だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

世界経済の足を引っ張るトランプ?

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少し前に、『Huawei問題を考える』というエントリーで、中国と米国の経済戦争について書きました。
kimniy8.hatenablog.com

今回は、その時から少し状況下が変わってきたようなので、そのことについて書いていきます。

日本の報道だけを観ていると、情報の抜き取りや知的財産権の問題などで、中国を信用できない米国が、中国に対して経済制裁を行っているように感じる方も多いと思います。
しかし、本当のところはどうなのでしょうか。
私には、実際にはトランプ政権が追いつめられた事で、アメリカ側が無謀な経済戦争を強いられているように思えます。

追い詰められる米国

アメリカの状態を見てみると、トランプ大統領の暴走により予算案が通ってない。
もう少し具体的に書くと、トランプ氏は大統領選の公約で、メキシコからの不法移民の流入を防止する為に、アメリカとメキシコの国境線上に壁を建設すると言っていました。
壁を建設することで国境警備を厳重にして、不法移民を徹底的に排除するというのを大々的に掲げて当選しました。

ただ、国境線の全てに壁を建てるというのは、かなりの予算がかかる。
当初、トランプ氏は、『不法移民はメキシコの問題なんだから、メキシコにカネを出させる!』と主張していたのですが、現実的に考えて、難しいですよね。

何故なら、メキシコは壁なんて欲しいとは一言も言っていない。
アメリカの不動産屋の社長が勝手に言いだした事を、何故、メキシコが金を出して実現しないといけないのか。
当然のようにメキシコは突っぱねるわけですが、これで困るのが、あり得ない計画をでっち上げて大統領になってしまったトランプ氏。

実現しないと嘘つき呼ばわりされてしまう実現の為に『コンクリートの壁よりも、向こうが見渡せる鉄の壁のほうが良いよね。』とか言い出して、壁をフェンスに格下げして予算の縮小を図ります。
しかし、そもそもありえない計画なので、メキシコは当然のように無視。

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すると今度は、『アメリカ・ファースト!』とか言い出して、工場をアメリカ国内に呼び戻すように、企業に圧力をかけ始めます。
アメリカは先進国で賃金が高い為、自動車会社など工場を持つ会社は、工場を人件費の安いメキシコに移していたりするのですが、その工場をアメリカ国内に移せと、会社の経営陣に圧力をかけ始めたんです。
トランプ氏としては、メキシコからアメリカ企業が撤退し、投資金額が減少すれば、圧力がかけられると思ったのでしょう。

ですが、アメリカは独裁国家でも社会主義国家でもなく、自由の国。
経営陣からしてみれば、低賃金で人が雇えるメキシコからアメリカに工場を移したとしても、何の得もない。
何なら、ここ数年でメキシコに投資して工場に投資した企業などは、その投資金額も回収できていない状態でしょう、そんな状態で、新たにアメリカに工場を建てるなんで、有りえません。
税金を安くするよと提案されたとしても、経営者からすれば固定費の負担増の方がキツイですし、トランプ政権もいつ終わるかわからないので、口車に乗ってアメリカに工場を移した途端に、政権が変わって税金がもとに戻される可能性もある…

この様な感じで、メキシコを脅して壁の建設費を出させる計画は頓挫したわけですが、だからといって、壁を建設しなければ、トランプ氏は嘘つきになってしまう。
自分に都合の悪いメディアを捕まえては、『フェイクニュース!! アイツラは嘘つきだ!』と言い続けてきたトランプですが、自分自身が嘘つきだということになってしまうと、次の選挙で落ちてしまう。。

困ったトランプは、何とか壁を建設したいと、壁の建設費を盛り込む事を議会に要請。
壁さえ作ってしまえば、表向きには約束を果たしたことになると考えたのでしょう。

しかし、議会はその要求を無視して、壁の建設費を盛り込まない形の予算しか出してこない。
というのも、そもそもトランプ氏は、アメリカの選挙制度に助けられる形で当選しており、実際の投票数だけで見れば、ヒラリーに負けていた人間。
そういう民衆が選んだ議会では、トランプ氏が所属する共和党が圧倒的多数を握っているわけでもなく、更に言えば、共和党の中にも反トランプの人間が居る。

