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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第25回【経営】VRIO分析

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回はこちら
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目次

第18回ぐらいから前回の第25回ぐらいまで、ネットワーク外部性や参入障壁について話してきましたが、今回からはVRIO分析について考えていきます。

強みの分析

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この分析は、主に企業の持つ『強み』について考えていく分析です。
強みというのは、第13回~15回で取り上げたSWOT分析でいうと『S』に当たる部分です。

SWOT分析では、自社の強みを探してその強みを伸ばしたり、強みを機会にぶつけるという戦略が有効だという話をしましたが、今回のVRIO分析では、その強みについてより詳しく分析して行きます。
この強みですがVRIO分析では、リソースドベースドビューという考え方をベースにして考えていきます。
リソースド・ベースド・ビューというのは、企業の外部環境や業界内でのポジショニングについての強みではなく、企業が持つ経営資源に焦点を当てていく考え方です。

つまり、同業他社などの他の企業と自社との位置関係などを中心に据えて考えるのではなく、自社が持つ経営資源を中心に考えていくということです。

VRIO分析

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経営資源とは、会社が持っているヒト・モノ・カネ・情報のことです。人は社員と言いかえることが出来ますし、ものは商品、金は資金力と言い換えたほうが、分かりやすいかも知れません。
これをベースにして考えていくのが、VRIO分析です。

このVRIO分析のVRIOは、アルファベットで『V』『R』『I』『O』と書きますが、前に紹介したSWOT分析と同じ様に、分析に使う切り口の頭文字をとったものとなっています。
『V』はvalueで、経済価値を表しています。『R』はRarityで経営資源の希少性を表しています。『I』はlnimitabilityで、模倣困難性を表していて、『O』はorganizationで、前の3つを上手く活かせるための組織力があるかどうかです。

経済価値(value

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ひとつひとつ観ていきますと、まず『V』が表している経済価値ですが、自分たちが雇用している社員や製造しているもの、持っている情報などに経済的価値があるかどうかです。
その経営資源があることによって、事業機会を逃さずに収益に繋げられたり、脅威が現れた際に上手く対処できる価値があるのかどうかを見極めます。
もし無い場合は、社員教育をするなり情報を集めるなりして対応する必要が出てきます。

希少性(Rarity)

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次の『R』である経営資源の希少性ですが、自社が持っている経営資源と同等のものを、他社のどれぐらいが持っているのかというのが希少性です。
希少性なので当然ですが、自分たちと同レベルの経営資源を持っているライバルが少なければ少ないほど、自社にとっては優位となります。
もう少し具体的にいうと、ものすごく貴重で出回っていない素材を生産したり採掘できる技術であったり、そういった技術を持つ会社と親密で特別な取引ができることであったり、特別な能力を持つ社員を抱えていたりといった感じのことです。

この様な経営資源を持つ会社は、それをテコにして競争に打ち勝ったり、新規事業を立ち上げたり、脅威に対処したりできるようになるため、他社に比べて優位に立つことが出来ます。

模倣困難性(lnimitability)

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次の『I』である模倣困難性ですが、これは、自社が持っている経営資源を他社が真似できるのか出来ないのかということです。
いくら希少で価値のある経営資源を持っていたとしても、それを他社が簡単に真似できるのであれば、その経営資源はあまり競争優位性をもたないことになります。
何故なら、いくら優れて希少性があって、それを利用して今現在、自分たちが競争優位に立っていたとしても、他社はそれを真似してしまえば、簡単に追いつくことが出来るからです。

逆に言えば、他社が真似できなければ問題はありません。他社よりも優位な経営資源を維持し続けることが出来るため、競争優位を長く保ち続けることが可能となります。
模倣を困難にしておくことで、他社と比べて相対的に優位な立場を取り続けることが出来るため、模倣困難性は高ければ高いほど良いということになります。
模倣困難性を高めるには、重要な情報を機密扱いして外に漏らさないようにするとか、模倣する際にコストが高くなるといった状態を生み出すことで可能になります。

