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【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第47回【経営】価格戦略(1)

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注意

この投稿は、私が配信している Podcast番組『カミバコラジオ』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回はこちら

kimniy8.hatenablog.com

損益分岐点売上高

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前回は、損益分岐点売上高について説明していきました。
損益分岐点売上高とは、事業が黒字になるか赤字になるかの境界線となる売上高のことで、その計算方法は、固定費を限界利益率で割ったものでした。
限界利益率とは、製品から変動費率を差し引いたもので、簡単に言えば製品や事業そのものの粗利率と言い換えても良いかもしれません。

つまり損益分岐点売上高というのは、粗利で固定費を回収するのにはどれぐらいの売上が必要なのかという観点で作られた数字ということです。
これを利用して、固定費を別の費用に置き換えれば、その費用を回収するのに必要な売上高が出てきます。
例えば、新規事業を起こすための費用として、毎年500万円の利益が欲しいと思うのであれば、固定費にその利益の500万円を足した額を限界利益で割れば、目標売上高が計算できます。

費用ごとの売上もわかる

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商品の販売数を伸ばすために宣伝広告費を使ってアピールしたいと思うのであれば、投入予定の広告費を限界利益率で割れば、広告に投資した費用を回収するために新たにどれぐらいの売上を積み上げなければならないのかがわかります。
広告ではなく営業担当を1人雇うことで売上を伸ばそうと思う場合、その人に払う人件費と社会保障費を足した金額を限界利益率で割れば、その人を雇ったことで増やさなければならない売上高が計算できます。
この、費用を限界利益率で割るという式は、シンプルであるが故に簡単に応用することができるようになります。

コストや利益を粗利で回収する

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先程も言いましたが、固定費に別の費用や利益を足し合わせることで目標売上高が分かるようになるのもそうですが、この他にも、割る側の限界利益率の方を増加させれば、損益分岐点売上高や目標売上高を引下げることが出来ます。
限界利益率を増加させるというのはどういうことかといえば、変動費を削減するということです。
そもそも限界利益率は、売上から変動費率を引いた残りなので、それを増やそうと思うのであれば、変動費を削減すれば良いことになります。

これは単純な話で、固定費が1万円で製品1個あたりの価格が1000円で変動費が700円の場合、1個売って300円の利益を積み重ねていくことで、1万円の固定費を支払い終えるのに売上がいくら必要になるのかが損益分岐点売上高です。
この変動費が700円から200円に下がったとしたら、1個売った際の利益は800円出るため、1万円回収するために売らなければならない製品数は少なくて良くなります。
製品数に製品価格を掛けたものが売上なので、販売しなければならない製品数が減少するということは、売上が少なくても良いということになります。

根拠を示した方が意思統一しやすい

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何故、この様な計算が必要なのかというと、目標となる数値を明確にするためです。 客観的な数字を出すことによって目標が分かりやすくなりますし、社員にも目標値を伝えやすくなります。
営業担当に、単に売上ノルマを示したとしても、何故、そこまで売らなければならないのかは伝わりにくいです。
しかし、その営業担当に支払われている給料が仮に月30万円として製品の変動費率が60%とした場合、最低でもその担当は75万円の売上を上げなければ雇っている意味がないことを伝えれば、取り組み方は変わるかもしれません。

これは、製品コストの削減についても同じことがいえます。市場が停滞して縮小に転じてしまった場合は、いくら営業を頑張ったり宣伝広告費を支払ったとしても販売数を伸ばすことは難しいでしょう。
そうなれば、事業を継続するためにはコスト削減をしなければならないのですが、このコスト削減の目標値も計算によって客観的な数値として出すことができるようになります。
納得ができなければ行動できない人というのは意外と多いですが、感情ではなく数字で客観的に示すことで、相手を納得させ易くなると思いますし、社内で数字を共有することで、今後を考えるきっかけにもすることが出来ます。

価格戦略

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この考え方を前提として、今回からは価格戦略について考えていきます。
まず価格戦略についてですが、これは単純に『価格をどうするのか』という問題だけではなく、その他の要素も含めた、結構複雑な問題だったりします。
価格というのは数字ですし、いくらで売るのを決めるというのはどの事業者でも行っていることですが、そのプロセス事態は非常に複雑ですので、価格を決めるときは適当ではなく、かなり吟味したほうが良いです。

