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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第49回【経営】価格戦略3

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

kimniy8.hatenablog.com

利益を上げるために必要なこと

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前回までの2回で、低価格戦略を中心とした価格戦略について説明してきました。
これまでに説明してきた低価格戦略を簡単に振り返ると、基本的には、利益を上げるために売上を伸ばす。売上を伸ばすためにシェアを伸ばすという考え方です。

一つ一つ観ていくと、まず、利益を伸ばすために売上が必要になる理由ですが、これは利益の計算方法が、売上からコストを差し引いたものだからです。
この計算式で利益を伸ばそうと思う場合、商品1つあたりで考えるのなら、販売価格を上げるかコストを削減するか、もしくは両方を行う必要があります。
販売価格の上昇はそのまま売上の上昇につながるので、売上の伸びは利益の押上に貢献してくれます。

また売上は、商品の販売数の増加によっても上昇していきます。
事業を行う場合、芸術家の様に1点ものの商品を作って売るという形態でもない場合は、同じものを量産して販売することになります。
この時、販売数が増えれば増えるほど、個数に応じて売上は上昇していきます。 この場合、同じ割合でコストも増えていきますが、コストよりも販売価格の方が高いため、売れれば売れるほど利益は増えていくことになります。

商品原価

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この販売数の増加というのは、見方を変えれば自社商品のシェアを伸ばしていくという風にも見えます。
例えば100人の市場があり、その中で自社製品を購入してくれる人達が20人いたとすれば、自社の市場シェアは2割です。
しかし、これを営業努力によって40人にまで増やすことが出来れば、売上は倍になりますし、結果として市場シェアは4割にまで増えることになります。

市場シェアが拡大して販売数が伸びれば、これによってコストを下げる余地が生まれたりします。
仕入れ面で見れば、仮に取扱商品量が倍になれば、原料1つ当たりの価格を下げることが出来るようになったりします。
何故なら、素材メーカーや商社からすれば、取扱量が倍になったからと言って、自分たちの手間が倍になるわけではないからです。

素材というのは大量生産で作られる場合が多いですが、この大量生産の場合は、機械によって自動や半自動で作っている場合が多いです。
その為、同じ商品を作り続ける場合、注文量が倍になったからと言って手間が倍になるわけではありません。
また、配送コストや事務コストなども同じ様に、取扱量が増えたからと言って同じ割合で上昇していくものでもありません。その為、注文量が多くなれば、1つあたりの価格は引き下げられる余地が生まれます。

これに加えて、自社の生産体制の効率化も行えます。 人は同じ作業を繰り返し行うと、作業に慣れてきて作業スピードが上がり、品質も上昇していきますし、ノウハウが蓄積されてそれをシェア出来れば、工場全体として効率が上がります。
これらは単純に生産性の上昇につながるため、生産コストの引き下げに繋がります。
つまり、販売量が増えれば増えるほどコストが引き下がっていくので、売上を増やすために市場シェアを伸ばせば、利益は増加することになります。

価格戦略

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ここまでの説明は、実を言うと価格戦略には関係がありません。事業を行う上での基本的な考えとなります。
つまり、どの価格戦略を選択するとしても、この構造は利用しなければなりません。

では、価格戦略の違いというのは何なのかというと、市場シェアを拡大していく際の手法の違いとなります。
価格戦略というのはその言葉からも想像できるように、低価格で販売することによって市場シェアを取っていく戦略となります。
低価格で販売すると1つ販売することによって得られる利益である限界利益は減少しますが、それ以上に販売数が増えれば、結果として利益が増える可能性があります。

これは裏を返せば、低価格で販売したにもかかわらず販売数が伸びなければ、単純に利益が下がってしまうということになります。

価格戦略

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この逆の戦略が、高価格戦略です。
価格戦略とは最初に設定する販売価格を高めに設定することで、限界利益を引き上げます。
限界利益とは1つ売れた際に企業が受け取れる利益なので、これが引き上がるということは、販売数がそれほど伸びなかったとしても、それなりの利益が確保できることになります。

この戦略の利点としては、限界利益が高いため、数がそれほど売れなかったとしても初期投資を回収できるという点です。
初期投資さえ回収してしまえば、後に販売数が伸びずに市場から撤退を迫られたとしても、企業から見ればその事業は損失がないため、失敗とは言えなくなります。
損失が出ていないわけですから、早めに事業を切り上げて他の事業に投資資金を割り当てるなんてことも出来るでしょう。

