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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第65回【財務・経済】流動と固定

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目次

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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固定資産


前回までは、減価償却を少し掘り下げた結果出てきた固定資産について話していきました。
少し振り返って復習すると、固定資産とは直ぐに現金化出来ないような資産のことです。
そして、これの反対となる直ぐにでも現金化出来て自由に使うことが出来るような資産や現金そのもののことを、流動資産といいます。

固定資産についてですが、例えば、借金をして事業として使う為の土地や建物を購入した場合、土地と減価償却できていない部分の建物が固定資産となります。
つまり、現金という資産と土地や建物という資産を交換しているだけであるため、土地や建物の購入というのは、購入した本人にとっては消費活動にはならないわけです。
厳密に言えば、建物の減価償却分は毎年価値が消えていっているため、この部分に関しては『お金を使った』と言えるのですが、その他の固定資産部分に関しては、本人にとっては消費していることになりません。

これまで簿記に馴染みがなかった人は、『お金を使って物を買ったのに、お金を使ったことにならないのは意味がわからない』と思われるかもしれませんが、実際問題としてはそのようになります。

資産と資産の交換


分かりやすく他の例で説明すると、円という通貨をドルに変換するようなものです。 ドルも円も外国為替市場で値段が付けられていて、その値段は刻々と変化しています。
つまり国が発行しているお金とは、一種の商品のようなものです。 今の経済では、このお金という物を使ってものと交換している。 つまり物々交換が行われているということです。

こうして考えると、円をドルに両替するとは、円という物をドルという物と交換する。 つまり、円をドルに変換する場合は、円でドルを購入しているということです。
円をドルに両替する行為のことを消費活動とは呼びませんよね? 何故なら、ドルは外国の通貨なので、その通貨を使って他のものを購入できるわけですから。
これは先ほど例として出した、土地や建物も同じです。

土地や建物は、不動産市場を通して売りに出すことが可能です。 つまりは、土地や建物は現金に変換可能だということです。
この様な属性を持つものは、その価値分を資産として計上しないと企業の財務状態が正確にわかりません。
その為、資産として計上するのですが、では、土地や建物は売ると決めれば直ぐに現金化出来るのかというと、出来ません。

直ぐに現金化できない資産


みなさんも、街を散策した際に『売り物件。お問い合わせはこちら』と書かれた紙が貼られている家を見たことがあると思います。
あれは、売りに出されているにも関わらず、買い手が付いていない。つまりは売れていない物件です。
何故、売れていないのかというと、単純に需要と供給が合っていないからです。  需要とは買いたい気持ちで供給とは売りたい気持ちと考えてもらって良いです。

例えば、ある物件が3000万円で売られていたとします。 この3000万円という金額は、誰か権威のある人が決めた定価ではなく、持ち主が『これぐらいの値段で売りたい。』と思っている金額です。
その金額に対し、欲しいと思う人が1人でもいれば、この物件はその人に買われることになります。
しかし、その値段では買いたくないと皆が思ってしまえば、その物件は売れないことになります。 ただ売れないとは言っても、皆がその土地を欲しくないと思っているわけではなく、その値段では買いたくないと思っているだけです。

その為、売り手はその土地を売りたいのであれば、買い手がつく値段まで価格を引き下げていく必要があります。
その物件を買いたいと思う人は、物件価格が下がれば下がるほど増えていくことになります。 しかし土地や建物は全く同じ条件のものが複数あるわけではないので、多くの人が欲しいと思っても意味がありません。
欲しいと思う人の中で一番高い値段を提示する人が現れればそれで良いため、売り手は、その一人が現れる水準まで値段を切り下げていきます。

買い手はというと、ただ待っていれば値段は下がっていくため、基本的には待っていれば良いのですが、値段が下がれば下がるほど、同じ様に『その土地を買いたい!』と思うライバルは増えるため、どこかのタイミングで買う決断する必要があります。
そうして売り手の提示価格と買い手が希望する価格が合致したところで、値段が決まります。
建物などの物件はこういった一連のプロセスを踏んで売却されるため、換金できる資産ではあるのですが、直ぐに換金できるようなものではないため、すぐに使える流動資産には含まれず、固定資産に含まれます。

株式の分類


これは、株などの証券でも同じです。 会社が持っている余剰資産を株式などで運用する会社もあると思いますが、この株は、単に資産運用の一環として持つ場合とそうではない場合があります。
単に資産運用の一環として保有する場合は、会社で現金が必要になった際にはそれを売れば直ぐに現金化出来るため、これは貯金と同じ様な扱いであるため、流動資産として扱います。
しかしその会社が、新事業を立ち上げる際に別会社を作ろうと思い、子会社を立ち上げる目的でその会社の株式をすべて引き受けて、100%子会社とした場合、この会社の株は簡単には売れません。

