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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第71回【財務・経済】負債比率・自己資本比率

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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固定長期適合率と固定比率


今回も、長期目線での財務分析について考えていきます。
簡単にこれまでの長期での財務分析について振り返ると、最初に紹介したのが固定費率で、計算式としては固定資産を純資産で割ったものでした。
この固定費率の考え方を簡単に復習すると、不動産など保有しているだけでは何の利益も生まない資産は、返済義務のない純資産で賄えたほうが安全性が高いと考えて作られた数字です。この数字は100%を下回っていれば安全だと考えられています。

そして前回紹介したのが、この固定費率を少し改造した固定長期適合率という指標で、分母の純資産に固定負債を足し合わせて計算します。この数字も固定費率と同じく、100%を下回っていれば安全だとされます。
計算式としては、固定資産を純資産と固定負債の合計額で割って出すもので、長期的な借金があればそれだけ安全性は高まることになります。
『長期的な借金が多いほど安全性が高まる』というと、少し違和感を持たれる方も多いともいます。 これに関しては、詳しくは前回に話しているので、それをまだ聞かれていない方はそちらを聞いてもらいたいのですが…

固定長期適合率の考え方


簡単に振り返ると、固定資産の中には固定負債と密接な繋がりがあるものがあるので、それを加味した上で作られた数字が固定長期適合率だと思われます。
例えば、先程例に出した不動産などは売上に貢献しない固定資産と考えられていますが、その一方で製造業が持つ生産機械などは売上に直接寄与してくる固定資産です。
この機械設備は多くの会社がローンで購入するため、固定負債と密接なつながりがあります。

またこの機械設備の代金は、製品の原価に組み込むことで最終的な製品価格に反映させるものです。 その為、販売計画通りに商品が売れていれば機械設備のコストは順調に回収できることになります。
その回収したコストはそのまま返済に当てられるため、簿記的に見れば、固定資産と固定負債は同額ずつ減っていくことになります。
何故かというと、固定資産は毎年減価償却が行われるため、その減価償却分だけ固定資産は費用化されて減少していきます。

一方で固定負債ですが、これはローンで毎月返済額が決まっている場合が多いため、これも毎年のように減っていくことになります。
そして最終的に固定負債が完済される頃には、固定資産も償却が終わって無くなっていることになります。
こういった機械設備部分の長期投資を分離して考える目的で作られたのが、固定長期適合率だと思われます。

これを聞かれている方の中には、『固定資産の内訳を見て、不動産のような減価償却のない資産と機械設備のような減価償却される資産を分ければ良いじゃないか』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが…
正直、それは非常に面倒くさいです。 小さな企業であれば問題はありませんが、財務分析というのは上場企業のような大きな会社を分析する際にも使われます。
そういった大きな会社が持つ固定資産をいちいち分類するぐらいなら、不動産や設備機械と言った全てのものを足し合わせた数字として出てきた固定資産というグループを、固定負債と純資産を足し合わせたもので割った方が、計算も楽になります。

財務分析指標というのは、簿記に詳しくない人も簡単に計算ができて使えるように作られているため、それを踏まえて指標を作ろうと思うと、この様な計算式になるのでしょう。

指標の選び方


では、固定比率と固定長期適合率のどちらを使えば良いのかというと、それは会社のやっている事業によっても変わってきます。
サービス業で設備投資が必要のないような会社であれば固定費率を使った方が会社の現状が分かりやすいでしょうし、製造業で多額の設備投資が必要なのであれば、固定長期適合率を使ったほうが良いでしょう。

というのも、固定長期適合率というのは長期的な借金が増えれば増えるほど安全性が増してしまう指標です。
しかし実際問題として、機械設備などを持たないサービス業なのに固定負債が大量にある会社というのは、経営的な問題を抱えていると考えるのが普通でしょう。
極端な例で言えば、訪問型の英会話教師を自分1人出している人がいて、その人が多額の長期借入金を持っていれば経営的にはヤバそうだと考えるのが普通です。その為、この場合は固定負債を含まない固定費率で見た方が状況が良くわかります。

財務分析は複数の指標を組み合わせる


このように、財務分析指標というのは1つだけを使って分析をしようと思うと、問題が出てくる場合も多いです。 その為、複数の指標を組み合わせて使うのが一般的です。
組み合わせ方は、長期・短期・収益面と色々な角度から見れるものを組み合わせるのが一般的ですが、長期的な安全性についても複数の指標を組み合わせた方が企業の姿が分かりやすかったりします。
どの様な指標と組み合わせれば良いかというと、今回紹介する負債比率や自己資本比率もそれにあたります。

