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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第26回【経営】VRIO分析(2)模倣とは

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

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目次

前回は、VRIO分析について話していきました。
簡単に振り返ると、VRIO分析のVRIOは企業の持つ経営資源を整理するための4つの要素の頭文字となっています。
『V』がVALUで価値。『R』がRealityで希少性。『I』がlnimitabilityで模倣困難性、『O』がそれらを上手く活用できる組織力です。

この内、『V』と『R』については前回に話したので、詳しくはそちらを聞いてください。
今回はこの続きで、模倣困難性についてみていくのですが…
その前に、前提となる知識を入れるという意味で、企業が行う模倣について学んでいこうと思います。

全く新しいサービスは殆どない

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模倣困難性とはその名の通り、模倣がしやすいかしにくいかということです。
ビジネス書や自己啓発本などを読むと、自分の主体性を大切にするとか、思いついたアイデアを積極的に行動に移していこうなんてことが書かれていますが、実際のビジネスの世界では、ゼロから物を生み出していくことは稀です。
当然、オリジナルのアイデアがゼロということはありませんが、かなり少ないです。

これを実感するのは簡単です。お持ちのスマートフォンで無料のゲームアプリを上から順番にダウンロードしていって、片っ端からプレイしていってみてください。
かなりのゲームが、似通ったシステムであることに気がつくと思います。 システムが全く同じで、キャラクターだけ違うといったものも珍しくなく、むしろ主流だったりします。
つまりスマホゲームの世界では、1からゲームシステムを考えるのではなく、既に存在していて成功しているシステムを丸パクリして、そこに別のキャラクターを当て嵌めるというのが定石だったりするわけです。

これはスマホゲームに限らず、据え置き機やPCゲームでも同じですし、ゲーム以外の分野でも同じです。
例えば2019年には原宿を起点としてタピオカブームが起こり、その流れは全国へと広がっていき、私が住む京都でも、タピオカを使った飲料を出す店が増えていたりしました。
この流れは、何らかのシンクロニシティが働いて、皆が一斉にタピオカ店が流行ると閃いて行動したわけではなく、タピオカが流行ったという現象を確認した後で、その店舗形態を模倣して多くの者が参入していっただけです。

企業は他社を模倣するもの

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こういったことは製造業でもあります。例えば、掃除機でダイソンが出したサイクロン式のものが有名になった途端、他のメーカーもサイクロン式を発売したなんてこともありました。
メーカーによっては自社で新製品開発を行わず、既にある既存製品を後から真似して出すことで、研究開発費を削って安価な値段でそれなりの品質のモノを提供しているメーカーなどもあります。
これは一見すると卑怯な行為のようにも思われるかも知れませんが、実際には卑怯な行為でもなんでも無く、割と王道的な戦略だったりします。この模倣に関しては、当然ですが、特許などが絡んでいないものに限定されますけれどもね。

何故、メジャーな戦略として模倣というものがあるのかというと、コスパが良いからです。
メリットとしてまず挙げられるのが、先程も少し言いましたが、研究開発費がかからないことです。
この世にまだ存在しない、全く新しいアイデアを商品やサービスに変えて大成功を納めるというのは理想的で、それでお金を稼げれば格好良いですが、そんなアイデアを捻り出すのには相当な時間や労力が必要でしょう。

将来、金になるかならないのかが分からないような基礎研究をしなければならない場合もありますし、その分野の専門の大学から研究成果を買うとか、利益の一部を渡すという約束で共同で事業を進めるなんてことが必要な場合もあるでしょう。
この様な事をするためには、当然、優秀な研究者や技術者を雇ったり、大学や他企業との関係構築が必要になりますが、成果が出るか出ないかわからない研究に対して固定費を払い続けるというのは、その企業に相当余裕がないと出来ません。
また、そこまでのリスクを抱えて、新製品や新サービスを発表したとしても、それが成功するかどうかは運次第というのが実際のところです。

リバースエンジニアリング

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つまり、この世に存在していない新商品をゼロから創造し、それが市場に受け入れられて大成功を納めるというのは、極端な話、当たるかどうか分からない宝くじを買い続けるようなものです。
それに比べて、既に受け入れられている商品を模倣して、製造して流通させるのはどうでしょうか。 ゼロからの商品開発に比べると、簡単そうではないでしょうか。
既に商品やサービスが開発されているわけですから、それを真似しようとする場合、膨大な研究費などは必要がなく、実際に商品を購入して分解してみるとか、サービスを受けてみるだけで、その商品がどのようなものかがわかります。

