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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

日銀総裁続投!自分の撒いたタネを処理するためにも妥当?

アベノミクスと歩調を合わす形で異次元緩和を行った、黒田日銀総裁の続投が決定したようです。
まぁ、当然といえば当然でしょう。
首相は、今の状態が『良い状態』で、アベノミクスは成功だという主張なんですから、ここで人を変えるなんて事をすると整合性が取れません。
だって、仮に人を変えるとなると『何で変えるの? 金融政策の失敗を認めるの?』なんて詰め寄られますしね。

また、他の理由としては、黒田日銀総裁の次に日銀総裁をやりたい人がいないということも有るでしょう。
日銀総裁なので、取り敢えず箔をつける為に肩書が欲しいなんて人は居るでしょうが、普通の神経を持ち合わせている人は、現状で日銀総裁をやりたい人間なんて居ないでしょう。

というのも、今の政府と日銀の金融政策はメチャクチャでやりたい放題の状態。
今、後釜となって日銀総裁なんてものを引き受けたら、その後片付けをしなければならないわけで…
その後片付けをする際に絶対に悪影響が出るので、こんな状態では頼まれてもやりたくないですよね。

事情を知らない方の為に、安倍総裁の元で日銀が何をやってきたかというと、紙幣の大量印刷です。
紙幣というのは、数字を書いて日銀総裁の印鑑を押しただけの紙なので、その気になればいくらでも印刷することが可能です。
その『紙』を、日銀は現在進行形で刷りまくっているわけです。

では、その刷った紙幣はどうなるのでしょうか。
日銀が刷った紙幣は、そのままではただの紙で、日銀の倉庫の中に眠ったままの状態となるので意味がありません。
刷った紙幣は、何らかの方法で市場に送り出さなければなりません。
その送り出す方法が、国債の買い占めと株・Jリートの買いだったりします。

アベノミクスが成功し、株価も上がってるし、国の信用を表す国債の価格も高い状態で推移しているじゃないか!』と豪語する、盲目的な自民党信者の方もいらっしゃるでしょうが…
刷ったお金で国債と株とJリートを買い占めている状態で、仮に現状維持すら出来ずに下がるなんてことが起こったとしたら、それこそヤバイ状態です。

ちなみに、日銀がどれぐらいの資産を購入しているのかというと、日本国債で400兆円分。
ETFが17兆円分で、Jリートが4000億円ぐらい?(正確な総額は調べられませんでした…)
Jリートという言葉に馴染みがない方の為に簡単に説明すると、これは不動産証券です。 理解としては、日銀が不動産を購入しているという認識で良いと思います。

つまり、日銀が株と国債と不動産を全力で買い支えているのが現状なので、国債価格が上昇して金利が下がるのも普通のことだし、株価が堅調に推移するのも当たり前。
東京の不動産が上がっているのも、ある意味、当然といえるわけです。
なんたって天下の日銀が、印刷機をフル回転させて出来た紙で、これらを買い支えているわけですから。

しかし、この行動にも問題が有ります。
それは、この方法での買い支えを未来永劫行うことは出来ないという事。
自称経済学者の人達の中には、買い入れペースをもっと増やすべき!なんて主張をしている人もいますが、普通に考えて、限界が有ります。

例えば国債は、日本の借金が1000兆円だとして、400兆円を日銀が取得しているということは、既に4割を日銀が買い占めていることになりますので、発行している分を全部買い占めたとしても、後600兆が限界です。
株の方も、時価総額が600兆ぐらいなのにその内20兆程度が日銀保有。一部の銘柄では既に日銀が大株主になってきていますし、Jリートの方では日銀の保有比率が5%を超える状況になってきています。
ここから更に買い入れ額を増やして政府関係機関保有比率を増やすということは、簡単に言うと、企業も土地も政府の借金も、全部日銀のものになる事を意味してしまうことになるからです。

『中国は共産党の一党支配で、あらゆるところに共産党が…』なんて意見も聞くことがありますが、日本も人のこと言ってられませんね。

ザ・ボイスというラジオ番組にゲスト出演している高橋洋一氏などは、『日銀は政府の子会社なんだから、政府の借金である国債を子会社の日銀が購入すれば、政府の借金は買い入れ額だけチャラになっていく。』なんて不思議な主張をされているので、更なる買い入れは大歓迎なのでしょうが、普通は出来ません。
というのも、この主張の通りだとするのであれば、そもそも財政難なんてものも税金を集めるなんて事もありえない話になるからです。

