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【映画紹介・感想】 キャピタリズム ~マネーは踊る~

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先日のことですが、ドキュメンタリー映画で有名なマイケル・ムーア監督作品の、『キャピタリズム マネーは踊る』を観ました。


      

という事で今回は、このを紹介しつつ、感想を書いていこうと思います。
最初に書いておきますと、この作品はストーリーものではなく、ドキュメンタリー映画で、今のアメリカの状態をムーア監督の目線で切り取った作品となります。
基本的には、現実世界で起きている出来事を、そのまま映像化したような作品の為、番組の感想を書くということは、そのままネタバレを書くということに繋がります。
その為、何の知識も得ない状態で観たいという方は、この投稿を読まずに、そのまま映像を見るよう、お願い致します。
ちなみにこの作品は、今現在、Netflixで見ることが可能です。


前置きが終わったところで、早速、作品の感想を書いていこうと思います。
私がこの作品を見た際に、一番最初に思った事は、日本の現状と非常によく似ているという事。

この作品内でアメリカの資本主義は、マイケル・ムーア監督によって皮肉たっぷりに貶され続けます。
アメリカといえば、アメリカンドリームなんて言葉を聴いたりもしますが、それは既に過去の話で、今は夢も希望も抱けない。
富裕層が搾取しまくった結果、国民の大半は貧民層に追いやられ、住む場所も奪われ、地獄のような場所として描かれているのですが…
『今の日本は、そのアメリカの背中を全力で追いかけているように見える。』それが、この作品を見た私の感想です。

では何故、私はそう思ってしまったのでしょか。順を追って観ていきましょう。

この作品では、先ず、資本主義の成り立ちから説明されています。
アメリカは第二次世界大戦後、空前の好景気を迎えます。
というのも、現代でいうとライバルだったドイツと日本が第二次世界大戦によって焼け野原になった為、ライバル不在によって受注が殺到したからだそうです。
また、焼け野原となったドイツや日本は、生活基盤をもとに戻すためにも、大量の生活用品が必要になるわけですが、その製品も、アメリカから購入していました。
様々な要因が重なって供給不足に陥ったアメリカは、物を作れば売れるという状態。働けば働くほど裕福になり、大量の中産階級が誕生しました。

この当時のアメリカは、絶好調。
需要は有り余るほど有るので、仕事も豊富だし給料も働いた分得られる。この時代に貧乏だという人は、単純に怠け者で自業自得。
資本主義が、一番効率よく仕事をしていた時代ともいえます。

しかし、そんな絶好調も長くは続きません。
資本主義は利潤を動機にして進むシステム。供給不足なのであれば、設備投資を行って効率化を行い、生産性を伸ばしていくことが善とされ、供給は需要にいずれ追いつきます。
その上、時間が立つことによって、焼け野原となって没落したライバルである、日本やドイツが復活してしまいました。
一旦焼け野原になった事で、日本やドイツは工場を作る際には最新の設備を揃えることが可能となり、高品質・高性能のものを安価で生産することが可能となってしまいました。
ただでさえ、アメリカ国内で生産性が上昇して供給力が増えている状態で、ライバルが登場した場合、どのような状態になってしまうのでしょうか。

考えなくてもわかりますね。 不景気です。

この不景気、アメリカは、どの様に向かい合ったのかというと、当時、俳優として顔が売れていたロナルド・ウィルソン・レーガンを大統領に仕立て上げ、その補佐役としてウォール街の重鎮を据えて金融政策で乗り越えようとしました。
その結果として生み出されたのが、『レーガノミックス』と呼ばれる経済対策。
今の日本の『アベノミクス』の語源となった言葉ですね。

ウォール街の傀儡政権が打ち出したレーガノミックスは、資本主義をより推し進めるものでした。
大企業を優遇し、富裕層に対する税率を引き下げる。金が無いので、福祉のレベルは引き下げる。そして、富裕層がより投資を行いやすいように、規制緩和を行う。
こうする事で、企業や富裕層はより利益を得られる為、国際的な競争力が増し、雇用も増え、結果的に税収も多くなる!
金持ちがより豊かになれば、経済を刺激して貧困層も恩恵に預かれる!トリクルダウン!!

