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【Podcast #だぶるばいせっぷす 原稿】第47回 移り変わる宇宙の捉え方(3)『光は粒子であり波』 後編

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この投稿は、私が配信している Podcast番組『だぶるばいせっぷす ~思想と哲学史』で使用した原稿です。
放送内容は、私が理解した事を元に行っています。ご了承ください。
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前回はこちら
kimniy8.hatenablog.com

光が波の場合 媒質は何なのか

また、光が粒子であるという事にしてしまえば、光についての他の謎も解決します。
それは、光の媒質は何なのかという事です。 媒質というのは、海の波の場合は海水がそれに当たりますし、音の波の場合は、空気がそれに当たります。
波というのは、それ単体で存在しているわけではなく、何かを揺れ動かすエネルギーです。

池に石を投げ入れると、水が揺れ動いて波が出来ますし、石が水に着水すると、その衝撃が空気に伝わって揺れ動かして、音となります。
光を波と考えた場合、真空状態を飛んでくる太陽光は、何を揺れ動かしているんだろうという疑問が残ってしまうわけですが、光が粒子だと考えると、太陽から小さな粒が飛んでくることになるので、その疑問も解消します。
アインシュタインは、この光量子仮説による光電効果の説明によってノーベル賞を取り、これで、全て上手く行ったように思えるのですが… この理論は、新たな疑問を生み出します。

光は波であり粒子?

というのも、『光量子仮説』は、光電効果の説明を見事に行って、光は粒子だという証拠を見つけたわけですが、光が粒子であれば、二重スリット実験で観測された、光の干渉が説明できません。
これによって、光は粒子であり、尚且、波であるという、更に意味不明な状態に突入します。

何故意味不明なのかというのは、以前にも説明したと思いますが、もう一度簡単にいうと、ライヴハウスでバンドマンが、観客に向かって自分の着ていたTシャツを投げた場合、それを受け取れるのは1人ですよね。
何故なら、Tシャツは物体だからです。しかし、そのバンドマンが演奏して、スピーカーを通して曲を流せば、観客全員に聞こえますよね。
池に石を投げ込んだ場合、小石は粒という物体なので、池の1箇所に着水しますが、それによって出来た波は、全方向に向かって広がっていきます。

物体である粒子と波は、全く違ったものなのですが、光は、その両方の性質を併せ持った存在だということになってしまったんです。
ここで注意が必要なのは、これは、野球漫画に出てくるようなピッチャーが投げる、必殺技のように、粒子が波のような軌道を描いて飛んでいくというわけではありません。
また、沢山の粒子が、全体としてみてみると、波のようにうねって動くというわけでもありません。 1つの光量子が、波と粒子の性質を両方併せ持っているということです。

これは、理解できなくても当然だと思いますし、仮に、量子論のこの説明を今回、初めて聞いて、『分かった!』と思っている方は、おそらくは本当の意味で、分かってないと思います。
何故なら、これを説明している私自身が、波と粒子の状態を両方併せ持つという状態をイメージできていないからです。 量子論を専門的に勉強している方でも、具体的にイメージできて理解できるという方は少ないと思いますので…
今回は、この説明を聞いて、『光って、よく分からないものなんだな』という事だけ理解してもらえば大丈夫です。

光と電子の関係

この、粒子でありながら波である光なんですが、先程もいった通り、元々は粒子なんじゃないかと思われていた物が、二重スリット実験によって波だと分かってきた。
そして、波という前提で研究を進めていくと解明できなかった事が、粒子だと仮定すると解明できるという経緯を辿ってきたわけですが…
この考え方は、逆の現象も考えられるのではないかという話になってきます。 つまり、元々、物質だと思ってきた他のもの、具体的には電子を、波だと考えてみようという動きです。

というのも、波と思われていた光に最小単位があって、それが粒子の様な振る舞いをして、電子を弾き飛ばしたのであれば、その光の粒子である光子とエネルギーをやり取りできる電子も、同じ様な存在なんじゃないかと思われたんです。
その方向で研究が進んでいき…結果として、物質だと思われてきた電子にも、波の性質があると考えると納得がいくような実験結果が出てしまうんです。

電子にも波の性質がある?

