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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第66回【財務分析】流動比率

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

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財務分析


前回は、貸借対照表に記載されている資産や負債について、何故、短期的な属性を持つ流動資産や流動負債と、長期的な属性を持つ固定資産や固定負債などに分けるのかという話をしてきました。
大きな理由としては、会社の状態やその先の経営状態を占うための財務分析をするためです。
会社や財務の分析と聞くと難しそうな事をやっているイメージがありますが、最初にやることは、貸借対照表損益計算書にかかれている数字を加工するだけの作業だったりします。

数字を加工するとは言っても、それぞれの指標は単純に割り算するだけのものが多いので、計算自体は小学生でも出来たりする簡単なものです。
復習がてら、前回に紹介した流動比率でみていくと、これは貸借対照表の資産の部に記載されている流動資産を負債の部に記載されている流動負債で割っただけのものです。
これが最低でも100%を超えていないと、短期的に危険な状態といえます。

では、流動比率が100%を割り込んでいると、具体的にどの様に危険なのかを考えてみましょう。
流動資産とは、現金、もしくは直ぐに現金化出来る種類の資産のことです。 例えば銀行預金や当座預金売掛金などがこれにあたります。
この流動資産を、1年以内に支払義務のある借金である流動負債で割る場合、流動資産の方が金額が大きければ、数値は100%を超えることになりますし、流動負債の方が額が大きければ、計算結果は100%を割り込むことになります。

流動負債のほうが流動資産よりも額が大きいということは、この先1年間で返済しなければならない借金の額が、手持ちの資産よりも大きいことを意味します。
つまり、1年以内に借金の返済ができなくなる可能性が大きいということです。
この状態は一刻も早く解消されなければならない状態といえますが、では、どのようにして解消していけばよいのでしょうか。

流動比率を改善させる方法


その方法としては複数あります。 まず1つは、固定負債を増やして流動資産を増加させることです。
会計用語を使っての説明はわかりにくいかもしれませんが、これを簡単に言い直せば、返済期限が1年以上の金を借りてくるということです。
企業が取引銀行を決めてやり取りを始めると、銀行は企業の信用力に応じて借金できる枠を用意してくれます。 個人で言うのであれば、クレジットカードのキャッシング枠のようなものです。

それは、お金に余裕がある時に返済すれば良いお金なので、返済期限は1年以上であることが普通です。
この様な枠を利用して借金して現金を手に入れれば、会社の財務的には1年以上先に返済義務のある固定負債が増えて、すぐに返済に当てることの出来る流動資産である現金が増えることになります。
この行動によって、流動資産を流動負債で割った流動比率は改善することになります。

他の方法としては、使っていないような固定資産を売却するという方法があります。 この方法は分かりやすいと思いますし、真っ先に思いつくような方法だと思います。
例えば、今は使っていないような設備や車などの固定資産を売却すれば、その対価として現金が手に入ります。
現金が増えれば、その金額分だけ流動資産が増えることになるため、流動比率も改善します。

一応言っておきますと、これらの方法は根本解決にはならず、一時しのぎにしかなりません。
というのも、長期的な借金を増やして手許現金を増やしたとしても、会社全体としての借金の額は増えてしまうからです。 この方法では、流動比率は改善して短期的な倒産の危機は回避できますが、長期的には何の解決にもなっていません。
さらにいうのであれば、借金額が増えるということは利息の支払額も増えるということですから、長期的に見ると苦しくなります。

流動比率を改善させる方法(2)


もう一方の固定資産の売却ですが、これは資産の振替を行っているだけなので、いずれ限界がきます。 というのも、固定資産は有限だからです。
それにそもそも論として、使っていない無駄な資産がずっと眠っている状態というのも問題です。 何故なら、仮にその資産をもっと前に売却をして他のことに投資していれば、資産を有効活用できていたはずです。
新たな事業に投資するのも良いですし、国債などの元本保証の証券を買っていれば、利息も受け取れていたはずです。

無駄な固定資産が眠っているという状態は、効率的な経営ができていないということになるため、そもそもこの選択肢を選べることが問題だったりします。
その為、根本的な解決策としては売上を伸ばして利益を上げることで、自由に使える流動資産を高めていく必要があります。

流動比率の考え方


この流動比率ですが、数値が高ければ高いほど良いのかというと、そうとも言えません。
確かに流動比率が高ければ、経営の健全性を示すことが出来ますし、短期で会社が倒産する確率も減ります。
ですが、流動比率が高すぎるということは、それだけ使っていない流動資産が多いということを意味します。

先程も少し言いましたが、会社というのは自分の資産を投資して、それによって利益を得る事を目的として存在しています。
使っていない流動資産や固定資産があるということは、それだけ資産を効率的に使えていないことを意味しますので、流動比率が高いとうことは安全面から見れば良いことですが、収益面からみると効率が悪いことになります。
必要以上の金を溜め込んでいるというのは、見様によっては経営能力がないことを意味してしまいます。

