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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

配偶者控除は女性の社会進出の妨げになっているのか

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最近よく、『配偶者控除の存在が、女性の社会進出の妨げになっている』という意見を聞く。
私には全く理解できませんが、これは本当なのでしょうか。

この様な主張をする人の理屈としては、以下の様なもの。

配偶者控除が有る為に、女性が働きに出たとしても敢えて103万円以下に抑えてしまう事で、才能が無駄になっている。
もし配偶者控除がなくなれば、いくら稼いでも税額に差が無くなるため、女性はより自由に職業を選択できる。
とか何とか。

これだけを聴くと、配偶者控除がさも、社会進出をしたい女性陣の足を引っ張るだけの悪法の様にも思えてしまう。
…何度も書きますが、私にはこの理屈は全く理解出来ません。
しかし、主張する人が居るのであれば、理解する為にも順を追って考えてみましょう。


まず、103万円の壁と呼ばれる103万円という金額は何なのか。
これは恐らく、基礎控除と所得控除の合計金額だと思われます。

では所得控除とは何なのか。
これは簡単に表現すれば、生きるのに必要な経費の金額を、一律で決めているものです。
例えば会社経営の場合、売上=収入ではありませんよね。

売上を積み上げる為には、当然のことですが、商品を仕入れたり、事務所の水道光熱費・人件費等の諸経費がかかってきます。
売上からそれらを差し引いたものが営業利益で、借金などをしている場合は、そこから支払い金利を差し引いたものが経常利益となります。
この、売上から様々な経費や資産効果による収支を差し引いたものが利益で、税金はこの利益に対してかかります。

所得控除とは、サラリーマンにとっての経費のようなものです。
サラリーマンにとっては、受け取る給料が売上のようなものですが、それら全てが利益ではありませんよね。
衣食住にお金がかかりますし、会社に着ていくスーツも買わなければならない。
毎日の様に働くために、身体をメンテナンスもしなければならない。

それらに掛かったお金を、全て帳面に書いて提出するのは、提出する方もされる方も大変です。
その経費を、所得の金額に応じて国が一律で決めたのが、所得控除。
所得控除は受け取る給料の金額によって変化し給料が上昇すればする程、控除額が大きくなります。
その一方で、下限が設定されており、下限の金額が65万円。

それとは別に、例えば身体障害者であったり、高年齢であったりと、様々なケース別に控除が存在します。
その中でも、誰でも適用されるのが基礎控除で、その金額が38万円。

所得控除65万円+基礎控除38万円=103万円で、この103万円以下の収入の場合は、所得税がかかりません。
住民税は所得税と連動している為、所得税が0円の場合は住民税も0円となります。
つまり税金的には、生きていくのに最低限の収入なので、実質的に利益は出ていないという判断なんです。


配偶者控除というのは、この様な収入の配偶者がいる場合、別途38万円の控除が受けられます。

例えば、旦那さんが年収300万円で奥さんが100万円の収入だった場合、奥さんは所得税が0円。
旦那さんの場合は、所得控除+基礎控除38万円+配偶者控除38万円が、300万円から差し引かれるという事です。


ここで、『別途で38万円も控除されるなら、かなり大きい!』と思ってしまう人は要注意。
支払い税額が38万円減るのではなく、あくまでも控除額が38万円なだけです。
300万円から141万円を差し引いが159万円に5%(控除後の金額が195万円以下の場合は所得税5%)をかけた数字が所得税
つまりこの場合、配偶者控除によって免除される税金は、19,000円のみです。

この19,000円という金額は、確かに大きな金額です。
しかし、この金額が女性の社会進出の妨げになっているのでしょうか。
この足枷が外れることで、優秀な女性が社会進出する様になるのでしょうか。

単純に考えれば分かりますが、この控除が足枷になっていると行っている人は、300万円の収入を得られる可能性がある女性が、旦那の税額を19,000円減らすために、敢えて年収を103万円に抑えていると主張している様なものです。
小学生でもわかると思いますが、19,000円を得る為に200万円近くの収入を捨てる様な人間はいません。
仮にいたとすれば、その人物は年収300万円を稼ぎだす様な能力を持ちあわせてはいません。

つまり、この程度の計算が出来る人は、既に社会進出を果たしているという事です。
そんな状態で配偶者控除をなくした所で、社会進出が加速することはありません。

その一方で、配偶者控除がなくなればどのような悪影響があるのか。
子育てや親の介護が有って本来であれば働けないが、家計が苦しいので、無理やり僅かな時間を捻出してパートに出ている低所得者層の家庭が実質19,000円の増税になります。
つまり、配偶者控除というのは、爪に火を灯す様な生活をしている本当に困った人に対する増税にしか成らない。
理解しようと考えては観たが、やっぱり理解できません。

というか、この現状が解った状態で、配偶者控除を無くそうと運動している女性陣をみると、金銭的に恵まれている人達ばかりの様な気がするのは、気のせいでしょうか。