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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

不況の今だからこそ マルクスの『共産党宣言』を知っておくべきではないだろうか

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今回紹介する漫画は、経済学を学んだ哲学者、マルクスが書いた『共産党宣言』を漫画にして読みやすくした作品です。
前から少し気になっていたタイトルでしたが、Kindleで10円で売るというセールが行われていたので、それを機に購入してみました。

簡単なあらすじ

妖怪がやってくる… 『共産主義』という名の妖怪が…

産業革命からしばらく時が経ち、資本家が権力者となる資本主義経済になった後の世界。
資本を持たない工場労働者は、人権も剥奪され、劣悪な環境で機械の部品のように働かせ続けられている。

労働者は、そんな状態に耐えられず…だが、家族の生活の事を考えると、資本家に対して牙をむくこともできない。
搾取され続け、惨めな生活を受け入れるしか選択肢が無い状態が続く中、資本家は、さらなる『生産性の向上』を求めて、更にキツイ要求を労働者に対して突きつける。

労働者の環境は更に厳しくなり、資本家に全てを奪われた労働者は、逆に何も捨てるものがなくなり、革命へと向かっていく…
そんな労働者の行く末を、遠目からエンゲルスと共に観ているマルクス。
労働者の不満や行動を踏まえた上で、社会の行く末を語ってゆく… という話です。

意外なマルクスの主張

私自身は、マルクスが書いた本は、『経済学・哲学草稿』の途中まで(後半部分はヘーゲル批判で、ヘーゲルに対する知識が必須の為)しか読んだことがなかったので、マルクスの共産主義に対する意見というのを詳しく走りませんでした。

その為、経済系の話題になった際に、私が資本主義の欠点を主張したとして、『でも、共産主義国家は全部、潰れてるだろう!共産主義のほうが駄目』という反論が帰ってきた場合、『ぐぬぬ…』となってしまっていたんですよね。

しかし、この『共産党宣言』で書かれていたマルクスの主張は、ソビエトや北朝鮮の様な、これまでや今現在に存在している、どの国とも違ったものでした。
というか、今までに存在して崩壊していった、共同体が実権を握るタイプの社会主義を否定すらしていたのです。
よく、『マルクスの主張は誤解されている』なんて言われていますが、この漫画を読むだけでも、それが十分に分かる内容となっていました。

マルクスの主張と実際の共産主義

この作品の中に出てくる労働者は、奴隷…というよりも、家畜同然の扱いを受けていて、尚且、その待遇は世襲され、末代まで同じ様な暮らしをする事を強制されています。
『資本主義国家は、頑張れば報われる世界でしょ?』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、その確率は限りなく低いのが資本主義です。
というのも、資本家になる為にはまず、資本を持っていなければなりません。 資本家の家に生まれた子供は生まれながらにして資本を手にしているわけですから、その意味では将来の資本家が約束されています。

また資本家は、有り余る資本を持っているわけですから、それを使って、自分たちの子供に最高の教育を受けさせる事ができる一方で、貧困層にそんな余裕はない為、教育格差が生まれます。
教育格差は、そのまま待遇の違いに直結する為、貧困層に生まれた家系は代々、貧困に苦しみ、富裕層の家系は、ずっと富裕層という状態になり、格差は固定されます。

この作品では、そんな労働者に対して有る人物が、『労働組合に入って、共産主義を実践している町に移住しないか?』と持ちかけるところから、共産主義の説明が始まります。
この町では、自治体が手動して計画的に生産を行い、賃金も全員同じで平等。 街で生産されたものは、町で消費する為、安くて品質の良いものが買える。
これにより、労働時間は短縮され、労働者は、より豊かな生活をおくることが出来る…

このモデルは、ソビエトや中国が採用していた計画経済ですが、マルクスは、このモデルその物を否定します。
つまり、マルクスが主張する共産主義国家というものは、既に崩壊したものではなく、まだ実現できていないものということになります。

