だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【Podcast #カミバコラジオ 原稿】第8回 セグメンテーション 2

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
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前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

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目次

前回のふりかえり

前回は、セグメンテーションによってターゲットを絞り込むことの重要性について話していきました。
この重要性について簡単に振り返ると、全方位に向けた当たり障りのない商品というのは、誰に対しても販売できるので一見すると良さそうに見えますが、実際には、これといった特徴が無くなる為、誰からも必要とされません。

例えば、極端な話で考えた場合、『皆のために作ったので、欲しい人は持っていってください。』といった感じで山積みにされた商品と、『あなたのために作りました!』といった一点物、どちらが印象に残りやすいでしょうか。
大抵の人は、自分のためだけに作られた商品の方が印象に残るはずです。

これは、人間にも当てはまると思います。 皆から受け入れられたいという思いが強すぎて、誰からも嫌われない様に振る舞う人というのは、印象に残りません。
その一方で、一部の人から熱狂的な支持を受けている人というのは、相当数のアンチがいたりします。

人そのものを売るという観点で、芸能界やyoutuberなどが当てはまると思いますが、これらの世界で成功している人たちというのは…
自分のことが好きな人にだけ受け入れられれば良いと考え、一定数の人には嫌われる、または、受け入れてもらえないという事を認識した上で、その状況をを受け入れて行動している人達が多いです。
『万人に好かれる』とか、『誰からも嫌われない』というのは理想ですが、実際にはそんなことは不可能で、実践しようと思えば軸がぶれて、誰にも訴求できなくなります。

ターゲット設定の効果

一方で、ターゲットを明確にした場合は、少なくともターゲットとしている客層の印象には残る可能性が高くなります。
また、商品開発や広告、営業活動をする場合、仮にそれぞれの部署が分かれていたとしても、ターゲット像が共通認識としてあれば、それぞれの部署の間でイメージが統一され、話がスムーズに進みやすくなります。
もしターゲットを決めていない場合、それぞれの部署毎に方向性が変わってしまい、プロジェクトそのものが迷走してしまう可能性が有ります。

しかし、具体的なターゲットを想定していた場合、それを避けることが出来ます。 前回の最後で、ペルソナの説明をしましたが、このペルソナを設定して最初に置けば、それだけで共通認識ができてコミュニケーションが円滑になります。
例えば、前回例に挙げた、カルビージャガビーという商品がありますが、あの製品は『27歳独身女性、文京区在住、ヨガと水泳にハマっている。』人物をペルソナとして設定しています。
これを共通認識として共有すれば、どの様なパッケージにするのかや、どの様な広告を打てば良いのか、販売する店はどこにするのかといったそれぞれの戦略が、同じ方向にむけて打ち出しやすくなります。

4つの『R』

この様に、マーケティングではターゲットを設定するというのがかなり重要で、そのためにはセグメンテーションが必要になってくるのですが、では、具体的にどの様に市場を細分化していくのでしょうか。
これにはまず、4つのRというのが重要になってきます。 4つのRとは、Rank(優先順位)Response(測定可能性)Realistic(市場規模)Reach(到達可能性)となり、それぞれの頭文字をとったものです。

ひとつひとつ見ていくと、まず、Rank(優先順位)。これは、市場を細分化してセグメントごとに分けた際に、順位付けが出来るかということです。
先程、ペルソナを紹介しましたが、いきなりこの様なターゲットの設定が生まれるわけではありません。大抵の場合は、複数の候補となるセグメントを挙げて、その中から有望そうなターゲットを選ぶわけです。
つまり、最初から1つの市場に絞り込んでいくわけではなく、セグメンテーションによって販売予定のセグメントを何個か挙げておいて、その中からターゲットとなる市場を選ぶので、選定基準となる順位付けが必要となります。

この順位付けは、他の3つのRが守れていれば、行いやすくなります。

次にResponse(測定可能性)とは、市場規模や、そのセグメントの購買力を測定できるかのことです。
候補となるセグメントごとに分けたところで、そのセグメントにどれぐらいの人数がいて、どれぐらいの売上が見込めるのかというのが数値として分からなければなりません。
何故なら、客観的な目で、他のセグメントとの比較ができなくなるからです。 人間の直感というのは、様々なバイアスによって大抵の場合は間違うものなので、客観的なデータで比べる方が、間違いは少なくなります。

また、ターゲットの絞り込みが間違っていたとしても、数値を含む詳細なデータが有れば、何故間違ったのかが分析しやすくなります。
前にも話したと思いますが、マーケティングや、これを含む経営の知識というのは、確実に成功するための方法ではありません。 その為、経営を慎重に行っていたとしても、失敗することは有ります。
ここで大切なのは、その失敗を次に生かすことが出来るかということです。データではなくフィーリングで決めていては、何故失敗したのかの分析が出来ないため、基準となるデータを集められるかが重要になってきます。

