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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

現状の仮想通貨・暗号通貨について思う事を まとめてみた

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少し前に仮想通貨・暗号通貨と呼ばれているモノについての構造を簡単に紹介する記事を書きました。
kimniy8.hatenablog.com
今回は、この仮想通貨について個人的に思う事について書いていこうと思います。

誤解の無いように言っておくと、私が仮想通貨に対して抱いている感情は、どちらかと言うと肯定的です。
ただ、現状の仮想通貨という存在に対しては賛同できない部分も結構多いので、否定的な内容に読み取れる記事になることを、予め注意しておきますね。

前回の投稿でも書きましたが、仮想通貨の構造というものは、今までのものと全く違う構造となっています。
既存の通貨が中央集権的なものだったのに対し、仮想通貨・暗号通貨と呼ばれるものは、中央というものが存在しません。
分散型とでもいうのでしょうか。 より概念化が進んだ通貨ともいえます。

歴史を振り返ると、中央集権的なものは崩壊していることが多く、その後に生まれるのは分散型となる場合が多いので、長い目で見れば、仮想通貨が次の通過のポジションに収まっても不思議ではないと思います。
何故、中央集権的な存在は崩壊してしまうのかというと、中央集権的な存在は自らの性質上、組織を作らなければなりません。
システムが大きくなればなる程、組織は肥大化していくわけですが、組織が大きくなって長い間システムを支配するという構造が続くと、その組織は内部から腐敗していきます。
これは、金融システムだけでなく、どんなものでも言えることです。

別の例えをすると、国などがわかり易い例でしょう。
人格者で優れた統治者の元では、国は発展して国民は幸福を得ることが出来ます。
統治者が優れているのであれば、政治は民主主義よりも独裁政権の方が効率が良く、統治者の理想を叶えることが、国民の幸福につながっていくという状況になります。

しかし、人間には寿命がある為、どんな人格者であっても、未来永劫、統治をすることは不可能です。
となると、跡継ぎに任せていく必要があるのですが、どこかの時点でバカが統治者になると、そこから先は地獄となります。

結果として、世界の多くの国では、一人の統治者に全権限を委ねるのではなく、権力を分散させるという方向に進んでいっています。
こういう流れを観ていくと、通貨のコントロール権を中央銀行だけが独占するというのは、いずれは時代遅れになるようにも思えてきます。

では、いま現在、市場で売買されている仮想通貨のどれかが今後覇権を握っていくのかというと、個人的にはそうは思えないんですよね。
というのも、今のシステムでは問題点が多すぎると思うからです。

少し前(2018年1月末)にも、コインチェックという取引所から、ハッキングによって一部の通貨が盗まれるという事件がありました。
まぁ、現金であっても銀行強盗があるわけですし、今回のハッキングによって盗まれた通貨は現金化されてはいないようなので、考え方によっては現金よりかは安全ともいえますが、取引所を信用して預けていた人からしてみると、とんだとばっちりですよね。
ただ、銀行の場合は銀行強盗にあったからと言って、出金停止にはならないし、自分の貯金が減ることも無い。そういった意味では、取引所その物の信用力が低いし、個人で保管しようにも、セキュリティー上の不安が残る。
現金のように、手軽に個人で安心して保管する手段や預かってくれる所が現状では無いので、一般で使用するためには、そこら辺の整備が必要になってくると思います。

他の問題点としては、今のシステムでは効率がワルすぎるという事です。
ビットコインは、取引台帳を暗号化したものを、ユーザーに解析させて検証することで、取引の整合性を担保しているようですが、PCを稼働させてサービスにつなげているユーザーに効率よく仕事を割り振るというものではなく、台帳の解析を競争方式でやってるっぽいんですよね。
そして、一番最初に暗号を解いた人間に対して報酬を渡すという方式で、これがマイニングと呼ばれているのですが、この方式だと、PCをつなげてマイニングには参加さしているにも関わらず、1位を取れなかったユーザーは、単純に電気代分だけ損失が出るという事になります。

私は専門家ではないので、ビットコイン側が、それぞれのユーザーに違う仕事を振り分けているのか、重複した同じ仕事を割り振っているのかは、正確には知りませんが…
台帳の追記や検証の暗号化したものを10分に1回出題し、先着1名に賞金を出すという方式なので、普通に考えれば、参加者全員に同じ暗号を投げかけて、その返答を受け付けているように考えられますよね。
この方式の場合、ユーザー全員が同じ計算をやらされる為、かなり効率が悪いように思えます。

