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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第15回【経営】SWOT分析(3)

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回はこちら

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目次

SWOT分析

前回、前々回と、SWOT分析について話していきましたが、今回もその続きとなります。
前回までの話を簡単に振り返ってSWOT分析についてみていくと、これは自社の立ち位置を整理して、今後の戦略を立てるために役立てるフレームワークです。
やり方としては、紙やホワイトボードなどを用意して、上下に二分する形で横線を引き、上の方を内部環境、下の方を外部環境とし、次に左右を二分する形で縦に線を引き、左側をプラス要因、右側をマイナス要因とします。

この分け方は、別に決まっているわけではないので、左右どちらにプラス要因を置いてもらっても良いですし、上下のどちらに内部環境を置いてもらっても良いですが、とにかく領域を4分割します。
そしてその4つの領域に、それぞれ名前をつけていきます。 内部環境のプラス要因を『強み』。内部環境のマイナス要因は『弱み』。外部環境のプラス要因は『機会』。外部環境のマイナス要因は『脅威』です。
次にこの4つの領域を埋めていきます。 埋めていく作業は1人でやっても良いのですが、多くの観点から自社の立ち位置を確認するためにも、複数の立場の違う人と一緒に考えた方が良いと思います。

4つの領域を埋めれば、次に戦略を考えていきます。戦略の基本は、強みを機会にぶつける。強みを強化する。脅威から逃げるです。
脅威から逃げる理由については、前回に詳しく話しましたが、相手の土俵で戦ったとしても勝ち目がないからです。
例えば、将棋の達人がいたとして、その達人がプロボクサー相手にボクシング勝負を挑んだとしても、勝てる可能性は限りなく低いでしょう。

『驚異』への対処

それよりも、自分の得意な分野に相手を引き込んで勝負をする方が、勝てる可能性が高いです。先程の例で言えば、将棋の勝負に持ち込んだ方が、勝てる可能性は格段に上がるでしょう。
そもそも脅威というのは、立ち向かって行っても勝ち目が薄いから脅威なんですから、こんなモノにわざわざ自分から立ち向かって行く必要はありません。
脅威はやり過ごせるのならやり過ごす方が良いです。

『強み』と『弱み』は裏表一体

では次に、『弱み』を克服しなくても良いのかという話ですが、これについて考えていくには、『強み』も絡んでくるので、『弱み』と『強み』を一緒に考えていきます。
弱みと強みというのは、表裏一体といいますか… 観点の違いによって言い方やカテゴリーが違うだけで、全く別のものというわけではなかったりします。
抽象的な言い方だと伝わりにくいと思うので、具体的な例を上げて説明していくと…

飲食店を例に上げると、繁華街の通りに面している路面店に店を構えているというのは、一般的に考えると強みと言えるでしょう。
京都でいうと、木屋町通りや先斗町なんかがそれに当たりますが、これらの通りは飲食目的で訪れる人が多いため、通りに面した路面店に店舗を構えるだけで、特に集客をしなくても、客は入ってきます。
先斗町でいえば、東側の店だと更に東側が鴨川で、夏には床が出せるため、一年を通して集客できる為、このテナントを借りることができれば、強みになるでしょう。

その一方で、先斗町木屋町通に面していない路地の奥にある飲食ビルの5階に店舗がある場合、この店の立地は弱みになるでしょう。
何故なら、先斗町木屋町通りの路面店が一見客に発見されやすいのに対し、路地の奥のビルの5階なんて、余程のことがない限り行くことがないからです。
その為、店の存在をアピールするのが大変ですし、そのために広告費も必要になってくる可能性も有ります。

物事は見る観点によって見え方が変わる

しかしこの『強み』『弱み』は、一見客の集客に限定した話であって、別の観点から見れば、『強み』『弱み』は逆転します。
例えば、家賃という観点で見てみると、この2軒の店の立地は、『強み』『弱み』が逆転します。
飲食街のメインストリートの路面店なんて好立地の店の場合は、当然ながら、家賃の相場が相当高くなるため、家賃支払いという固定費の為に、損益分岐点売上高は相当上昇します。

逆に、路地の奥のビルの5階なんて立地では、借りたい人間がいないため、家賃相場は低いでしょう。その為、先程とは逆に損益分岐点売上高は低くて良いことになります。
売上が低くて良いということは、来客人数も客単価も低くて良いということになるわけですから、低価格路線で攻めるとか、ターゲットを絞りまくって少ない顧客に高品質のサービスをするなど、様々な戦略が選べます。
この様に、家賃や、それに伴う損益分岐点売上高といった観点から立地をみると、必ずしもメインストリートの路面店で有ることが『強み』になるとは限りません。

