だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第6回 ドメイン

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

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目次

前回のおさらい

前回は、経営理念の話をしていきました。
簡単に振り返ると、経営理念とは会社が存在する目的で、それがなければ企業の存在理由が不明のまま事業を行うことになる為、迷走してしまうということでした。
事業というのは、ニーズがあって、こちら側にそれに応える能力があって、顧客がその能力に対して金を払っても良いと思えば、基本的には成立します。

しかし、金になるからと無闇矢鱈といろんな方面に足を突っ込むと、会社の独自性も専門性もなくなりますし、組織に所属している人間も、自分たちがどの方向に進めばよいのかがわからなくなり、まとまりません。
ですが、経営理念という抽象的な概念で方向性を定めれば、目指すべき方向がわかりやすくなります。大体の方向性が定まれば、組織内でのコミュニケーションも取りやすくなりますし、共通認識も得やすくなります。
このような効果を期待して、会社を起こす際にはまず、経営理念を設定します。

会社の戦略をピラミッド構造で表すなら、この一番抽象的な経営理念が一番上にあり、そこから階層が下がる度に具体性が増していきます。
経営理念の下には、ビジョンであったりドメインと呼ばれるものがありますが、今回は、その内のドメインについて話していきます。

ドメインとは

このドメインとは、経営理念を更に具体化させたもので、簡単に言えば『誰に』『何を』『どのように』提供するかを示したものです。
『誰に』というのは、自分の会社が『誰に』対してものやサービスを提供するのかということで、メインターゲット層を意味します。
『何を』というのは、そのターゲット層に対して『何を提供するのか』ということで、自社で取り扱う商品やサービスを意味します。
『どのように』というのは、その商品やサービスをどの様にして提供するのかという事です。大雑把な例えでいえば、ネット通販なのか対面販売なのかと言ったもののことです。

このドメインの説明を聞いて『何を当たり前のことを言っているんだろう?』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、皆さんが思っている以上に、ドメインを意識して経営されている人は少ないです。
例えば、私には、飲食店オーナーの知り合いがそれなりにいますが、その人達でドメインをしっかりと設定して経営されている方は、ごく少数です。
大抵の飲食店経営の方は、この設定ができておらず、初期投資の資金を国庫から借りるために事業計画書を制作する段階になってはじめて考えるという人も少なくありません。

また、その事業計画書で設定する場合も、『とりあえず、審査を通したい。』という思いだけで適当に書く人も多く、飲食店をはじめたけれども、ドメインを設定していないという人は結構います。
飲食店というのはカテゴリーとしては小売に含まれ、日本ではその小売店の創業数が桁違いに多いのですが、生き残れる店の数が相当少ないというのは、ドメインが設定できていないというのも大きいと思います。
何故、設定できていないと廃業に追い込まれるのかというと、ドメインを設定しなければ、そもそも戦略が立てられないからです。

誰に販売するのか

分かりやすくするために、飲食店を新たに始めるという設定で、ドメインや店が取る戦略について考えてみましょう。

まず、『誰に』対して商売をするのかを考えていきます。
これを行うには、まず切り口として、顧客をセグメントごとに分けるセグメンテーションを行います。セグメンテーション自体も、掘り下げると語ることは多いのですが、今回はドメインの説明なので説明は簡単にしかしませんので、予めご了承ください。
セグメンテーションというと、この言葉を聞き慣れていない人には分かりづらいですが、簡単に言うと顧客を分類していって、特定の顧客にターゲットを絞り込む作業です。

どの様に分けるのかというと、デモ・ジオ・サイコという3つの切り口で顧客を分けます。
デモというのはデモグラフィックの略で、人口統計学的な視点で分析します。 ジオはジオグラフィックで、店舗を置く場所を地理的な視点で分析します。
最後のサイコはサイコグラフィックの略で、ターゲット層を心理学的な視点で分析します。

具体的に考えてみる

これだけ聞いても分かりにくいと思うので、具体例を使って話していくと…まず、店舗を借りたいと思った際、どの様な人たちを相手にしたいのかで、店舗を置く位置が変わります。
例えば、学生相手に商売をしたいと思うのであれば、学生マンションが多い地域や、大学の近く、若者が集まる繁華街といった立地にしなければならないでしょう。このターゲットがサラリーマンに変わった場合、同じ立地で良いなんてことはありません。
ターゲットによって立地は変わって当然です。 特に立地は、一度決めれば簡単には変えることが出来ないわけですから、一番慎重にすべきですし、事業計画がある程度仕上がってから、最後に決めるぐらいでも良いでしょう。

間違っても、不動産屋に駆け込んだら紹介されたからという理由だけで決めて良いものではありません。 …が、この様な決め方をしている人は結構多かったりします。
しかしこれでは、計画性がないため、成功は運頼みになるでしょう。
では、どの様に立地を決めれば良いのか。 それにはまず、ターゲットを決めるところから始めます。

