だぶるばいせっぷす 新館

ホワイトカラーではないブルーカラーからの視点

日本はなぜ衰退しているのか

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先日、『国家はなぜ衰退するのか』という本を読み、このブログでも紹介させて頂きました。
kimniy8.hatenablog.com
今回は、この本にかかれていた内容を踏まえて、何故、現在の日本が成長しないのかについて、私なりに考えて書いていきます。



この本によると、国家が衰退する理由は『収奪的システム』だそうです。
簡単に説明すると、昔のように王様が国を治めていた時には、国のものは王の物。
その下にぶら下がる貴族は、領地で生産されたものを搾取し、搾取側は裕福な暮らしをする一方で、庶民は苦しい生活を強いられていました。
つまり、王を頂点としたピラミッド構造が作られ、下から上に搾取される形になっていたわけです。

貧民層からしてみると、自分たちがどれだけ労働したとしても成果物は全て領主に取り上げられる為、頑張っても頑張らなくても結果は同じことになります。
結果が同じであれば、労働時間を増やしたり投資をして生産性を上げるなんて事をしても、自身の生活には何の影響もないので行う意味がない。
このような制度ではモチベーションも上がらず、全体としての生産性は上昇しないし、技術も発展しない。

つまり国家は衰退していく。

その一方で、労働者階級には不満が溜まっていくため、それが爆発すると一揆や革命などが起こってしまう。
衰退した国家にはそれらの暴動を止める力もないので、古いシステムは倒され、新たなシステムが生まれていく。
歴史を見てみると基本的にはこの流れの繰り返しで、一極集中していた権力を、より分散するシステムを作れた地域が発展してきました。

日本の場合を観てみると、この流れが起こったのは敗戦でしょう。
長く続いた、将軍が天下統一して政治を行うという封建制度は、明治になって中央集権に変わったのでしょうが、そもそも市民革命では無い為に貧富の差等も継続して続いていました。
しかし敗戦後、財閥解体や農地改革によって富の再分配が一気に進みました。
資本主義において富とは権力と類似した効果を持つため、これが再分配されるということは、権力の再分配と似たような効果を発揮したと考えて良いでしょう。

その結果として起こったのが、戦後復興からの高度経済成長時代。

財閥などが解体されて権力や富の集中がなくなった事に加え、敗戦によって多くの土地が被害を受けて復興需要が盛り上がった事もあり、やらなければならない仕事が山のようにあった。
仕事をやる気さえ有れば職につけて、お金を得ることが出来た時代。
このような環境では、人々のモチベーションは常に高く、また需要不足である為、生産性を上げる為の投資なども積極的に行われました。
正に、資本主義の黄金期と言っても良い状態だったのではないかと思います。

では、現状はどうなっているのか。
バブル絶頂期のGDPは400兆程度で、今現在の日本のGDPは500兆と100兆円も増加。
上場企業の業績も、過去最高益を出す企業が少なくなく、企業が保有する資産もドンドン増加。
一方で、年収200万円程度のワーキングプアー層や正社員になれない派遣が増え、格差が広がっている状態。

この状態は、簡単に言えば富の一極集中が起こっているわけで、システムとしては『収奪的システム』に逆戻りしてしまっているという事でしょう。

実際にテレビで経済番組などを観ると、トヨタ式の改善策が偉業のように褒め称えられているのをよく観ます。
しかし、実際に行われていることは経費の節約。
『経費』とは、別の味方をすれば誰かの『利益』。従業員給与は従業員の利益ですが、会社から見れば経費。仕入れ価格は経費ですが、納入業者からすれば利益につながる。
それを削減して自分の儲けにしているわけですから、二極化して当然ともいえます。

この流れを具体的に説明すると、『改善』を行って仕入れ業者から部品を安く買い叩くとします。
今まで購入していた価格よりも安く購入できるわけですから、当然、『改善』を行った企業は経費削減効果によって利益が得られます。
一方で、安く買い叩かれた側は、本来なら得られるはずだった利益が得られなくなるわけですから、業績は悪化します。

『無理な値下げ要求には応えなければ良い。』という反論も有るでしょう。
しかし、現状は供給過多の世の中ですので、要求を断ることで得意先が無くなってしまえば、事業自体が廃業してしまう可能性も大いに有ります。
人間は、余裕のある時は冷静な判断が出来ますが、後がない状態で圧力がかけられれば、無理な条件でも受け入れてしまうものです。
『じゃぁ、廃業すれば良いじゃないか。』と思われる方もいらっしゃるとは思いますが、日本のように労働市場流動性がない状態だと、転職するのも難しい。
そもそも供給過多が原因なので、同業他社で雇って貰える確率が低い上、全く新しい分野だと一定年齢以上は募集すらされていない状態。
正に崖っぷちの状態で圧力をかけられるわけで、崖から飛び降りる決断を出来る人間は少ないでしょう。
これに加え、事業で借金があると更に余裕はなくなります。日本の銀行は事業にお金を貸すのではなく、個人にお金を貸します。
中小企業の借金の大半は、社長に連帯保証人の判子を押させる為、事業が破綻すると自分の人生の破綻に繋がります。
結果として、選択肢は有るが一択の状態で値下げを受け入れることになり、利益は大企業に搾取されることになります。

では、大企業に務める従業員は安泰なのかといえば、そうでもない。従業員給与も会社から見れば経費なので、削減対象になります。
業務を細分化・マニュアル化して、少数の社員に多数のバイトや派遣を管理させて回転させるなんて事は、今も進んでいますし、これからも進んでいくことでしょう。
純化してマニュアルが用意された仕事は簡単に替えを用意できる為、企業は個人の能力に固執しません。重要なのは、低賃金で雇えるのかというだけ。
その結果として増えているのが、ワープア層。

そして貯め込まれた利益はどうなるのかというと、会社の資産として積み上がり、その一部が配当金として資本家に支払われる。
つまり現在の日本は、資本家が搾取する『収奪的システム』が完成している状態ともいえます。
当然ですが、生きるのに最低限のものだけ残され、利益は全て搾取される状態では、労働者のモチベーションも上昇しません。
この結果起こっているのが、今の『衰退』の状態なのかもしれません。

こう考えると、今の日本に必要なのは一極に集中している資本を、再分配させることになるわけですが…
そもそも市民革命を起こしたこともなく、デモ行進自体がダサいと笑われる日本で、こんな事が可能なのかというと…難しいのかもしれませんね。