あれれ? どっかで聴いたような政策ですね。
これによって何が起こったのかというと、目先の利益に走った企業は、分業化によって現場職員を細切れにし、発言力を奪った上で賃金をカットしました。
それらの影響により、会社上層部と現場職員との給料格差は絶対的なものとなり、貧困層の数は膨大な料に増えました。
その為、自己破産申請件数は急激に上昇して政策実施前の数倍に膨れ上がり、病院の抗うつ剤処方数も劇的に増えることになりました。

当然といえば、当然ですよね。今までは、富裕層に対する税率が高かった為、従業員から搾り取ったとしても、その金の大半は国によって搾り取られることになっていました。
しかし、企業や富裕層への減税によって、国がピンはねしなくなれば、企業や富裕層は搾取すればする程、自分の資産が積み上がっていくわけですから、搾取の手を強めたわけです。

ですが、この搾取によって企業の業績は過去最高となり、また、証券投資への規制緩和によって、株価は急激に値を上げることになります。
そう、資本主義の主な指標である、企業業績と株価だけは上昇したんです。 労働者が手にするはずだった報酬と引き換えに。

その政策が長年続き、経済が再び安定した時、国はまた、市民を不幸のドン底に突き落とすことにします。
それが、政府が創り出した不動産神話。不動産とは、単なる土地ではなく資産だと主張し、その土地を担保に金を借りれば、自由にお金を使えると主張。
仮に2000万円の家を保有していれば、それを担保に2000万円を銀行から借りれて、利息だけ払って自由に使えば良い。仮に返せなくなったとしても、家を明け渡せばチャラになる。
不動産価格は下がることはないので、土地上昇分を毎年借り入れることが出来るし、それを利息返済に回せば、家を取られることもない。

甘い言葉を中央銀行総裁が囁き、それに銀行が乗る形で、住宅向けローン市場が熱を帯び、その流れはサブプライムローン問題につながっていく。
そして起こったリーマンショック。 銀行は、国の税金から7000億ドル受け取り、倒産を回避したが、それに巻き込まれた多くの住民は家を失い、ホームレスになった。

これにより、アメリカの現場職員と富裕層の立場は決定的となります。
日本では憧れのパイロットも、アメリカでは合理化が勧められまくり、年収は日本円で200万円を下回ります。
パイロットは大学に出ているため、学資ローンなどで社会人になるまでに10万ドル(約1000万円)の借金を背負っていることが多く、その借金を年収1万7千ドルの中から支払わなくてはなりません。
航空会社の面接では、試験官に『うちの制服を来たまま、生活保護を受け取りに行くなよ。』と真面目な顔で注意され、パイロットの仕事をバイトを行いながら行わなければ食べていけないそうです。

また、オバマ大統領誕生前は、貧困層医療保険も入れない為、まともに医療設けられない。
しかしその一方で、会社は社員に対して多額の生命保険をかけていて、社員が死ぬ度に数億円を会社側が得られるという仕組みになっている。
つまり、会社がブラックになって過労死すればする程、会社は儲けが出るという仕組み。

まぁ、控えめにいって、完全に地獄ですわ。

更に資本主義の凄いところは、資本主義は成熟すればする程、この流れが加速するってところです。
というのも、資本主義社会では、一番カネが儲かるのは投資関連で、当然のことながら、就職人気の上位に金融関連企業が入ることになる。
つまり、教育機関が育てた最高の知能が、金融市場に就職していくということ。
ですが、金融市場というのは基本的には何も生み出しません。資産を右から左に流すだけで、商品や食料を生み出すわけではない。
では、国内最高頭脳の金融関係の方の給料はどこから出てくるのかというと、何処かから搾取してきた金ということになります。

これが続くと、実際に商品や食物を生み出している現場はドンドン疲弊していき、国力は下がっていくことになります。

この後を全速力で追いかけているのが、私達が住む日本というわけです。
歴史は繰り返すといいますが、他国で数十年前に始まって現在進行形で進んでいる出来事も、場所が変われば繰り返されるという事がよく分かる作品でした。
そういえば、今週末(2017年10月22日)は選挙ですね。 幸い、私達が住む日本は民主主義なので、投票先によって制作は変えることが可能です。
テレビや権力者が話す言葉ではなく、自身の置かれている環境を見直した上で、投票することが大切なのかもしれませんね。