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ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

日本に借金は無いというトンデモ理論 ③

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この投稿は、前回までの続きとなっています。
kimniy8.hatenablog.com
kimniy8.hatenablog.com
今回は、『日本の借金の引受先は日銀なので、この部分は借金とはカウントしなくても大丈夫』という暴論について考えていきます。
この主張をする人たちの前提としては、日銀は政府の子会社という考え方が根底にあります。

親会社が子会社から借りているだけなので、大きな枠組みで見ると借金はチャラ。
これを家族に例えると、親がだらしなくて借金漬けだとしても、その借金を子供から借りていれば問題はない。。
家族以外のところから借金しているわけではなく、借金は家族内で完結しているため、最悪、親が子供の借金を踏み倒したとしても、誰に迷惑がかかるわけでもないのでOK。
という事のようです。

普通の読解力が有れば、『ん??』って思いますよね。
そのモヤモヤ感は、正しいです。

まずこの理論の一番の問題点は、日銀は政府の子会社ではないという事です。
日銀は株式市場に上場していて売買できますし、55%は国が保有しています。
過半数の株を国がおさえているので、国の子会社のようにも見えます。

しかし実際には、中央銀行である日銀の株式には議決権がありませんし、株主総会もありません。
日銀とは、完全に独立した機関なんです。

ではなぜ、日銀の独立性が重要視されるのかというと、通貨に対して信用力を与えているのが、日本政府ではなく中央銀行の日銀だからです。
皆さんの手元には、1枚ぐらい、紙幣が有ると思います。
これって、どこからどう見ても、ただの紙ですよね。
その紙で色んなものが交換できるのは、中央銀行が信用力を与えているからです。

世界の舞台で日銀総裁が意外な事を発言した際、為替相場が大きく動くのはこのためです。

では何故、中央銀行は独立していなければならないのでしょうか。
それを考えるためにも、最初の問題に立ち返りましょう。

『日本の借金の引受先が日銀の場合、この部分は借金とはカウントしなくても大丈夫』
もし本当にそうなのであれば、そもそも、財政問題なんてものはこの世に存在しませんよね。
だって、政府が発行した国債は、全て日銀で買い取れば良いだけなんですから。

年金問題や介護問題などなど、日本は様々な問題を抱えています。
しかしそんな必要も有りません。

年金資金がないのであれば、政府が足りない金額の国債を発行して、日銀に買い取ってもらえば良い。
それだけで、年金の破綻などは容易に回避できます。
介護設備がないのであれば、国債を発行して日銀に買い取らせて、そのお金で介護施設を大量に建てれば良い。
そこで働く人が居なければ、年収1000万円ぐらいで募集すればよいのです。
人件費の費用?
そんなものは、国債を刷って全て日銀に押し付ければ、いくらでも出てきます。

だって、日銀が買い取る国債は、借金にはカウントされないんですから。

こうなってくると、もはや税金なんてものも集めなくてよいですよね。
だって、今の日本政府は年間100兆円ぐらいで運営できているので、毎年100兆円の国債を新規で発行して日銀に買い取ってもらうだけで、税金がなくても政府の運営は出来ます。
景気が悪いのであれば、景気が良くなるまで更に100兆円ぐらいの国債を刷って現金化すれば、景気刺激策も出来るでしょう。
株が下がっているのであれば、政府が株を買い支えれば良い。
日本の株の時価総額は500兆ぐらいでしょうか。
それ位ならいっその事、国債を500兆円分刷って、全ての株式を買い取ってしまうのも良いかもしれませんよね。
そうすれば、下がる心配も有りません。

日本の借金の額は凄まじい物になりますが、それも大丈夫。
だって、日銀が買い取ったものはカウントしないんですから!

・・・
この状態って、何かおかしくないですか?
こんなにうまい話が有れば、どこの国だって実行しているはずですよね。

この辺りのことは、歴史の塾の先生が解説されているので、詳しくは動画を観てください。




政府が湯水の様に国債を発行し、それを日銀に押し付ける。
日銀による国債の直接買い入れする事を【財政ファイナンス】というのですが、この状態というのは、政府がお金を刷ってばらまいているのと同じ状況と認識されてしまいます。

そして、過去に紙幣を発行し続けた国々は、ことごとく潰れているんです。

政治家は基本的には自身の保身を考えているので、票をもらって当選し続けるためにも、国民の人気を取ることしか考えません。
こんな政府に通貨の発行権を与えてしまうと、国民に良い顔をする為に湯水のようにお金を刷っては使い続けます。
大量に紙幣が発行され続けると、最終的にはお金の信用力が落ちて、紙切れになります。
国民からすると、今まで苦労して貯めた現金が無価値になるので、暴動が起こって国が潰れるというのが、今までの歴史の流れなんです。

それらの教訓から、国の運営をする政府と、通貨に信用を与える中央銀行、それぞれの機関を分離させたのです。
政府は現金が足りなくなれば、国債を発行し、市場から資金を調達します。
この国債中央銀行が買ったのでは、政府が紙幣を刷っているのと変わらない状態になるので、決して日銀は国債の直接買い入れは行いません。
中央銀行国債を買い取る場合は、一旦、民間の投資家が国債を購入。
その後、その投資家から購入するというシステムになっています。

これは『日本国債が危険な場合は、民間の投資家は買わないであろう。』
『民間の投資家が買っている以上、政府の信用力は高く、その国債を買う分には、中央銀行の信用力は低下しないであろう』という考えているから。

中央銀行に求められるのは、通貨の番人として信用力を保つこと。
政府と歩調を合わせるなんてとんでもなく、国民の為に通貨の信用を守ることが最優先事項なのです。

確かに現状では、日銀が市場に出回っている国債を購入することで、問題なく経済はまわっています。
しかし通貨の信用力が無くなることによるハイパーインフレが起こった際には、取り返しの付かない事になります。
『日本はデフレだから、インフレの心配をする必要はない。』なんて意味不明なことを言う人も居ますが、インフレは一度、加速し始めると、コントロールはききません。

これらの事を考慮して考えると、『日銀は政府の子会社なので、日銀が保有する分の国債はノーカウント』なんて、軽々しく言えるものではないんですね。

以上のことを総合的に考えると、『日本の借金は本当は有りませんでした!』なんてのは、希望であって、事実ではないと分かるのではないでしょうか。