、自社で直販をしていることは少なく、大抵は流通業者が持っている販売チャネルを使って流通に乗せます。
この販売網をそのまま活用できれば、仮に新商品を開発したとしても、その販売網を新規で開拓する必要がなくなるため、非常に楽です。
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一方で、新規で市場開拓をする場合、一から情報を集めたり卸売や小売店との人間関係を構築していかなければななりません。新たな良い取引先が見つかるかは不確定であるため、既存市場の安定性と比べれば、リスクは高まります。
製品開発も同じで、既存製品の場合は既に市場で戦えているという実績があるわけですから、それを売り続ける場合に先行きが不透明ということはありません。つまりリスクは低くなります。
一方で新商品開発の場合は一から製品を作り出すわけですから、それが市場で受け入れられるかどうかはわかりません。 つまり、リスクは高くなります。

一番リスクが低いのは市場浸透化戦略

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これを踏まえて改めて戦略の方を観てみると、市場浸透化戦略は既存市場に既存製品を投入するという戦略であるため、リスクは非常に小さくなります。
既に市場で売れているものを売れている市場に対して販売するわけですから、当然といえば当然で、経営資源が少ない中小企業の場合は、戦略が選べる状態であるのなら市場浸透化戦略を選ぶべきです。
ですが、これは既存市場が成長、もしくは安定している状態の時のみに行える戦略です。

拡大している市場を狙う

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先程も言いましたが、自分が携わっている既存市場が縮小している場合は、当然ですがこの戦略は選べません。
何故なら、縮小している市場に商品を投入したとしても、商品同士で顧客を食い合うカニバリズムが発生しやすくなりますし、新商品投入によってシェアを伸ばせたとしても、売上が上がる保証はないからです。
この環境で企業が売上を伸ばそうと思う場合、衰退する市場を盛り上げるという大掛かりな作業が必要になりますが、中小企業が一つの市場を盛り上げるというのは、市場にもよりますが厳しいと思われます。

その為、市場浸透化戦略を取る場合は、少なくとも市場が横ばいで安定している必要があります。

多角化戦略はリスクが高い

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逆に、多角化は非常にリスクが高い戦略となります。
何故なら、自分が携わっていない市場に対して、新たに商品やサービスを開発して参入する必要があるからです。
選ぶ市場は当然、これから伸びていく新たに生まれた市場や成長市場となるわけですが、そういった市場には同じ様に考える新規参入者が多いため、当然、これらの事業者と戦わなければなりません。

今まで参入していかなかった未知の市場に対して新製品を投入して、同じ様に新規参入する業者と、その市場に元からいた古参の企業を相手に戦わなければならないわけですから、その競争に勝ち残る難易度は非常に高く、リスクも高くなります。
よく話などで、起業された会社が5年後に生き残っている確率はかなり低いなんて話がありますが、あれも、サラリーマンをしていた人が、今までのキャリアと関係のない飲食店をするなどリスクの高い挑戦をしていることが理由かもしれません。
この様に、今まで携わってこなかった仕事にいきなり挑戦するというのはリスクが高いため、可能であれば、この様な無関係の市場に新たな商品開発をして乗り込むというのは、相当余裕がない限りはやらない方が良いです。

しかし、この様な危険な戦略も、やらなければならない時もあります。
それは、自分が携わっている既存市場が縮小していってる状態で、尚且、その製品はその市場でしか通用しないような場合です。
この様な状態では、その市場に残っていてもジリ貧なので新たな市場に打って出ないとダメですが、そのための商品やサービスがないために、1から商品開発を行っていかなければなりません。

多角化戦略は余裕のある状態で

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リスクの高い戦略となるので、追い込まれて余裕のない状態で着手しても上手くいかない場合が多いです。
何故なら、時間的余裕も資金的余裕もなくなるからです。 どれだけ優れた社員を雇っていたとしても、時間もない状態で全く新たなことにチャレンジして、1回で確実に成功させることは至難の業です。

その為、市場の先行きが怪しくなったとわかれば、余裕のある状態から準備しておく必要があります。
この状態であれば、市場は縮小し始めたところで、完全に衰退しているわけではないため、本業で安定した利益を確保し続けることができ、その資金を新規投資に注ぎ込むことが出来るようになります。
この状態を作ることで、多少失敗をしたところで深刻なダメージにならず、成功するまで繰り返し挑戦することが可能になります。

自社以外の力で多角化を行う

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この他にリスクを減らす方法としては、これから参入しようとする市場である程度の成功を収めている会社と提携するとか、その会社そのものを買ってしまうというのも手です。
自社に、参入予定の市場に関する情報やノウハウがまったくなかったとしても、提携や買収した企業がそれらを持っていれば、それらを活用することでリスクを減らすことができます。

ということで今回は、市場浸透化戦略と多角化戦略を説明していきました。
残りの2つについては次回に話していきます。