だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第4回 ステークホルダー

広告

この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
▼▼Apple Podcast▼▼

podcasts.apple.com
▼▼Spotify▼▼
open.spotify.com

noteにて、番組のサポートを受け付けています。応援してくださる方は、よろしくお願いします。
note.com

▼▼youtubeチャンネル登録はこちら▼▼
https://www.youtube.com/channel/UCqx0z_3n3tBH450v8CtNoUg?sub_confirmation=1

前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

f:id:kimniy8:20210204220540j:plain

目次

前回のおさらい

前回の放送では、そもそも企業とは何なのかについて話していきました。
企業とは、簡単に言えば、市場からヒト・モノ・カネを集めてきて、それに対して付加価値をつけて製品を作り、市場を通して販売することで利益を上げるものです。
別の観点から企業を見た場合は、企業はステークホルダーが望みのものを手に入れるための触媒となります。

ここで、ステークホルダーという新たな言葉が出てきたので、この説明からすると、ステークホルダーとは利害関係者のことです。

ステークホルダーとは

企業は存在しているだけで様々な人と関わり合いを持つことになります。何故なら、大半の企業はオープンシステムで運営されているからです。
オープンシステムとは、簡単に言えば、自社以外のヒトや業者と関わり合いになりながら運営していくシステムのことです。

例えば大工さんは、木を自分で育てるわけでも、それを切り倒して角材や板を作るわけではなく、材木店やホームセンターで材料を買ってきて家を作り、それを顧客に販売します。
大工さんの仕事は終始自己完結しているわけではなく、市場を通して外側の人たちと繋がっています。
これは殆どの企業に当てはまることだと思いますが、ステークホルダーとは、このオープンシステムで関わる人達を含めた企業に関わる全ての利害関係者のことです。

もう少し具体的にいうと、モノを製造して販売する製造業の場合、原材料を買ってこなければなりませんが、この仕入先はステークホルダーに含まれます。
仕入れた材料は、そのまま放置していても製品にはなりませんので、原材料を加工する職人を労働市場を通して自社で雇用することになりますが、この従業員もステークホルダーとなります。
従業員によって原材料が加工されると製品になり、この製品は市場を通して顧客に販売されることになりますが、製品を購入してくれるお客さんもステークホルダーです。

製品を販売すると、会社は利益を得ることが出来ます。 この会社がもし株式会社で、その株式の一部を他の人に売却していて、オーナー以外の株主がいる場合。
その株主は、会社に対して出資を行っていて、会社が利益を上げれば、持ち株に応じて利益を得ることが出来るわけですから、株主も利害関係者であるステークホルダーといえます。
つまり、この会社が存在することで、何らかの利害が生じる可能性のある人全てが、ステークホルダーとなるわけです。

人が企業に関われば、その人には何らかの利害が生じるため、その人物はステークホルダーとなりますが、では何故、ステークホルダーが生まれるのか。言い換えれば、人は企業に関わろうとするのか。
これは、自分の持つものを企業を通して別のものに変換しようとするからです。

市場と企業の関係

例えば仕入先は、仕入先が持つモノをお金に変換しようとして、企業に関わります。
従業員は、自分が持つ自由な時間と能力を労働力に変換することで、給料としてお金を得ます。
商品を購入してくれるお客さんは、自分が稼いだお金を、その会社が販売している製品と交換しようとするため、お客さんという立場になります。

株主の場合も、人間関係や、他の投資先との比較など様々な理由から、その会社に出資することとなります。
この動きはつまり、自分が持っている何かしらのモノを、企業という存在を通して、自分がもっと欲しいと思っている別のものに変換するためにステークホルダーになろうとするわけです。

その為、企業というのが生まれて上手く運営されている場合、その企業はステークホルダーから継続して存在する事を望まれる事となります。
仮に、ステークホルダーから存続を望まれていない場合、材料の仕入れも出来ませんし、それを加工する従業員を募集したとしても人が集まりません。製品を買う人もいなければ、企業に対して出資する人もいなくなるため、そもそも存続が出来ません。
つまり、企業というのが生まれてステークホルダーが存在している時点で、その企業は存在し続けなければならないというわけです。

たまにドラマなどで、そんなに儲けが出ているわけでもないのに『お客さんが喜んでくれているから。』という理由だけで事業をやり続けている人が登場したりしますが、それも、この考えに照らし合わせれば、事業を継続する立派な理由と言えます。
この様に、何らかのステークホルダーが存在している時点で、その企業は存続し続けなければならないことになりますが…
この考え方を前提とした言葉に、ゴーイングコンサーンというものが有ります。