この他の観点でいうと、メインストリートの路面店は、当然、誰でも知っている店として認識されています。
これは『強み』と捉えることが出来ますが、誰でも知っているため、特別な店とは思われないため、その点でいえば『弱み』ともいえます。
逆に、路地の奥のビルの5階の店は、その存在を誰も知りません。これは『弱み』ともいえますが、客さえ引き込めれば『隠れ家的な店』として贔屓にされて口コミで客が広がる可能性もあるため、『強み』ともいえます。

つまり、『弱み』を克服しようと行動した結果、それが『強み』を打ち消す行動になっていたり、別の『弱み』を生み出す原因になってしまったりするということです。

『強み』と『弱み』の関係性

別の例で言えば、例えば焼酎に特化した酒屋があったとすると、その酒屋の『強み』は焼酎の品揃えや店員の焼酎に関する知識ということになり、『弱み』は焼酎以外の酒がないことになります。
この酒屋が、自身の『弱み』を克服するために、ワインやビールや日本酒やウィスキーを置き出すと、商品の幅は広がって、先程あげた『弱み』は消えることになります。

しかし、店のスペースが限られていて、棚の広さにも限りが有る以上、焼酎以外の商品を並べると焼酎の種類や在庫を減らす必要が出てきます。
こうなると、今までの『焼酎に特化した専門店』というスコアコンセプトが崩れ、根幹部分の『強み』が無くなってしまい、品揃えが中途半端な特徴のない酒屋になってしまいます。
その為、基本的には弱みの克服は考えません。

この弱みが、例えば『従業員の接客態度が悪い』といった、直すことで強みが無くならならず、サービスが改善することであれば、研修などを通して改善するのは問題ないですが…
先程あげた例のように、直すことで元々あった強みが無くなってしまうような改善には、慎重になるべきです。

『強み』を『機会』にぶつける

次に、取るべき戦略として挙げた『機会に強みをぶつける』についてですが、これは、説明の必要もないと思います。
外部環境を調査した結果、市場にどの様なニーズが有るのが分かったとして、自社の強みを活かせばそのニーズを満たすことが出来るとするのなら、その市場に参入すれば、成功する確率は高いでしょう。
何故なら、そもそも仕事とは、社会に転がっている問題を見つけ出し、それを解決することだからです。

社会に転がっている問題とは、それがそのまま消費者のニーズとなりますし、そのニーズを自社の強みを使って満たすことが出来るのであれば、それは事業として成り立ちます。
また、既に自社が『強み』として所持している経営資源を流用するわけですから、新たな投資も必要がないため、リスクが非常に低いです。
その為、『機会』に対して『強み』をぶつけるのは、鉄板の戦略となります。

『強み』の強化

次に行うのが、『強み』の強化です。
今現在の経営で、事業運営が順調であるのなら、無理な方向転換をせずに、強みを伸ばして行く方が良いでしょう。
例えば、先ほど例として出した、焼酎の専門店の話で言うのなら、ビールやワインなどを取り扱わずに、焼酎メーカーの新規開拓をするほうが良いでしょう。

焼酎メーカーを訪れて知見を広めたり、メーカーと親睦を深めて、その業界内で顔を広めるのも良いでしょう。
関係性が深まればそのメーカーとコラボや共同開発などを通して、自社のみの特注品を作るなんてことも出来るかもしれません。
そうすれば、その商品は他の小売店では購入することが出来ないわけですから、その商品自体が新たな自社の強みとなることもあるでしょう。

自分が携わっている業界の人達と仲良くなるとか、その業界で顔を売る。自分たちが取り扱っている商品や素材に対して詳しくなるというのは、費用や労力も少なくて住みますし、行ったとしてもデメリットがありません。
デメリットがほぼ無いにも関わらず、強みが強化され、場合によってはそれが売上や事業拡大に繋がるわけですから、強みを強化するという戦略は基本戦略にすべきでしょう。

まとめると、SWOT分析によってそれぞれの項目を分析した後は、脅威からは逃げ、機会には強みをぶつけ、強みは更に強化するという戦略を立てるのが、定石となります。
今回でSWOT分析の説明は終わり、次回は、5フォース分析について説明していきます。