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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第70回【財務・経済】固定長期適合率

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目次

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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固定比率の計算式


今回も、財務分析で長期的な安全性を測るための指標を紹介していきます。
今回紹介するのは固定長期適合率です。
この指標は、前回に紹介した固定費率の計算式に少し変化を加えただけのものとなります。

その為、固定費率が分かっていなければ今回の話の理解もしにくいと思いますので、まずは前回紹介した固定費率の復習を行っていきます。
まず固定費率の計算式ですが、これは【固定資産÷純資産】で計算されます。
この式の意味合いとしては、固定資産というのは基本的には利益を生まない資産として固定されているものなので、この固定資産分のお金は純資産として持っておいた方が長期的には安全ですよねという感じで作られたようです。

固定資産の考え方


固定資産が利益を生まないというのは、例えば土地などで考えてみれば分かりやすいと思います。
例えば不動産屋のように、土地を転売したり貸し出したりして利益を得ているような会社であれば、不動産は利益を生み出す大切な商品となるので少し意味合いは変わってくるのですが、それ以外の大半の業種が持つ土地は何の利益も生みません。
例えば卸売会社が自社で取り扱う商品を置くために倉庫を所有していたとすると、その土地部分と減価償却されていない建物部分は固定資産として固定されてしまいますが、ではこれが具体的に利益を生み出しているかと言われれば生み出してはいません。

むしろ、土地を保有することで毎年固定資産税を取られてしまうので、会社の利益は圧迫されてしまいます。
ここで『仮に土地を持っていなければ誰かに借りなければならないんだから、そうすれば家賃が発生してしまう。自社で倉庫を持っていれば家賃が必要ないのだから、実質利益が出る!』という反論をしたいという方もいらっしゃると思います。
しかし、会社の利益というのは売上からコストを引いて計算するため、本来なら支払わなければならないはずのお金を節約できたから利益が増えるなんてことにはなりません。

『家賃の支払い分だけコストが下がるのだから、結果として利益は上がるはず!』という反論もあると思いますが、仮に、この会社が自社で土地を買って建物を建てなかった場合、この会社はその分の資産を現金として持つことになります。
その現金を別の事業に投資していれば、更に大きな利益が得られていた可能性もありますので、その可能性も計算に含むとすると利益が得られるとは考えません。
ここで、『事業に投資したところで、支払家賃以上の金なんて稼げるはずがない!』という反論も出てくると思いますが、そういう方は、本業を辞めて不動産業を始めたほうが良いです。

そもそも会社というのは、貸借対照表の負債の部にあるお金を運用して利益を上げるというのが役割です。
その運用方法の一つとして『事業を行う』というのがあり、製造業であれば製造を行い、サービス業であればサービスを行って利益を上げるわけです。
その製造やサービスの対価として得られる利益が、不動産の家賃に負けてしまうほど利益率が低いのであれば、そんなサービスは辞めてしまって、全額を不動産投資に回して不動産業として事業を行っていく方が良い事になってしまいます。

不動産投資の運用で得られる利益率はだいたい5%前後と言われていますが、製造業やサービス業をして利益が5%にも達しないのであれば、辞めてしまって不動産投資に集中した方が良いということです。
このようにして考えると、不動産などの固定資産は持っていることで利益を生まない資産と考えることが出来るので、その固定資産は、返済義務のない純資産で賄われていたほうが望ましいと言うのが固定費率の考え方です。

固定長期適合率の計算式


これが固定費率の考え方だったのですが、今回紹介する固定長期適合率では、計算式が少し違います。どのように違うのかというと、分母が純資産ではなく、『純資産+固定負債』となっています。
分母が固定負債の金額ぶん大きくなっているため、無借金でもない限り、先ほど紹介した固定費率よりも出てくる数字は値としては小さくなります。
この固定長期適合率も、100%以内に収まっているのが望ましいとされています。

固定資産の種類


では何故、固定負債を足し合わせるのでしょうが。 これは、固定資産の内訳を見ていくと理解しやすいと思います。
固定資産には、先ほど紹介した土地といった利益に直接結びつかないような資産もありますが、これがないと利益を生み出せないといった固定資産も存在します。
わかり易い例で言えば製造機械などの設備です。 製造業で全ての工程を手作業で行うといった仕事でもない限り、生産工場では何らかの製造機械を導入しているはずです。

