だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

人手不足で労働者の待遇は改善しているのだろうか?

広告

先日の事ですが、事業を営む親戚から『人手不足だから、無料で登録できるインディードに登録したいけど、やり方がわからないから助けてくれ。』という連絡があり、登録手続きを済ませるという事がありました。
テレビでは人手不足だと騒がれていましたが、身近でこの様な相談をされると、実感せざるを得ませんね。

こんな書き出しで書いていますが、念の為に書いておくと、インディードというサイトは登録が難しいわけではありません。私の親戚が、ネットに疎すぎるだけです。
今回の投稿は、このインディードの宣伝ではないので、詳しい説明は行いませんので、興味の有る方は『Indeed (インディード)』などで調べてください。
jp.indeed.com

この親戚が営んでいる事業なのですが、具体的な事は書きませんが、肉体労働であり、職人的な技術も必要な職業です。
登録したデータによると、給料は18万~32万円。
業界経験者であれば良いけれども、人手が足りないので未経験者でもOKのようです。
職安にも登録したけれども、応募がないので、無料の求人サイトに頼ろうという考えのようでした。

給料にばらつきがあるのは、未経験者か経験者かの差でしょう。 経験者であれば、教える手間もない上に即戦力となるので、売上に貢献できるということで、32万の提示だけれども、全くの未経験者の場合は教えなければならないので、18万円。
後は、残業などを勘定に入れて、その分を上乗せして提示している可能性もあります
同じ様な業種で検索を書けてみると、だいたい、給料が20万円前後が多い為、肉体労働で且つ職人の技術が必要なこの業界の給料の相場は、20万円程度ということなのでしょう。

具体的な月の給料を書かず、時給で書いている会社もあったので、その金額を書くと、だいたい時給で1000円が相場のようです。

この金額を見て分かる事は、とにかく安いということ。
確かに人手不足で人が足りないけれども、それが給料に反映されているわけではない事が、この提示額から分かります。

給料20万円の生活

肉体労働で、且つ、職人の技術が必要なこの業界での給料が20万円という事が分かりましたが、では、20万円でどの様な生活が出来るのでしょうか。
月に20万円だと年間で240万円。 この所得には税金がかかるわけですが、どれぐらいかかるのでしょうか。
f:id:kimniy8:20190401215336j:plain
いちいち計算するのが面倒くさいので、ネットで検索したらこの様なページが出てきました。
tax.salalive.com

このサイトを一部引用すると
年収200万円:住民税 6.31万円 + 所得税 2.78万円= 9.08万円
年収300万円:住民税 11.9万円 + 所得税 5.57万円= 17.5万円

年収が240万円はこの中間に当たる為、約13万前後と考えればよいでしょうか。
社員の場合は、社会保険料がかかるわけですが、会社と個人でで折半すると考えて、月20万の場合は保険料で月に1万円取られるようです。
www.kyoukaikenpo.or.jp

つまり、所得税・住民税と社会保険料で月々2万程度は取られるということになります。

次に支出を見ていきます。
京都の場合、ワンルームの部屋で家賃相場が3.5万程度。 1DKになると6万ぐらいが相場です。
社会人でワンルームはキツイような気もするので、1DKの部屋に住むと考えると、家賃で6万円。
suumo.jp

このサイトによると、水道光熱費の平均が1.3万円。
食費を1食あたり500円で計算すると月に約4.5万円。
これを合計すると、生活に最低限必要な金額の合計は、11.8万円となることが分かります。

先程の計算で税金と保険で月に2万円かかることがわかったので、これらを先程の20万円から差し引くと、手元に残るのは約6万円という事になります。

この、6万という数字を高いと見るか低いと見るかで、物事の考え方は大きく変わってきます。
例えば、一生結婚せずに1人で暮らしていくことを考えた場合。6万という金額は悪くはない金額といえるかもしれません。
仮に月に2万程度を貯金したとしても、自由に使えるお金が4万円もあるわけで、サラリーマンの小遣いの平均が3.7万円と言うことを考えると、若干、余裕のある暮らしが出来るとも考えられるかもしれません。

ですがもし、結婚したいと考えていた場合はどうでしょうか。
生活に必要な最低限の環境を整えただけで、手元に6万円しか残らないわけですから、これが2人での生活となると、お金が足りないことは明らかです。
子供なんてもっての外で、子供を作ろうと考えた場合は、夫婦共働きが基本となるでしょう。