次に、Realistic(市場規模)ですが、これは、その市場をターゲットにして新規事業に参入した場合に、その市場に採算が会うほどの規模があるのかどうかです。
例えば製造業の場合、新たに製品を作るのには開発コストや設備投資が必要な場合など、新規参入する為に初期投資が必要な場合が少なくありません。
最初にコストを掛けているわけですから、事業としては、そのコストを回収した上で、更に利益が得られなければ、その市場に参入する意味はありませんが、このRealisticでは、そのコストを回収して利益が得られるほどの市場規模が有るのかをみます。

極端な話、ターゲットとなる市場を抑えてトップシェアにまで持っていけたのに、市場規模が小さすぎて採算が合わない様なことになれば、営業活動が上手くいっていたとしても事業としては失敗です。
この様な市場には、最初から参入しない方が良いでしょう。

最後は、Reach(到達可能性)です。 これは、ターゲットとしている顧客に自社商品の情報を適切に届けられるのかということです。
これは私の意見にはなりますが… この到達可能性については、今現在では、昔ほどは意識しなくても良いとは思います。

到達可能性について

というのも、今紹介しているマーケティングの理論は、フィリップ・コトラーという方が提唱した理論なんですが、この方、1931年生まれということで、結構、お年なんですね。

この方の全盛期の時代であれば、自社商品を宣伝する手段というのは、テレビやラジオ、新聞雑誌といった限られたメディアで、特定の層に特定の情報を届けるというのは、ハードルが高かったと思います。
例えば、大衆に向かって幅広く商品を紹介しようと思うと、テレビ広告を打たなければならないでしょうけれども、中小零細企業では、その広告費を捻出するのが難しいでしょう。
その為、中小零細企業が幅広い顧客層をターゲットにするマスマーケティングを行うのは、到達可能性という意味では無理があると考えられます。

また、マニアック過ぎる人たちを相手にしようと思った場合、その人達にピンポイントで広告を伝える手段というのも、見つけるのが難しかったりします。
昔で言えば、趣味に特化した雑誌などが販売されていたので、特定の顧客層にはそういった雑誌を使うというのも効果的だったのでしょうが、あまりにマニアックな分野だと雑誌すら無いということもあるでしょう。
そういった場合は、ターゲットを設定したとしてもターゲットに自社の製品を伝えられないため、到達可能性は低くなってしまいますが…

これは昔の話と考えたほうが良いでしょう。インターネットが発達した今、個人でブログや動画や写真を拡散しやすい状態になっているため、たとえ個人商店であったとしても、自社や商品のアピールは可能です。
また、ネット広告を出す場合、セグメント項目を入力すれば、ターゲット層にのみ広告を表示させることが出来たりもします。
その為、『ターゲットに向けて広告を打つ手段がない』というのは、現在では、あまり考えなくても良いと思います。

ただ、既に特定の分野において、広告媒体や販売チャネルを構築できている場合は、到達可能性は既に高いわけですから、これを利用しない手はありません。
そういった意味では、開発した商品の情報や販売網があるのかと言ったことも、考慮して考えるほうが良いでしょう。

以上、市場細分化は、この4つの前提に沿う形で行っていきます。

今回のまとめ

今回の話を簡単にまとめると、全ての人を対象にした製品やサービスは、特徴がないために全ての人から受け入れられることはありません。
その為、何らかの商品を作ろうと思う際には、ターゲットの設定が重要になってきます。
そのターゲットを設定するために、市場を細切れにしていく作業を行って、狙うべき市場を決めなくてはなりません。

しかし、闇雲矢鱈と市場を細分化していったとしても、意味はありません。 市場を切り分けていくにも、戦略的に行う必要が有ります。
そのために重要になってくるのが、4Rです。
4Rとは、Rank, Response, Realistic, Reachの頭文字をとったもので、日本語でいうと優先順位、測定可能性、市場規模、到達可能性です。

切り分けた市場に参入する場合、利益が得られるほどの市場規模がなければなりませんし、ターゲットを明確に定めたとしても、そのターゲットに自分たちの商品情報が届けられなければ意味はありません。
細分化して切り分けた市場は、どの市場に参入すべきかを優先順位をつけられなければなりませんし、それを可能にするためにも、それぞれの市場を客観的なデータで見比べることが出来なければ、正しい判断は出来ません。
以上のことを前提として、市場を切り分けていくわけですが、その具体的な方法としては、次回に話していきます。