だって、仮に政府の借金である国債の1000兆円を全て子会社の日銀がお金を刷って買い取り、日本の借金を実質チャラにしたとしましょう。
この理屈でいえば、子会社の日銀の資産である株式も不動産も、政府の資産ということに出来るので、実質政府は、日銀に命令して印刷機を回すだけで、日本に本社がある企業の経営権と全ての不動産を、印刷機を回すだけで手に入れることが可能となってしまいます。
『医療費負担が… 介護が… 』なんて様々な問題がありますが、それも全て、国債を刷って日銀に買い取ってもらうという錬金術によって解決できてしまうので、税金を集めるという行動その物が無意味となります。

こんな美味しい話があるのか?と言えば、当然、あるわけありません。
歴史を振り返ってみればわかりますが、刷ったお金で湯水のように予算を使ってきた国は、例外なく潰れています。
つまり、政府の借金を子会社である日銀が購入すると借金がチャラになるなんて事はありません。 仮にそれが本当であれば、北朝鮮の政府は1京円分に相当するぐらいの国債を発行し、それを全て中央銀行で買い取ってしまえば、世界一のお金持ちになれます。
世間的にアウトローと言われている北朝鮮が行わないのは、行わないのではなく行えないからです。

仮にそんな事をすると、どうなるのかというと、そんなことをした国の通貨は叩き売れて、物凄く安くなってしまいます。
日本で例えると、物凄く円安になるという事。

こう書くと、円安って進んだほうが良いんじゃないの? 日本て、輸出大国でしょ?と思う人もいるかもしれませんが、日本経済での輸出比率って15%程度なんですよね。
その一方で、日本は資源がない国と言われているので、エネルギーを始めとした資源は海外から買ってこないと駄目。
エネルギー価格や原材料の資源の価格が上昇するという事は、単純に物価が上昇する。 『物価が上昇するのなら、デフレ解消で良いんじゃない?』と無邪気に喜ぶ人もいそうですが、そう簡単な話ではありません。

何故なら、ここでいうインフレはコストアップインフレであって、需要が盛り上がってインフレになっているわけではない。
つまり、企業や従業員の手取り給料が増えるというわけではないということ。 単純に、電気代やガソリン代やその他材料費が大幅に上がる為、その上昇分を商品に転嫁させているだけにすぎないわけです
という事は当然、物価は上がるけど給料は上がらないという状態になります。

こうなると当然のことながら、不景気に陥りますよね。だって、物の値段が高くなる一方で、手取り給料が変わらない、もしくは給料の上昇が物価の上昇分以下の伸び率になるということは、実質賃金は大幅に落ち込むわけですから…
そして残念ながら、こうなった状態は、政府が国債を大量発行からの日銀が国債を買い占めるというコンボは通用しません。
何故なら、このコンボの使用は、日本円の価値が保たれているときという前提条件がついているからです。
一度でも信用を失った通貨を更に印刷をするなんてことをすれば、印刷した以上に通貨が下落してしまいます。

つまり、海外で売られている1ドル(1ドル100円換算とする)のAという資材が欲しいけれども手元に10円しか無いから、100円を刷って賄おうと思っても、100円刷った時点で円が叩き売られて円安になる為、100円だったAの商品は1000円ぐらいに値上がりしてしまうという事。
この状態から脱却しようと思うと、通貨としての信頼を回復させるしか無い。 そして、通貨の信頼を回復させるために必要なのは、中央銀行の財務の健全性を保つということになります。
中央銀行が健全化する為には、海外投資家から観て、有益な資産を保有しておく必要が有る。つまり、自国通貨建ての政府の借金比率を減らす必要があるということ。

ここで話は冒頭に戻るわけですが、現日銀総裁が行ってきたことは、大量の紙幣印刷とそれによる国債・株・不動産の買入れです。
これを未来永劫続けることは不可能で、今後、健全に政府運営をしていくためには、日銀の保有資産の健全化を行っていかなければなりません。
健全化を行うということは、つまりは現状の逆のことをしなければならないということ。
つまりは、株・不動産・債権の売却をしていかなければならないということ。

日銀が必死で買い支えても、起こせたのはコストアップインフレからの実質賃金低下ぐらいだったわけですが、その逆を行うと、嵩上げ分が剥げ落ちて、株安と債券安による金利上昇になってしまう。
つまりは、化けの皮が剥がれて皆が感じている不景気な日本になってしまう…
これがもし、自分が行った金融政策であれば、自分がやったことにたいするツケを払うという意味でも、『やらなければならない』と納得は出来るでしょうが、他人がやった紙幣大量印刷の欠拭いなんて、誰もやりたくはない。
そう考えると、この処理が出来る…というかやらなければならないのは黒田総裁だけなので、今回の続投は妥当ということになるんでしょうね。