考え方としては、前に取り扱った参入障壁に近い考え方です。

組織力(organization)

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最後の『O』は、今まで上げた項目を全て活かすことが出来るような組織力のことです。
価値があり、希少性がある経営資源を持っていて、その資源は模倣困難性が高いにも関わらず、会社にその資源を活用できる組織力がなければ、意味はありません。
企業は、自社が保有しているヒト・モノ・カネ・情報の本当の価値を十分に熟知し、それらをどの様に活用すれば良いのか、どのように組み合わせればシナジー効果を生むのかといった事を考えて実行するための組織力が必要となります。

これは、言葉で聞くと難しく聞こえると思いますので、中小企業経営でありそうな事柄を例にして話していきます。

価値を生み出す経営資源

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まず、価値のある経営資源ですが、これは商品やブランド、従業員や取引先との関係性など、様々なものに当てはまります。
例えば商品ですが、何の価値もない商品はそもそも売れないため、価格が付いて販売できている時点で、その商品には何らかの価値が付いています。
製造業などの場合、その製品を作るための設備を持っているというのも、価値になるでしょう。

その製品は、設備を揃えるだけで作れるわけではなく、熟練した職人が手を加えないと作れない場合、その技術を持つ職人にも価値があることになります。f:id:kimniy8:20210721211432j:plain
その製品は、作っただけでは売上につながらないため、何らかの方法で顧客に売る必要があります。その際の販売先を持っているかどうかというのも、価値のあるものでしょう。
これは物を仕入れる場合でも同じです。 商品や材料を仕入れる場合、誰でも簡単に仕入れることが出来る場合には、そのルートには価値はありません。

しかし、何らかの目利きが必要だとか、ある程度の関係性が築けていなければ仕入れることが出来ないという場合、その取引ルートには価値があります。

経営資源の希少性

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次の希少性も同じで、技術であったり製造機械であったり仕入先であったり資材や商品に希少性があれば、それはそのまま競争優位性に繋がります。
例えば、私の本業は紙の箱を作ってメーカーに販売するという仕事をしています。得意先は和菓子メーカーが多く、配達などでメーカーを訪れることが結構あるのですが、そこに置かれている製造機械は、オーダーメイドが多かったりします。
生八ツ橋を例に挙げると、生八ツ橋を使ったお菓子でいちばん有名なのが、つぶあん入り生八つ橋という生八ツ橋の四角い生地の真ん中に餡を入れて、三角形に折ってあるお菓子です。

このお菓子は八ツ橋会社各社から出ていて、会社によって名前が変わりますが、株式会社おたべが作った場合は『おたべ』になり、聖護院八ツ橋が作った場合は『聖』になり、井筒八ツ橋が作ると『夕子』になり、御殿八ツ橋が作ると『おぼこ』になります。
八つ橋会社というのは20社ぐらいあると言われていますが、その全てが機械を導入しているとしても、必要な機械の数は100台も必要ありません。
日本全国で100台しかないような機械が既製品になっているわけはないので、これらの機械はオーダーメイドとなります。

この様に、既製品ではなくオーダーメイドの機械を作っているという会社は結構あり、自社が持っている機械を他社が持っていないということは珍しくありません。
こういった機械は他社が持っていないため、当然、希少性があります。

人も経営資源に含まれる

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これは当然、設備だけでなく、人についても同じ様なことがいえます。

閃きによって、普通の人が出来ないような目を引くデザインをすることが出来るとか、上手いキャッチコピーをつけられるといったことも、それを行うことが出来る人が少なければ、希少性は高いでしょう。
優れたプログラミング技術を持っているとか、大工や左官や料理の優れた技術を持っていて、同等のレベルを持つ人間が少なくダントツで高い場合は、それも高い希少性を持つことになります。
得意先や仕入先と個人的なつながりがあり、他社と差別化された取引をしてもらえる関係性があるのなら、それも希少性があるでしょうし、誰も知らない情報を知っていることも希少性になります。

次は模倣困難性なのですが、これは説明するのにそれなりに時間が必要となるので、次回に話していこうと思います。