というのもまず第一に、株式というのは上場していなければ取引市場を通じて簡単に売ることは出来ません。
第二に、この100%子会社の株を売ってしまうということは、自分自身の持つ事業の一部を売却してしまうとういことです。
会社のそれぞれの事業というのは、それぞれが密接に関連し合っているため、お金がないからと簡単に売却できるようなものではありません。

この様な理由から、株というのは売買目的の場合は売買目的有価証券という勘定科目にして、計上します。 この売買目的有価証券は流動資産に分類されることになります。
ちなみにこの勘定科目に割当てられた有価証券、つまりは株式は、時価評価が求められます。 つまり、毎年決算時に簿価と時価との差額を出して、この利益や赤字を計上しないといけないということです。

流動負債と固定負債


このようにして、すぐに現金として使える資産と使えない資産を流動資産と固定資産に分けていきますが、これは貸借対照表の資産の部だけでなく、負債の部に関しても同じことがいえます。
基本的には1年以内に返済する予定のお金は流動負債となり、それ以上先に返済予定の借金は固定負債となります。ここで、不思議に思う方も多いと思います。
というのも、資産として持っている土地や建物などは、いくらで売れるのかもいつ売れるのかもわかりませんから分類する必要がありますが、負債の場合は支払期限が決まっている場合があるからです。

例えば、35年ローンで家を購入する場合、その借金は35年で返済することが基本的には決まっていますし、毎年の返済額も決まっています。
この借金は、破産でもしない限り『返さなくて良い』なんてことにはなりません。 にも関わらず、なぜ、この様に分類するのかというと、大きな理由は、財務分析をする際に必要になってくるからです。
その会社が短期的に見て安心できる状態なのか、それとも危険な状態なのか。 長期的に見て安全なのか、危険なのかというのを判断する方法として、財務分析というものが存在します。

流動比率


この言葉自体は、みなさんも聞かれたことがあると思いますが、では、どのようにして分析するのかというと、この貸借対照表損益計算書の数字を加工することで、安全性を見極めるための数字を出していきます。
ここ最近取り扱っている流動資産や固定資産の例で言えば、この数字を使って計算する流動比率や固定比率という物が存在します。
流動比率というのは短期の企業の状態を見ていくもので、固定比率というのは長期の企業の状態を見ていくものです。

まず流動比率の計算の仕方ですが、これは流動資産を流動負債で割ることで計算します。この数字は、100%以上であることが望ましいと言われています。
これが何を意味しているのかを見ていきましょう。 まず流動資産ですが、これはこれまでに説明してきたとおり、直ぐに現金として支払うことが出来る資産のことです。
一方で流動負債とは、1年以内に支払義務のある借金です。

この流動資産を流動負債で割った金額が100%以上であるということは、流動資産の方が流動負債よりも多いことを意味します。
これはつまり、『少なくとも1年以内に借金が支払えなくなることはない』ということを意味します。 つまりは、直近1年間は破産しないであろうということがわかります。
これは高ければ高いほどよく、仮に200%あれば、多少業績が落ちて赤字が出たとしても破産はしないことになります。

逆に100%を割り込むというととは、直ぐに現金化出来るお金よりも1年以内に返済しなければならない借金の方が多いということになるので、会社は短期的に見て危機的な状態にあるということがいえます。
つまりは、1年以内に借金が返せなくなる確率が高いということです。 かなり余裕がない状態と言っても良いと思います。
この様なときにはどうすればよいのかというと、何らかの方法で流動負債の額は維持しつつも流動資産の額を増やす必要が出てきます。

流動比率の改善方法


理想的なのは、営業を頑張って売上額を上昇させて収入を増やすことですが、そんな事ができるのであれば皆やっています。
もしこれが不可能な場合は、使っていない固定資産を売却して流動資産である現金に変換するか、1年以内に返済の必要がない固定負債を増やして流動資産を増やす。 つまり長期的な借金を増やして現金を手に入れるしかありません。
日本では2019年頃からコロナが問題になり、政府が3年~5年後から返済が始める緊急融資制度を作りましたが、その目的としては、流動比率の改善が挙げられます。

3~5年後に返済が始まるということは、その金は固定負債に計上されますが、その借金によって得た現金は流動資産です。 つまり、固定負債流動資産を同時に増やすことで、流動比率を下げさせて短期的な危険性を低下させているんです。
しかし少し考えれば分かることですが、この改善状態は限定された期間だけです。 この例の場合は、3~5年間の間に限って返済が猶予されているだけなので、その期間が過ぎれば借金は固定負債から流動負債に切り替わります。
この時に、それに応じた流動資産があれば良いですが、流動資産に変化がなければ、借り入れが増えた分だけ財務状態は悪化してしまいます。

この様な感じで会社の未来を占っていくのが財務分析となりますが、これには様々な方法がありますので、次回に、もう少し詳しく見ていきたいと思います