ゴーイングコンサーン

このゴーイングコンサーンというのは元々は会計学の考え方で、会計のルールというのは、企業が永続的に続いていくということを前提にして決められていたりします。
元々は会計学の分野の話ですが、人によっては、『企業は永続的に続いていかなければならない』というだけの意味あいで、この言葉を使う人もいたりします。

このゴーイングコンサーンですが、ではこの前提がどの様に会計に影響を与えているのかというと、区切りです。
例えば、3年で終了するプロジェクトを行うために事業会社を立ち上げて、プロジェクト終了と共に事業をたたむ場合、この企業は継続的に存続するわけではなく、3年という限定された期間だけ存在することになります。
この3年しか存続しない企業単体で考える場合、その企業のちゃんとした利益を計算する場合には、3年区切り…というか、起業から廃業までの収支を一括で出せばよいですよね。

3年でやめることが確定しているわけですから、廃業時に、3年分の売上を出して、そこから設備投資費用や人件費や材料費などの原価に係るものや、営業などの販売管理に関わる費用を差し引いて利益を出せば、分かりやすい企業の利益が出ます。
しかし実際の会計では、その様な計算はしませんよね。 企業の会計は1年間を区切りとして、毎年のように決算書を出します。
何故、1年区切りで毎年のように決算を出すのかというと、会計の考え方として、企業が一定期間で廃業して清算されるという前提を置いていないからです。

例に上げた企業のように、3年後に会社を清算すると確定している場合は、解散日に決算書を出せば、その会社全体としての分かりやすい収支が出せますが、企業が永遠に存続するとした場合、解散日が永遠に来ないため、永遠に決算が出せません。
決算が出せなくなるとどうなるのかというと、利益が確定しません。 利益が確定しないということは、事業会社の運営者は、その事業が儲かっているのか儲かっていないのかの判断もできなくなります。
利益が判断できなければ、事業計画を建てることも出来ません。現状でコストを抑えるべきなのか、それとも、追加投資をすべきなのかの判断もできなくなってしまいます。

この様な状態では、会社の経営そのものが上手く出来ないことになります。何故なら、繰り返しになりますが、会社の状態が正確に判断できないからです。
前に、『経営とは何なのか?』について話した際に、リスクを下げるためと言いましたが、目指すべき方向もわからず、自分の今の状態も把握できていなければ、リスクはかなり高まります。
そのリスクを下げるためにも、1年間という区切りを置いて、営業成績をまとめる決算を行います。 これによって、企業が永遠に続いたとしても、企業の現状把握が可能となります。

この、会計ですが、大きく分けると2つの会計が有ります。1つは財務会計で、2つ目が管理会計です。
この両者の違いは、どこに向かって軽々書類を作るのかという点で、外に向けて作るのが財務会計で、起業内部、主に経営層に向けて作るのが管理会計となります。

管理会計財務会計

まず、管理会計から簡単に言えば、主な作業はコストの管理です。 例えば、製品を1つ作るのに原材料費や人件費がどれぐらいかかるのかが分かっていなければ、製品の値段が決められません。
また、機械の操業度や従業員の手待ち時間を把握していなければ、効率化の目標も建てられませんし、製品が複数の段階を経て作られる場合、どの段階に無駄があるといった分析もできなくなります。
こういうことをまとめて、経営者に報告して、経営者の意思決定を手助けするのが管理会計です。

では、財務会計は何かというと、企業の外側にいるステークホルダーに向けて作るもので、企業の内情を外側の人にけて発表するものです。
作る書類は主に2つで、BSと呼ばれる貸借対照表と、PLと呼ばれる損益計算書からなります。 大きい会社になると、キャッシュフロー計算書というのがこれらに加えて登場しますが、規模の小さい会社は前者の2つで良いです。
何故、外側に向けて起業の資産状況や利益の状態を報告しなければならないのかというと、信用を得るためです。

多くの企業は金融機関から借り入れをしていると思いますが、金融機関は基本的に返済能力のある人間にしかお金を貸しません。 何故なら、貸した金が返ってこなければ、それはそのまま損失につながるからです。
しかし、言葉でいくら『ちゃんと返すから、信用してくれ!』と言ったとしても、信用はできません。 何故かといえば、借りる時には皆、『ちゃんと返すから』というからです。しかし一部の人は返しません。
そのリスクを下げるために、回収見込みがあるのかをチェックするため、財務諸表を確認します。

この他には、国も毎年チェックをします。 青色申告の場合では、国は財務諸表をチェックすることで、税額を決めています。
この会計について詳しく話すと、かなり長時間になってしまう為、また、別の機会にそれだけをテーマにした回を作ろうと思います。

この様な感じで、企業とはオープンシステムで運営されて、様々なステークホルダーに囲まれて、存続し続けるものとなります。
では、この企業を運営するためには何が一番必要なのかについて、次回、語っていきます。