この様な行動を、リバースエンジニアリングと言いったりします。
経済の分野で、先進国と言われている国の成長率が鈍く、後進国と呼ばれている国の伸び率が高いのも、このことが関係していたりします。
先進国は、未だ人類が経験していない経済状態の中を手探りで探りながら進んでいかなければならないのに対し、後進国は、先進国が進んだ道を進んでいけば良いだけなので、当然ながら進むスピードは早くなります。

企業の努力は報われるものではない

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話が反れたので元に戻すと、模倣というのは研究開発費が大幅に削減できるため、膨大な資金力を持たない会社であればある程、実行しやすい戦略となります。
この他のメリットとしては、模倣するターゲットが既に成功し、市場で受け入れられているのを確認してから参入できるという点にあります。
市場というのは良くわからないもので、労力を掛けて高品質のものを安価で提供したからといって、必ずしも受け入れられるとは限りません。

何故なら、市場に参加している消費者自身に、メーカーほどの知識がないからです。
メーカーが、どれだけ手間暇をかけて、素材にこだわったものを安価で提供したところで、消費者は、それにどれほどの手間がかかっているかも、その素材がどれだけ貴重なものかも知りません。
その為、この社会では努力が必ず報われるというわけではありません。 必死に努力して作った商品ではなく、適当に作った商品に適当なストーリーを付けて、派手に宣伝すると売れたりするのが、この社会です。

そんな社会の中で、既に売れている事がわかっている商品というのは、非常に参入がしやすいです。
前に第9回と10回で、マーケティング1.0~4.0の話をしましたが、ブームに火が付いた直後の状態というのは、その商品に関してはマーケティング1.0や2.0の状態にあるので、非常に売りやすいです。
先行した1社が相当強いブランド力を持ってたり、高いスイッチングコストが発生しない限り、後続の会社は同じ様な商品を提供するだけで売上は伸ばしやすくなります。

模倣は全てのものに当てはまる

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これは、商品やサービスだけでなく、会社組織やオペレーションについても同じことがいえます。
わかり易い例で言えば、やる気のある社員ばかりのA社と、やる気のない社員ばかりのB社、どちらが成功しやすいかといえば、当然ながらやる気のある社員で構成された組織です。
では、やる気のない社員ばかり抱えているB社の経営者は、それで良いと思っているのかといえば、そんなことは思っていないでしょう。

社員になんとかしてやる気を出してもらいたいと思っているはずです。 しかし、その具体的な方法がわからないから、現状に甘んじていると考えるほうが妥当でしょう。
逆に、やる気のある社員ばかりを抱えているA社は、そういう環境を実現できている、何らかの理由が有るはずです。
もし、社員にやる気を出させる何かしらの方法をA社が知っていて、意図的にその様な状態を作り出せているとするのなら、B社はA社が導入している方法を盗んで真似するだけで、社員のやる気を出させることが可能となります。

この他には、企業が製品を作るに当たっての作業であるオペレーションなども、効率の良い会社を真似する事によって、自社の効率を上げることが可能になったりします。
素材のコスト管理や、従業員の育成方法、流れ作業をどの様に円滑にするかや、在庫をどの様に減らすのかといったことを、自社で全て1から考えて導入する必要はありません。
効果の有りそうなものを導入してみて成果を比べるなんて実験をしなくとも、他社で既に導入されていて成果の出ているものをパクれば、手間を大幅に削減することが可能となります。

模倣をしにくくするのが模倣困難性

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このノウハウは、会社によっては公開している会社もあります。 トヨタの改善などが有名ですよね。
核心部分まで含めて全て公開しているかどうかは謎ですが、外に漏らしても問題がないようなレベルのノウハウは公開されている場合もあるため、こういった物を取り入れるのも一つの戦略となります。

この様に企業の活動は、自社で様々なものを開発する場合もありますが、他社からパクってくるということもかなり多くなります。
なぜなら、繰り返しになりますが、会社の成長につながるものをゼロから開発して導入するには途方も無い労力がかかりますが、既に成功しているモデルをパクってくるのは簡単だからです。
模倣困難性とは、簡単に言えば、この自社で開発したり自社が身に着けているものが、パクられやすいかパクられにくいかということです。

パクられにくければ、他社はこちらのモノをパクることが出来ないわけですから、こちらが先行している場合でも相手は真似して追いつくということができなくなります。
逆に、パクられやすい場合。相手はこちらのアイデアなどを真似することが出来るため、いくら自社が市場で先行していたとしても、簡単に追いつかれてしまうことになります。
当然ながら、模倣困難性は高ければ高いほど競争優位性を保ちやすいということになります。

この模倣困難性については次回に、もう少し詳しく観ていくことにします。