電子が物質の場合に、どの様な不具合が出るのかというと、原子と電子の関係性に問題が出るようなんです。
私は高卒なのですが、そこまでで教えられてきた原子のモデルは、原子というのが中心にあって、その周りを電子が回っているというモデルで教えられました。
原子を地球だとすると、その周りを周回している月が電子というイメージですね。

原子を、この様なモデルだと思われている方は多いと思います。私も、学校でこの様に教えられてきたので、量子論関連の話を聞くまでは、こう思っていたわけですが…実際にはこのモデルでは、不具合が出てしまうんです。
というのも、電子には、スピンすると光を出してエネルギーを放出してしまうという性質があるそうなんですよ。そして、電子のエネルギーが不足すると、周回軌道の中心にある原子に電子が引き寄せられて、衝突してしまうらしいんですね。
しかし、実際に電子が原子に衝突するという現象は、現実世界の通常の状態では観測されていないようなんです。

科学というのは、計算した上で出てきた推測と現実とを比べた時に、違いがある場合、現実に起こっている事実の方を優先します。
計算上、電子がスピンするとエネルギーが光として放出されてしまうという結果が出たとしても、現実世界を観測して、その様な事実がない場合は、現実を優先して、理論の方を修正していきます。

その結果、電子に波の性質があれば、辻褄が合うんじゃないのかという動きが起こって、その方面での研究が始まります。。
そして、物理学者のシュレディンガーという方が、従来の波、これは、海で起こっている波や音の波の事ですが、この振る舞いを計算するための方程式を改良して、シュレディンガー方程式というものを生み出します。
このシュレディンガー方程式を、本当の意味で理解するためには、高度な数学的知識と物理の知識が必要になるらしく、私自身も理解していないので、細かい説明は省きます、興味のある方は、独自で調べてみてくださいね。

現実にあり得ない方程式で計算できる現実

話を戻すと、この方程式に当てはめる事で、電子の振る舞いを説明することができたんです。これによって、電子に波の性質があるらしい事が解りました。
では、これで電子の正体も解り、めでたし めでたし なのかというと、そうは問屋が卸さないんです。

このシュレディンガー方程式には、複素数という数値が使われているんです。複素数というのは、物凄く雑にいうと、虚数と実数が組み合わさったものです。
実数とは、普段、私達が計算などに使っている数字の事で、その数字と虚数という数を組み合わせたもの。 では、虚数とな何かというと、2乗してゼロ未満になる数字の事です。
この、複素数が使われている事で、何が問題になるのかというと、計算に使われている虚数というのは、数学というルールの中で作り出した、この世にはない数字だからです。

先程も言いましたが、虚数というのは、2乗してゼロ未満になる数字の事です。では、2乗するとはどういうことなのかというと、同じ数字を2回掛け合わせるという事だと、学校などで習ったはずです。
それと同時に、私達は、マイナスとマイナスをかけ合わせるとプラスになるとも習いました。 その上で、同じ数字を2回掛け合わせて、マイナス1の数値になる数字があるかどうかを考えてみてください。
そんな数字はありませんよね。 虚数とは、その名の通り、この世には無い数字の事で、その為、数字でありながら、大きい小さいという概念すら存在しない

正に、この世に存在しない虚無の数字が虚数なのですが、現実に存在する電子の振る舞いを計算するシュレディンガー方程式は、その式の中に、その虚数を組み込んでいるんです。
ありえない数字を含んだ方程式から出てくる答えは、当然のようにありえないものに成りそうなんですが…
実際に、この方程式によって、水素原子の振る舞いを説明できてしまう為、この虚数を含んだ方程式は、現実の何かを証明する方程式なんだろうということが分かってきます。

そしてこの後、私達が住む現実というところが、更にわけの分からないモノだという事が分かってくるのですが…
それはまた、次回にしようと思います
(つづく)
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