会社の資金の使い道


最近良く、テレビの経済番組などで問題視され、日本の政府も改善しようとしている『内部留保の積み上げ問題』につながっているのも、突き詰めていけば、この『資産を有効活用できてない』という状態に行き着きます。
もし仮に、日本の全ての企業が無駄な資産を有効活用し、新たな事業分野に積極的に投資すれば、景気にとっては良くなるはずです。
新規事業のために設備投資をすれば、その分だけ消費が増えることになりますし、新規事業のために人を雇おうと思えば、労働市場で人材獲得競争が起きるわけですから、労働者の給料も増えることになります。

需要が増えて労働者の給料が増えるというのは、どう考えても経済に好影響を与えますので、政府がその様な行動を促そうとするのは、理解しやすいと思います。
しかし一方で、企業側から見れば不透明な経済状態の中で資産を投資するというのは、かなりのリスクを伴います。

例えば、2019年から始まったコロナ禍で多くの企業の売上が減少しました。
この状態に耐えるためには相当な流動資産が必要なりますが、もし、仮に流動資産に余裕がなければ、会社は潰れてしまうことになります。
この倒産を防ぐために政府は、返済期限に余裕がある借入制度を開始しましたが、先ほども言いましたが、これは根本解決にはなりません。

というのも、返済期限が迫っているのに状況が改善していなければ、状況がさらに悪化するからです。
仮に『返済は5年後でいいから』と言われて金を借りたとしても、その5年間で売上が改善して利益が上がり、借りた金と同額以上の流動資産を稼いでいなければ、5年後には流動負債が増えるわけですから、財務状態は悪化します。
その返済を先延ばしできるとしても、借りた金には金利がつくわけですから、その利息分が業績の下押し圧力となります。

つまり、経済にとって危機的な状況が襲ってきた時に『一定期間だけ返済不要で無金利の金を貸してあげる』というのは、根本解決にはなりません。 最悪の状況を先延ばしにしているだけです。
また、アメリカのように法人と個人が完全に切り離されていて、オーナー経営者であったとしても会社が潰れれば法人が抱えていた借金はチャラになるのなら、最悪の状況の先延ばしだけですみますが、日本のシステムの場合はさらに状況が悪化します。
というのも、日本の中小零細企業の場合は、借金をする際に経営者が法人の連帯保証人にされてしまうため、仮に会社が倒産したとしても、経営者には借金が残り続けます。

この様な、いざという時には自己責任でなんとかしろという制度では、日本の経営者は保守的にならざるをえなかったりします。
逆に言えば、危機的な状態の際には国がなんとかしてくれるという安心感があり、仮に失敗したとしても経営者個人に深刻な経済的ダメージが無いようなシステムであれば、経営者は積極的にリスクを取ることが出来るようになります。
ただ、あまりに寛容な政策を取りすぎると、経営者のモラルが破綻することにもなるでしょうから、その調整は難しいと思いますし、それは政治の話になるので、ここでは深く考えないことにします。

業種による違い


話を流動比率に戻すと、流動比率はどれぐらいが適切なのかというと、一般的には200%と言われています。 つまり、1年以内に返さなければならないお金の2倍の流動資産があれば良いということです。
ただこれは、事業の種類によっても変わってきます。
これは、想像してもらうと分かりやすいと思うのですが、例えば、ツアーガイドやマッサージ師や士業と呼ばれるような職種の場合は、人が保つ技術をお金に変えるために、仕入れというのが殆どありません。

売上も大半が現金収入となりますから、この様な職種では月々の人件費や家賃などを上回る売上が1ヶ月の間であれば大丈夫なことになります。
一方で、仕入れ業者に商品を発注してから自分のもとに届くまでに時間がかかる場合。この期間のことをリードタイムと呼びますが…
リードタイムが4ヶ月かかるものを仕入れて半年かけて少しづつ売り、売上は手形でもらうので現金化されるのに3ヶ月かかるといった卸売業の場合は、事情が変わってきます。

リードタイムが長いということは、そのリードタイム間の在庫を余分に持たなければ品切れを起こしてしまいますから、販売期間を逃さないためにも余裕のある在庫を持つ必要があります。
在庫分として仕入れた商品の代金は支払う必要があるわけですが、この支払った代金の代わりとして入ってきた商品は、流動資産になるわけですが、先ほども説明したとおり、今回例として出した卸売業では、商品が現金化されるのに1年近くかかります。
この様な場合、流動資産の結構な割合が直ぐに現金化されない商品で占められていることになるため、単純に流動比率の目安とされている200%で良いのかというと、もう少し余裕があったほうが良いと思います。

これはこの後説明する全ての財務分析に当てはまることですが、分析に使う数字というのは、業種や仕事内容ごとに変わります。その為、目安を探す場合は同業他社の平均と比べる必要があります。
これは結構大切なことなので、この後も繰り返し言っていくことになると思いますが、一般的な平均値と比べても無意味です。
もしコンサルなどに相談している方で、相手方がそういった事を考慮しない提案をしてくるような人だった場合は、その人は財務が分かっていないので付き合いを考えた方が良いレベルだと思います。

ということで流動比率の解説はこのあたりにして、他の分析方法についてですが… それはまた次回に話していきたいと思います。