負債比率や自己資本比率は、基本的な考え方としては同じで、純資産に対して負債がどれぐらいあるのかというのを表した数字です。
それぞれの計算方法は、負債比率が負債額を純資産で割ったもので、自己資本比率が純資産を貸借対照表の負債の部の合計額で割ったものです。

計算式だけで見ると分かりにくいと思うので、具体的な数字で見ていくと…
仮に借金が600万円あって純資産が400万円ある場合、負債比率は600万円を400万円で割るので150%となり、自己資本比率は400万円を純資産の400万円と負債の600万円を足し合わせたもので割るので、40%となります。
負債比率の方は低ければ低いほど、自己資本比率は高ければ高いほど安全性が高くなります。

これはが何故そうなるのかは、考えてみればすぐに分かると思います。 これらの数字で表されているのは負債額に対してどれぐらいの純資産。つまりは返済不要の自己資金があるのかということを示しているので、純資産が多いほど安全性は高くなります。
これを先程の固定長期適合率何かと組み合わせて考えると、固定長期適合率は借金が大きくなればなるほど安全性が増していく指標ですが、この自己資本比率や負債比率などは借金が大きくなればなるほど安全性が低くなる指標です。
固定長期適合率だけ見ていると安全性に問題がないように見えても、自己資本比率も合わせてみると問題に気がついたりもするので、組み合わせる事で指標の欠点を補えたりもします。

数値の目安


話を自己資本比率と負債比率に戻すと…
では、これらがどれぐらいの数値になっていれば良いかというと、目安としては自己資本比率で50%なんて言われていたりもしますが、これも、業種や経済状態によって変わりますので一概には言えません。
また、これらの安全指標が高過ぎるということは、裏を返せば積極的な投資が行われてい無いことも意味しますので、一概に良いとも言い切れません。

例えば、日本はバブル崩壊後から景気対策のために低金利政策を続けていますし、それによって銀行からの借入金利も相当低下しています。
銀行の借入金利が低いということは、その低い金利でお金を借りて新規事業に投資した際に、儲けが出るハードルが下がっていることを意味します。
具体例を出すと、仮に1000万円を8%で借りることを想定すると、借入金利は年間80万円となるため、事業に投資して得る利益が最低でも80万円以上なければ、事業としては失敗になります。

何故なら、事業で得られた利益を全額返済に回したとしても、借入金利分にも満たないからです。
しかし一方で、借入金利が2%だとするとどうでしょうか。 2%の場合は1000万円に対する借入金利は20万円で済むので、差額で60万円分のコスト減となります。
その為、低金利の状態では借金をして新規事業をする際のハードルが下がります。 この様な状況下では、多く借金をして新規事業に投資した方が資金効率が良いことになります。

そもそも論で言えば、政府が金利を引き下げる政策を取っているのは、この様に投資に対するハードルを下げることが目的だったりします。
その為、この様な時期に自己資本比率が低くなっているからと行って、それがそのまま経営危機に繋がるわけではありません。

この様な経済的な要因以外にも、業種によって自己資本比率が低くなってしまうような場合もあります。
例えば、何も設備がいらないサービス業と多額の設備投資が必要な製造業とでは、借金の額が変わってきます。
また、商品1つあたりの単価が高い不動産業なども、土地の購入費用を全て自己資金で賄うのは不可能だと思われるので、借金比率が高くなりがちです。

指標の推移も重要


さらに言えば、これらの指標は推移が重要だったりします。
これまでに、固定資産と固定負債の関係性などを話してきましたが、多額の設備投資費を長期借入金で賄って返済していく場合、時を経るごとに長期借入金はローン返済によって減っていくため、自己資本比率などは改善していきます。
つまり設備投資の段階で一時的に自己資本比率が悪化したとしても、その後経営が順調に行われて借金が減って利益が増えていけば、自己資本比率は急速に改善していきます。

にも関わらず、設備投資を行った単年度だけを取り上げて『長期の安全性に不安がある』といったところで、意味はありません。
この様に財務指標は、複数のものを組み合わせたり、その推移を見ていくことが重要になってきたりします。

ということで負債比率と自己資本比率の話はこれまでにして、次回は、インタレスト・カバレッジ・レシオについてみていきます。