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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

【映画感想・考察】 ロッキー FIRST&FINAL 前編

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私の聴いているラジオ。
ネットラジオ BS@もてもてラジでかなり話題になっている映画、ロッキー
http://moteradi.com/

先日ついに、重い腰を上げて見てみました。
といっても面倒くさがり屋な私なので、レンタルで借りたのは、一作目とFINALのみ。
観た感想ですが、見てない人は人類じゃないと表現されるのが分かるような、素晴らしい内容でした。

という事で今回は、ロッキーを観ての感想や簡単な考察等を行っていこうと思います。
ネタバレ要素を含みますので、観てない方は観てから読まれることをお勧めします。

   

まず、1作目となる無印のロッキー。
舞台となるのは、ゴミ溜めの様な町です。
そこで小遣い程度の少ないファイトマネーで、地方の小さなリングで戦うロッキー。
しかしファイトマネーだけでは生活が苦しいので、バイトで高利貸しの集金係をして何とか食いつなぐ生活を強いられているという設定。

この最悪ともいえる環境で、偶然にもチャンスが舞い降りる。
世界チャンピオンとのタイトルマッチ
このチャンスを活かすため、必死に頑張るというのが大体のあらすじなのですが…

あらすじだけを書くと、ありがちなストーリーなのですが、登場するキャラクターの性格が、かなり面白い。

登場人物たちは、このゴミ溜めの様な環境で自分を正当化する為、人を見下しながら生きています。

ボクシングジムのマネージャーは、高利貸しの使いっ走りをしているロッキーを見捨て、長年使用していたロッカーを無断で他人に空け渡す。
ロッキーが呑みに行く酒場のマスターは、テレビに映るチャンプ・アポロを『あいつはピエロ』だとレッテルを貼る。
ロッキーの親友であり、恋人となるエイドリアンの兄であるポーリーは、妹を駄目なやつだと見下す。

何故こんなにも嫌な人達が出てくるのか。
この物語に出てくる人々は、基本的に貧しい。
その貧しさを紛らわして生きていく為には、人を見下して自分を正当化させなければ、精神を正常に保てない。
それ程までに酷い環境だということなんでしょう。

しかしそんな中で、ロッキーは人を見下さず、純真な気持ちを失っていない。
そして、全てを許す気持ちを持っています。

物語中盤で、ロッキーはタイトルマッチというチャンスを得ます。
このチャンスが転がり込んできたことで、周りの人間は見事に手のひら返しをします。

ロッカーを勝手に他人に明け渡したマネージャー・ミッキーは、過去の自分の栄光の象徴である新聞の切り抜きを持参し、ロッキーの家に訪れます。
そして自分からマネージャーにしてくれと頼むこと無く、ロッキーから頼んでくるように、過去の栄光を長々と話し続けます。
完全な手のひら返し。

そんな手のひら返しの演説を延々と聞かされると、俯瞰してみている此方側までムカついてくる。
その気持をロッキーが見事に代弁。
あまりの正論に自分の行動が恥ずかしくなったミッキーは、肩を落としてロッキーの前から去るのですが…
その後を追いかけて、今までの行動を許し、握手を求めてマネージャーを申し込むロッキー。


エイドリアンの兄、ボーリーにしてもそう。
ロッキーにチャンスが舞い込んでくると、そのチャンスに自分もぶら下がろうと、勝手にロッキーの名前を利用して金儲けに走ります。
ロッキーはその行動を黙認。

しかし面白くはないので、エイドリアンと二人きりの時に、少しだけ愚痴ってしまいます。
それを偶然聞いてしまったポーリーは大激怒。
バットを振り回して、家の家具を壊しまくります。
そこまでの行動をしておきながら、翌日ロッキーの前に現れたポーリーは、『スポンサーを見つけてきて、金を稼げるんだ。協力してくれないか』と提案。
その提案に対し、『儲けが出るんなら良いんじゃないか』と、先日の行動を許す。


ミッキーやポーリーの行動は、普通の人間なら、許すことは出来ません。
しかし、考える間もなく許すロッキーのキャラクターは、普通の人間には直視できないほど美しく光り輝いて見えます。

さらに忘れてはいけないのが、ロッキーを借金の取り立て人として雇っている高利貸し。
職業柄、色んな人から悪くいわれている彼ですが、実はこの物語に出てくるキャラクターとしては、ロッキーと同じぐらいの人格者で紳士です。

チャンスが舞い込んだロッキーに対して他の人間が取った行動は、そのチャンスに相乗りすること。
しかしこの高利貸しは、タイトルマッチが決まったロッキーに対して『トレーニング資金はあるのか?』と質問し、答えられずにいるロッキーに対して金を差し出す。
ロッキーは、高利貸しから差し出された金をどうするのか困っていると、一言
『返さなくていいからな』といて金を押し付ける。

その後も、ロッキーとは普通に接し、タイトルマッチ間近になると、声援を送り、応援に行く事を伝えて元気付ける。
素晴らし過ぎる行動です。


一見するとありがちなストーリーですが、キャラクターの設定と性格がミスマッチになっていて、登場人物一人ひとりの印象がより強く残るようになっています。

そういって意味では、ヒロインのエイドリアンも同じでしょう。
私は映画をそこまで見る方では有りませんが、欧米の映画は大抵、登場した時点で分かる様な、端正な顔立ちをした女性がヒロインになっています。
しかしこの作品では、初登場のエイドリアンは地味過ぎて、モブキャラと間違ってしまう程。
性格も地味ですが、周りの人間の荒みっぷりが凄いため、その地味さが逆に目出つ。

この登場人物を使っての対比構造が、かなり面白い映画となっていました。

FINALについては、後編で書いていきます。