だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

景気浮上と低所得者への時間と金の再分配

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最近テレビでは、やたらと景気が回復しているという内容の番組を放映しています。
確かに数値で見ると、少し前よりも改善はしてきているのでしょう。
ですが、私が肌で感じる景気は、その【少し前】の方が『まだマシ』という印象です。

勿論、業種によってバラツキも有るのでしょう。
本当に景気が良くて、人手不足で給料を上げ続けても人が集まらないという業種もあるのかも知れません。
しかし、私が携わっている業種は勿論ですが、休日等に繁華街で人々の動向を観ていても、景気の良さそうな感じはしないんですよね。

販売されているものは、質よりも安さが強調されているものが多い印象を受ける。
テナントが複数入っている大型店舗にいっても、大部分が『無○良品』や『ユニ○ロ』『○○書店』のテナントで埋まっていたりする。
テレビを付けても、1000円でお釣りが来るランチ特集・1万円で出来る全身コーディネートなんて特集が組まれていたりする。

別に私は、小売店の姿勢やテレビ番組をdisりたいわけではありません。
ただ、この傾向から読み取れることは、庶民の生活は、依然として厳しいということです。
『服や生活用品は、出来ることなら安く済ませたい。』
そんな消費者の意見を汲みとった結果が、小売店のラインナップや、テレビ番組の企画なんでしょう。

このまま進み続けると、商品価格はますます下落し続けることになり、その競争に撃ち勝てないものは、競争社会から脱落していくのでしょう。
最終的にどのような世界になるかは想像できませんが、私の想像力では、今よりも明るい未来は想像できません。

この状況を打ち破る為には、何が必要なのか。
それは、『労働時間の短縮』と『労働賃金のアップ』でしょう。
こういう結論を書くと、『また怠け者が、何か言ってる』と思われるかもしれないので、順をおって説明していきましょう。


では最初に、何故庶民は、出来るだけ生活費を節約したいという状況が生まれているのでしょうか。
これは、市場経済の悪い面が出てしまっているからでしょう。

市場経済では、必ず競争が起こり、企業同士がぶつかり合います。
この衝突によって、新たな技術が生まれ、価格競争が起こり、発展した現代社会が生まれました。
生活する上で人が欲しいと思っているものが、圧倒的に足りない場合、その欲求を満たす為に、多くの研究が行われて製品が生み出されてきました。
これは、市場経済の良い面です。

では、悪い面とは何なのか。
競争によって勝ち負けが生まれると、勝った企業はより成長して、巨大な組織を作ります。
その一方で負けた企業の人員は、大半が吸収されます。
倒産した場合も、求職して生き残っている会社に再就職をするわけですから、大きな目で観れば吸収されるようなものです。
この構図だと、勝った組織は、その業種でシェアを伸ばして、更に優秀な社員を雇うことが可能になります。

忘れてはいけないのが、効率化。
シェアが3倍になったからといって、3倍の社員が必要なわけでは有りません。
つまり、市場で競争が起これば起こる程、人は組織からはじき出されることになります。

また、こうして業種内で競争が起こり続けると、業種内の組織の数はドンドン減少していく一方、生き残った組織は巨大になっていきます。
この巨大になった組織のTOPが、ピラミッドの底辺層(BOP)の事まで考えて経営をしてくれていれば、何の問題も有りません。
しかし大抵は、自分とそれを取り巻く人達だけで、利益を分けようと考えます。
市場経済や、営利目的の株式会社というのは、本来の目的が利益の追求なので、この行動は悪いことではなく、成り立ちから考えれば当然ともいえるのですが、これが、大きな問題を引き起こしています。

一部の人間だけが儲かれば良いという考え方の結果が、今現在起こっている二極化。
そして、社会がピラミッド型になっているということは、富裕層は一握りで、大部分の人間が庶民と貧困層いう事になります。

しかしここで問題なのが、大組織となった会社が相手にしなければならない顧客が、大部分を占める庶民と貧困層という点。

市場経済は、そこで巻き起こる競争によって、一握りの富裕層を生み出しましたが、その富裕層だけをターゲットにしたところで、パイが少な過ぎて直ぐに頭打ちになってしまいます。
また、一握りの富裕層だけをターゲットにした商売で、大組織の運営なんて出来ません。
図体の大きい組織を維持するためには、大部分を占める庶民と貧困層を相手にしなければならないのですが、その庶民と貧困層には、そもそもお金がないという事実。
どんなに魅力的なものを創っても、どんな素晴らしいサービスを提供しても、それらを利用する為の金が無いわけですから、この市場も頭打ちなわけです。

そんな頭打ちの市場で、どうやって戦うのか。
大組織の人達が頭を捻って考えた結果は、末端組織で雇う人間の給料を下げる事で、物・サービスの原価を引き下げること。
しかし常識的に考えて、この発想は間違っているといえます。
人を最低賃金で酷使して、サービス残業を強いてサービスを提供しても、そのサービスを受ける時間もない、対価も払えない貧民層を生み出すだけです。
行き着くところまで行った先に待っているのは、消費されない世界です。

これは結果として、自分たちの大組織の首を絞めることにつながるんですよね。
個人的には、そんな世界は酷くつまらないと思ってしまいます。

現状をもう少しマシな世界に変えるためには、適切な賃金と労働時間が必要なのではないでしょうか。