もし仮に、その製品がヒットして大幅に販売数が増えれば、もともと利益率が高い製品であるわけですから、相当な利益が見込めることになります。
また先程も言いましたが、物が売れれば売れるほど、仕入れコストの減少や生産効率の上昇から、生産コストは下がることになります。
限界利益は販売額からコストを差し引いたものですから、販売額が高い状態で生産コストを引き下げることが出来れば、更に多くの利益を得ることが出来るようになります。

高いものは売れにくい

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一見すると良いことばかりのように思える高価格戦略なので、皆が採用したいと思うでしょう。
しかしこの戦略にも、落とし穴があります。 これは考えればすぐ分かるのですが、製品が高くなれば高くなるほど売れにくくなります。
極端な話をすれば、同じような品質のものが1万円と100円でそれぞれ売られていれば、100円のものの方が買われやすいというのは誰でもわかります。

みなさんも、自分が欲しい物を探す際に、他に安いものが売られていないかをネットで探すという行為をしたことがないでしょうか。
機能面で全く同じで、どちらの商品を購入したとしても自分の問題を解決することが出来るのであれば、100円の方を買うのが人間です。
もし仮に100円の商品の方が若干壊れやすかったとしても、100円の方は気軽に買い換えることが出来ます。

単純計算で、1万円で購入した商品が1回潰れる間に100円の商品が100回潰れない限りは100円のものを購入した方が得することになるため、経済的な人間であれば100円の方を選びます。
つまり、高い値付をしてどんどん売れるというのは理想ではありますが、現実問題としてはそれほど簡単なことではないということです。

商品価値を上げる『ブランド』

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では、高価格戦略は机上の空論なのかというと、そうでもありません。 何故、こう言えるのかというと、それを実現している企業がたくさんあるからです。
高級品市場やラグジュアリー市場なんていわれている市場がそれに当たりますが、ここで販売されている商品は価格に見合った品質なのかといえば、必ずしもそうとは言えないでしょう。
有名ブランド品のハンドバッグと、その数分の1の価格で売られている偽物の強度を比べた場合、偽物のほうがハンドバッグとしての強度が高かったなんてこともあったりします。

では、デザインが全く同じで強度が上の偽物の方が価値があるのかというと、そうではないでしょう。
多くの人が偽物と本物が同じ値段で販売されていれば本物を買うでしょうし、偽物のほうがほんの僅かしか安くない場合も、多くの人はわざわざ偽物を買わないでしょう。
ではこの差は何なのかというと、一言で言えば企業のブランド力です。

ブランド力というのは様々な要素から構成されているので、何なのかというのは一言で説明するのは難しいですが、無理に一言で説明するなら企業に対する信用力と言っても良いでしょう。
アノ企業の製品は良いものだと顧客が信用すれば、顧客は多少高かったとしても、その企業の製品を購入します。
これは、知らない製品なればなるほど、この傾向が強くなると思われます。

ブランドとは信用力

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全く知らない分野の商品を購入する場合、その商品の情報がないわけですから、ネットで価格だけを比べてもコスパの良い買い物はできなくなります
何故なら、その製品に対して無知であるわけですから、価格は比べられたとしても品質を比べることは出来ないからです。
コスパというのは、コストとパフォーマンスの割合を比べてお買い得かどうかを比べるものですが、そのパフォーマンスの部分に関して全く知識がないわけですから、比べようがないということです。

では、何を根拠に買うのかといえば、作っているメーカーや販売元が信用できるかどうかというのを根拠に買うわけです。
『あのメーカーが作っているのだから安心できる』と思われていれば、その信用を元に人はそのメーカーの商品を買います。
信用を元に買っているわけですから、多少高かったとしても問題はありません。何故なら、顧客はその上乗せされた料金で安心感を買うことが出来るからです。

認知的不協和

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人が買い物をした際に後悔するのは、お金を出して購入したものが、期待する程のものではなかった場合です。
広告などで自社製品の品質を過剰に宣伝した場合、それを観た顧客は必要以上にその製品に期待することになります。
しかし実際の商品の品質がそれほど良くなかった場合、その商品を購入した顧客は、簡単に表現すればガッカリします。

この気持ちがガッカリするというのは、心理学用語言うところの認知的不協和というのが関係して来るのですが、顧客がこの状態になることはかなりのストレスとなります。
しかし、既に信用しているメーカーであれば、そのようなストレスを感じる可能性がかなり低下します。
これは顧客の精神の安定にもつながるため、その安定のために顧客は多少の価格の増加も受け入れます。

少し横道にそれてしまいましたが、つまり商品を高く販売するためには信用力、言い換えればブランド力が必要になってくるというわけです。
次回は、このブランドについて少し考えていこうと思います。