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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

米中貿易戦争 一番困るのはアメリカ人?

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今日は、ここ最近、経済界隈で話題になり、また、おさまるどころか白熱してきた貿易戦争について、考えていこうと思います。
事の発端としては、アメリカ大統領のトランプが、貿易赤字が嫌だと言って、アメリカと貿易をして利益が出ている国に対して文句を言い出したことが始まりです。

何故、グローバル化に反するような事を、いまさら言い出したのかというと、トランプ支持者が、白人の貧困層という事が大きく関係しているのでしょう。
アメリカといえば、ITに代表されるような頭脳労働が有名で、ダウの構成銘柄もIT化してきているわけですが…
みんなが皆、googleなんかに入れるわけではないし、頭脳労働に就けるわけでもない。

本来であれば、そういう人達は、単純労働の製造業などに行くわけですが、アメリカは製造業が弱い。
iPhoneなどで有名なアップルも、アメリカ国内では工場を持たず、外。主に、中国の生産メーカーに外注していたりします。

中国に外注する理由 その1 人件費

何故、こんな事になっているのでしょうか?理由はたくさん有るのでしょうが、一番大きな理由としては、人件費でしょう。
wikiによると、アメリカの最低時給は、連邦が定めているものが7.25ドルとなっています。
各国の最低賃金の一覧 - Wikipedia

この数字は、日本の最低時給とさほど変わらないようにも思われますが、アメリカは州という国が合わさって作られた合衆国という連邦制の国なので、州にも法律があり、そこでも最低時給が決められていたりします
多い州だと、最低賃金が日本円で1500円程になる州もあるようです。

その一方で中国の最低時給は、アメリカ連邦や日本が定めている金額の半額。アメリカの州と比べると4分の1程度(漏れ聞こえてくる話では、これより少ない可能性も?)の金額だというのが、大きな理由の一つでしょう。
この人件費ですが、これを読まれている多くの方はサラリーマンでしょうから、いまいちピン!とこないかもしれませんが、支払う立場になって考えてみれば、分かりやすいと思います。

仮に、最低時給1500円で1日8時間で月に20日働くと、企業が支払う金額は約290万円程になります。実際には、これに保険料や交通費なども含まれるでしょうから、300万を超える金額になります。
一方で、中国は最低時給が4分の1の金額なので、単純計算で1人あたりに支払う額が75万円になります。その差額は1人あたり225万円。100人だと2億を超える人件費の差となります。

製品に占める人件費の割合は、業種や何を作っているのかによっても変わってきますが、このサイトによると製造業の場合は、おおよそ人件費率が3割となっています。
www.syachou-blog.com

人件費率とは、売上と人件費の割合です。500万の製品を作るのに人件費が100万かかった場合は、人件費率20%となります。
人件費を売上で割ったものを%表示するだけなので、簡単ですよね。

商品を多くの人に販売するためには、販売価格を手頃な値段にするという事が必須ですが、その一番の方法が、人件費が安いところで作るということになります。

中国に外注する理由 その2 生産設備

先程も書いた通り、製品を製造するのに重要なのは人件費なのですが、理由はそれだけではありません。
単純な人件費だけを見れば、中国よりも安い国は探せばあるでしょう。 しかし、そんな国ではなく中国に発注するのは、中国に受注生産能力があるからです。

中国は、安い人件費を武器にして、世界中から製品の製造や組み立ての仕事を引き受けてきたので、製品製造や組み立てのノウハウがあり、生産設備も持っています。
このノウハウや製品製造の技術は、日本の大手製造会社がコスト削減のために、日本の中小企業の技術を恫喝まがいで奪い取って、中国に流した…なんて黒い噂もありますが、とにかく、安定した製品を出荷する体制というのが整っているんです。

最初は、他国から技術を教えてもらう形で発展しても、それが長年続くと、効率も良くなりますし、独自のノウハウも蓄積されていきます。
結果として、アメリカは国内で製造するよりも、中国に発注した方が話も速いし価格も安いという状態になっているので、中国に受注依頼をして、それを『輸入』する形で引き取っているので、アメリカは、対中国の貿易赤字が膨れ上がるという状態になってしまっているのでしょう。

関税競争で問題解決はするのか

日本の経済ニュースなどでは、米中の関税引き上げ競争は、輸入しているアメリカ側の方が関税をかけられる幅が大きいので、アメリカ側が有利…なんて話をしているところもありますが、実際にはそれ程単純ではありません。
先程書いた、理由の『1』と『2』を観てみれば分かりますが、単純に中国からの輸入に対して関税を上げれば、中国に発注していた企業がアメリカの企業に発注し直すという問題ではありません。

まず、理由『1』でも書いた通り、中国とアメリカの人件費が違いすぎる為に、関税を支払っても中国で作った方が、最終製品価格が安くなる可能性のほうが大きいです。
製造業の人件費率は30%前後と書きましたが、これが4倍になると120%になってしまい、それに応じて製品価格を引き上げると、アメリカ国内で作った方が高くなるという事ですね。
これは、アップルなども主張している事だったりします。
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次に、アメリカ国内に、製造拠点やノウハウが有るのかという話です。
製造拠点がない場合、まず、工場を作るところから始めなければなりません。 工場を作って、製造機械を入れて…となると、膨大な量の出費となり、それを回収する為には、かなりの長い年月がかかります。
そして、ノウハウがない場合は、一からノウハウを作っていかなければなりません。 既にノウハウを持っている中国の技術者を引き抜いて教えてもらうという方法もありますが、そもそも、この関税競争の理由が、アメリカの貧困層に向けた政策なので、中国人技術者を呼んできて作ってもらうというのでは、意味がありません。
まて、中国そのものも、有能な技術者を簡単に手放すとも思えません。

そして最後の理由としては、そもそもトランプ政権が続くのか。 トランプの後任が、同じ様な制作を取るのかという問題です。
トランプ大統領が、思いつきのように言い出しただけで、関税引き上げが可能なのであれば、次の大統領の決断によって、関税が引き下げられる可能性が十分に有ります。
トランプが次の大統領選で受かったとしても、この政策が10年も続かない可能性がある中で、企業が大規模な投資をするのかというのは、かなり疑問です。

結局困るのはアメリカ国民

企業が、生産拠点を中国からアメリカに移すにせよ、そのまま中国に発注し続けるにせよ、確実に起こることは、アメリカ国内での物価の上昇です。
アメリカ企業が中国への発注を止めなかった場合は、関税の増税という形で、製品価格が大幅に上昇することになり、製造拠点をアメリカに移した場合は、製造コストの大幅増という形で、製品価格が引き上げられる事になります。

この関税引き上げ合戦によって、アメリカ国民の年収が、商品価格の上昇分よりも増えれば問題はありませんが、そうではない場合は、給料が上がらない状態で製品価格だけが大幅に引き上げられる事になります。
これは、貧困層にとっては大打撃ですよね…そして、ドランプ大統領の支持者が、この大打撃を受ける貧困層。
世間一般では、『アメリカの攻勢が止まらない!!』なんて言われていますけれども、冷静に観たら、追い詰められてるのってアメリカの様な気がするんですよね。

もうすぐ年末になり、アメリカの消費の大半が行われるクリスマス商戦に突入しますが、その時までに関税引き上げが有った場合のトランプ大統領の支持率がどうなるのかが、非常に興味深いですね。