これからも分かる通り、人手不足と叫ばれている割には、労働者がギリギリ暮らせるだけの金額しか提示されていない事が分かります。

会社側は搾取しているのか

では、職安や求人サイトで人を募っている様な会社は、ブラック企業なのでしょうか。
私の親戚も含めて、身の回りで『人手が足りない!』と叫んでいる会社の多くは、社員から搾取しているわけではありません。
なら何故、高い給料が提示できないのかというと、理由は単純で、儲かっていないからです。 仕事は山ほどあるけれども、提示される金額が低い為、人件費を上げると儲けが無くなるというわけです。

私の本業で取引している得意先も、今まで人を入れていなかった上に、定年による退職ラッシュが続いた事で、求人募集を出し始めたわけですが、儲かっているわけではない為、提示する給料は先程紹介したものよりも更に低い金額となっています。
ここで、『儲かってるわけでもないのに、何故、人がいるの?』と思われる方も多いかもしれませんが、現場に近い職場ほど、最低限、必要な人数が決まっていたりするわけです。
私の得意先の場合、複数の製造工程があり、それぞれに専用の機械が有るわけですが、それぞれの機械は1人では動かすことが出来ません。

また、製造自体が流れ作業になっている為、複数ある機会は同時に動かさなければなりません。
その様な構造になっている為、最低限の人数を下回ってしまうと、仕事にならないわけです。 例えば、一人で完結できるような仕事の場合は、仕事の量によって微調整が可能になるので、仕事がなければ人が少なくても困らないでしょう。
しかし、流れ作業の製造業の場合は、仕事がなくても、機会を動かすために絶対必要な人数というものが存在するのです。

当然ですが、仕事そのものは少ない為に、8時に製造ラインを動かして11時にその日の仕事が終了してしまうという事もありますが、その3時間の為に人数を揃えなければならなかったりします。
これは飲食店なども同じで、ある程度の席数が有る場合は、料理人と、料理を運ぶホールの人材が必要になってきます。
暇だからと1人でやろうとすると、急な来店があった際に対応できなくなってしまいます。

会社としては、最低限の人数は必要だから人は募集するけれども、そもそも儲かってないから給料は出せないというのが現状でしょう。

搾取してるのは誰か

現場に近い会社は儲かってない。 そこで働く人達も低賃金。にも関わらず、一部上場企業の収益はバブル後最高益更新。
このことからも分かる通り、ピラミッドの上の方の企業が搾取しているわけです。

私の知り合いに、大手電力会社に就職した人間がいて、その人から話を聴く機会があったのですが、その人物がいうのは、基本的には作業は何もせずに、下請けの人間が作業をしているのを眺めているのが仕事だそうです。
何もせずに給料をもらうというのに気が引けて、一度手伝おうとしたそうですが、知識と技術がない上に怪我をする可能性があるとの理由で、仕事に手を出すことを断られたようです。
そんな彼が務める会社の年収を調べてみると、平均年収940万円。 30代で700万円と書かれていました。

一方で、地上100メートルの送電線の上で仕事をする下請け会社と思われる会社の年収を調べてみると、30代で400万円。 入社33年目にして年収650万円と書かれていました。
見てるだけの人と、命をかけて作業をする人の給料差がコレですよ。

大型建築や原発の除染作業も、中抜き業者が大量に入って、8次下請けとか良くわからない事態になってたりしますよね。
除染作業のような税金が投入される事業で、ここまでの中抜き。 事業を行う為の源泉となっている金は、私達が払っている税金で、その金が中抜きされている。
そして、現場で働くひとは命をかけて、雀の涙ほどのお金をもらう。

支払われる給料が雀の涙なので、当然のように人は集まらずに、現場は常に人手不足。
ピラミッド構造を思い浮かべてもらえば分かると思いますが、上よりも下の方が面積が大きいですよね。
給料の中央値が下がっている事からも、ピラミッドの下の方にいる大多数の人達には金銭的な余裕が無いため、そういう庶民の人達を相手にしていた職業の人達が煽りをくっている状態なんでしょうね。
kimniy8.hatenablog.com

例えば飲食業などは、ここ16年で市場規模は横ばいです。
これだけ外国人観光客数が増えて『インバウンド需要!』と叫ばれている状態なのに、16年前と市場規模が変わってないという事は、日本人の消費額がかなり減ってるということなのかもしれませんね。
ピラミッドの下の方の人たちは、外食する余裕もない経済状態。 それが、今の日本なのかもしれません。