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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第16回【経営】5フォース分析(1)

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
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前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

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目次

SWOT分析の復習

前回までの3回で、SWOT分析について話していきました。
SWOT分析を簡単に振り返ると、会社の『強み』や『弱み』であったり、外部環境である『機会』や『脅威』を整理することで、戦略を立てやすくするというものでした。
具体的な戦略の立て方としては、『強みを機会にぶつける』『強みを伸ばす』『脅威を避ける』というのを基本にして、整理した情報をもとに戦略を立てていきます。

脅威に挑んだり、弱みを克服するといったことが戦略にないのは、そういった事をするとリスクが高まるからです。
脅威とは、自然災害で例えれば大型台風や火山噴火のようなものなので、こんな物に人類が立ち向かっていくという戦略はありません。
脅威が迫っていること分かれば距離を取り、近くに来るまで気が付かなければ、気づいた段階で安全な場所を探して立てこもるのが定石となります。

企業の戦略も同じで、小売店イオンモールに正面から喧嘩を売るなんて行動はしません。
脅威から逃れて、自分の得意分野でかつ、大手が真似できないような分野で対抗すべきです。

強味と弱味

弱みの克服については、強みと弱みは表裏一体であるため、弱みを克服することが、必ずしも企業を強くすることにつながらないからです。
以前、ターゲティングの重要性について話しましたが、特定のセグメントに対してターゲットを設定すれば、ターゲットに対しては魅力のある強い企業になりますが、それ以外については魅力のない弱い企業となります。
例えば、スポーツ用品店を例に出して考えてみると、野球少年をターゲットにして野球用品に絞って商品を置けば、それは一種の強みとなります。

例え店舗面積が狭くても、野球用品のみに絞り込んで置く商品を選別すれば、自分より大きな店舗面積を持つ店相手でも、野球用品だけで見れば品揃えや店員の知識で勝つことが出来るでしょう。
この様にターゲットを狭い範囲に絞り込んで品揃えを充実させる小売店は少ないでしょうから、この戦略によって、このスポーツ用品店は『商圏』という商売の範囲を広げることが出来ます。
このスポーツ用品店をSWOT分析で整理すると、『野球用品に強い』という強みが挙げられる一方で、『野球用品以外の品揃えが無い』という弱みが浮上します。

この『野球用品以外の品揃えが無い』という弱みを克服するために、サッカーやバレーボール用品を扱い出すと、店の大きさには限度があるわけですから、野球用品の品揃えを減らさないといけなくなります。
すると、このスポーツ用品店からは『野球用品に強い』という強みが消えてしまうことになります。つまり、弱みの克服が強みを消し去る事に繋がってしまう可能性が出てきてしまうということです。
この様な、弱みが無い代わりに強みもない店は、特色が無く、ターゲットも明確にならないため、結果として、誰からも覚えてもらえない店になる可能性があります。

その為、弱みの克服は戦略としては行いません。
以上が、SWOT分析の簡単な説明でした。
今回、紹介する5フォース分析は、このSWOT分析にも関係してくる理論です。

5フォース分析

5フォース分析とは、簡単に言えば、企業の外部環境を分析するフレームワークです。
SWOT分析では、外部環境と内部環境に分けて、それぞれのプラス要因とマイナス要因について考えていくと言いましたが、この説明ではザックリとし過ぎていて、分析が行いにくいです。
その為、5フォース分析を使って、自社と外部環境の関係性を観るための手助けをしてもらいます。

5フォース分析と聞くと難しそうなイメージを受けますが、外部環境を5つに分けて、それぞれについて考えていきましょうというだけの理論です。
この理論は、マイケル・E・ポーター氏が1979年に発表したものです。
内容としては、先程も言いましたが、外部環境を分析するツールで、外部環境を大きく5つに分けて分析していきます。

5つの外部環境

まず1つ目は、一番わかり易い同業他社です。 先程例に上げたスポーツ用品店で言えば、同じスポーツ用品店を営む店舗が近くにあれば、それは同業他社で、場合によってはライバル会社となります。
この世で唯一のサービスを提供している企業の場合は、この項目は関係がありませんが、その様な企業はほぼ無いと思われますので、全ての会社が同業他社を意識しながら営業しているはずです。
例えばAppleは、OS事業ではマイクロソフトと争っていますし、スマフォ市場ではアンドロイドと争っています。企業が複数の事業をしている場合は、その事業ごとに同業者は存在します。

