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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【ネタバレアニメ感想】 電脳コイル

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少し前になりますが、アマゾンプライムで、アニメ作品の電脳コイルを視聴しました。
今回は、そのネタバレ感想を書いていこうと思います。 ネタバレ前回で書いていきますので、ネタバレを嫌う方は観てから読まれることをオススメします。


世界観

世界観としては、少し前に話題になったgoogleグラスのようなネット接続できるメガネが普及しているような、今よりも少し未来の日本が舞台。
インターネットはもちろん、『電脳メガネ』をかける事で見ることが出来る電脳ペットなども普及していたりします。電脳ペットは、今でいうとPokemon Goポケモンのような感じですかね。スマホにアプリを入れてる人だけに、スマホ越しに見えますが、それ以外の人には見えない的な。

この眼鏡ですが、普通に使えば、情報収集や連絡手段として非常に便利というだけの代物なのですが、特殊なツールを使うことで、メガネそのものにハッキング攻撃を仕掛けることもできたりします。
ハッキング攻撃を受けてシステムが破壊された眼鏡は自動で修復モードに入るのですが、システムの修復は有料で、損害の具合によって料金が変動し、自動で料引き落とされる形になっています。
作品内では、具体的な修理費用は語られませんが、普通の攻撃を受けてシステムが破壊されると、お年玉1年分。 深刻なダメージを受けると、お年玉吹っ飛ぶようなので、3~10万ぐらいは請求されると思われます。

このメガネへの攻撃に対し、防御ツールなども存在し、『レンガの壁』や『鉄の壁』などを召喚することが可能。
これらのツールは、怪しいネット通販や駄菓子屋などで販売されていたりします。
また、メガネで出来る事を多くする為か、現実に存在するビルの壁などにも電子的なテクスチャが貼られていて、眼鏡越しで観た際には電子的なテクスチャの方を見ることができたりもします。

この様に、現実世界の方もコストを掛けてメガネ仕様に手を加えていたりします。 メンテナンスは手動ではなく、電子ペットのようにメガネを掛けているときだけ見える『サッチー』というプログラムが自動で行っています。
サッチーは、電子的な世界の秩序を守るために作られているため、ハッキングツールなどを使用する行為に対しては、使用者を攻撃してきたりもします。その為、ハッキングに興味を持つ子供達にとっては、厄介な敵であったり恐怖の対象だったりします。

ネタバレ感想

先程、簡単に世界観を文字だけで書いてみましたが、それを自分で読み返しても分かりにくいなと思うので、少しでも興味を持った方は、実際に観て世界観を体験してみてください。
おそらく1~2話を観るだけで理解が出来ると思います。

観てみた感想なのですが、昔から数多く描かれている子供中心の世界観を、SF要素を入れる事で上手く説明できている点が、非常に興味深かったです。

子供中心の世界観というのを説明すると、学校の怪談であったり、私の子供の頃の話でいうと、ビックリマンチョコにオマケでついてくるシールにレア度があって、価値が違っていたりといったものでしょうかね。
大人相手に話したとしても、真剣には聞いてもらえないし、そもそも理解もされない。
しかし、子供達の間には共通の価値観が存在し、その価値観の中で確かに生きている。 大人たちとの世界とは違う、子供たちだけの切り離された世界観のことです。

この世界観の中では、まともに話し合えるのは子供達だけなのですが、その子供たちの世界の中に入っていける大人もいる。それが、駄菓子屋のおばあちゃん。
私の子供の頃もそうですが、駄菓子屋は小学生のたまり場の様になっていて、そこにいるお婆ちゃんは、子供の話をバカにせずにそのまま受け入れてくれる。
時には、大人としての知恵を使ってアドバイスなどもしてくれる存在だったりします。

これらの『子供中心の世界観』を、 見事なまでに理由づけして意味をもたせているところに、ただただ感心してしまいました。

例えば、メタバグ・キラバグという存在。
この世界では、現実の物質世界に電子世界を被せるようにしているのですが、電子的な空間が不安定になるとバグが発生し、電子世界が崩壊したりイレギュラー(電子的なモンスター?)と呼ばれる存在が現れたりしてしまいます。
しかし、たまに宝石のような形のバグになり、それ自体に価値が生まれたりします。 中には、キラバグと呼ばれる超レアなバグなども存在するようで、かなりの価値があると子供たちの間で噂になっていたりします。

これと似たようなことが私が子供の頃にもありました。 対象はキラバグではなく、ビックリマンチョコであったりカードダスでしたが、カードに描かれている絵柄ごとに価値が変わり、背景がキラキラしているものはヘッドと呼ばれて、それを持っているだけで自慢することができました。
これを、大人の世界で自慢したとしても、『ふーん』と言われて終了なので、子供の世界観の中だけの価値観ですよね。

