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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第28回【経営】VRIO分析(4)

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
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前回はこちら
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目次

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因果関係の不明性

前々回で企業が戦略的に行う模倣、つまりパクリの話をして、前回は、その模倣を防ぐための模倣困難性について話していきました。
前回の模倣困難性についてでは、因果関係不明性と経路依存性について話していきました。

両者を簡単に説明をすると、因果関係不明性とは、自社が持っている経営資源と自社が宿している強みとの間の関係性がわからないということです。
その会社を一番身近で観ている社員や経営者自身が、自分達が持つ強みの原因を理解できていない場合、当然、他社にもその原因は分からないということです。
何故なら、他社がその会社の分析をする場合、その会社以上には情報を集められないからです。

情報量で劣る他社の方が正確な分析ができるということは基本的にはないので、企業が持つ強みと経営資源との因果関係が不明な状態の時は、他社に強みを模倣されるリスクは少なくなります。

経路依存性

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もう一つの経路依存性は、強みを身につけるための道筋はある程度分かっているけれども、その道を辿るためには、かなりの長い時間がかかってしまうことのことです。
今現在、その会社が持っている強みは、その会社が今まで積み重ねてきた歴史によって生まれてきたもので、即席で作り上げたものではない場合は、模倣する際には同じ様な歴史を辿らないといけないため、模倣するのに時間がかかるということです。
何故、模倣するのに同じ様な時間がかかるのかというと、経路依存性という言葉が保つ意味としては、今現在の決断は過去に下してきた決断の制約を受けるという意味だからです。

人の人生でも企業でも同じですが、基本的には決断の連続で、その決断ごとに何かしらの結果を生んでいくわけですが、それぞれの決断は非連続でバラバラに存在しているわけではなく、連続しています。
簡単な例で言えば、これだけ投資をしたんだから後には引けないというサンクコストや、2股に別れた道の右を選んで進んでしまっているので、左の方には行けないといった感じのことです。
素材メーカーのA社とB社のどちらかとしか付き合えない場合、どちらを選ぶのかで、その企業の今後の行動は制約を受けることになります。

こうした積み重ねによって、各企業は独自の道を進んでいくことになるのですが、その道を進むことで手に入れた資産や強みというのは、一つの要因のみで成り立っているわけではなく、歴史の積み重ねによって発生しているということです。
もし、この様な強みを真似しようとする場合、そのルートごと真似する必要がありますが、同じ様なルートを辿るのであれば、同じ様な時間がかかってしまうこととなります。
仮に、模倣するのに20年かかるのであれば、少なくとも20年は真似されることはないわけですから、その間は競争優位性を保つことが出来るということです。

社会的複雑性

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社会的複雑

ここまでが前回話してきたことで、今回は追加で社会的複雑性についても少し話していきます。
社会的複雑性とは、簡単にいうと、強みが物質的なものではなく、何らかの関係性によって生まれているもののことです。
例えば、社員同士の仲が良いとか、会社の雰囲気が明るい。 辛いときでも皆が励まし合って、アイデアを出し合って困難をくぐり抜ける事ができる状態というのは強みですが、それは物質ではないため、簡単には真似できません。

仮に強みが製品品質などの物質であれば、その商品を取り寄せて分解してみることで、強みを解明して模倣できる可能性はありますが、人間同士の関係性のようなものの場合は、そういった事ができないため、模倣困難性が高くなります。
これは、社内だけでなく対外的なものも含みます。 その会社に対する外側からの評価や信頼といったものも、高ければ高いほど良いのは分かっていますが、それらは簡単には高めることはできません。
他にも、会社同士や経営者同士の信頼関係なんてものも同じです。 その会社だから信用しているとか、その人物だから信用してやってきているというのは思っているよりも多く、そういった関係性は簡単には真似できません。

これらは言い換えれば、人と人との信頼関係と言い直すことも出来るので、人との信頼関係が簡単に構築できないといえば、わかりやすいかも知れません。
信頼とは、細かい信用の積み重ねを続けていくことで、関係性の中で1度でも信頼を裏切るようなことをしてしまえば破綻してしまうようなものです。
当然ですが、この様な関係性は金では買うことはできませんので、構築するためにはかなりの年数が必要となります。

それぞれの要素に明確な線引はない

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この因果関係不明性と経路不明性と社会的複雑性ですが、学問的に分類しているだけなので、完全にバラバラに独立しているわけではなく、1つの強みに3つ全ての要素が重なり合っていることもあります。
つまり、人間関係に依存していて、その企業風土、企業文化の中で物事が選択されることで、その企業が独自の成長を遂げ、何らかの強みを身に着けたけれども…
その強みが生まれた原因が複雑すぎて、何に依存しているのかの原因がいまいちはっきりとわからないということもあるということです。

