だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

保守主義・右傾化は何故起こるのだろうか

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最近テレビを見ていると、トランプ大統領の話題がかなり多いですね。
それにともなって、『今、世界では何故、保護主義に傾いているのか。』みたいな事も話されていますね。
専門家の方々は、様々な理由を考えたり絞り出したりして、『世界では、今まででは考えられないような事が起こっている!』なんて大層なことを発言していたりします。

しかし冷静になって世の中を見てみると、別に不思議な事が起こっているわけでもないですし、今起こっている事は過去に起こってきたことの繰り返しに過ぎなかったりします。
専門家は自分の存在価値を高める為に、さも複雑なことが起こっているかのように演出しますが、実際の切っ掛けは物凄く単純で、誰でも理解できることだったりします。
という事で今回は、今世界で起こっている保護主義や右傾化について考えていきます。

保護主義ナショナリズムが高まっている原因は、何も複雑怪奇なことが起こっているわけではなく、理由はものすごく簡単なことだったりします。
答えは、『お金』です。

昔、イギリスで産業革命が起こったときのことを考えてみましょう。
産業革命によって多くの手工業職人的な労働は、人の手から産業機械に取って代わられました。
職人の価値は大きく下がり多くの失業者を産み、当然のように人々の手取りの給料も下がりました。

この流れに反発するように起こったのが、『ラダイト運動』や『機械打ち壊し運動』と呼ばれるものです。
『機械が自分たちから仕事を奪った!機械の手から自分たちの色を取り戻そう!』と、労働運動が起こったのです。

今起こっていることは、これが『機械』から『移民』に変わっているだけで、本質的なことは全く同じことです。
IT技術の進歩や運送システムの進化によって、労働力が安い国に工場が集中し、先進国から職がなくなった。
また先進国国内も、物価水準が低い国からの移民や難民によって、賃金が引き下げられることになってしまった。

例えば日本国内でコンビニのように、時給は最低賃金だが覚える事と仕事が大量にある様な仕事は、日本人なら『この賃金でこの労働はやってられない』と職につきたがらない。
通常であれば、この状態が長く続くとコンビニ側は人を集められないので、人件費を上げることで何とか人手を確保しようとするのですが、物価水準が低い国から来ている人にとっては日本の最低時給は良い条件に見えるので、求人に応募してしまう。
これによって求人の需給バランスが整ってしまうと、給料が上がることはなくなってしまう。
最低時給の場合はこれ以上下がりようがないが、最低時給以上で求人をしている業界等の場合、給料の押し下げ要因にもなりうる。

こうなってくると今までその業界で働いていた人たちは、『移民が自分達から仕事を奪う!』と考えてしまいがち。
その考えが発展すると『あいつらを追い出せ!』なんて考えにも至ってしまう。
今起こっているのは、まさしくこの状態と言えるのではないでしょうか。
これは先程も書きましたが、『機械が仕事を奪う!』と機械を壊す運動と基本的な考え方は全く同じ。
ただ、対象が機械から外国人に変わっただけです。

外国人排斥の考えが更に発展すると、ナショナリズムの強化にも繋がります。
外国人を批判して追い出すためには、その反対側である自国民を褒め称えなければなりませんしね。
これらの流れは、トランプを選んだアメリカやEUから脱退を決めたイギリスだけで起こっていることではありません。
雇用を奪わている先進国では、多かれ少なかれ起こっていることです。

例えば日本。
ここ数年のテレビを見ていると、『流石日本に技術!』『日本人の心遣いは凄い!』『日本の文化は素晴らしい!』なんて聴いてるだけで恥ずかしくなってくるような事をテーマにした番組が非常に多いです。
その一方で、製品のシェアや労働を奪われている対象の中国や韓国に対する報道は敵対意識丸出しのものだったりします。
巨大掲示板や、まとめサイトを読んでみても、『あなたは中国人や韓国人に親を殺されたんですか?』と聞きたくなる程にヘイトを撒き散らしている人の多いこと。
そんな人達が揃って『トランプ選んだアメリカ人てw』なんて言ってても、余り説得力が無かったりします。

この様に、既に日本でもナショナリズムは高まってる状態。ただ、政治的に目立ってないだけともいえます。
今の雰囲気では、仮に日本の政治団体の1つが、『中国人や韓国人から仕事を取り戻そう! そして誇り高い日本を取り戻そう!』なんて意見を全面に押し出せば、与党になる可能性をはらんでいる。
日本がもし大統領制で、そんな人間が立候補したた、当選する可能性も十分考えられる状態に感じられます。

まとめると、IT技術や輸送システムの進化によって、低い労働賃金を提供できる国や人に仕事が流れてしまった。
資本主義で消費社会の世の中では、仕事をしてお金を得なければ行きていけない為、仕事を奪われた人達は、それを奪った国や人達を憎むようになってしまった。
その反動として、逆に自国の人や文化を持ち上げるようになったというところでしょう

新たな技術が生まれる度に昔から繰り返されてきた事で、特に『今始まったことではない』現象が、今の保護主義や右傾化でしょう。

ただ、この状況になって一つ心配なのは、保護主義になってナショナリズムが高まった時って、戦争になるケースが多いんですよね。
個人的には『仕事』というのは日常生活を行う上で『仕方なく行わなければならないこと』であって、技術の進歩で仕事の量がドンドン減っているのなら、少ない仕事を皆でシェアして、一人一人が働く時間を減らしても回るようなシステムを作るほうが良いように思うんですよね。
少ない仕事を奪い合うために殺し合いをするとか、かなり非合理的だと思うのは、私だけなんでしょうか。