その製造機械がなければ、利益の源泉となる売上を上げるための製品が作れないので、この固定資産は事業を行う上では絶対に必要なものといえます。
そしてこの製造機械は、多くの会社が銀行から借金をして購入します。 この銀行の借金は返済期限が1年以上にわたって続くものが多いため、貸借対照表には固定負債として記載されます。
この場合、借金をして機械を購入するというのは、固定負債を増やして固定資産を購入していることになるため、この投資に限定して見てみると、増える固定負債と固定資産はほぼ同額ということになります。

そして事業計画がしっかりしている場合、この固定資産と固定負債は同じように減少していくと考えられます。
何故かというと、まず固定資産から見ていくと、購入した製造機械は毎年減価償却を行っていき、その金額分だけ固定資産は減少していきます。
一方で固定負債は、毎月ローンを返済するわけですから、毎年返済分だけ減少していくことになります。

減価償却の金額とローン返済額はだいたい似たような金額になると思われるので、この投資の場合は固定資産と固定負債は同じように減少していくことになります。
何故この様な関係になるのかというと、減価償却の基本的な考え方としては、例えば償却期間を10年とした場合は10年で機械を使い潰すことになります。
10年で機械を使い潰すということは、機械の購入費を10で割って、その金額をコストに組み入れるということです。 つまり、製品の製造単価を出す際には、その金額を含めて原価計算しないと駄目だということです。

そうしなければ機械の購入費用が捻出できないので、当然と言えば当然ですよね。
例えば機械が1000万円で10年で使い潰す場合は、その機械の年間のコストは100万円です。 その機械を使って年間10万個の製品を作って販売する場合、製品1個あたりに機械の償却費として10円分のコストを組み込む必要があります。
これをしなければ、10年後に機械が壊れた際に機械を書い直すことができなくなります。 この1個10円のコストというのは、製品が売れれば回収されるわけで、その回収した金を返済に回せば、無理のない返済ができることになります。

これが物凄く単純化した設備投資と減価償却と返済の流れですが、この様な無理のない事業計画を立てれば、基本的には機械などの減価償却が発生する固定資産と固定負債の金額は同じ様な金額となります。
これが、純資産に固定資産を足し合わせている理由と考えられます。

固定長期適合率の考え方


つまりこの固定長期適合率というのは、固定資産を大きく2種類に分割し、減価償却が発生しないような不動産などの固定資産に関しては純資産でまかない、機械などの設備投資といった減価償却がある固定資産部分については、固定負債で賄うのが望ましい。
それらを2つ足し合わせると、固定資産を固定負債と純資産を足し合わせたもので割って値を出すという計算式になります。

ここで、『固定負債は毎年返済していくんだから、この固定長期適合率では毎年分母の方が小さくなる。 その為、ローンを返済するほど安全性が低くなるのではないか?』と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが…
事業がまともに行われていれば、そんな事にはなりません。 というのも、何度も繰り返すことになりますが、企業というのは貸借対照表の負債の部に記載されているものを、資産の部にあるもので運用して利益を上げる為に存在しています。
その運用がしっかりと行われているのであれば、毎年利益が発生します。 その利益は最終的には貸借対照表の純資産に組み込まれることになるので、企業が利益を出し続けていれば、純資産は増え続けることになります。

先程も少し説明しましたが、固定負債で調達して購入した機械の代金は、コストとして商品価格に上乗せされて回収されることになります。
そのコストを差し引いて残ったものが利益となるため、利益が出ているということは、固定長期適合率の数字は小さくなることを意味します。 何故なら、固定負債の減少額と同程度に固定資産も減少するからです。
固定資産と固定負債が同程度で減少する中、純資産が増加するわけですから、基本的には固定長期適合率の値は小さくなります。

もし、この値が大きくなるということは、赤字が出て純資産が減少しているということになるため、事業計画が狂ってきている事が考えられますし、赤字が出れば安全性に問題が出てくるのも当然といえば当然ですよね。
その他には、減価償却のない不動産を借金して購入し、返済が進んだというケースもありますが、こちらも本当にコストの圧縮ができていれば利益が出て純資産が増えているはずです。
にも関わらず固定長期適合率が高くなるということは、資産の運用効率が悪いということになるので、事業を見直すきっかけにすべきでしょう。

ということで固定長期適合率の話はこれぐらいにして、次回は負債比率についてみていきます。