組織力

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模倣困難性についての話はこのあたりにして、次は、VRIO分析の最後の頭文字『O』の組織力ですが、これは簡単で、前の3つである価値と希少性と模倣困難性を発揮できる組織力を持っているかどうかです。
これについては分かりやすいと思うのですが、自社が持つ経営資源に価値があり、希少性もあって真似されにくかったとしても、その経営資源を上手く使いこなせなければ、競争優位性は得られません。

VRIO分析の順番

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これで、VRIO分析の4つの頭文字の説明が終わりました。 では、この分析は、どのようにして使っていくのでしょうか。

VRIO分析では、4つの要素を持っていれば持っているだけ良いのですが、それぞれバラバラに持っていても意味はなく、順番が重要となります。
その順番とは、VRIO分析のV・R・I・Oの順番となります。 この順番で、前から順番にいくつ持ってるのかで競争優位性を分析することができます。
これは考えてみれば分かると思いますが、経営資源に価値もないのに希少性だけあったとしても、意味はありません。

道端に変わったかたちの石が落ちていたとして、その形が大変珍しかったとしても、価値がまったくないのであれば、それは単に変な形の石でしかありませんし、それによって何かが優位になることもありません。
価値も希少性もないのに、模倣困難性だけ高かったとしても、そもそも価値も希少性もない経営資源を真似しようなんて人が出てこないので意味はないです。

まず価値を高める

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VRIOの最初の頭文字である『V』。価値があるかないかで競争優位性が有るか無いかが決定します。

これは考えれば当然で、企業は何故存在しているのかといえば、前にも話したと思いますが、社会になにかしらの価値を提供しているから存在が許されているわけです。
社会に存在する様々な問題を解決することで、対価をもらう。その対価が付加価値で、それを稼ぎ出すために会社は存在しています。
付加価値とは、その会社が付け加える価値のことなので、これを生み出すことができない経営資源。つまり、社会に有る問題を解決できないような経営資源は、基本的に価値がありません。

この価値を持っていないような経営資源しか持たない会社は、他社と競争しても優位性を発揮できないため、『競争劣位』の状態にあります。
一方で、経営資源に価値がある場合は、その次の項目である希少性が重要になってきます。希少性がない場合は、『競争均衡』の状態となります。
例えば、誰でも仕入れることが出来る品物を販売する場合、その行為に価値があれば多少の利益は出ますが、希少性がないために、儲かることが分ければ皆が参入してくるため、市場の中で単独で優位に立つことはできません。

競争優位に立つ

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しかし、持っている経営資源に希少性があり、誰でも手に入れることができるわけではない場合は、その競争から一歩抜け出る事ができます。
この状態になれば、他社が希少性の有る経営資源を手に入れるまでは競争優位性を保つことが出来るため、『一時的な競争優位性』を得ることができます。
では、他社が希少な経営資源を手に入れる可能性があるのかというと、次の頭文字である『O』の模倣困難性が関係してきます。

前に企業が行う模倣について話した回がありましたが、企業は基本的に自社で経営資源を育てるよりも他社を真似する方が、簡単に経営資源の強化を図ることができます。
その為、価値があり希少性が有る経営資源を持つ企業は、他社から分析されることになります。 その分析に耐えることができず、他社に真似されてしまえば、その時点で競争優位性は失われてしまいます。

VRIO分析まとめ

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しかし、模倣困難性を高めて模倣されるのを防ぐことが出来れば、競争優位性を保ち続けることができるようになる為、その経営資源は『持続的な優位性』を得ることができます。

そして最後の『O』である組織力ですが、これは先程も説明しましたが、前の3つである価値と希少性と模倣困難性を全て活かした組織運営をすることで、企業はさらなる発展を遂げていくということです。

つまりVRIO分析は、自社が保有している経営資源に、価値・希少性・模倣困難性・組織力が有るかないかを見極め、それらがない場合、どこに注力して経営資源を育てていくのかというのを明確にしてくれるツールとなります。
もし、自社に欠けている部分がある場合は、それを埋めるために行動を起こしていく必要があります。VRIO分析では順番が重要だと先程言いましたので、足りない部分の前から埋めていくことになります。
自社が持つ経営資源に価値がなく模倣困難性が低いのであれば、まず価値を高めるところから始めていきます。

このようにして、競争優位性を高めていくのがVRIO分析となります。
ということで、今回でVRIO分析の話は終わります。次回からは、新規事業展開について話していこうと思います。