ターゲットを専業主婦層にするのか、学生にするのか、サラリーマンにするのかで、場所やメインの営業時間が変わってきます。
ターゲットをサラリーマンに設定した場合は、その層の年収レベルをどれ位に設定するのかでも客の行動が変わり、客単価が変わってくるため、それによって提供するモノや店の雰囲気も変わってきます。
仮に、高い給料をもらっている大企業のサラリーマンを相手にするとした場合、陳腐な内装では客は来ないでしょう。

客単価が変われば、客の滞在時間も変わってきます。 客単価が1万円の店なのに、回転率を上げるために30分で追い出したら、その客は二度とこないでしょうし、逆に、客単価が千円以下なのに3時間も滞在されれば、採算が合いません。
客単価が安い店であれば、回転率を上げなければ売上が上がらないため、滞在時間が少なくなるような工夫をしなければなりません。
例えば、客単価500円ほどの牛丼屋の場合は、椅子は簡素なもので、長時間座っているとお尻が痛くなったり、背もたれもなかったりしますが、あれは、回転率を上げるために、客が長居できないようにしているわけです。

同じ様に立ち飲み屋は、椅子すら置かずに狭い店内にできるだけ多く入れ、その上で回転数を上げることで低価格を実現しています。一方で、座るだけで5万円もする高級クラブで、椅子がないとか、椅子に背もたれがないなんてことはありません。
客単価が高い店は、出来るだけ座り心地のよいソファーを設けて、客にゆっくりと寛いでもらえるようにします。すると、滞在時間が伸びるため、料金設定も1時間いくらといった感じの時間制にしたり、商品単価を上げたりします。
そういった店では、内装も高価な調度品や家具が置かれ、非日常的な高級感を演出していることでしょう。 店によっては、ドレスコードを設けて客側の服装の指定などをして、店の雰囲気を保とうとします。

事業を具体化させていく

この様に、『誰に』『何を』『どの様に』提供するのかというのを考えていくだけで、事業の計画がどんどん具体性を増していきます。
この様に具体的に考えていった上で物件を探せば、不動産屋に対してより具体的な希望を出すことが出来ますし、その条件であれば家賃の相場がどれぐらいかかるのかという情報も教えてくれるでしょう。
これが何の計画もなく、ただ飲食店を開きたいといった具体性に欠ける計画だけで物件を紹介してもらおうと思っても、良い物件は紹介されないと思います。

これには当然、不動産業者の営業担当の能力ややる気も関係してくるとは思いますが… 仮にやる気も能力もある営業担当に当たったとしても、具体的な計画がない人に具体的な商品を紹介することは出来ないでしょう。
これは、自分がその立場に立って考えてみると分かりやすいと思います。
私は紙の箱の製造販売をしているので、私がお客さんから紙の箱の製造を依頼された場合で考えると… 中に入れる商品も決まっておらず、商品のイメージすら決まっていない状態で箱を依頼されても、商品は用意できません。

どの様な大きさのモノを入れるのか、その商品を購入するのはどの様な層の人達なのか。 月当たりどれぐらいの数を販売するのかといった情報がなければ、見積もりすら出来ません。
これは、どの仕事でも同じだと思います。 お客さんとして来られた方が、具体的なことが一切決まっていない状態でモノやサービスを買おうとしても、そのお客さんに合った具体的な提案はできません。
逆に言えば、具体的に決まってさえいれば、適切な商品を紹介してもらえる可能性が高まりますし、自分のプランに穴がある場合、適切なアドバイスも受けることが出来るでしょう。

経営知識とは

このコンテンツでは、過去に『経営知識』について語ったかいがありましたが、そこでは、経営学とは確実に成功するための学問ではなく、リスクを下げるための学問だと説明しましたが、今回の話を聞くと、それが分かりやすいと思います。
事業計画が何も決まっていない状態というのは、地図もコンパスもない状態で大海原に向かっていく行為と同じです。
これではあまりに危険なので、せめて、地図とコンパスぐらいは用意しようというのが、経営について学ぶということです。

地図とコンパスがあれば、確実に目的地に着けるかと言われれば、それは正直わかりません。
事前準備や計画が完璧であって、こちらが無茶なことをしていなかったとしても、クジラが横から衝突してきて転覆する可能性はゼロではありません。
しかし、だからといって事前準備や計画が全くの無駄かといえば、そんな事はありません。 準備をすることでリスクを下げることができていれば、事前にトラブルを回避できる事もあるでしょう。

そういった小さな積み重ねの継続が『会社を経営する』ということだと思いますので、これを聞かれている経営に興味があるみなさんも、そういう知識を、私と一緒に学んでいってもらえればなと思います。

最後に、ドメインについて簡単にまとめると、経営理念を元にして『誰に』『何を』『どの様に』提供するのかを設定するのが、ドメインです。
次回は、今回の話の中で登場した、セグメンテーションについて話していきます。