共産主義を利用した勢力争い

真の共産主義が確立するまでには、様々な共産主義思想が生まれ、主張同士が争う事になるようです。
例えば、中世の社会は封建制度でした。 封建制度とは、王や将軍など、ピラミッドの頂点に君臨する人物が存在し、その人物が、自国の領土を収める貴族達に権限を与えているという社会です。
日本も昔は、将軍が実権を握り、それぞれの地域の殿様に自治をさせていましたよね。

この封建制度は、大抵の場合は貴族が搾取し過ぎる事によって市民が暴動を起こし、それが革命につながって終わりました。
では、封建制度が終わった後の世界ではどうなったのかというと、ブルジョア階級の資本家が労働者を家畜扱いして搾取することにより、私腹を肥やすという時代に突入しました。
つまり、労働者が搾取されているという事実そのものは、変わらないという事です。

労働者階級では何も変わりませんが、上層部の構造自体は変わります。
封建制度が革命で潰された貴族たちは、台頭してきたブルジョア階級に対抗意識を燃やし、再び実権を握るために、虎視眈々と機会を伺います。
形勢逆転をする為には何が必要かというと、社会を構成する為の人間です。 そして、自分たちの手足のように働き、尚且、一番、人口が多い労働者層を取り込もうとします。
その為に、労働者にとって聞こえの良い政策を打ち出して、労働者層の関心を惹こうとします。

そうして生まれるのが、『封建的社会主義』などです。 封建社会を復活させようと、社会主義の皮を被って人間を集め、実際には、自分が権力を握ろうということです。

共産主義と社会主義の違い

権力闘争によって生まれる社会主義と、マルクスが提唱する共産主義は、全く違うと言ってもよいほどの差があります。
決定的な違いとしては、『所有』というものに対する考えが違います。

既に崩壊している社会主義国家は、全ての実権を『国』が所有していました。
土地は全て国有地で、工場などの生産拠点も国のもので、労働者は公務員。 国の財産は全て、国が『所有』している状態なのですが、これは、裏を返せば、国を治めているものが全てのものを所有している事と同じという事です。
つまり、社会主義国家の代表は『王』と同じということになり、その王につかえている労働者は、相変わらず搾取されるということです。

しかしマルクスは、所有その物を否定します。 この『所有の否定』は、労働者から財産を奪うということではなく、資本を持つ権利その物を認めないということです。
社会主義国家では、国民は全員が公務員で、同じ給料を貰うということになっているようで、それが平等とされている様ですが、マルクスはそんな主張はしていません。
労働者は、働きに見合った給料を貰うべきだし、その人達から、労働の対価であるお金を没収するなんて事は考えていない。

ただ、搾取の原因になる資本。 例えば、工場などの生産設備や、農地などの土地など、独占する事で不労所得を生む『資本』の独占を認めないと言っているんです。
独占を認めないということは、国による独占も認めないという事なので、従来の社会主義国家とは根本的に考え方が違います。

真の共産主義革命に必要なものは何か

マルクスが考える『共産主義』が実現するためには何が必要なのかというと、労働者階級という階級意識と、将来的な目標です。
将来的な目標を明確にしている為、封建制度下では、市民革命を起こすブルジョア階級の手助けもする。 将来的に敵になるブルジョア階級を手助けするのは、最終目標が決まっているからです。

革命は一足飛びで出来るものではなく、段階を踏まないと駄目なので、段階を踏むためにも、将来的に敵となるブルジョア階級を一時的に助けるということ。
最底辺の労働者は、常に搾取され続けるけれども、その都度革命を起こす事で、権限を持っている層が徐々に自分たちに近づいてくる。そして最後の革命によって、最底辺の労働者が権力を握り、その権力を放棄することで、共産主義革命は終わる。
これによって、人は本当の意味での幸福を掴み取ることが出来るというのが、マルクスの主張のようです。

つまり、ソビエトなどの共産圏の失敗を提示して、『共産主義は失敗してるでしょ』というのは、マルクスの主張を全く理解していない意見という事だったんですよね。
マルクスの主張がこのとおりであるのなら、この世にはまだ、真の共産主義というものは存在していないことになります。
言い換えれば、ソビエトの失敗云々でマルクス批判をしている人間というのは、マルクスの本を読んだ事がない人ということが、よく分かる1冊でした。