これらのライバルを競争業者と言います。 5フォース分析のイメージとしてはこの競争業者を中心に据えて、その周りに4つの外部勢力を置いて分析していきます。
周りの4つの外部勢力とは、『買い手』『売り手』『新規参入』『代替品』です。

買い手

一つ一つ説明していくと、まず『買い手』ですが、これは自分の顧客のことです。
例えば、スーパーマーケットを経営している人にとっては、買い手とは毎日買いに来てくれるお客さんとなります。
この顧客が、なぜ外部勢力になるのかというと、この顧客によって自社の経営が影響を受けるからです。

先程、例に挙げたスーパーマーケットの場合は、BtoCの事業となりますが、世の中の事業は直接消費者を相手にする事業だけでなく、事業者相手に販売する職業も多いでしょう。
私が行っている紙箱の製造販売も、基本的には直接消費者に向けて販売せずに、メーカーに対して販売するBtoBです。
このBtoBの取引の場合、『買い手』の勢力が自社の営業に大きく影響を与えます。

例えば、自動車メーカーT社に対して部品を作って納める仕事をしている自動車部品メーカーがあったとします。
この自動車部品メーカーの商品の販売先が、T社1社しかない場合、この自動車部品メーカーの立場は物凄く弱くなってしまいます。
何故なら、このT社が他の仕入先から商品を仕入れることを決めた時点で、この自動車部品メーカーの売上はゼロになるからです。

この様な状態を『買い手の交渉力が強い』なんて言いますが、この様な取引構造になった時点で、自分の立場は買い手よりも非常に弱くなってしまいます。

『買い手』の分散によってリスクを下げる

しかしこれが、T社を含めて4社と取引があり、売上構成でみるとT社は25%しか占めていない場合は、こちらの立場は先程と比べて、そこまで弱くなりません。
何故なら、T社が他社と取引を始めたとしても、売上は25%しか落ちず、売上の75%はキープできるからです。

25%売上が落ちるのは厳しいですが、75%の売上があれば、即倒産することはありません。
これが、更に多くの取引先を持っていれば、1社当たりの重要度は更に下がるわけですから、価格交渉の面でも不利になることは少なくなります。
つまり、特定の取引先への依存度が高くなれば高くなるほど、買い手の交渉力は強くなり、依存度が下がれば下がるほど、買い手の交渉力は弱くなるということです。

『売り手』の交渉力

次の外部勢力である『売り手』は、この『買い手』と真逆で、仕入先とのパワーバランスのことです。
わかりやすさを優先して極端な例で説明すれば、自分が行っている事業でどうしても必要な材料が有るとして、その材料を取り扱っている業者が世界に1社しかない場合、その仕入先の交渉力は極端に高くなります。
何故なら、自社製品を作るためには、その材料を仕入れないと作れないのに、その仕入先が世界に1つしか無いわけですから、そこが材料を売らないと言い出せば、自社製品を作れなくなってしまうからです。

結果として、どうしても必要なその材料の仕入れ値は、相手に足元を見られて高くなる可能性が高いです。
材料を安定して仕入れて、自社製品の製造を安定的にするためには、仕入先との人間関係を築くとか、材料を他の物で代替出来ないのか。
資金に余裕がある場合、その仕入先を買収することは出来ないのかや、材料自体を自社で採掘したり製造したり出来ないのかといった事を考える必要が出てきます。

例えば、今は少し環境が変わってきたようですが、少し前まではダイアモンド市場はデビアスという会社1社が販売を独占していたようなので、価格はその会社によって決められていたと言われています。
いくら宝石商やアクセサリーメーカーが、ダイアモンドが売れ筋だから安く仕入れて製品を製造したいと思ったとしても、販売を1社が独占している状態では、販売価格はその1社によって決められてしまいます。
仕入れ会社は、ダイアモンドを仕入れたいと思えば、相手の言い値で買うしかなくなりますし、『アナタには販売しない』と言われてしまうと、商売そのものができなくなってしまいます

今回はわかりやすさを優先するために、極端過ぎる例で説明しましたが、この様に、材料の供給を握られてしまうと、立場は売り手よりも弱くなってしまうため、それを避けるための戦略が必要になってきます。
次は代替品ですが… それについては次回に説明していこうと思います。