議会としては、圧倒的支持を受けているわけでもないトランプに忖度する必要もない為、どうでも良いものを予算案としては盛り込みたくない。
この両者のぶつかり合いにより、アメリカは予算案が通らないという事態に追い込まれている。

政府のシャットダウン

予算案が通らないという事は、何を意味しているのかというと、政府機能の一部が停止することを意味します。
というのも、通らない予算案の中には、公務員給料も含まれていて、予算が劣らないと公務員に対する給料も支給されないという事になってしまうからです。
給料が支給されないと、公務員はその間、無給で働くことになるわけですが…

いくら、愛国心が強く、そこら中に国旗を掲げ、映画を作れば『USA! USA!』って感じになる彼らでも、無給では働けない。
消費社会でローン社会のアメリカでは、毎月のように金利を返済しなければならないですし、家賃や食費といった最低限の生活を送る費用もかかる。
愛国心だけでは食べていけない為、無給になった公務員は、業務を休んでバイトに出かけなければならない事態に追い込まれ、一部の業務が行えない状態に陥っているようです。

こうなってくると、アメリカ市民のマインドも変わってきますよね。
今までは、右翼の人は赤い帽子をかぶってトランプ支持をしていれば気持ちよくなれていたわけですが、政府の業務が停止すると、自分たちの生活にも影響が出てくる可能性がある。
直接の影響がなかったとしても、政府職員が頻繁に利用していた飲食店などは売上に影響するでしょうし、回り回って経済的な影響も出てきます。

多くの人間は、自分の生活に影響が出てきて初めて事態の深刻さを理解するもので…
今までは、呑気に赤い帽子をかぶっていた人たちも、『なんで予算通さないの? っていうか、そもそも、全額メキシコに出させるって話だったのに、なんで予算に盛り込もうとしてるの?』と文句を言い出す。
そんなこんなで、トランプの不支持率は上昇してきている。

外敵を作って一致団結?

政府のシャットダウン云々は最近の話ですが、この様な感じでトランプ政権の支持率は低下して不支持率が上昇してきている状態。
トランプは、味方であるはずのアメリカ国民から『NO!!』を突きつけられ始めているわけですが、その流れを変えようとしたのが、中国に仕掛けた貿易戦争なのかもしれません。

Huawei問題でも書きましたが、アメリカは、中国に対して驚異を感じ、難癖をつけて貿易戦争を仕掛けているという一面も、大いにあるとは思います。
長い間、世界トップの経済大国だったわけですから、トップとしてのプライドもあるでしょうし、これからもトップで有り続けたいと思っているでしょう。
kimniy8.hatenablog.com

しかし、それだけなのか?という疑問もあるんですよね。
中国という、分かりやすい外敵を作り、その敵に対して一丸となって戦っていこうというポーズを見せる事で、強いリーダーシップを見せつけ、自分にかけられた疑惑の目を避けようとしているようにも思えるんですよね。

しかし、その目論見は見事に外れ、中国の景気が少し減速しただけで、Appleが業績を下方修正するはめになり、株価に大きな影響が出てしまいました。
影響はAppleだけでなく、中国経済の減速が、ヨーロッパのラグジュアリーブランドを直撃し、その影響は世界中に広がっていこうとしています。
www.cnn.co.jp

トランプからしてみれば、『目線を反らせるために、いっちょ、脅しをかけてやろう。』といった感じで気軽に仕掛けた経済戦争なのかもしれませんが、中国がちょっと揺らいだだけで経済の歯車が狂ってしまって、世界中に激震が走る兆候が出てきてしまった。
当然、アメリカも影響をモロに受ける為、アメリカは更に国内から批判が出てくる状況になっている…

崖っぷち状態のアメリカですが、日本は、中国とアメリカのどちらが転けても終わってしまいそうなので、もっとヤバイ状態だったり…
日本も、そろそろ、アメリカべったりではなく、真剣に生き残る道を考えるべきなんでしょうね。