今はコンピューターのレベルも上がってるから…なんて反論も聞こえてきそうですが、今現在で、世界全体で使われているエネルギーの0.6%は通貨のマイニングのために使われているようです。これは、アルゼンチンの総使用電力量に相当するようです。
競争方式で計算をやらせる場合、競争に勝つ為には、より、処理能力の高いパーツが大量に必要になり、それを稼働しっぱなしにするわけですから、電気の使用量は鰻登りに増えていきます。
世代を重ねる毎にパーツの省エネが進むとは言っても、現状でゲーム用に発売されたビデオボードがマイナー(マイニングする人)に買い占められ、それがフル稼働している状態なので、省エネなんて間に合ってません。

現状でも、日本の様に電気料金が高い国ではマイニングは無理と言われていて、マイニングの舞台は中国へと移っています。
その中国では、奥地に水力発電所を作り、そこで発生した電力をマイニングで消費する事で利益を上げていたりします。
中国は、仮に、その水力発電所で生まれた電力を国民の為に使っていれば、もっと幸福度が上がることでしょう。

そしてこの、マイニングが一部の地域に偏っているという現状は、仮想通貨その物の立ち位置も危うくしています。
そもそも、仮想通貨は中央集権的なものから分散化させる為に生まれた技術ですが、エネルギーの調達コストの低い国にマイナー集中するという事は、結局のところ、分散化ができていない事になります。
また、水力発電所を作るような資本家が乗り込んできたということは、結果、その通貨の先行きは資本家の手に委ねられることとなります。

一部の資産家の行動に通貨の運命がかかっているとうことは、簡単に言うと、資本家達が『マイニングが割に合わない』と思って撤退した瞬間が、その通貨の寿命となるということ。
その具体的なタイミングとしては、マイニングの為の電気料金>マイニングの報酬となった時です。

一部の取引所のサイトでは、『仮想通貨は埋蔵量が決まっていて、採掘する為のコストは上昇していくので、長期的に観て仮想通貨は上がる!』なんてメチャクチャな事を書いていますが、その主張は少し考えれば詐欺だということが分かります。
例えば、金のような現物資産の場合は、金鉱山から採掘業者が掘り出したものを市場に流すことで流通します。
金価格が下がった場合は、採掘業者は採掘した金を市場に流さなかったり、コストに見合わなければ、採掘その物を止めてしまうなどの行動を起こすため、需給関係が改善して価格は上昇したりもします。

取引業者は、仮想通貨もこれと同じと主張しているわけですが、その主張は少し考えれば間違いだと分かります。
というのも、実物資産である金は、宝飾品や工業用部品の材料として実際に形を変えて市場で消費されるわけで、採掘業者が採掘を止めたとしても、金取引その物が無くなるわけではありません。
その為、金相場の場合は、売りたくなければ売らなければいいし、コストに見合わなければ採掘しなければ良いという選択が容易にとれます。

しかし、仮想通貨は違います。
仮想通貨の場合は、そのシステムを維持しているのはマイニング業者で、彼らがPCをシステムに繋げるのを止めた場合、システムその物が崩壊します。
出入金や取引、それに関わる記帳や照合が行われなくなる為、そうなった時点で、仮想通貨の通貨としての価値は無くなります。
つまり、現物資産の金のように、採掘者が居なくても単独で市場が成り立つものでは無いため、マイナーが居なくなった時点でシステムが終了してしまうということです。
この理屈が分かると、マイニングコストが上昇するから仮想通貨の価格も上がるのではなく、仮想通貨のシステムを維持する為には、価格が上昇し続けなければならないという事が理解できると思います。

仮想通貨の取引を、出来るだけ長く安定的に行うためには、できるだけ多くの人をシステムに引き入れることが必要で、その為には、システムに繋げる敷居が低くないといけません。
しかし現状のシステムでは、参加する為のハードルが高い。 10万以上するビデオカードをかなりの数購入し、電気料金の安い地域でしかコストに見合わない現状では、参加者は限定され、通貨の未来は、その限定された一握りの人間の手に委ねられる。
今現在はマイナーの8割が中国に集まっているようですが、中国のマイニング規制がより強固なものになった際には、マイナーが一斉に手を引くことで、システムが簡単に潰れてしまう可能性が有ります。

こういうことを考えていくと、今現在、発行されている通貨は、皆、同じ様な欠点を持っている為、この先は生き残れないように思えます。
だからといって、この流れが完全に止まるのかといえばそうではなく、システムの改善を重ねる事で、徐々に使えるようになっていくのではないのかなと。
まぁ、ビットコインの開発者関係者自体が、今現在のビットコインのシステムをそのまま利用して、紙幣に成り代わろうなんて考えてないようですし、今現在は実験段階って言ってますしね。

先のことはわかりませんが、今現在、乱高下している通貨には、あまり期待せず、今後の技術の進歩に注目したほうが良いような気がしますね。