ということで、本題の価格戦略の話に入っていきます。
製品を開発して販売すると考えた場合、取る戦略によって商品価格は変わってきます。

例えば、できるだけ早い段階で市場シェアをとってしまおうと考える場合、商品価格はできるだけ安いほうが良いことになります。
例えばVR機器の発売も行っているfacebookは、Oculus Questという製品をほぼ原価で発売していると言われていますが、何故、利益も求めずにそれほどの低価格で販売するのかといえば、シェアを握るためでしょう。
googleも、前に携帯電話メーカーを買収し、そこでAndroid端末を作ってほぼ原価で販売すると言った戦略をとったことがありますが、これも同様にシェアを取るためです。

スイッチングコスト

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何故、赤字覚悟で低価格販売を行ってまでシェアを取りたいのか。それには複数の理由があり、たった1つの理由で決まっているわけではありませが…
その中でも大きな理由の1つとしては、スイッチングコストがあります。
人は、一度使ったものを別のものに乗り換えるということは、余りしません。これは、低価格なものには当てはまらない場合もあるのですが… 高価な商品の場合は特に、この傾向が強くなります。

何故なら、高価な商品は頻繁に買い換えるということはせず、その上、『高い金を出すのだから絶対に失敗したくない』という思いが働くからです。
絶対に失敗したくないのであれば、いま自分が使っている製品と同じものか、それの上位モデルを買うのが確実です。何故なら、今まで使い続けていて特に問題がなかったからです。
これは、乗り換えるのに手間がかかるような製品だと尚更です。 例えばスマートフォンでは、乗っているOSはAndroidiPhoneかの2択状態になっていますが、どちらかを選んでしまえば、それ以降は余程のことがない限り変えにくいでしょう。

つまり、Androidを使っていた人は次もAndroidの機種を選びがちですし、iPhoneユーザーはiPhoneを買い続けるということです。
スマートフォンの場合は、アプリの乗り換えなどやらなければならないことも多いですから、特にこの傾向が強くなります。
この様な現象のことをスイッチングコストが高いと表現したりします。 つまり言い換えるならスイッチングコストというのは、乗り換える際のハードルの高さのことです。

低価格によりシェアを得るメリット

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この様な大きなスイッチングコストが発生する場合は、多少無理をしてでも早い段階でシェアを握ってしまった方が、後々の儲けが大きくなる可能性が高いです。
何故なら、その市場の顧客は最初に選んだ製品を選び続けるわけですから、最初に大きなシェアを握れば、その事業では高い売上と販売数を維持し続けることができるようになります。
高い販売数を維持し続けることができるということは、生産効率を上げやすくなるという事にもつながります。

例えば材料を仕入れる場合は、少量で購入するよりも大量に購入したほうが安く仕入れやすいでしょう。
何故なら、大量に仕入れることで仕入先の販売数も伸びるため、その商品に対する生産効率を上げやすくなるからです。それに加えて、相手にとってこちら側のプレゼンス・存在感も増すことになります。
こちらの存在感が相手にとって大きくなれば交渉が有利に進むため、多少の無理は聞いてもらえるようになります。

この他には製造面の観点でも効率が良くなります。 最初にシェアを取ってある程度の販売数が見込める状態になっていれば、それを見越して設備投資を行うことが出来ます。
製品や販売量によっては全自動で作れるためのラインを作ってしまえたりもするので、これにより設備面での効率化も目指せます。
これに加えて、従業員のスキルも高まります。 前に経験曲線効果というのを紹介したことがありますが、これによって従業員の生産効率が高まります。

経験曲線効果とは

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経験曲線効果についてかんたんに振り返ると、この効果は累計生産数に応じて生産効率が上がっていきますよという理論です。生産数に比例するわけではなく、効果は逓減する。つまり増加幅が徐々に減っていくわけですが…
それでも累計生産数が増えるというのは、それだけ従業員のスキル上昇やノウハウの蓄積に貢献するため、生産数は増えれば増えるほど効率は上がっていきます。

これらの経費削減効果や生産効率化、それと先ほど紹介したスイッチングコストなどを考慮した上で、早めにシェアをとってしまうというのは、一つの戦略となります。
そのためには繰り返しになりますが、価格はそれなりに安い価格で攻めていく必要があります。何故なら、安くすることで様々な層の方が購入しやすくなるからです。

ということで今回は、早期にシェアを取ることの重要性について話してきましたが、この戦略は誰しもが行えるわけではありません。
また、絶対的に優れた戦略かというと、そうでもなかったりします。 そのあたりの理由や他の戦略については、次回に話していきます。