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【Podcast #だぶるばいせっぷす 原稿】第122回【饗宴】太古の人類 前編

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目次

注意

この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。

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前回のリンク

kimniy8.hatenablog.com

今回も、対話篇『饗宴』の読み解きを行っていきます。

パイドロスとパウサニアスの主張

前回までで出てきた主張を簡単にまとめると、パイドロスの主張としては、エロスは大地や空という概念の次に生まれたもので、人間の内側の概念としては一番最初に生まれた。
また、愛情であるエロスのために代償を支払う行為は美しく、代償を惜しむ行為は醜いため、エロスは尊いと主張します。

次にパウサニアスは、エロスは天のアフロディーテと俗のアフロディーテの2種類あり、両者は最終的な目的の善悪によって分類できると主張します。
恋愛において、相手に求める最終目的が知性や勇気といった徳性の獲得である場合には、天のアフロディーテに分類されて、その行為は美しいものとなる一方、金や権力といった物質的なものを欲する場合には、俗のアフロディーテとなり醜いものとなります。
好きな相手に振り向いてもらうために起こす行動は、その行動そのものに善悪があるのではなく、最終目的が良いものであれば美しい行動となるということです。

エリュクシマコスの主張

そして前回のエリュクシマコスの説ですが、ここではエロスを相対する者同士の欲求と定義し、天と俗の2種類に分かれるのは目的の性質によるものではなく、手段そのものに原因があるとします。
手段として取る行動そのものをエロスと定義し、行動そのものが善悪に分かれるとした理由は、そうしなければ、生まれてきた理由がわからないものが起こす行動を分類することが出来ないからでしょう。
また、エロスをそれぞれが発する欲求と定義し、専門技術をエロスを適切に操作して調和させる事と定義すれば、これは恋愛だけに限らず、自然や宗教すべての事柄に当てはまります。

例えば、物質同士の力の関係性について研究すれば物理学となり、気候や天気の調和をはかるために空の動きを研究すれば、天文学や気象学となります。
この様に学問は全て、それぞれのものが発する欲求の調和を考えていることになる為、エロスの研究となります。
プロメテウスの神話によれば、人間が他の動物に比べて唯一優れている点は、アテナから盗み出した知性なので、知性の代名詞的な学問の根源がエロスであると考えるなら、エロスは偉大だということなのでしょう。

以上がこれまでのまとめになります。各主張をかなり短くまとめたため、これだけを聞いても意味が分かりづらいと思うので、過去回をまだ聞いていない方はそちらから聞いてください。

アリストファネス

今回の内容ですが、アリストファネスの主張を取り上げていきます。
アリストファネスの職業は、喜劇詩人・作家です。彼の作品は劇になっていて、かなりの人気があったようで、そのことは数千年たった今でも名前が語り継がれているところからも、その事が想像できると思います。
アリストファネスは、ソフィストを詭弁を使って他人を言いくるめて、大したことのない情報をさも重要なものとして他人に授けている職業だとしてdisり、そのソフィストの代名詞としてソクラテスを作品内に登場させています。

前に紹介した『ソクラテスの弁明』の中でも彼の作品が紹介され、ソクラテスが信用出来ない奴だという証拠として話題に上がりました。
現代でも、風刺画なんてものがあり、政治や社会で起こっている出来事を題材にしてバカにしたり笑いものにして挑発するというのがありますが、アリストファネスは、それを喜劇で行っていた人物です。
そんな彼の主張なので、これまでに紹介してきた主張とは少し違ったアプローチとなっています。

太古の人類

アリストファネスの主張によると、そもそも人間というのが誕生した太古の昔は、人間は今のような姿形はしていなかったと言います。
ではどの様な姿をしていたのかというと、手と足がそれぞれ4本あり、頭も2つあったと言います。つまり、人間2人分のパーツで出来上がっていたということです。
姿としては、私達に馴染みのある普通の手足が2本ずつの人間が背中合わせで結合している様な感じの容姿を想像してもらえればよいです。

かなり変わった容姿をしているように思えますが、ギリシャ神話の場合は、カオスから生まれたガイアとウラヌスとの子供として、1つ目の巨人であるキュクロプスや、百の手と50の頭を持つヘカトンケイルといったものが、まず生み出されたりしています。
これらは巨人族であったため、たいへん大きな力を持っていたとされています。 この辺りの解釈としては、世界が誕生した際にはまず、大きくて目立つものから概念として生まれ、そこから細分化させて小さな概念を作っていったと考えれば良いんだと思います。
例えば、地形で言えば山や海というのは遠くからでも観察できますし、デカイです。この大きな概念から、小川などの小さな概念が生まれていったと考えると良いと思います。

この様な感じで、ギリシャ神話では最初に化け物のような巨人が生み出されて、そこから徐々に今の人間のような姿形のものが生まれていったと考えられていたので、太古の人間がその様な姿をしていたとしても、不思議ではないのでしょう。

この太古の人間の移動方法ですが、それぞれ4本の手足を伸ばすことで球状になり、転がって移動します。 イメージで言うと、ウニのような感じで外側に目一杯手足を伸ばして、その状態で転がって動く感じです。
この太鼓の人類には性別が3つ有り、それぞれ、『男男』『男女』『女女』で、男女の性質を持ち合わせるものをアンドロギュノスと呼びます。
この性別ですが、太古の人間を1人と数えずに、今現在の人類2人が結合されていると考えて、それぞれの性別の組み合わせがどうなっているのかで、3つの性別が出来ていると考えると分かりやすいと思います。

つまり、2人の男性が結合されているのが『男男』で、2人の女声が結合されているのが『女女』。そして、男女で結合しているのがアンドロギュノスです。
今現在では、アンドロギュノスといえば両性具有の事を指しますが、その言葉はこの話が元になっているのかもしれません。

人類の起源

この3つの性別にはそれぞれ起源があり、男同士が繋がったものは太陽を起源とし、女性同士が繋がったものは地球を起源とし、アンドロギュノスは月を起源とします。

男同士が繋がったものの起源を太陽とするのは、太陽が空に浮かぶ象徴的なものだからでしょう。前にも簡単に説明しましたが、ギリシャ神話では空はウラヌスという男性神とされているため、空に浮かぶ象徴として太陽を起源としているのかもしれません。
同様に、女性同士が繋がった者の起源が地球とされているのは、母なる大地である地球ガイアは地母神であるため、女性の起源が地球ということになっているのでしょう。
では、アンドロギュノスの起源が月となっているのには、どの様な理由があるのか。これは、月は夜の象徴だからかもしれません。

太陽が照っている日中であれば、光によって大地が照らされて、空と大地の境目は明確となりますが、夜には、大地を照らす光は月明かりぐらいとなり、空と大地の境目は暗闇に紛れて曖昧になります。
空が男性、大地を女性とする場合、その両方の性を持つ中間的なアンドロギュノスは、空と大地が一体化した概念とも捉えられるため、夜の象徴としての月を起源としているのかもしれません。

この、それぞれの性別の起源の解釈ですが、対話篇の中で詳しく説明されているわけではないため、公式の解釈というわけではなく、私独自の解釈ですのでご了承ください。


参考文献