このメタバグですが、特殊な加工を行うことにより、メガネを攻撃する攻撃ツールや防御ツールになったりします。
大人から見ればなんの価値もない物を、攻撃に使ったり防御に使ったりしてゲームにして遊ぶというのは、子供の価値観では『あるある』ですよね。

他には、学校の怪談や都市伝説など。
怪談や都市伝説では、特定の条件が揃うと、この世とあの世がつながるといった話などもありますよね。 この物語では、あの世と呼ばれるものが、廃棄された電脳空間として登場します。
あの世とか幽霊というと、オカルト的な感じで胡散臭く感じてしまいますが… 実際に人間が認識できる電脳空間というものがあり、それを形作っている構造物がある。
電脳ペットといった、メガネを掛けると、まるで生きているように見えるペットも存在するわけですが、それらが廃棄されてしまった場合は、どこに行くのだろうか。

この物語では、廃棄された電脳世界というのが存在し、そこに人間の認識が囚われてしまうという表現で、あの世的なものを表現していたりするのですが、その表現に説得力があったりします。
例えば、電脳世界の深い階層に潜るために、現実世界での決められた道順を通らなければならなかったり…  子供の頃って、普段と違う行動を取ると、違ったことが起こるんじゃないかと漠然と信じていた人もいらっしゃると思うのですが、それを、電脳世界の階層で表現しているところに感心してしまいました。

後は… 魔法とか。
この物語には2人の主人公がいて、そのうちの一人のヤサコが暗号屋と呼ばれているのですが、彼女が使う技術が、地面に魔法陣を書くことで、様々な攻撃や防御を行うというものなんですよね。
魔法陣で魔法を使うとか、かなりオカルトな感じですが… 現実の技術を見ると、QRコードの様な模様をスマホで読み取るだけで、電子的なデータを拡張現実の世界で再現することができたりするわけで、QRコードというのはスマホを通した拡張現実の中では、魔法陣としての役目を果たしているわけです。
こんな感じで、魔法ですらもリアリティを感じさせてくれるところも凄い。

電脳世界と生物

この物語を見て一番考えさせられた事は、電脳世界に存在するプログラムとは、一体何なのかという事です。
例えば、現実世界で生物の犬をペットで飼っていて、その犬が亡くなってしまった場合、飼い主は大いに悲しむと思います。 『天国で安らかに眠ってね』なんて思う人もいるでしょう。
この様に思う人は、犬に魂が宿っていると思っているのでしょうし、亡くなった後に向かうべき世界があると、漠然と信じているのでしょう。(寂しさから逃げるための逃避行動かもしれませんが。)

ではこれが、電脳ペットだったとしたら、どうでしょうか。
この世界での電脳ペットは、メガネを掛けているときだけ見えて、メガネを外すと見えない、現実世界には存在しない、電子的なプログラムでしかありません。
しかし、そのプログラムは精巧で、生まれた時は子犬として見えていて、自分が年を取るのと同じ様に成長し、何年も連れ添った電子ペットは、単なるプログラムなのでしょうか。
その様な存在が修復不可能なほどに壊れた場合、『プログラムだから』と割り切れるものなのでしょうか。

その様な存在に、魂は宿るのでしょうか?

この物語では電脳ペットという存在を通して、生物とは何か、感情を注ぐとはどういう事かというのを考えさせられます。

個人的な考えを言わせてもらうと、魂というのは、生物に宿るものではなく、感情を注ぎ込んだ対象に宿っておいて欲しいと願うものなんじゃないかなと思ったり。
この物語では、デンスケという電脳ペットが活躍し、最終的には別れることになってしまうのですが、主人公のヤサコの中では、デンスケは単なるプログラムではなかったと思うんですよね。

私達が住むこの世界も、もう少し時間が経てば、普通の人間と変わらないぐらいのいコミュニケーションが取れるAIなども誕生したりすると思うんです。
他の人には話せない事を、AIに相談したり、聞き手になってもらうというのは、そう遠くない世界で実現しそうですが、そうなった場合、AIに対して人はどの様な感情を持つのでしょうか。
そのAIが、何らかの事故で使えなくなった場合、なんとも言えない喪失感に襲われたりしないのでしょうか。 それとも、『ただのプログラムだから』と新たなAIをダウンロードし直すのでしょうか。

このアニメは結構前に放映されたものですが、放映された当時は、現実世界の技術が追いついていなかった為に、感情移入しにくかったかもしれませんが、Pokemon GoVTuberなどが当然のように受け入れられている今見ると、感情移入がしやすく楽しめる作品なんじゃないかなと思いました。
今(2018年末)ならアマゾンプライム会員なら無料で観れるので、興味のある方は、観てみてはいかがでしょうか。