だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

目標を間違った経済政策

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人にしても組織にしても、行動を起こす際には、まず、目標を掲げます。
これは当然の事で、目標を定めなければ正しい方向に歩み出すことが出来ないからです。
何処に向かって良いのかわからないのに、取り敢えず走ってみるというのは、良い方法とはいえません。
何故なら、走りだした方向が目標の真逆の場合、それに気がついた時には、マイナスからのスタートになってしまうからです。

しかし世の中を見ると、目標を見失ってしまい、手段を行うことが目的にすり替わっている場合が結構多いです。
例えば、異性にモテたいと思ってダイエットを始めたのは良いが、それがいつの間にか『ダイエット行為』を行うことが目的になり、本来の目標を見失ってしまう。
多くの人は、トンデモ理論の楽なダイエットに飛びつき、朝バナナだけで済ませると、後の食事や行動は問題無いという謳い文句を信じこみ、お菓子や豪勢な晩御飯を食す。
逆にストイックになり過ぎて、適正水準を下回って痩せ続け、魅力的とはいえない貧相な体になっても、目的であるダイエットを行い続ける。

他の例では、ドラゴンボールというマンガに出てくるトランクスというキャラクターの行動。
強敵を倒す為に強くなる為、トランクスは一生懸命修行します。
しかしその修業は、いつのまにか、戦闘能力という数値を上昇させる為の修行に切り替わります。
結果として、相手よりも上の戦闘能力を手に入れますが、その結果としてスピードが落ちて、戦闘能力が下のはずの敵に攻撃を当てることが出来ずに、負けてしまいます。
これは、目標となる相手をイメージしなかった事が原因でしょう。

この『手段の目的化』は、個人の体型や、マンガの登場人物のことであれば、笑って済ますことが出来ます。
ダイエットの件では、身内がやせ細って骨と皮になっていたら、流石に止めますけどもね。

しかし、これを国の経済政策で行われると、笑って済ませることは出来ないんですよね。
では、日本でこんな事が起こっているのかといえば…
起こっているんです。


アベノミクスが話題になり始め、日銀総裁が黒田さんに変わった時に、2年後にインフレ率2%を掲げました。
インフレ率とは、簡単に説明をすると、物価の上昇です。
ここで、『ん?』と引っかかる人も、結構多いと思います。
だって、給料が同じであれば、物価は安いほうが暮らしやすいですから。

にも関わらず、何故物価を2%も上昇させようとするのかというと、景気の良い状態というのは、ゆるやかなインフレである事が多いからです。
例えば、一日に200個しかパンを作れないパン屋さんが有ったとします。
この店に、毎日の様に300人近くの客が訪れてパンを買おうとした場合、生産数よりも需要のほうが多いので、当然、連日売り切れになってしまいます。
生産数を増やすことが可能であれば、増やせばよいだけですが…
もし、生産設備の関係で増やせない場合、対処法として、価格を上げる事が考えられます。
パンが200円で売られていた場合、それを250円に値上げすれば、訪れる客は減るでしょう。
生産数と販売数が丁度釣り合うところまで価格を上げると、品切れが解消される上、今までよりも儲けることが出来ます。

これは、需要と供給の問題で、この2つが釣り合った時に価格が決まります。
つまり、生産数よりも『買いたい!』と思う客の方が多い状態では、価格は上昇し続けることになります。
この状態は、景気が良い状態ともいえますよね。

つまり日銀の2%のインフレ目標というのは、ゆるやかに景気が加熱していく状態を再現するという目標ともいえます。

そして2年経った今現在、その目標は達成したのかというと…
結果からいうと、無理でした。
正直にいうと、これは無理でも仕方がないと思います。
目標を決めただけで好景気になるなら、バブル崩壊なんてものは存在しない事になります。
経済・景気なんてものは、人が簡単に操れるものではない為、出来なかったとしても『仕方がない』と個人的には思います。

しかし私が一番疑問に思ったのは、目標が達成できなかった原因として挙げた理由です。
私がテレビで聞いた理由は、『原油価格が下がったのが原因で…』というもの。
これが、かなり問題です。

原油が上昇する事によって引き起こる物価上昇は、コストアップインフレです。
つまり、不況の原因になる様な悪い物価上昇で、歓迎できるものでは有りません。
コストアップインフレとは、仕入れ価格が上昇したことによって、最終物価が上がってしまう事です。
日本は原油を生産していませんので、原油価格の上昇によって儲かるのは、産油国だけなんですね。

日本国民にとっては、商品価格は上昇するし、水道光熱費が上昇する要因にもなる。
しかし、国内景気が回復しているわけではないので、給料が上昇するわけでもない。
給料が上がらないのに物価が上昇するのは、庶民にとっては苦しいだけなんです。

にも関わらず、『原油価格の下落が原因で…』という言い訳。
これは、最終目標が好景気による生活の向上ではなく、物価上昇が最終目標だったと主張している様なものなんですね。
つまり、極論を言えば、円が暴落して原油が高くなって、国民生活が苦しくなっても、物価が2%上昇すれば良いと主張しているようなもの。
2%のインフレが毎年続くというのは、複利計算で毎年消費税が上昇しているようなものです。
庶民が今まで通りの生活を行おうと思えば、最低限、毎年2%の給料の上昇がなくてはなりません。

しかし実際はどうなったのか。
政府の圧力で、大企業のベースアップは実現しました。
ですが大企業は、下請け会社に対しては、部品の値下げ要求を突き付けています。
http://biz-journal.jp/2015/09/post_11352.html
これは構図的に、大企業の給料を上げるために、中小零細企業に支払う報酬を削るということです。
世の中はピラミッド構造で、下に行くほど人口の層は厚くなる。
結果、この経済政策で二極化が進み、貧困層が更に暮らしにくい世の中になってしまいました。

これは、最終目標をすり替えて、戦闘能力が上がれば的に勝てると思い込んで、数値に執着したトランクスと同じ状態ですね。
日銀や政府関係者は、今一度、最終目標を観直してほしいものですね。